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第23話 レイはドラゴンを作り物だと思っている
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十数分前のこと。
「なんであたしがあんたを背負わなきゃいけないのよ! どっちかって言えばあんたがあたしを背負わなきゃいけないでしょ! あたし怪我してたのよ!」
「仕方ないじゃん! 僕の俊敏1しかないんだよ! 僕が背負ったらあそこに行くまでに日が暮れてしまうわ!」
と、いままさにドラゴンがキャット家の屋敷に飛んで行くのを目撃したノヴァとレイはどっちがどっちを背負うかで言い争いをしていた。
平和である。
ノヴァは脇腹を押さえながら「俊敏1」という言葉に反応して、
「嘘つき嘘つき! 俊敏1なんて嘘でしょ! じゃあ、さっきあいつらを吹っ飛ばしたのは何よ!」
「あれは……えっと……(まだ演技しなきゃなんないの!?)……僕の力だよ」
「ほら、じゃあ嘘じゃない! あたしのこと背負いなさいよ!」
「できないよ! というか、僕があげた回復薬で身体治ってるでしょ! あの回復薬すんごいやつ持ってきたんだから。骨折なんか一瞬で治ってるはずだよ!」
「応急処置程度でしょうが! あんたを背負って走ったらまた折れちゃうわ! 絶対!」
「防御力お化けがなに言ってんだ!!」
「何だと、この野郎!!」
焦りのせいで口が悪くなっている二人だった。
その焦りも、レイが勘違いしているために二人で若干異なっている。
ノヴァが自分の家が破壊されて家族が殺されると危惧しているのに対して、レイは演技だと知らないネフィラが暴れ回ってしまう、プラス、自分のせいで巨大な屋敷が破壊される演技計画が進行中だと焦っている。
どちらにせよ、キャット家の屋敷が破壊されるのを止めなければならないが。
(ノヴァの怪我だってどうせ演技なのに! 役に真剣になりすぎだよ!)
一瞬、焦りすぎて「演技でしょこれ!」と叫びそうになったレイではあるけれど、ふと、あることを思いついた。
(と言うかこれが演技なら、ちゃんとシナリオを進めるために、僕が屋敷に向かうような方法が準備されてるはず! それを僕が思いついて屋敷に向かうのがシナリオなんだろうけど……誰かカンペをください!!)
もちろん、そんな準備もカンペもない。
ないが、レイはキョロキョロとあたりを見回す。
「ちょっと何探してんのよ」
「いや、あの屋敷に向かう方法、他にないかなって。馬車とか準備されてないかな?」
「馬がいてもあたし操縦できないわよ。あんたできるの?」
「……できないけど」
「何でできないのよ!」
「自分だってできないのに理不尽だ!」
「なによ、もう! さっき助けてくれたときは……ああもう! あたしの気持ちを返してよ!」
「僕は何も盗ってないよ! 落とし物なら洞窟の中見てくれば?」
「バカ! バカバカ!」
好感度がゴリゴリ下がり続けている。
そうとは知らず、引き続きあたりを見回していると、突然、近くの茂みがガサッと揺れて、ノヴァがレイの後ろに隠れた。
レイはぎょっとして、
「え! なになに!? モンスター!? ちょっと! ノヴァの方が防御力高いんだから盾になってよ!」
「はああ!? 何考えてんのあんた! あたしはカヨワイ女の子なのよ!? あんたがあたしのこと守りなさいよ!」
「カヨワイ女の子は首にナイフ押し当てたりしないんだよ! ノヴァならモンスターに噛まれても平気でしょ!」
「平気じゃないわよ! あたしをヤバい奴みたいに言わないで! いいから、あんたはさっきやったみたいにモンスターぶっ飛ばしなさいよ!」
そんな風に大声をあげている間も茂みの音は近づいてきて、
「あれ? レイヴン様じゃねーですか? 何でこんなところに?」
そう、声がして、茂みの中から《創痍工夫》が姿を現した。彼の後ろから《節制の射手》とノックスも姿を現す。
ヴィラン家の訓練場で、果敢にもレイに飛びかかった彼らは無事ヴィラン家に雇われて、それからも三人でパーティを組んで仕事をしているらしい。
とは言え、レイはまだ彼らが役者だと思っているので、
(やっぱり屋敷に向かう方法が準備されてたんだ!)
そう考えて、そそくさと彼らに近づいた。
「ドラゴンがキャット家の屋敷を襲おうとしてる! 今すぐ僕らをあそこに背負って連れてって!」
レイが言うとノックスが舌打ちした。
「ちっ! やっぱりあのドラゴンあっち向かってたか。……というか、あれ? あの子……ネフィラ様は一緒じゃないんですか?」
「ネフィラはあの屋敷にいるんだよ!(知ってるでしょ!?)」
レイがそう言った瞬間、ノックスは何も聞かず駆け出した――ちなみに、彼は直接屋敷に向かってしまったのでネフィラを救うことはできなかった。
不憫。
「ちょっと! 僕を連れてってよ!!」
「あーあいつ勝手なことしやがって。レイヴン様は俺が運びますわ。で……そっちの子は?」
《創痍工夫》が言うと、ノヴァは腰に手を当てる。
「あたしはノヴァリエ! ノヴァリエ・キャットよ! あそこはあたしの家なんだから、当然、あたしのことも運んでちょうだい!」
「随分、気の強え子ですね。《節制の射手》運んでやってくれ」
《節制の射手》は黙ったまま頷いて、ノヴァを背負い、《創痍工夫》がレイを背負って走り出す。彼は走りながら背負ったレイに尋ねた。
「レイヴン様もドラゴンを追ってたんですかい?」
「追ってないけど……というか、逆に、三人はなんでドラゴンなんか追ってたの?」
「ヴィラン家の仕事ですわ。最近危険区域にいるはずのドラゴンが飛び回ってるって情報がありましてね、危害を加える前に対処しようとしてたんすわ。最初はメイドちゃんたちゴースト族が任務についてたみてえですが人手が足りなくなったみてえですね」
(おお、僕を運ぶためだけに来てるはずなのに、ちゃんと裏設定まで考えられてる)
なかなか酷いことを考えているレイだったが、演技だと思っているので仕方がない。ただ、レイが信じていなくとも《創痍工夫》の言っていることは真実だった。
ここ数日、ネフィラが「メイドちゃんたちは外出している」と言っていたまさにそれが、ドラゴンを追い返す任務のための外出だったし、人手不足によって《創痍工夫》たちが駆り出され、ドラゴンを追いかけていたのもこれまた事実。
「昨日まではあのドラゴン、焦りこそすれ大人しく探してたみてえなんですが、今日になって急に暴れ出してこっちのほう向かってきたんですよ」
(これをアドリブで言ってるんだとしたら相当だぞ。あとで《創痍工夫》のことは父上とかに報告してあげよう。……いい役者だって)
やめてやれ。
本人たちは真面目にやってるんだぞ。
レイが善意で不当に評価を下げようとしていることなど知らない《創痍工夫》たちは、ものすごい速度で『調教の森』を駆け抜けていたが、このとき、誰もドラゴンが森の中に着陸したことに気づいていなかった。
魔力砲という名の光線魔法を溜めていることさえ。
だから、突然、爆音が響いて、レイたちの目の前を光線が通り過ぎた瞬間、
「「ぎゃあああああああああ!」」
全員が悲鳴を上げた。
《創痍工夫》も《節制の射手》も尻餅をついて、レイたちはその後ろに転がる。
ノヴァは震えた声で叫んだ。
「な、ななな、何よあれ!!」
「ド、ドド、ドラゴンの魔力砲だ! 岩山に穴が空くヤバいやつだ! 逃げるぞ!」
《創痍工夫》はそう叫んだ。
が、レイは、
「いや、ドラゴンのところに僕を連れて行って」
ノヴァたちがぎょっとする。
「な、何考えてんのよ、あんた! あれ見てたでしょ!?」
「うん。だから、ノヴァたちは逃げていい。でも僕は行かないといけないから。ここであのドラゴンを倒さないと、屋敷が大変なことになる」
レイはそうはっきりと告げた。
ネフィラがすぐそばで危機に瀕しているのを直感的に感じ取ったから、あるいは、愛の力で助けを受信したから――なんてそんな理由ではもちろんない。
(ここでドラゴンをたおすシナリオに無理矢理書き換えてやれ!! そしたら屋敷を破壊するシナリオをぶっ壊せる!! 僕のせいで屋敷破壊しなくて済む! ただでさえ森をぶっ壊してるんだから! 演技のためにこれ以上お金をかけないために!!)
