55 / 213
055:ダンジョンの役割1
しおりを挟む
「私はまだ生まれてなかったから詳しくは知らないけど、三十年前の、この大陸中央にあたる森林地帯は木々はあるけど土地の痩せた不毛の大地と呼ばれて、周辺国からも見捨てられたような場所だったらしいの」
僕にはこの話の内容が実感として理解出来た。僕の村の土地がまさに不毛の大地だったからだ。
「土地が荒れるのは濃い魔素に原因があるらしいの。森林の木々は精霊樹程では無いけど大気中の魔素を吸収するの。でも浄化する様な能力は無いから周辺に魔素溜まりが発生し、土地が徐々に荒れていったようね」
僕は村の土地が荒れている原因を、まさか知る事になるとは思わなかった。僕が物心ついた時から、土地は荒れているのが普通で原因など考えた事もなかったのだ。
「周辺国からは不毛の大地と蔑まれているけど、森林が魔素を一身に引き受けているお陰で無事でいられたと言えるのよ。でも、それもいつしか限界が来て周辺国の土地も徐々に荒れだした時、ダンジョンが発見されたの」
僕は住んでいた森の犠牲を悲しんだ、そして身勝手な周辺国に少し腹を立てた。
(知らない事だから仕方ないとはいえ、何て愚かなんだろう……)
「三十年前に突然、森林の中央地帯であるこの場所に白く輝く柱が立ったの。それで調査に派遣された調査隊がこのダンジョンの入り口を発見したのよ」
柱の事は、じいちゃんからも、よく聞かされたから知っている。何週間も輝きが止まず村では、この世の終わりだと騒ぎ出す人もいたらしい。
「周辺各国は色めき立ったわ、調査の結果、ダンジョンが資源の宝庫だと分かったからよ。そしてダンジョンの管理について話し合いが持たれたの。議論は紛糾し、各国を巻き込んでの戦争にまで発展しかけた時、利権争いには参加しなかった、エルフィーデ女王国からある提案がなされたの」
「この地に独立した自由交易都市を各国共同で作るという案よ。全ての国が交易の形で恩恵を受けられる。都市管理は第一発見者の一人でもあるガザフ辺境伯をエルフィーデ女王国が推薦したの。各国もこの譲歩案に賛同したわ」
「よく賛同しましたね。独占したがる国が出そうだけど」
人種の欲深さをそれなりに理解している僕は不思議でならなかった。
「そうね、最も早く調査団を派遣し、第一発見者と言っても良いエルフィーデ女王国がダンジョンの管理という巨大な利権を放棄したのも大きいけど……人種の国々はエルフィーデ女王国の力を秘かに恐れていたのよ」
シルフィーは思い出すように考え込み、そして話を再開した。
(じいちゃんも、よく話してる最中に考え込んでたな……)
僕は少し懐かしく感じていた。
「過去に野心的な強国の王が、エルフィーデ女王国に手を出して大敗し、その後、衰退してしまったの。エルフィーデ女王国側が人種の国へ侵略してくる事は無かったので、刺激したくなかったというのもあるかしら」
この意見はシルフィーの個人的な考えなのかもしれない。自信ありげにウンウンと頷いている。
「とにかく消極的にだけど各国は賛同したの。魔素で疲弊した状態での戦争は今は避けたいという本音もあったでしょうね。そんな経緯で、今のような形になったのよ」
話を終えて達成感に浸っている雰囲気のシルフィーに僕は、
「あの……それでダンジョンの役割って……」と申し訳なさそうに尋ねたのだった。
僕にはこの話の内容が実感として理解出来た。僕の村の土地がまさに不毛の大地だったからだ。
「土地が荒れるのは濃い魔素に原因があるらしいの。森林の木々は精霊樹程では無いけど大気中の魔素を吸収するの。でも浄化する様な能力は無いから周辺に魔素溜まりが発生し、土地が徐々に荒れていったようね」
僕は村の土地が荒れている原因を、まさか知る事になるとは思わなかった。僕が物心ついた時から、土地は荒れているのが普通で原因など考えた事もなかったのだ。
「周辺国からは不毛の大地と蔑まれているけど、森林が魔素を一身に引き受けているお陰で無事でいられたと言えるのよ。でも、それもいつしか限界が来て周辺国の土地も徐々に荒れだした時、ダンジョンが発見されたの」
僕は住んでいた森の犠牲を悲しんだ、そして身勝手な周辺国に少し腹を立てた。
(知らない事だから仕方ないとはいえ、何て愚かなんだろう……)
「三十年前に突然、森林の中央地帯であるこの場所に白く輝く柱が立ったの。それで調査に派遣された調査隊がこのダンジョンの入り口を発見したのよ」
柱の事は、じいちゃんからも、よく聞かされたから知っている。何週間も輝きが止まず村では、この世の終わりだと騒ぎ出す人もいたらしい。
