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079:孤児達の戦い1
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翌日、僕達は少し時間を遅めに噴水広場に集合した。
時間を遅らせたのは孤児院の朝は色々忙しいので、年長者三人が一度に抜けてしまうと廻らないという訳があった。
しかし、沢山の探索者が集う朝の時間帯に子供達がうろうろしていれば、目立つだろうし、揉め事に巻き込まれる可能性もあった。
(避けられるなら、余計な波風は立てないほうかいいよね)
ある程度、育成が進めば、自力で切り抜けられるくらいの力は身に付けられるだろうと思われた。
(普通の子供達ならまだ大人の庇護に頼る年齢なんだけどな……)
年長組三人はとてもしっかりしていて、常に大人の世界に関わっていこうとする姿勢がみられる。
早く大人になりたいと考えてのいるのがよくわかるのだ。それを僕は止めようとは思わない。
だから理不尽な大人の力に対抗出来るだけの力を、身に付けられるよう手助けしようと思ったのだ。
僕は集団の一番後ろを歩いている。先頭はサラで四人を前後から見守る形になる。
しかし、先頭のサラと中年の衛兵が刻印の確認後、少し揉めているようだ
「ギルドは認めてくれた。それで問題無いのではなくて?」サラが何時もの調子で対応している。
「そうかも知れないが、その子はいくら何でも幼すぎるんじゃ無いですか? うちの娘より幼いようだし……」
中年の衛兵がどうやらキャロの事を心配してダンジョン行きを思い止まらせようとしているみたいだ。
僕はこの二人にはある程度事情を打ち明けたほうが、今後この四人だけでダンジョンに行く事になっても問題が少ないだろうと思った。
僕は衛兵達に近づいて「すいません、ここだけの話にして貰いたいんですが……」
「ああ、お前さんも付き添いか……そこのエルフさんと二人もいれば滅多なことは起こらんと思うがな……それで話とは?」
中年の衛兵は純粋に心配してくれているだけなのは、普段の言動から察せられた。
「その子は加護持ちです。この件はギルドも了解済みですが、探索者の能力として秘匿事項として下さい。それから、子供達ばかりの集団なのは、この子達が孤児院の者だからです」
「ユーリ!」サラが非難の声をあげた。サラからすれば説明する必要も無い事を僕が話し出したので、驚いたに違いない。
「いや、待ってくれエルフのお嬢さん、彼を責めないでやってくれ。俺達を信頼して話してくれたんだ、この件はここだけの話だ。お前もいいな!」
中年の衛兵が若い相棒に声をかけた。加護と聞いて納得してくれたみたいだ。
「先輩、分かってますよ! 先輩こそ家族にも秘密ですからね!」
若い衛兵は何時も陽気な感じだが、不思議と軽薄な感じはしない。その事が却って彼に対しての信頼感を上げている気がした。
「そうだな、お前の言う通りだな……気を付けよう」中年衛兵の真剣な言葉に「先輩! 固いっすよ」若い衛兵の言葉で、その場の皆も笑いだした。
サラも「ガザフの上層部はどうか知らないけど、現場担当者は信用出来そうね、あのギルドの担当してくれた無表情の彼女も、信頼出来そうに思えたわ」
(担当者マリアさんなんだな……)
無表情なマリアさんの前に座るキャロを思い浮かべ、吹き出しそうになっていると……
「話もついたようだし、さっさと行くわよ!」気合い十分のサラがどんどん進んでいった。
キャロが衛兵の二人に向かって「いってきます!」と元気に挨拶している。
「ああ、気をつけてな」「頑張れよ!」衛兵二人も嬉しそうに返礼している。
その声を背に僕達はダンジョン一層に降りていくのだった。
時間を遅らせたのは孤児院の朝は色々忙しいので、年長者三人が一度に抜けてしまうと廻らないという訳があった。
しかし、沢山の探索者が集う朝の時間帯に子供達がうろうろしていれば、目立つだろうし、揉め事に巻き込まれる可能性もあった。
(避けられるなら、余計な波風は立てないほうかいいよね)
ある程度、育成が進めば、自力で切り抜けられるくらいの力は身に付けられるだろうと思われた。
(普通の子供達ならまだ大人の庇護に頼る年齢なんだけどな……)
年長組三人はとてもしっかりしていて、常に大人の世界に関わっていこうとする姿勢がみられる。
早く大人になりたいと考えてのいるのがよくわかるのだ。それを僕は止めようとは思わない。
だから理不尽な大人の力に対抗出来るだけの力を、身に付けられるよう手助けしようと思ったのだ。
僕は集団の一番後ろを歩いている。先頭はサラで四人を前後から見守る形になる。
しかし、先頭のサラと中年の衛兵が刻印の確認後、少し揉めているようだ
「ギルドは認めてくれた。それで問題無いのではなくて?」サラが何時もの調子で対応している。
「そうかも知れないが、その子はいくら何でも幼すぎるんじゃ無いですか? うちの娘より幼いようだし……」
中年の衛兵がどうやらキャロの事を心配してダンジョン行きを思い止まらせようとしているみたいだ。
僕はこの二人にはある程度事情を打ち明けたほうが、今後この四人だけでダンジョンに行く事になっても問題が少ないだろうと思った。
僕は衛兵達に近づいて「すいません、ここだけの話にして貰いたいんですが……」
「ああ、お前さんも付き添いか……そこのエルフさんと二人もいれば滅多なことは起こらんと思うがな……それで話とは?」
中年の衛兵は純粋に心配してくれているだけなのは、普段の言動から察せられた。
「その子は加護持ちです。この件はギルドも了解済みですが、探索者の能力として秘匿事項として下さい。それから、子供達ばかりの集団なのは、この子達が孤児院の者だからです」
「ユーリ!」サラが非難の声をあげた。サラからすれば説明する必要も無い事を僕が話し出したので、驚いたに違いない。
「いや、待ってくれエルフのお嬢さん、彼を責めないでやってくれ。俺達を信頼して話してくれたんだ、この件はここだけの話だ。お前もいいな!」
中年の衛兵が若い相棒に声をかけた。加護と聞いて納得してくれたみたいだ。
「先輩、分かってますよ! 先輩こそ家族にも秘密ですからね!」
若い衛兵は何時も陽気な感じだが、不思議と軽薄な感じはしない。その事が却って彼に対しての信頼感を上げている気がした。
「そうだな、お前の言う通りだな……気を付けよう」中年衛兵の真剣な言葉に「先輩! 固いっすよ」若い衛兵の言葉で、その場の皆も笑いだした。
サラも「ガザフの上層部はどうか知らないけど、現場担当者は信用出来そうね、あのギルドの担当してくれた無表情の彼女も、信頼出来そうに思えたわ」
(担当者マリアさんなんだな……)
無表情なマリアさんの前に座るキャロを思い浮かべ、吹き出しそうになっていると……
「話もついたようだし、さっさと行くわよ!」気合い十分のサラがどんどん進んでいった。
キャロが衛兵の二人に向かって「いってきます!」と元気に挨拶している。
「ああ、気をつけてな」「頑張れよ!」衛兵二人も嬉しそうに返礼している。
その声を背に僕達はダンジョン一層に降りていくのだった。
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