「早く!」
「し、しかし、相手はドラゴンですぜ!?」
「解ってるよ、そんなこと!」
(どうせ作り物でしょ!)
《創痍工夫》は下唇を噛んだが、意を決したのか、レイを背負い直して、
「《節制の射手》、その子を頼んだ」
「ちょ、ちょっと! マジで行くわけ!?」
ノヴァは大きな目をさらに大きくして言ったが、レイは頷いて、
「当たり前でしょ。だって……」
レイは《創痍工夫》の肩を強く掴んだ。
「僕はヴィラン家なんだから」
(これ以上、ヴィラン家の面汚しになるわけにはいかないんだよ!!)
《創痍工夫》は全速力で駆け出した。
すでにドラゴンへ至る道はドラゴン自体が作り出している――魔力砲で荒々しく作られたその道をたどればいい。
数秒と立たずに、ドラゴンの姿が見えて、
そして、
「ネフィラ?」
ドラゴンの視線の先にネフィラが倒れているのが見えた。
(そうか! だから作り物のドラゴンがここに着陸したんだ! ネフィラはちゃんと演技をしてて、その上、屋敷が壊れるシナリオがまずいって解ってたんだ!! だからここでおびき寄せたんだ!! ナイス!!)
んな訳がない。
レイは《創痍工夫》の背から降りると、遅い足でなんとか駆けていく。
ドラゴンはすでに魔力砲を準備していたが、レイは気にせず、ドラゴンを遮るようにネフィラの前に立って、頭に手を置く。
「よくやった、ネフィラ!」
そう労って、ドラゴンの方を向いた。
「なんであたしがあんたを背負わなきゃいけないのよ! どっちかって言えばあんたがあたしを背負わなきゃいけないでしょ! あたし怪我してたのよ!」
「仕方ないじゃん! 僕の俊敏1しかないんだよ! 僕が背負ったらあそこに行くまでに日が暮れてしまうわ!」
と、いままさにドラゴンがキャット家の屋敷に飛んで行くのを目撃したノヴァとレイはどっちがどっちを背負うかで言い争いをしていた。
平和である。
ノヴァは脇腹を押さえながら「俊敏1」という言葉に反応して、
「嘘つき嘘つき! 俊敏1なんて嘘でしょ! じゃあ、さっきあいつらを吹っ飛ばしたのは何よ!」
「あれは……えっと……(まだ演技しなきゃなんないの!?)……僕の力だよ」
「ほら、じゃあ嘘じゃない! あたしのこと背負いなさいよ!」
「できないよ! というか、僕があげた回復薬で身体治ってるでしょ! あの回復薬すんごいやつ持ってきたんだから。骨折なんか一瞬で治ってるはずだよ!」
「応急処置程度でしょうが! あんたを背負って走ったらまた折れちゃうわ! 絶対!」
「防御力お化けがなに言ってんだ!!」
「何だと、この野郎!!」
焦りのせいで口が悪くなっている二人だった。
その焦りも、レイが勘違いしているために二人で若干異なっている。
ノヴァが自分の家が破壊されて家族が殺されると危惧しているのに対して、レイは演技だと知らないネフィラが暴れ回ってしまう、プラス、自分のせいで巨大な屋敷が破壊される演技計画が進行中だと焦っている。
どちらにせよ、キャット家の屋敷が破壊されるのを止めなければならないが。
(ノヴァの怪我だってどうせ演技なのに! 役に真剣になりすぎだよ!)
