28 / 40
第二章 選択する、選択させる
召喚の羊皮紙
しおりを挟む
人が多い。ダンジョンのボス部屋、イエロードラゴンの住処に側近たちを追い出して行く。
「ちょっと主、人の家汚さないでよ」
「うるせえ、黙ってろ」
俺は言うとダンジョン奥にある自宅を拡張した。ポイントはまだ十分にある。何人も殺したからな。拡張した場所にベッドを多数、それから風呂を準備した。今回はちゃんと男女分けておく。
特級ポーションを更に準備して、全員の手足だの怪我だのを治すと、言った。
「中にはいれ、さっきより広くなっている。お前ら風呂に入れ。服は用意しておく」
彼らが歓喜の声を上げて、風呂へと向かう間大量のジャージを用意していると、セレナが微笑んで言った。
「ユキハルは優しいんだな」
「どこが。ナオミに不快な思いをさせたくないだけだ」
セレナはまた微笑んだ。嘘を言っていると思ってるのだろうか。
俺は本気だ。
全員風呂に入り匂いがある程度取れたところで、お揃いのジャージを着させたがそれはまあ見かけおかしい部分があって、特に元貴族なんかは最初はブーブー言っていたがその生地の良さを発見すると俺を質問攻めにした。俺は無視した。
全員が座れる机は無いので主要な側近に座ってもらい他は別の部屋へ移した。話によるとあの牢に囚われていたのは側近だけでなく元国王派で新しい国王になっても頑なに鞍替えしなかった貴族も含まれているらしい。
「国王陛下はまだ救出しておられないのですか?」
側近の一人が尋ねた。元宰相だというその獣人は鷹の頭をしていた。
「今からする」
「どうして先に国王陛下をお助けにならなかったのですか」
語勢を強めて彼は続けた。俺は表情を変えずに彼を見た。
「どう考えたって人数多い方を先に助けるだろ。こっちにだって用意ってもんがあるんだ。それとも何か? お前ら俺に一人で助けさせろっていうのか? 塔の警備ってそんなに薄いのか? 魔法結界は無いのか? そんなんでよく宰相なんて務められたな」
俺は続けざまにべらべらと喋った。鷹は黙ってうつむき、すみませんといった。
「まあ、すぐにでも一人で助けに行くけどな」
俺は言って立ち上がると、クローゼットを出現させた。
「まて、私も」
「いい、多分塔のほうが危険だ。お前も待っていろ」
俺はクローゼットの扉の中へ入っていった。
◇
簒奪の王ゲイラード・グローバーの前に一人の男が跪いている。いや男と言うには不格好な見た目だ。顔をペストマスクのような前方に極端に伸びたマスクで覆い、背は低く、引きずるほど長く黒いローブで全身を覆っている。魔力鑑定士によると非常にどす黒い魔力を身にまとっており、その力は尋常ではない、人間ではありえないことから魔族ではないかとのこと。敵意はないと言っていたが信じることはできない。騎士たちは警戒し、国に仕える魔術師たちが緊張した面持ちで控える中、彼は口を開いた。
「国王様、魔王様の一人からとある情報を伝えたく馳せ参じました」
男はシュルシュルと舌を鳴らすような音をたてながら発音した。
「情報とは?」
「只今この国では獣人を狩り、滅ぼそうとしているとお聞きいたしました」
「ああ、そのつもりだ」
「魔王様はそのご助力をされたいと申され、この情報を届けるようにと私に命令されました。どうかお受け取りを」
国王ゲイラードは肯くと、側近の一人に目配せをした。側近は手を震わせながらその手袋をはめた手から羊皮紙を受け取り、国王に手渡した。国王はそれを開いたが理解できない。彼は宰相を呼び、宰相は魔法学者を呼んだ。
「これは!」
そう言うと魔法学者は国王に進言した。
「恐れながら申し上げます。これは伝説の召喚魔法であると思われます。使用できるのは教皇とそれに次ぐ大教会の数名だけかと」
「召喚魔法? ドラゴンでも呼び出すのか?」
興味津々といった様子でゲイラードは前傾姿勢になってローブの男に尋ねる。
「いいえ、召喚するのは魔物でもドラゴンでもはたまた魔族でもなく人間です」
それを聞いた瞬間ゲイラードは鼻を鳴らし、どっかと背もたれに体を預けた。
「ふん、つまらん」
「いいえ、そうでもございません。召喚された人間は魔族に匹敵する魔力と竜族に匹敵する武力、そして、誰よりも恐ろしいスキルを持って召喚されるのです。いわば伝説の勇者と言えるでしょう」
簒奪の王は感心したように唸った。
「ほう、それは面白い。それで、何を見返りに求めている」
ローブの男は頭を振った。
「いいえ見返りなど頂けません。ただご助力をしたいだけでございます」
「ふん」
国王は側近に金貨の入った袋を持ってこさせ、それをローブの男に投げた。
「持っていくがいい」
「ありがたき幸せ。その一つの羊皮紙で四人まで呼び出すことができます。呼び出す人間はこちらで指定してあります。厳選してありますゆえご心配なく。それでは失礼致します」
そう言うとローブの男は謁見の間を出ていった。