「周辺各国は色めき立ったわ、調査の結果、ダンジョンが資源の宝庫だと分かったからよ。そしてダンジョンの管理について話し合いが持たれたの。議論は紛糾し、各国を巻き込んでの戦争にまで発展しかけた時、利権争いには参加しなかった、エルフィーデ女王国からある提案がなされたの」
「この地に独立した自由交易都市を各国共同で作るという案よ。全ての国が交易の形で恩恵を受けられる。都市管理は第一発見者の一人でもあるガザフ辺境伯をエルフィーデ女王国が推薦したの。各国もこの譲歩案に賛同したわ」
「よく賛同しましたね。独占したがる国が出そうだけど」
人種の欲深さをそれなりに理解している僕は不思議でならなかった。
「そうね、最も早く調査団を派遣し、第一発見者と言っても良いエルフィーデ女王国がダンジョンの管理という巨大な利権を放棄したのも大きいけど……人種の国々はエルフィーデ女王国の力を秘かに恐れていたのよ」
シルフィーは思い出すように考え込み、そして話を再開した。
(じいちゃんも、よく話してる最中に考え込んでたな……)
僕は少し懐かしく感じていた。
「過去に野心的な強国の王が、エルフィーデ女王国に手を出して大敗し、その後、衰退してしまったの。エルフィーデ女王国側が人種の国へ侵略してくる事は無かったので、刺激したくなかったというのもあるかしら」
この意見はシルフィーの個人的な考えなのかもしれない。自信ありげにウンウンと頷いている。
「とにかく消極的にだけど各国は賛同したの。魔素で疲弊した状態での戦争は今は避けたいという本音もあったでしょうね。そんな経緯で、今のような形になったのよ」
話を終えて達成感に浸っている雰囲気のシルフィーに僕は、
「あの……それでダンジョンの役割って……」と申し訳なさそうに尋ねたのだった。
0
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説

ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
Bランクダンジョンがある町に住む主人公のカナンは、茶色い髪の二十歳の男冒険者だ。地属性の魔法を使い、剣でモンスターと戦う。冒険者になって二年の月日が過ぎたが、階級はA〜Fまである階級の中で、下から二番目のEランクだ。
カナンにはAランク冒険者の姉がいて、姉から貰った剣と冒険者手帳の知識を他の冒険者達に自慢していた。当然、姉の七光りで口だけのカナンは、冒険者達に徐々に嫌われるようになった。そして、一年半をかけて完全孤立状態を完成させた。
それから約半年後のある日、別の町にいる姉から孤児の少女を引き取って欲しいと手紙が送られてきた。その時のカナンはダンジョンにも入らずに、自宅に引きこもっていた。当然、やって来た少女を家から追い出すと決めた。
けれども、やって来た少女に冒険者の才能を見つけると、カナンはダンジョンに行く事を決意した。少女に短剣を持たせると、地下一階から再スタートを始めた。
コーデリア魔法研究所
tiroro
ファンタジー
孤児院を出て、一人暮らしを始めた15歳の少女ミア。
新たな生活に胸を躍らせる中、偶然出会った魔導士に助けられ、なりゆきで魔法研究所で働くことになる。
未知の世界で魔法と向き合いながら、自分の力で未来を切り拓こうと決意するミアの物語が、ここから始まる。
追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない
君山洋太朗
ファンタジー
異世界のヨーロッパ風国家「グランゼリア王国」を舞台にした合理主義冒険ファンタジー。
主人公レオン・クラウゼンは、冷静な判断と効率重視の性格を持つ冒険者。彼の能力「価値転換(バリュー・シフト)」は物や素材の価値を再構築するもので、戦闘向きではないが経済的な可能性を秘めている。パーティーから追放されたレオンは、自身の能力を活かし「FIRE(経済的自立と早期退職)」を目指す人生設計を実行に移す。
彼が一人で挑むのは、廃鉱での素材収集、不動産投資、商業ネットワークの構築といった経済活動。次々と成功を収める一方で、魔獣の襲撃や元パーティーとの因縁など、様々な試練が彼を待ち受けることになる。
「戦わずして生き抜く」レオンが描く、冒険者とは一線を画す合理主義の物語。追放を前向きに捉え、自らの手で自由を掴む彼の成長と活躍をお楽しみに!
この作品は「カクヨム」様にも掲載しています。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる