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【勘違いストーカー×彼氏持ち大学生】

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目を開ければ真っ暗な世界が広がっていた、いや正確には目隠しをされているのだろう。この状況が理解できない、とりあえず身体を起き上がらせる。

「んぅ...っ」

身体が重い。しかしそれ以上に気になるのはジャラジャラと金属の擦れる音と、右足に冷たい足枷の様な感触があり、更には両手を後ろで縛られている事だ。

俺は確か、彼氏である拓海の家に泊まった夜。事後で眠たく、インターホンが鳴ったのを聞いて拓海が出るだろうと、思いながら寝てしまった。
今思えばあの時間に誰か来るなんておかしい。

「...おはよう、やっと目が覚めた?」
「だ、誰...っ?」

目が見えないせいで誰なのかがわからない、しかし何処か聞き覚えのある声だった。

「誰って、酷いなー。いつも電話かけてるのに...あー、でも最近は電話出てくれなかっもんね」
「...まさか...っ!」
「そ、そのまさか、俺迎えに来たよ?ちゃんと迎えに来るって言ったのに、まだあいつと別れてなかったんだ。」

ここ半年、俺は迷惑電話に悩まされていた。というより、はじめは俺も面白半分で通話の相手をしていた。

『いつも見てるよ、世界一愛してる』
「え...?あー、俺も愛してるよー」
『ほんとに?嬉しい、また電話する!』

初めは友達の悪ふざけかと思っていたが、聞けば皆んなそんな事はしていないらしい。ならば間違い電話だろうか、そう思っていた。だが、初めの電話から2週間が経ち忘れさろうとしていた時、また同じ電話番号から電話があった。

『また電話しちゃった、迷惑...じゃないかな?』

俺の口角が吊り上がる。この男を好きな人とは別の奴と勘違いで電話している事に、気付くまで通話に付き合ってやろうと。

「迷惑じゃない、嬉しいよ」

そういうと奴は非常に嬉しそうだった。そして電話が掛かってくる度に相手をした。だんだん日増しに掛かってくる頻度も増え毎日通話する様になっていた。
気が付けば半年ぐらい経っていた。正直通話自体めんどくさくなっていた、初めは2、3分話して相手が話を切るのに、だんだん5分、10分、30分と時間が延びて、見切りをつけて終わらせるのが俺からになっていた。

「もう眠いから、その話また今度でいい?」
『あ、もうそんな時間か。うんおやすみ、大好きだよ』

そろそろ気付いて欲しい、逆に半年間気付かないのもすごい鈍感な奴だ。流石に次の通話で教えてやろう、俺はお前の好きな奴では無い、と。

そして案の定次の日の夜、いつもと同じ時間帯に電話が掛かってきた。
だが、その日はいつもとは違っていた。

『...はぁっ、はぁ...んっ...』
「もしもし?」
『ゆう...っ』

くぐもった吐息が通話越しに聞こえてくる。

「ね、ねぇ...何してるの?」
『優...っ、ゆう、はぁ...すき、愛してるっ...』

嫌な予感がする。名前なんて教えたっけなんて呑気に考える暇もなかった。

『ゆうっ、ゆう...んっ!』
「...」
『...いっぱいでちゃった、早く優に中出ししたいなぁ。まだ迎えに行く事はできないけど、あと少ししたら...』

気が付けば通話を切ってブロックをしていた。もう通話することもない、名前や電話番号を知っていても住所まではわからないだろう。そう自分に言い聞かせた。

それから1ヶ月は何もなく平穏な時間を過ごした。就活で忙しかった拓海も、内定が決まり一年振りくらいにデートに行った。そしてその夜、電話の着信音が鳴り、俺は何故か拓海からだと思い通話に出てしまった。

「もしもし?まだ寂しいのー?まったく拓海は俺がいないと何もできないんだからなぁ」

揶揄う様に拓海に話しかけるが、いつもの様子とは違う。いつもなら直ぐに反応を返してくれるのに。

『...優、浮気してたんだ?』

その声に俺は背筋が凍った。

何故?ブロックしたはずなのに。
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