64 / 213
064:蜂狩り解禁2
しおりを挟む
夕食の時間が始まる少し前に、猪鹿亭に戻ってみると、ルナとキャロの二人は居なかった。その替わり、見知らぬ子供達が四人、食堂の隅のテーブルで煮込みを食べていた。
猪鹿亭の食堂は夕食時しか営業していないので、ルナ達以外に子供の姿を見る事は少ないのだ。
不思議そうな僕の視線に気が付いたラナさんが、浄化魔法を掛けながら事情を説明してくれた。
「孤児院の食事事情が悪いみたいだから、何か出来ないかと思って、ささやかだけど、一日四人限定で食事にご招待する事にしたのよ」
恐らく、ルナとキャロの食事の姿から、鋭いラナさんが気が付いたに違いない。
「ありがとうございます、ラナさん」自然に僕の口から、お礼の言葉が滑りでた。
「あら、何故ユーリちゃんからお礼を言われるのかしら? まだ子供と言っても良い貴方が、ウサギを寄付してるのに、大人の私達が何もしない訳にはいかないわよ」
ラナさんにしては珍しく、少し強い口調でそう言った。
「それから、パン屋のミレさんから子供達のお土産用に蜂蜜の焼き菓子を頂いたわ、どうやら蜂蜜の騒ぎも無事収まったみたいね」
(ラナさんは知り合いにも孤児院の窮状を伝えているみたいだな……)
色々な方面に影響を与えた、今回の騒動も短期間で収束した事に、皆ほっとしているそうだ。
「短期間で収束させる為に、雇っていたクランに狩り場で蜂蜜を集めさせたのは良いとしても、やり方が強引過ぎて却って評判を落としたみたいね」
(例の狩り場占有の件だな……ギルドからも苦情を受けたみたいだけど)
僕としては、狩りの予定を狂わされたくらいで、ディーネとの出逢いの切っ掛けになったこの出来事は悪い事ばかりではなかった。
「明日は早速、蜂蜜狩りしてきます!」僕の元気な宣言に、ラナさんは微笑みながら
「そういう所は、やっぱり子供ね」と何処かで聞いたような台詞で、少し呆れたような、感想を述べられてしまったのだった。
◻ ◼ ◻
翌日になり、早速、二層の狩り場に到着した僕は、本当のこの狩り場の姿を目の当たりにする事になった。
厄介な狩り場だとこの前、ここでクラン風の牙に苦情を言っていた探索者リーダーらしき男が、言っていた通りの状況が広がっていた。
「これは……普通だったら尻込みするのも分かるな」僕がそう一人呟いてしまったのも無理は無かった。
僕を待ち受けていたのは、広大な花畑にひしめくような、蜂の群れだったからだ。
(沢山の探索者がいたのは、人数でごり押しする為だったんだな)
もし僕がガザフに来たばかりの状態で、ここに一人で来ていたとしたら、諦めてウサギ狩りに戻っていただろう光景が広がっていた。
でも今の僕は少し違った「さて、始めますか!」と宣言するように声を挙げると、召喚した二体の仲間と共に真っ直ぐ狩り場に向かっていくのだった。
猪鹿亭の食堂は夕食時しか営業していないので、ルナ達以外に子供の姿を見る事は少ないのだ。
不思議そうな僕の視線に気が付いたラナさんが、浄化魔法を掛けながら事情を説明してくれた。
「孤児院の食事事情が悪いみたいだから、何か出来ないかと思って、ささやかだけど、一日四人限定で食事にご招待する事にしたのよ」
恐らく、ルナとキャロの食事の姿から、鋭いラナさんが気が付いたに違いない。
「ありがとうございます、ラナさん」自然に僕の口から、お礼の言葉が滑りでた。
「あら、何故ユーリちゃんからお礼を言われるのかしら? まだ子供と言っても良い貴方が、ウサギを寄付してるのに、大人の私達が何もしない訳にはいかないわよ」
ラナさんにしては珍しく、少し強い口調でそう言った。
「それから、パン屋のミレさんから子供達のお土産用に蜂蜜の焼き菓子を頂いたわ、どうやら蜂蜜の騒ぎも無事収まったみたいね」
(ラナさんは知り合いにも孤児院の窮状を伝えているみたいだな……)
色々な方面に影響を与えた、今回の騒動も短期間で収束した事に、皆ほっとしているそうだ。
「短期間で収束させる為に、雇っていたクランに狩り場で蜂蜜を集めさせたのは良いとしても、やり方が強引過ぎて却って評判を落としたみたいね」
(例の狩り場占有の件だな……ギルドからも苦情を受けたみたいだけど)
僕としては、狩りの予定を狂わされたくらいで、ディーネとの出逢いの切っ掛けになったこの出来事は悪い事ばかりではなかった。
「明日は早速、蜂蜜狩りしてきます!」僕の元気な宣言に、ラナさんは微笑みながら
「そういう所は、やっぱり子供ね」と何処かで聞いたような台詞で、少し呆れたような、感想を述べられてしまったのだった。
◻ ◼ ◻
翌日になり、早速、二層の狩り場に到着した僕は、本当のこの狩り場の姿を目の当たりにする事になった。
厄介な狩り場だとこの前、ここでクラン風の牙に苦情を言っていた探索者リーダーらしき男が、言っていた通りの状況が広がっていた。
「これは……普通だったら尻込みするのも分かるな」僕がそう一人呟いてしまったのも無理は無かった。
僕を待ち受けていたのは、広大な花畑にひしめくような、蜂の群れだったからだ。
(沢山の探索者がいたのは、人数でごり押しする為だったんだな)
もし僕がガザフに来たばかりの状態で、ここに一人で来ていたとしたら、諦めてウサギ狩りに戻っていただろう光景が広がっていた。
でも今の僕は少し違った「さて、始めますか!」と宣言するように声を挙げると、召喚した二体の仲間と共に真っ直ぐ狩り場に向かっていくのだった。
0
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。



リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる