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017:ウサギとの戦い2
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僕は咄嗟に全身に魔力循環を行い、後ろに飛んだ……それでも盾を砕いた攻撃のスピードが上回り、胸の肋骨あたりに何か当たったのは間違いない……
(思った程、衝撃がない……黒豹の下着……じいちゃん……)
僕は、後ろに飛んで屈み込みながら敵を見た。僕にとって致命的になるはずだった攻撃は敵にとっても負担が大きかったようで、それまで機敏に動き回り僕を翻弄していたレッサーラビットが硬直しているように見えた……
(チャンスだ!)
僕はバゼラードを突きの形で突進し、レッサーラビットの首の付け根に突き刺し、切り裂いた。
「ギェーッ、ギェギェ……」薄気味悪い断末魔の悲鳴を上げ暫く痙攣していたが、やがて動かなくなった。
僕は一瞬ホッとして放心しかけたが、すぐに思い立った。
(魔素吸収しないと……)
僕はレッサーラビットの死骸に近寄り、右手をかざした。
意識すると右手から魔力が全身に循環するのを感じた。
普段からも大気中の薄い魔素を時々、取り込んでいるのを感じていたが、魔物からの濃密な魔素の吸収は全身への循環を強く感じさせた。
……それから暫く吸収していると、魔物から感じる魔素はまだ濃密なのに吸収が弱まるのを感じた。
(ひょっとして僕の限界? 一杯になったって事? ……今回の吸収はここまでかな?)
そう考えて、かざした手を引っ込めようとして、ふと思いついた事を試してみようと思った。
僕は左手でポーチから精霊石を取りだした。
(今日の[ごはん]は、まだだったし、魔力が溢れているからちょうどいいか……)
そして、左手で魔力を注ぎ、右手で魔素を吸収しだした。
僕の体を経由して魔素から魔力になった力のようなものが、精霊石に流れ込むのを感じる。
精霊石は明滅し、まるで「美味しい!」と言ってるような気がした。
それから暫く注ぎ続けると魔物の魔素が尽きたようで吸収は止まってしまった。
精霊石は「もうおしまい?」と言ってるように感じたが、暫く明滅してから、諦めたように普通の小石に戻ってしまった。
(……精霊石の[ごはん]は、まだまだ余裕があるみたいだけど……)
僕は改めて自分の状態を確認した。
木製の盾は真っ二つに折れ、地面に転がっていた。
直撃を受けたレザーベストの胸元に埋め込まれていた銅板が破れて剥き出しになっていた。
銅板もへこんで折れていた。これだけの衝撃を受けて体に怪我一つ無かったのは、魔力強化付きの黒豹の下着のおかげだろう。
バゼラードの状態も確認したが、強化のおかげか血糊ひとつ、ついていなかった。
(疲れた……)
僕は地面に大の字になって寝転んだ、草原の短い草の絨毯が疲れきった体に心地良い。
ダンジョン内で不謹慎な行為だが、一層だから許容される行いだった。
ダンジョン初戦でボロボロの状態だ、村の狩人装備ではダンジョンの一層でも通用しないのは明らかだった。
(ああ、これでまだ一層なんだから……前途多難だよ)
僕はそう言って、一つため息をついたのだった。
(思った程、衝撃がない……黒豹の下着……じいちゃん……)
僕は、後ろに飛んで屈み込みながら敵を見た。僕にとって致命的になるはずだった攻撃は敵にとっても負担が大きかったようで、それまで機敏に動き回り僕を翻弄していたレッサーラビットが硬直しているように見えた……
(チャンスだ!)
僕はバゼラードを突きの形で突進し、レッサーラビットの首の付け根に突き刺し、切り裂いた。
「ギェーッ、ギェギェ……」薄気味悪い断末魔の悲鳴を上げ暫く痙攣していたが、やがて動かなくなった。
僕は一瞬ホッとして放心しかけたが、すぐに思い立った。
(魔素吸収しないと……)
僕はレッサーラビットの死骸に近寄り、右手をかざした。
意識すると右手から魔力が全身に循環するのを感じた。
普段からも大気中の薄い魔素を時々、取り込んでいるのを感じていたが、魔物からの濃密な魔素の吸収は全身への循環を強く感じさせた。
……それから暫く吸収していると、魔物から感じる魔素はまだ濃密なのに吸収が弱まるのを感じた。
(ひょっとして僕の限界? 一杯になったって事? ……今回の吸収はここまでかな?)
そう考えて、かざした手を引っ込めようとして、ふと思いついた事を試してみようと思った。
僕は左手でポーチから精霊石を取りだした。
(今日の[ごはん]は、まだだったし、魔力が溢れているからちょうどいいか……)
そして、左手で魔力を注ぎ、右手で魔素を吸収しだした。
僕の体を経由して魔素から魔力になった力のようなものが、精霊石に流れ込むのを感じる。
精霊石は明滅し、まるで「美味しい!」と言ってるような気がした。
それから暫く注ぎ続けると魔物の魔素が尽きたようで吸収は止まってしまった。
精霊石は「もうおしまい?」と言ってるように感じたが、暫く明滅してから、諦めたように普通の小石に戻ってしまった。
(……精霊石の[ごはん]は、まだまだ余裕があるみたいだけど……)
僕は改めて自分の状態を確認した。
木製の盾は真っ二つに折れ、地面に転がっていた。
直撃を受けたレザーベストの胸元に埋め込まれていた銅板が破れて剥き出しになっていた。
銅板もへこんで折れていた。これだけの衝撃を受けて体に怪我一つ無かったのは、魔力強化付きの黒豹の下着のおかげだろう。
バゼラードの状態も確認したが、強化のおかげか血糊ひとつ、ついていなかった。
(疲れた……)
僕は地面に大の字になって寝転んだ、草原の短い草の絨毯が疲れきった体に心地良い。
ダンジョン内で不謹慎な行為だが、一層だから許容される行いだった。
ダンジョン初戦でボロボロの状態だ、村の狩人装備ではダンジョンの一層でも通用しないのは明らかだった。
(ああ、これでまだ一層なんだから……前途多難だよ)
僕はそう言って、一つため息をついたのだった。
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