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037:野良募集待ちの人々
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翌日、朝から僕は忙しかった。
ダンジョン探索の準備に余念がなかったからだが、今日から新しい装備での探索になるのだから確認作業にも気合いが入るのは仕方なかった。
昨日はあれから、新しい精霊術師の誕生を皆で喜びあった。特にその事を喜んだのはルナだった。
ルナは自分の身一つの他に何も持たないキャロの行く末をとても気にかけていたようだ。
同じ孤児といっても父親から多くの物を残して貰ったルナとは違うのだ、ルナならいずれ成長すれば、自立して何かを始めるのも容易だったからだ。
だが今は違う、キャロの契約したシルフィーは、二枚羽根の下級精霊だが、エルフのように神授の森での儀式を受けなければ精霊契約は出来ない。普通であれば、浮遊精霊から加護を貰えるだけでも十分幸運な事なのだ。
風の属精霊と契約すれば、攻守のバランスの良い精霊魔法が使えるので、キャロが成長すれば最悪、武器や防具が用意できなくてもウサギ狩りにはなれるかもしれない。
(……キャロは生まれは不幸だったかもしれないが、人の縁には恵まれているのかもしれないな)
そんな事を考えながら準備を終えた僕は、朝食を取る為に一階に降りて行くのだった。
◻ ◼ ◻
ダンジョン前の噴水広場は探索者でごった返していた。この前、来た時は昼前でみな出発した後だったのだ。
どうやら、集まった仲間との狩り場の打合せや、メンバーの募集を行っているようだ。
現地でメンバーを募集する事を [野良募集] と呼ぶそうで、昨日の夕食にウサギの煮込みを食べにきたゼダさん達が、レッサーボア狩りについて色々教えてくれたのだ。
ちなみに、出来立ての煮込みはルナとキャロも幸せそうに頂き、夕方に鍛冶屋に装備を受け取りに行くついでもあったので、孤児院の近くまで送っていった。
「レッサーボアの突進に耐えられる盾役の方、募集~ 報酬分担の割り増しありです!」
(盾役って、この前のタワーシールド持ちの人の事だよね)
「釣り役募集中、レッサーボアにダメージ与えられる鉄の矢以上でよろしくー、軽装備で回避得意な方なら近接武器の方でもかまいません~」
(軽装でいいなら、僕でも参加できるのかな?)
僕は少し離れた場所でメンバー募集を見ていた、こういうやり取りが珍しかったのだ。
「チッ! 盾役全然、居やがらねえぜ、使えねえ奴ばかり残りやがって!」アイアンアーマーを装備し槍を持った髭面の大男が叫んでいる。
「ならお前が盾役、やりゃあいいだろが」少し離れた場所にいる男が嫌みっぽく言うと……
「ウルセェ! 俺様の巧みな槍の腕前が勿体ねえだろうが!」耳がいいのか嫌みを聴きつけ吠えている。
「そんなの知るかよ! あ~このままじゃ、やべえな適当に余ってる奴、集めていかねえ?」
(確かにこのままだと狩りいけなさそうだよね……)
「盾役が引き付けとかねえとレッサーボアがフラフラして危険だろうがよ!」
(なるほど、盾役が固定しないと攻撃役が危ないんだな)
「テメエにゃ、聞いてねえよ!」嫌みを言ってた男が怒ったように言う。
「なんだと! やんのか!」槍持ちの男が槍を構えて威嚇している。
(なんか不味い雰囲気だな……巻き込まれないうちに離れよう)
僕が最後に思ったのは、ボーッと待ってるくらいなら、ウサギ狩りでも挑戦してみればいいのにという事だった。
ダンジョン探索の準備に余念がなかったからだが、今日から新しい装備での探索になるのだから確認作業にも気合いが入るのは仕方なかった。
昨日はあれから、新しい精霊術師の誕生を皆で喜びあった。特にその事を喜んだのはルナだった。
ルナは自分の身一つの他に何も持たないキャロの行く末をとても気にかけていたようだ。
同じ孤児といっても父親から多くの物を残して貰ったルナとは違うのだ、ルナならいずれ成長すれば、自立して何かを始めるのも容易だったからだ。
だが今は違う、キャロの契約したシルフィーは、二枚羽根の下級精霊だが、エルフのように神授の森での儀式を受けなければ精霊契約は出来ない。普通であれば、浮遊精霊から加護を貰えるだけでも十分幸運な事なのだ。
風の属精霊と契約すれば、攻守のバランスの良い精霊魔法が使えるので、キャロが成長すれば最悪、武器や防具が用意できなくてもウサギ狩りにはなれるかもしれない。
(……キャロは生まれは不幸だったかもしれないが、人の縁には恵まれているのかもしれないな)
そんな事を考えながら準備を終えた僕は、朝食を取る為に一階に降りて行くのだった。
◻ ◼ ◻
ダンジョン前の噴水広場は探索者でごった返していた。この前、来た時は昼前でみな出発した後だったのだ。
どうやら、集まった仲間との狩り場の打合せや、メンバーの募集を行っているようだ。
現地でメンバーを募集する事を [野良募集] と呼ぶそうで、昨日の夕食にウサギの煮込みを食べにきたゼダさん達が、レッサーボア狩りについて色々教えてくれたのだ。
ちなみに、出来立ての煮込みはルナとキャロも幸せそうに頂き、夕方に鍛冶屋に装備を受け取りに行くついでもあったので、孤児院の近くまで送っていった。
「レッサーボアの突進に耐えられる盾役の方、募集~ 報酬分担の割り増しありです!」
(盾役って、この前のタワーシールド持ちの人の事だよね)
「釣り役募集中、レッサーボアにダメージ与えられる鉄の矢以上でよろしくー、軽装備で回避得意な方なら近接武器の方でもかまいません~」
(軽装でいいなら、僕でも参加できるのかな?)
僕は少し離れた場所でメンバー募集を見ていた、こういうやり取りが珍しかったのだ。
「チッ! 盾役全然、居やがらねえぜ、使えねえ奴ばかり残りやがって!」アイアンアーマーを装備し槍を持った髭面の大男が叫んでいる。
「ならお前が盾役、やりゃあいいだろが」少し離れた場所にいる男が嫌みっぽく言うと……
「ウルセェ! 俺様の巧みな槍の腕前が勿体ねえだろうが!」耳がいいのか嫌みを聴きつけ吠えている。
「そんなの知るかよ! あ~このままじゃ、やべえな適当に余ってる奴、集めていかねえ?」
(確かにこのままだと狩りいけなさそうだよね……)
「盾役が引き付けとかねえとレッサーボアがフラフラして危険だろうがよ!」
(なるほど、盾役が固定しないと攻撃役が危ないんだな)
「テメエにゃ、聞いてねえよ!」嫌みを言ってた男が怒ったように言う。
「なんだと! やんのか!」槍持ちの男が槍を構えて威嚇している。
(なんか不味い雰囲気だな……巻き込まれないうちに離れよう)
僕が最後に思ったのは、ボーッと待ってるくらいなら、ウサギ狩りでも挑戦してみればいいのにという事だった。
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