一瞬、焦りすぎて「演技でしょこれ!」と叫びそうになったレイではあるけれど、ふと、あることを思いついた。
(と言うかこれが演技なら、ちゃんとシナリオを進めるために、僕が屋敷に向かうような方法が準備されてるはず! それを僕が思いついて屋敷に向かうのがシナリオなんだろうけど……誰かカンペをください!!)
もちろん、そんな準備もカンペもない。
ないが、レイはキョロキョロとあたりを見回す。
「ちょっと何探してんのよ」
「いや、あの屋敷に向かう方法、他にないかなって。馬車とか準備されてないかな?」
「馬がいてもあたし操縦できないわよ。あんたできるの?」
「……できないけど」
「何でできないのよ!」
「自分だってできないのに理不尽だ!」
「なによ、もう! さっき助けてくれたときは……ああもう! あたしの気持ちを返してよ!」
「僕は何も盗ってないよ! 落とし物なら洞窟の中見てくれば?」
「バカ! バカバカ!」
好感度がゴリゴリ下がり続けている。
そうとは知らず、引き続きあたりを見回していると、突然、近くの茂みがガサッと揺れて、ノヴァがレイの後ろに隠れた。
レイはぎょっとして、
「え! なになに!? モンスター!? ちょっと! ノヴァの方が防御力高いんだから盾になってよ!」
「はああ!? 何考えてんのあんた! あたしはカヨワイ女の子なのよ!? あんたがあたしのこと守りなさいよ!」
「カヨワイ女の子は首にナイフ押し当てたりしないんだよ! ノヴァならモンスターに噛まれても平気でしょ!」
「平気じゃないわよ! あたしをヤバい奴みたいに言わないで! いいから、あんたはさっきやったみたいにモンスターぶっ飛ばしなさいよ!」
そんな風に大声をあげている間も茂みの音は近づいてきて、
「あれ? レイヴン様じゃねーですか? 何でこんなところに?」
そう、声がして、茂みの中から《創痍工夫》が姿を現した。彼の後ろから《節制の射手》とノックスも姿を現す。
ヴィラン家の訓練場で、果敢にもレイに飛びかかった彼らは無事ヴィラン家に雇われて、それからも三人でパーティを組んで仕事をしているらしい。
とは言え、レイはまだ彼らが役者だと思っているので、
(やっぱり屋敷に向かう方法が準備されてたんだ!)
そう考えて、そそくさと彼らに近づいた。
「ドラゴンがキャット家の屋敷を襲おうとしてる! 今すぐ僕らをあそこに背負って連れてって!」
レイが言うとノックスが舌打ちした。
「ちっ! やっぱりあのドラゴンあっち向かってたか。……というか、あれ? あの子……ネフィラ様は一緒じゃないんですか?」
「ネフィラはあの屋敷にいるんだよ!(知ってるでしょ!?)」
レイがそう言った瞬間、ノックスは何も聞かず駆け出した――ちなみに、彼は直接屋敷に向かってしまったのでネフィラを救うことはできなかった。
不憫。
「ちょっと! 僕を連れてってよ!!」
「あーあいつ勝手なことしやがって。レイヴン様は俺が運びますわ。で……そっちの子は?」
《創痍工夫》が言うと、ノヴァは腰に手を当てる。
「あたしはノヴァリエ! ノヴァリエ・キャットよ! あそこはあたしの家なんだから、当然、あたしのことも運んでちょうだい!」
「随分、気の強え子ですね。《節制の射手》運んでやってくれ」
《節制の射手》は黙ったまま頷いて、ノヴァを背負い、《創痍工夫》がレイを背負って走り出す。彼は走りながら背負ったレイに尋ねた。
「レイヴン様もドラゴンを追ってたんですかい?」
「追ってないけど……というか、逆に、三人はなんでドラゴンなんか追ってたの?」
「ヴィラン家の仕事ですわ。最近危険区域にいるはずのドラゴンが飛び回ってるって情報がありましてね、危害を加える前に対処しようとしてたんすわ。最初はメイドちゃんたちゴースト族が任務についてたみてえですが人手が足りなくなったみてえですね」
(おお、僕を運ぶためだけに来てるはずなのに、ちゃんと裏設定まで考えられてる)
