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069:エルフィーデから来た少女3

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 狩り場では、精霊樹で作られた[複合弓]に持ち替えたサラが、ルピナスとディーネと共に蜂狩りに奮闘している。

「ルピナス釣ってきて、ディーネ! 私が二匹目を狙うと同時に三匹目を攻撃する準備を」

 いつの間にか、連携を取って戦い始めている。サラの持ち替えた弓は連射性能は変わらないようだが、射程距離と威力が黒魔弓よりかなり劣るようだ。

 効率良く狩るには、連携するのが一番だとサラも気がついたみたいで、積極的に二体に指示を出している。

 僕の意思を理解してくれている二体も、自然にサラの指示に従っているようだ。

「精霊樹の弓は使用する本人の能力に左右される武器なのよ~、射程距離はロングボウの黒魔弓には勝てないけど、威力だけならサラ本人が成長すれば十分、追い付けるわ」

 説明してくれるフィーネが、精霊樹の弓を贔屓にしているように感じるのは、あの弓がフィーネの精霊樹の枝から作られた物なのかもしれない。

「あの弓はフィーネの精霊樹から?」

「そうよ~、美しいでしょ! でも装填式を否定するつもりはないのよ~、まだ未熟なサラを、良く補って成長の手助けをしてくれているわ~」

 戦っているサラを見ていても分かる、連射で矢を放っても魔力循環に淀みが感じられない。

 恐らく装填具が使用者の負担を軽減する形で、魔石の魔力を使ってるのだろう。思っていたより高度な魔道具らしい。

「領営工房で作られている物も同じ物?」素材は劣化品でも同じ物なら成長と共に強くなれる、良い武器に思われた。

「う~ん、別物と言ってもいいかしら~、エルフィーデと武器に対する考え方の違い? いえ、この武器に限ってかしら~」フィーネは曖昧な返答をした後、話を続けた。

「領営工房で作られている物は、大量生産が効いて、たとえ魔力操作が出来なくても、誰でも一定の力を簡単に発揮出来る魔道具ね~。弓の形をしているのは、弓の仕組みを使って射程距離を補うつもりかしら」

 どうやら僕の思っていた物とは違ったようだ。

「ガザフは前回の遠征の失敗がかなり堪えているみたいで、次の遠征は失敗は許されないとかなり意気込んでるようよ~。今まで、騎士団の装備と練度の高さに探索者の露払いで悠然と攻略してきたでしょ? その方法が通用しなくて焦ってるみたいね~」

 (査察団のミリアさんに救われた事も、噂になってるみたいだし。面目丸潰れだったのかも)

「これはまだ秘密なんだけど~、次の遠征では、[コンポジット・ボウ]と[アイアンアーマー]そして[マジックポーチ]を支給する条件で、素人同然の臨時兵を大量に雇って物量で攻略を成功させるつもりのようよ~」

 その恐ろしい計画にガザフの恐ろしさを改めて感じたのだった。
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