ローブの男は城を出ると金貨の入った袋を投げ捨てた。
「ちょっと主、人の家汚さないでよ」
「うるせえ、黙ってろ」
俺は言うとダンジョン奥にある自宅を拡張した。ポイントはまだ十分にある。何人も殺したからな。拡張した場所にベッドを多数、それから風呂を準備した。今回はちゃんと男女分けておく。
特級ポーションを更に準備して、全員の手足だの怪我だのを治すと、言った。
「中にはいれ、さっきより広くなっている。お前ら風呂に入れ。服は用意しておく」
彼らが歓喜の声を上げて、風呂へと向かう間大量のジャージを用意していると、セレナが微笑んで言った。
「ユキハルは優しいんだな」
「どこが。ナオミに不快な思いをさせたくないだけだ」
セレナはまた微笑んだ。嘘を言っていると思ってるのだろうか。
俺は本気だ。
全員風呂に入り匂いがある程度取れたところで、お揃いのジャージを着させたがそれはまあ見かけおかしい部分があって、特に元貴族なんかは最初はブーブー言っていたがその生地の良さを発見すると俺を質問攻めにした。俺は無視した。
全員が座れる机は無いので主要な側近に座ってもらい他は別の部屋へ移した。話によるとあの牢に囚われていたのは側近だけでなく元国王派で新しい国王になっても頑なに鞍替えしなかった貴族も含まれているらしい。
「国王陛下はまだ救出しておられないのですか?」
側近の一人が尋ねた。元宰相だというその獣人は鷹の頭をしていた。
「今からする」
「どうして先に国王陛下をお助けにならなかったのですか」
語勢を強めて彼は続けた。俺は表情を変えずに彼を見た。
「どう考えたって人数多い方を先に助けるだろ。こっちにだって用意ってもんがあるんだ。それとも何か? お前ら俺に一人で助けさせろっていうのか? 塔の警備ってそんなに薄いのか? 魔法結界は無いのか? そんなんでよく宰相なんて務められたな」
俺は続けざまにべらべらと喋った。鷹は黙ってうつむき、すみませんといった。
「まあ、すぐにでも一人で助けに行くけどな」
俺は言って立ち上がると、クローゼットを出現させた。
「まて、私も」
「いい、多分塔のほうが危険だ。お前も待っていろ」
俺はクローゼットの扉の中へ入っていった。
◇
簒奪の王ゲイラード・グローバーの前に一人の男が跪いている。いや男と言うには不格好な見た目だ。顔をペストマスクのような前方に極端に伸びたマスクで覆い、背は低く、引きずるほど長く黒いローブで全身を覆っている。魔力鑑定士によると非常にどす黒い魔力を身にまとっており、その力は尋常ではない、人間ではありえないことから魔族ではないかとのこと。敵意はないと言っていたが信じることはできない。騎士たちは警戒し、国に仕える魔術師たちが緊張した面持ちで控える中、彼は口を開いた。
「国王様、魔王様の一人からとある情報を伝えたく馳せ参じました」
男はシュルシュルと舌を鳴らすような音をたてながら発音した。
「情報とは?」
「只今この国では獣人を狩り、滅ぼそうとしているとお聞きいたしました」
「ああ、そのつもりだ」
「魔王様はそのご助力をされたいと申され、この情報を届けるようにと私に命令されました。どうかお受け取りを」
国王ゲイラードは肯くと、側近の一人に目配せをした。側近は手を震わせながらその手袋をはめた手から羊皮紙を受け取り、国王に手渡した。国王はそれを開いたが理解できない。彼は宰相を呼び、宰相は魔法学者を呼んだ。
「これは!」
そう言うと魔法学者は国王に進言した。
「恐れながら申し上げます。これは伝説の召喚魔法であると思われます。使用できるのは教皇とそれに次ぐ大教会の数名だけかと」
「召喚魔法? ドラゴンでも呼び出すのか?」
興味津々といった様子でゲイラードは前傾姿勢になってローブの男に尋ねる。
「いいえ、召喚するのは魔物でもドラゴンでもはたまた魔族でもなく人間です」
それを聞いた瞬間ゲイラードは鼻を鳴らし、どっかと背もたれに体を預けた。
「ふん、つまらん」
「いいえ、そうでもございません。召喚された人間は魔族に匹敵する魔力と竜族に匹敵する武力、そして、誰よりも恐ろしいスキルを持って召喚されるのです。いわば伝説の勇者と言えるでしょう」
簒奪の王は感心したように唸った。
「ほう、それは面白い。それで、何を見返りに求めている」
ローブの男は頭を振った。
「いいえ見返りなど頂けません。ただご助力をしたいだけでございます」
「ふん」
国王は側近に金貨の入った袋を持ってこさせ、それをローブの男に投げた。
「持っていくがいい」
「ありがたき幸せ。その一つの羊皮紙で四人まで呼び出すことができます。呼び出す人間はこちらで指定してあります。厳選してありますゆえご心配なく。それでは失礼致します」
そう言うとローブの男は謁見の間を出ていった。
ローブの男は城を出ると金貨の入った袋を投げ捨てた。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる