上 下
41 / 213

041:青い鳥と共に4

しおりを挟む
 結果から言えば、ルピナスの案内に従ったのは正解のようだった。最初にレッサーラビットを狩った木の場所まで、帰りにかかった時間は、血抜きの待ち時間を除いても半分くらいかもしれない。

 最初は木の位置から検討をつけて飛んでいるのかとも思ったが、ルピナスが飛ぶルートは中継地点に使った木の側を通過せず、真っ直ぐ目的地に飛んでいくので、方向を分かっているとしか思えなかった。

「戻ってシルフィーがいたらルピナスの事、いろいろ確認してみたいな」

 昨日、キャロと契約したシルフィーはこれからは、いつもキャロと一緒にいる事になった。

 ルナが今日も作業場所を借りに来ていれば、キャロと一緒に猪鹿亭にいるはずだ。

 僕は、ルナに錬金術用の石臼の他にも、じいちゃんの使っていた錬金の作業台や、薬草について書かれた本、それから、僕がポーチに大量に持っていた薬草粉末を渡してある。

 薬草粉末は、じいちゃんが亡くなってから薬草畑に自生していた物を僕が天日干しを行い、石臼で粉末にして瓶に保存していたものだ。

 薬草粉末の代金は、ポーションが売れたら売上の一部で受け取る事になった。

 いろんな物を預ける僕に、困惑していたルナだったが、僕も装備を借りたりで人に助けられている事を説明すると、なんとか納得したようだった。

 本当のところは、じいちゃんが大切にしていた物を僕が使いたかったという想いもある。

 でも残念ながら僕には錬金術の適正属性が無かった、だから必要としているルナの役に立つなら、じいちゃんも喜ぶような気がしたのだ。

◻ ◼ ◻

 朝一番から狩りを始めたのとルピナスの助けで狩りも順調だったので、僕がダンジョンを出たのはまだ夕刻前だった。

 噴水広場は時間のせいか、まだ探索者の数はまばらだった。

 衛兵の一人が二匹のレッサーラビットを吊り下げた僕を見て「凄いじゃないか! 二匹も狩るなんてな! 」と驚いている。

 もう片方の衛兵も「この前もソロだから気になってんだが、まだ子供みたいな年齢だろうにウサギ狩りだったのか……薬草採取かと思ってたんだが……まあ余り無理はしないようにな」

「はい、わかりました! 気を付けます」僕は覚えられていた事を驚いたが、挨拶をして、その場を去った。

 探索者ギルドまで戻ると、今度は串焼き屋のおじさんが慌てて屋台から此方に来た。

「そのウサギ、お前さんが狩ったかい?」おじさんはたいそう驚いたようだった。

 僕はおじさんの勢いに少し気圧されながら「そうですが……どうかしましたか?」と答えた。

「あ、ああ、すまねえ! えらい勢いで詰め寄っちまって……お前さんそのウサギ、ギルドに納品するのかい? ……もしそうなら、俺の依頼を受けてくれ。ギルドには依頼済みだからさ!」

 僕はやっと話しが見えてきて、少しホッとしていた。えらい剣幕なので怒られるのかと思ったのだ……

 (たしか、依頼書出してたんだよね、おじさん)

「もちろん、かまいませんよ」僕は元々、三匹は納品するつもりだったのだ。どうせなら、知り合いに喜んで貰えるなら僕も嬉しいかった。

「すまねえ! 依頼書一枚の事で大騒ぎしちまって、俺の店の名前で依頼してある。[ウサギ串焼きのダン]て名前だ」

 (その名前でボア肉は売れないよね……屋台の絵もウサギだし……)

「助かるぜ、名前変えちまえばいいんだろうが、こちとら十年近くこの名前でやって来たからな……愛着もあるんだよ」

 僕はこれからもできるだけ頑張りますと約束して、ギルドに納品する為にその場を後にしたのだった。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

今日も聖女は拳をふるう

こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。 その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。 そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。 女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。 これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

異世界でもプログラム

北きつね
ファンタジー
 俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。  とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。  火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。  転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。  魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる! ---  こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。  彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。 注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。   実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。   第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...