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059:躍進1
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今日も僕は、いつもと変わること無く、ダンジョン一層に降りて来ていた。
昨日、駆け出し探索者には手に余るような話を沢山聞かされて、それまで生活の糧を得る場所だったダンジョンが、少し恐ろしい場所にも思えた。
それでも人というのは、どこか牧歌的と言ってもいい草原エリアの景色を眺めていると、実際に目の前に危機が迫ってみなければ、いつまでも危機感など持ってはいられない。
ましてや平凡な少年の僕が、これからの狩りに気をとられてしまうのも無理もない事だった。
地底の奥深く、まだ誰も到達した事の無い[未到達領域]と呼ばれる場所に日々、濃密な魔素が蓄積されていってるとしても……
あの恐ろしい、まるで予言のような日記の事は頭の隅に追いやり、昨日二体に増えた召喚精霊を「ルピナス、ディーネ!」と元気よく呼び出した僕は、いつもの目印にしている狩り場の木を目指して歩き出したのだった。
◻ ◼ ◻
狩り場に到着し木の側を確認すると、二匹のレッサーラビットが草影に隠れるようにしているのが見えた。
僕とディーネは草むらの影に素早く隠れ、上空にいるルピナスに「ルピナス」と囁くように指示を出し、釣り役を命じた。
軽く「ピッ」と鳴いて、近くにいるレッサーラビットの後ろに素早く回り込んだルピナスは【風刃】を放ち、僕達が隠れている場所に誘導してくる。
ルピナスを消した事で、敵を見失って呆然と放心状態のレッサーラビットにとどめを刺すべく僕が草むらから飛び出した瞬間だった……
僕の隣で弓の準備をしていたディーネから【スプラッシュアロー】が放たれた。
「ギィ、ギャッ」断末魔の悲鳴を上げレッサーラビットは息絶えた。僕は何もしていないのに仕留めた事に、若干の罪悪感を感じつつも、精霊の力も自分の力の一部だと割りきって考える事にした。
(感謝の気持ちは忘れないようにしないと、精霊達は僕の新しい家族なんだから……)
仕留めた獲物に近づき魔素吸収を始めると、同じく側にきたディーネが獲物の首筋の傷口に手をかざしている事に気がついた。
傷口からはいつもより勢いよく血が流れ出している……⁉
(恐らく水属性の力で血の流れを操っている、もしかして闇属性の力も影響してる?)
シルフィーに妖魔コロボックルの頃の闇属性の適性が残っているかもしれないと言われていたのだ。
真相は分からないが、今の僕には役に立つ能力のようだった。
魔素吸収を終え、もう一匹を確認すると警戒状態なのは耳の動きを見れば明らかだった。
(前回と同じなら警戒状態からの反撃が来る筈だな……)
「僕が引き付けるから、ディーネは隙を見て攻撃して!」
僕はルピナスに釣りの指示を出すと同時に、ディーネにそう言った。
「ん!」ディーネが了解したように頷き、弓の準備を始めた。
予想した通り、ルピナスを消した状態でもレッサーラビットの警戒状態は変わらないらしく、接近した僕に即座に反撃してきた。
来るのが分かっていれば、対処はそう難しく無い。僕は攻撃を弾きながらルピナスに攻撃指示を出し、牽制攻撃をさせた。
牽制攻撃により無理な動きで後ろを向いたレッサーラビットの首筋にディーネの【スプラッシュアロー】が命中した。
丁度、前回の僕の止めの攻撃をディーネが代わりに行った形だった。二匹を一撃で仕留めたディーネの攻撃力は僕と同等なようだった。
釣り役、攻撃役そして盾役、ある意味、理想的なパーティーが完成した瞬間だった。
昨日、駆け出し探索者には手に余るような話を沢山聞かされて、それまで生活の糧を得る場所だったダンジョンが、少し恐ろしい場所にも思えた。
それでも人というのは、どこか牧歌的と言ってもいい草原エリアの景色を眺めていると、実際に目の前に危機が迫ってみなければ、いつまでも危機感など持ってはいられない。
ましてや平凡な少年の僕が、これからの狩りに気をとられてしまうのも無理もない事だった。
地底の奥深く、まだ誰も到達した事の無い[未到達領域]と呼ばれる場所に日々、濃密な魔素が蓄積されていってるとしても……
あの恐ろしい、まるで予言のような日記の事は頭の隅に追いやり、昨日二体に増えた召喚精霊を「ルピナス、ディーネ!」と元気よく呼び出した僕は、いつもの目印にしている狩り場の木を目指して歩き出したのだった。
◻ ◼ ◻
狩り場に到着し木の側を確認すると、二匹のレッサーラビットが草影に隠れるようにしているのが見えた。
僕とディーネは草むらの影に素早く隠れ、上空にいるルピナスに「ルピナス」と囁くように指示を出し、釣り役を命じた。
軽く「ピッ」と鳴いて、近くにいるレッサーラビットの後ろに素早く回り込んだルピナスは【風刃】を放ち、僕達が隠れている場所に誘導してくる。
ルピナスを消した事で、敵を見失って呆然と放心状態のレッサーラビットにとどめを刺すべく僕が草むらから飛び出した瞬間だった……
僕の隣で弓の準備をしていたディーネから【スプラッシュアロー】が放たれた。
「ギィ、ギャッ」断末魔の悲鳴を上げレッサーラビットは息絶えた。僕は何もしていないのに仕留めた事に、若干の罪悪感を感じつつも、精霊の力も自分の力の一部だと割りきって考える事にした。
(感謝の気持ちは忘れないようにしないと、精霊達は僕の新しい家族なんだから……)
仕留めた獲物に近づき魔素吸収を始めると、同じく側にきたディーネが獲物の首筋の傷口に手をかざしている事に気がついた。
傷口からはいつもより勢いよく血が流れ出している……⁉
(恐らく水属性の力で血の流れを操っている、もしかして闇属性の力も影響してる?)
シルフィーに妖魔コロボックルの頃の闇属性の適性が残っているかもしれないと言われていたのだ。
真相は分からないが、今の僕には役に立つ能力のようだった。
魔素吸収を終え、もう一匹を確認すると警戒状態なのは耳の動きを見れば明らかだった。
(前回と同じなら警戒状態からの反撃が来る筈だな……)
「僕が引き付けるから、ディーネは隙を見て攻撃して!」
僕はルピナスに釣りの指示を出すと同時に、ディーネにそう言った。
「ん!」ディーネが了解したように頷き、弓の準備を始めた。
予想した通り、ルピナスを消した状態でもレッサーラビットの警戒状態は変わらないらしく、接近した僕に即座に反撃してきた。
来るのが分かっていれば、対処はそう難しく無い。僕は攻撃を弾きながらルピナスに攻撃指示を出し、牽制攻撃をさせた。
牽制攻撃により無理な動きで後ろを向いたレッサーラビットの首筋にディーネの【スプラッシュアロー】が命中した。
丁度、前回の僕の止めの攻撃をディーネが代わりに行った形だった。二匹を一撃で仕留めたディーネの攻撃力は僕と同等なようだった。
釣り役、攻撃役そして盾役、ある意味、理想的なパーティーが完成した瞬間だった。
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