なかなか酷いことを考えているレイだったが、演技だと思っているので仕方がない。ただ、レイが信じていなくとも《創痍工夫》の言っていることは真実だった。
ここ数日、ネフィラが「メイドちゃんたちは外出している」と言っていたまさにそれが、ドラゴンを追い返す任務のための外出だったし、人手不足によって《創痍工夫》たちが駆り出され、ドラゴンを追いかけていたのもこれまた事実。
「昨日まではあのドラゴン、焦りこそすれ大人しく探してたみてえなんですが、今日になって急に暴れ出してこっちのほう向かってきたんですよ」
(これをアドリブで言ってるんだとしたら相当だぞ。あとで《創痍工夫》のことは父上とかに報告してあげよう。……いい役者だって)
やめてやれ。
本人たちは真面目にやってるんだぞ。
レイが善意で不当に評価を下げようとしていることなど知らない《創痍工夫》たちは、ものすごい速度で『調教の森』を駆け抜けていたが、このとき、誰もドラゴンが森の中に着陸したことに気づいていなかった。
魔力砲という名の光線魔法を溜めていることさえ。
だから、突然、爆音が響いて、レイたちの目の前を光線が通り過ぎた瞬間、
「「ぎゃあああああああああ!」」
全員が悲鳴を上げた。
《創痍工夫》も《節制の射手》も尻餅をついて、レイたちはその後ろに転がる。
ノヴァは震えた声で叫んだ。
「な、ななな、何よあれ!!」
「ド、ドド、ドラゴンの魔力砲だ! 岩山に穴が空くヤバいやつだ! 逃げるぞ!」
《創痍工夫》はそう叫んだ。
が、レイは、
「いや、ドラゴンのところに僕を連れて行って」
ノヴァたちがぎょっとする。
「な、何考えてんのよ、あんた! あれ見てたでしょ!?」
「うん。だから、ノヴァたちは逃げていい。でも僕は行かないといけないから。ここであのドラゴンを倒さないと、屋敷が大変なことになる」
レイはそうはっきりと告げた。
ネフィラがすぐそばで危機に瀕しているのを直感的に感じ取ったから、あるいは、愛の力で助けを受信したから――なんてそんな理由ではもちろんない。
(ここでドラゴンをたおすシナリオに無理矢理書き換えてやれ!! そしたら屋敷を破壊するシナリオをぶっ壊せる!! 僕のせいで屋敷破壊しなくて済む! ただでさえ森をぶっ壊してるんだから! 演技のためにこれ以上お金をかけないために!!)
「早く!」
「し、しかし、相手はドラゴンですぜ!?」
「解ってるよ、そんなこと!」
(どうせ作り物でしょ!)
《創痍工夫》は下唇を噛んだが、意を決したのか、レイを背負い直して、
「《節制の射手》、その子を頼んだ」
「ちょ、ちょっと! マジで行くわけ!?」
ノヴァは大きな目をさらに大きくして言ったが、レイは頷いて、
「当たり前でしょ。だって……」
レイは《創痍工夫》の肩を強く掴んだ。
「僕はヴィラン家なんだから」
(これ以上、ヴィラン家の面汚しになるわけにはいかないんだよ!!)
《創痍工夫》は全速力で駆け出した。
すでにドラゴンへ至る道はドラゴン自体が作り出している――魔力砲で荒々しく作られたその道をたどればいい。
数秒と立たずに、ドラゴンの姿が見えて、
そして、
「ネフィラ?」
ドラゴンの視線の先にネフィラが倒れているのが見えた。
(そうか! だから作り物のドラゴンがここに着陸したんだ! ネフィラはちゃんと演技をしてて、その上、屋敷が壊れるシナリオがまずいって解ってたんだ!! だからここでおびき寄せたんだ!! ナイス!!)
んな訳がない。
レイは《創痍工夫》の背から降りると、遅い足でなんとか駆けていく。
ドラゴンはすでに魔力砲を準備していたが、レイは気にせず、ドラゴンを遮るようにネフィラの前に立って、頭に手を置く。
「よくやった、ネフィラ!」
そう労って、ドラゴンの方を向いた。
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