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生かして愛して。

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ポコポコ…




いき
 少し明るい。
 そして心地いい。
 だんだん音が聞こえてきた。
 一緒にどくどくしてるんだね。
 
 それと、楽しそうな笑い声がしているのが分かった。

「――ねぇ、今日は何で遊んでくれるの?」
「はは、そうだな…、これとかどう?」
「きゃははっ!何それ、いいじゃん笑 あと―――もちろんしてくれるのよね…?」
「もちろんだよ。」
「ねぇ、寂しいの。ママもパパも帰ってこないの。」
「大丈夫、俺がいるから。ね。」
「うん…、ありがとう。大好き。…んぁぁっ///」

 多分、僕が一番聞いちゃ行けない声がしている。

 幸せそうな声だった。でもどこか寂しそうだったんだ…。
 


 ある日焦る声がしたんだ。

「なんで?!なんでなの…?!道理で来ないわけよ…あぁ、ちゃんとしたのに、してたのに…!!!!」
 どうしたんだろうな、大丈夫かな。心配だな。

どくどくが早くなって――。
「ねぇ、話があるの。」
 
「んな…そんなの…知らねぇよ。俺、関係ないから。あと誰にも言うなよ。俺の気持ちも……」
 なんだろな、なんだろな。

 
ママが泣いてる。大好きなママが。
「…大丈夫?」
「なんなのよ……うわぁぁあああ!!!」
痛いよ、やめてよ。叩かないで。潰そうとしないで。凹まないよ…。

 
なんだか苦しくなってきた。
前より暗くなってきたんだ。
それでもね、僕は、ママが最近静かで心配。
「ママ、大好きだよ。」
愛を伝えればきっと―――
ドン!ドンドン!
痛いってば!好きだってば!
 
―――ん、なんの音だろう。なんだか少し明るい気がするな…。
 僕はまだだよ…?
 
 それでも眩しいのは続いた。
 寝て、起きたらもっと明るくなってた。
 
 冷たい物が僕を触る。
 それは僕を捕まえてくる。
 痛い。
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛――――――。
  



これが僕の人生なのだと、僕の価値はこの程度だと、僕の愛は一方通行だったのにも、気がついた。
でも気がついた時には腕も足も首も着いてたんだ。
 
 それでも僕は、ママに会いたい。
 ママ、今から行くね。
 ママなんて直ぐに見つかるからね。
 ママなんて、ママだって親に捨てられてるんだからね。ママだってこっちにくるべきだ。ママ、早くおいで。
 僕の事を考えてるんでしょう?ようやく気づいたんだね。僕の愛と価値に。ね、ママ。
 もういいから、こっちへおいで。
 そして一緒に遊ぼう。
 ずっと、ずっと、ずっと―――。
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