自由都市のダンジョン探索者 ~精霊集めてダンジョン攻略~【第一部:初級探索者編完結】

高田 祐一

文字の大きさ
上 下
79 / 213

079:孤児達の戦い1

しおりを挟む
 翌日、僕達は少し時間を遅めに噴水広場に集合した。

 時間を遅らせたのは孤児院の朝は色々忙しいので、年長者三人が一度に抜けてしまうと廻らないという訳があった。

 しかし、沢山の探索者が集う朝の時間帯に子供達がうろうろしていれば、目立つだろうし、揉め事に巻き込まれる可能性もあった。

 (避けられるなら、余計な波風は立てないほうかいいよね)

 ある程度、育成が進めば、自力で切り抜けられるくらいの力は身に付けられるだろうと思われた。

 (普通の子供達ならまだ大人の庇護に頼る年齢なんだけどな……)

 年長組三人はとてもしっかりしていて、常に大人の世界に関わっていこうとする姿勢がみられる。

 早く大人になりたいと考えてのいるのがよくわかるのだ。それを僕は止めようとは思わない。

 だから理不尽な大人の力に対抗出来るだけの力を、身に付けられるよう手助けしようと思ったのだ。

 僕は集団の一番後ろを歩いている。先頭はサラで四人を前後から見守る形になる。

 しかし、先頭のサラと中年の衛兵が刻印の確認後、少し揉めているようだ

「ギルドは認めてくれた。それで問題無いのではなくて?」サラが何時もの調子で対応している。

「そうかも知れないが、その子はいくら何でも幼すぎるんじゃ無いですか? うちの娘より幼いようだし……」

 中年の衛兵がどうやらキャロの事を心配してダンジョン行きを思い止まらせようとしているみたいだ。

 僕はこの二人にはある程度事情を打ち明けたほうが、今後この四人だけでダンジョンに行く事になっても問題が少ないだろうと思った。

 僕は衛兵達に近づいて「すいません、ここだけの話にして貰いたいんですが……」

「ああ、お前さんも付き添いか……そこのエルフさんと二人もいれば滅多なことは起こらんと思うがな……それで話とは?」

 中年の衛兵は純粋に心配してくれているだけなのは、普段の言動から察せられた。

「その子は加護持ちです。この件はギルドも了解済みですが、探索者の能力として秘匿事項として下さい。それから、子供達ばかりの集団なのは、この子達が孤児院の者だからです」

「ユーリ!」サラが非難の声をあげた。サラからすれば説明する必要も無い事を僕が話し出したので、驚いたに違いない。

「いや、待ってくれエルフのお嬢さん、彼を責めないでやってくれ。俺達を信頼して話してくれたんだ、この件はここだけの話だ。お前もいいな!」

 中年の衛兵が若い相棒に声をかけた。加護と聞いて納得してくれたみたいだ。

「先輩、分かってますよ! 先輩こそ家族にも秘密ですからね!」

 若い衛兵は何時も陽気な感じだが、不思議と軽薄な感じはしない。その事が却って彼に対しての信頼感を上げている気がした。

「そうだな、お前の言う通りだな……気を付けよう」中年衛兵の真剣な言葉に「先輩! 固いっすよ」若い衛兵の言葉で、その場の皆も笑いだした。

 サラも「ガザフの上層部はどうか知らないけど、現場担当者は信用出来そうね、あのギルドの担当してくれた無表情の彼女も、信頼出来そうに思えたわ」

 (担当者マリアさんなんだな……)

 無表情なマリアさんの前に座るキャロを思い浮かべ、吹き出しそうになっていると……

「話もついたようだし、さっさと行くわよ!」気合い十分のサラがどんどん進んでいった。

 キャロが衛兵の二人に向かって「いってきます!」と元気に挨拶している。
 
「ああ、気をつけてな」「頑張れよ!」衛兵二人も嬉しそうに返礼している。

 その声を背に僕達はダンジョン一層に降りていくのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 Bランクダンジョンがある町に住む主人公のカナンは、茶色い髪の二十歳の男冒険者だ。地属性の魔法を使い、剣でモンスターと戦う。冒険者になって二年の月日が過ぎたが、階級はA〜Fまである階級の中で、下から二番目のEランクだ。  カナンにはAランク冒険者の姉がいて、姉から貰った剣と冒険者手帳の知識を他の冒険者達に自慢していた。当然、姉の七光りで口だけのカナンは、冒険者達に徐々に嫌われるようになった。そして、一年半をかけて完全孤立状態を完成させた。  それから約半年後のある日、別の町にいる姉から孤児の少女を引き取って欲しいと手紙が送られてきた。その時のカナンはダンジョンにも入らずに、自宅に引きこもっていた。当然、やって来た少女を家から追い出すと決めた。  けれども、やって来た少女に冒険者の才能を見つけると、カナンはダンジョンに行く事を決意した。少女に短剣を持たせると、地下一階から再スタートを始めた。

コーデリア魔法研究所

tiroro
ファンタジー
孤児院を出て、一人暮らしを始めた15歳の少女ミア。 新たな生活に胸を躍らせる中、偶然出会った魔導士に助けられ、なりゆきで魔法研究所で働くことになる。 未知の世界で魔法と向き合いながら、自分の力で未来を切り拓こうと決意するミアの物語が、ここから始まる。

追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗
ファンタジー
異世界のヨーロッパ風国家「グランゼリア王国」を舞台にした合理主義冒険ファンタジー。 主人公レオン・クラウゼンは、冷静な判断と効率重視の性格を持つ冒険者。彼の能力「価値転換(バリュー・シフト)」は物や素材の価値を再構築するもので、戦闘向きではないが経済的な可能性を秘めている。パーティーから追放されたレオンは、自身の能力を活かし「FIRE(経済的自立と早期退職)」を目指す人生設計を実行に移す。 彼が一人で挑むのは、廃鉱での素材収集、不動産投資、商業ネットワークの構築といった経済活動。次々と成功を収める一方で、魔獣の襲撃や元パーティーとの因縁など、様々な試練が彼を待ち受けることになる。 「戦わずして生き抜く」レオンが描く、冒険者とは一線を画す合理主義の物語。追放を前向きに捉え、自らの手で自由を掴む彼の成長と活躍をお楽しみに! この作品は「カクヨム」様にも掲載しています。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

処理中です...