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045:蜂蜜の依頼3
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時刻も遅くなったので、ルナにウサギを渡し帰らせる事になった。本当は送ってあげたかったのだけど、お客もあったので
シルフィーが「私がついてるから問題ない!」と請け負ってくれ、安心して送り出す事ができた。
無事に着いた事も報告してくれるらしく、精霊樹のある場所と契約者の間なら簡単に行き来できるらしい。
(精霊って本当に凄いな、エルフィーデ女王国には精霊信仰というものがあるらしいけど)
浮遊精霊でしかないルピナスの、狩り場での優秀さを知ってからは、高位精霊を信仰するエルフ達の気持ちが少し理解できた。
二人を送り出して話を続けようとする僕に、立ち話もなんだと云うことで、ラナさんはお茶を淹れてくれるらしい。
夕食前の時間なので適当に空いているテーブル席に向かい合って座り、落ち着くとミレさんの表情からも、緊張の表情が薄れたようだ。
僕を相手に緊張させるのも申し訳ない気がしたので、
「ラナさんとお知り合いみたいですね」少し世間話的な会話を振ってみた。
「あ、ええ、そうです。猪鹿亭には毎日、娘がパンと焼き菓子を納めに来ています」
僕は今回の件の依頼主が、本当は誰なのか予想がついてきた
「僕もそのパン、いつも美味しく頂いてます。焼き菓子もこの前、頂きましたよ。さっき迄いたキャロっていう猫獣人族の子供が、夢中になってましたよ」
僕はキャロの夢中になっている姿を思い出し、自然に笑顔になっていた。
「そうですね、子供はああいった甘い焼き菓子が大好きですから。うちの娘も夢中なんです、それで困った事に……」
話が本題に移りそうになったタイミングで、ラナさんがお茶を持って戻ってきた。
「そういえば、今朝ミナちゃんが焼き菓子がもう食べられないかも知れないって言ってたけど、蜂蜜が手に入らないそうね?」
そう言いながら、僕の隣に座った。当然、お茶のカップも三つあった。
(お話に参加する気、満々なんですね……)
「そうなんです。今日、開店したローダンヌ商会直営の専門カフェがガザフ中の蜂蜜農家から買い占めてしまったようなの」
(僕には関係ないと思ってたんだけどな、世の中どこでどう繋がっているか分かったもんじゃないな)
僕がそんな事を考えていたが、話には続きがあるようだった
「ローダンヌ商会の説明では地方の農村からの蜂蜜輸送が一部上手くいかなかった為の暫定措置だって説明はあったんですけど、一部ではライバル商会の妨害じゃないかって噂されてますの」
何だか物騒な話しになって来たと思いながらも
「今日、探索の帰り道に開店したお店を見かけましたけど大盛況でしたし、妨害だったとしても失敗だったという事なんでしょうね」
僕がそんな意見を言うと、黙って話を聞いてるいたラナさんが
「あら、ああいう一流の商会は評判を気にするものじゃないかしら? 妨害されたくらいで周囲に買い占めで迷惑をかけるようじゃ、ローダンヌ商会の危機管理が問われるでしょ? それに妨害じゃないなら尚更、ローダンヌは予定した調達もまともに出来ないのかという評判が立つわね」
このラナさんの意見に、ミレさんも頷き
「既に一部の商会からは、今回の調達失敗で周囲に迷惑がかかっている事に対する非難や、実行力を懸念するような声も挙がってるみたい。だけど実行力云々は店の成功で打ち消せてるみたいね。まあ私達からすれば、迷惑だし勝手にして欲しい所だけどね」
ミレさんはちょっと皮肉な笑みを浮かべている。
「あら、あなたにしては随分皮肉なのね、まあ同感だけど」ラナさんは笑ってそう言った。
「そうね、ごめんなさい。性格悪くなりそうだわ……いけない! ここに来た理由を忘れる所だったわ」
ここに来て、やっと本題に入れるようだった。
シルフィーが「私がついてるから問題ない!」と請け負ってくれ、安心して送り出す事ができた。
無事に着いた事も報告してくれるらしく、精霊樹のある場所と契約者の間なら簡単に行き来できるらしい。
(精霊って本当に凄いな、エルフィーデ女王国には精霊信仰というものがあるらしいけど)
浮遊精霊でしかないルピナスの、狩り場での優秀さを知ってからは、高位精霊を信仰するエルフ達の気持ちが少し理解できた。
二人を送り出して話を続けようとする僕に、立ち話もなんだと云うことで、ラナさんはお茶を淹れてくれるらしい。
夕食前の時間なので適当に空いているテーブル席に向かい合って座り、落ち着くとミレさんの表情からも、緊張の表情が薄れたようだ。
僕を相手に緊張させるのも申し訳ない気がしたので、
「ラナさんとお知り合いみたいですね」少し世間話的な会話を振ってみた。
「あ、ええ、そうです。猪鹿亭には毎日、娘がパンと焼き菓子を納めに来ています」
僕は今回の件の依頼主が、本当は誰なのか予想がついてきた
「僕もそのパン、いつも美味しく頂いてます。焼き菓子もこの前、頂きましたよ。さっき迄いたキャロっていう猫獣人族の子供が、夢中になってましたよ」
僕はキャロの夢中になっている姿を思い出し、自然に笑顔になっていた。
「そうですね、子供はああいった甘い焼き菓子が大好きですから。うちの娘も夢中なんです、それで困った事に……」
話が本題に移りそうになったタイミングで、ラナさんがお茶を持って戻ってきた。
「そういえば、今朝ミナちゃんが焼き菓子がもう食べられないかも知れないって言ってたけど、蜂蜜が手に入らないそうね?」
そう言いながら、僕の隣に座った。当然、お茶のカップも三つあった。
(お話に参加する気、満々なんですね……)
「そうなんです。今日、開店したローダンヌ商会直営の専門カフェがガザフ中の蜂蜜農家から買い占めてしまったようなの」
(僕には関係ないと思ってたんだけどな、世の中どこでどう繋がっているか分かったもんじゃないな)
僕がそんな事を考えていたが、話には続きがあるようだった
「ローダンヌ商会の説明では地方の農村からの蜂蜜輸送が一部上手くいかなかった為の暫定措置だって説明はあったんですけど、一部ではライバル商会の妨害じゃないかって噂されてますの」
何だか物騒な話しになって来たと思いながらも
「今日、探索の帰り道に開店したお店を見かけましたけど大盛況でしたし、妨害だったとしても失敗だったという事なんでしょうね」
僕がそんな意見を言うと、黙って話を聞いてるいたラナさんが
「あら、ああいう一流の商会は評判を気にするものじゃないかしら? 妨害されたくらいで周囲に買い占めで迷惑をかけるようじゃ、ローダンヌ商会の危機管理が問われるでしょ? それに妨害じゃないなら尚更、ローダンヌは予定した調達もまともに出来ないのかという評判が立つわね」
このラナさんの意見に、ミレさんも頷き
「既に一部の商会からは、今回の調達失敗で周囲に迷惑がかかっている事に対する非難や、実行力を懸念するような声も挙がってるみたい。だけど実行力云々は店の成功で打ち消せてるみたいね。まあ私達からすれば、迷惑だし勝手にして欲しい所だけどね」
ミレさんはちょっと皮肉な笑みを浮かべている。
「あら、あなたにしては随分皮肉なのね、まあ同感だけど」ラナさんは笑ってそう言った。
「そうね、ごめんなさい。性格悪くなりそうだわ……いけない! ここに来た理由を忘れる所だったわ」
ここに来て、やっと本題に入れるようだった。
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