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本編
懲りないマリアンヌ様(中)
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王宮について、通されたサロンに行くと、そこにはフィリップ様の執事長の方がお迎えをしてくださいました。
「レティシア様、この度はお茶会に来てくださってありがとうございます」
お茶会の主催は王妃様ということになっている筈なのですけれど、セッティングされたテーブルは一席のみ。
「こちらこそお招きありがとうございます」
「もうすぐマリアンヌ様がいらっしゃいますので」
わたくしは執事長の方が示された席に着くことにして、マリアンヌ様の登場を待つことにしましたわ。
しばらくして、マリアンヌ様がいらっしゃいました。
男爵令嬢の時よりもずっと豪華な装いで、わたくしの知らないご令嬢を2人引き連れて。
「レティシア様、ご機嫌よう」
フィリップ様と婚約したとはいえ、王太子妃になるまではわたくしの方が立場が上なのにご挨拶をされました。
「マリアンヌ様、この度はお招きありがとうございます」
「もうすぐ、あなたとも親戚になるのだから、ゆっくり話をしたいと思ってお義母様にお願いしてお席を設けていただいたの。レティシア様もいろいろお忙しいでしょうから、こういう機会でもないとね」
「まあ、そうでしたの。わたくしはてっきり王妃様もいらっしゃると思っていたのですけれど」
「今日は主にあなたと私だけよ。この2人は隣国のご令嬢の方達だけど、あまり言葉が得意ではないから、気にしなくていいわ」
隣国のご令嬢たちは、マリアンヌ様の会話の合間を縫って、
「フローレンス公国公爵令嬢のリーナ・フローレンスです。お久しぶりですわね、レティシア様」
「初めまして、レティシア様、フローレンス様の従姉妹のニコレッタ・フローレンス、公国の第三王女ですわ」
とフローレンス語でご挨拶なさいました。
わたくしの記憶が確かならば、リーナ様は王弟のカルロス様に昨年嫁がれた侯爵令嬢で、第三王女のニコレッタ様も、わたくしの国の言葉を流暢に話せる筈ですのに。
「お会いしたのは昨年の結婚でしたわね。リーナ様。ニコレッタ様も大きくなられて、本当にお久しぶりです」
「この度は王妃様主催の晩餐会に招かれてこちらに参ったのですけれど、まさか男爵令嬢の王太子妃教育の練習素材にされるとは思ってもおりませんでしたわ。フローレンス語と習っておられるみたいだけれど、外国語より先に学ぶことがあるのではとわたくしは思うんですけれど」
「言葉がわからないふりをするのはまあ、苦痛ではないけれど、この方、言葉が話せない相手だとすごく変化のある方だと思いましたわ」
お二人ともマリアンヌ様のフローレンス語の上達のために話し相手として晩餐会まで母国語で話しかけるように王妃様に頼まれたそうですけれど、会話は簡単なものしかできないのだとか。
かなり辛辣なことをいわれているのにマリアンヌ様はさっぱり理解していないみたいで、
「とりあえず、お茶にしましょう!」
と主席に座られましたわ。わたくしたちはびっくりしたんですけれど、まあ、ここで説明するのはわたくしたちの役目ではない為、空いている席に座りましたわ。
わたくしたちがお席に着くと、タイミングを計ったかのように色々なお菓子が運び込まれてきました。
「まあ、ルクレツィアのお菓子はやっぱり種類が豊富ね!」
まだ13歳のニコレッタ様が子供らしい微笑みを浮かべておっしゃられて、香り豊かな紅茶が注がれると、お茶会が
開始されましたの。
「2人にことは気にしないで、いろいろ話しましょう!このところフローレンス語三昧で辟易してたの!」
マリアンヌ様のお相手から解放されたお二人のご令嬢方は母国語で楽しそうに会話しながらケーキを摘まれているのだけれど、
「王太子妃教育大変そうですのね」
とわたくしが相槌を打ったのを皮切りに、どれだけ大変なのかトーク&自慢が始まってしまいましたわ。
「フィリップ様と婚約してから、レティシア様が婚約に乗り気でない理由がわかった気がしたわ」
わたくしはあくまでお役目を果たすだけで、乗り気とか乗り気でないとかそういうレベルの問題ではなかったのですけれど、マリアンヌ様はお妃教育が大変だからやりたくなかったのよねーという線でお話を進めていかれるので、わたくし、少し頭が痛くなりましたわ。
「でも、フィリップ様はよくしてくださいますでしょう?」
わたくしの言葉にマリアンヌ様の瞳が曇りましたの。
「この結婚に皇太后様が反対だったらしくて、納得させるために業績を上げるんだといって執務に励みすぎてあまり一緒にいる時間がないの。お部屋も離れているから、偶然にお会いすることもないしね」
「そうなんですの。大変ですわね」
「ええ。フィリップ様は大好きだけれど、アリステア様あたりにしとけば楽だったかなって思っちゃうわ」
とわたくしに対してすごく失礼な言葉を吐かれましたわ。
リーナ様とニコレッタ様のフォークが一瞬止まりましたので、お二人ともびっくりなさってたと思います。勿論王女と王弟の妻ですのでそんな動揺は見せずににこやかに会話を続けておられましたけれど。
公爵家も男爵令嬢のマリアンヌ様からすればそのまま何も教育をされることなく結婚するなんてないのだけれど、わたくしの場合同じ位のお家だから、学ぶことはあまりないのですけれどね。公爵令嬢としての淑女教育は済ませておりますし。
「で、レティシア様はどんな感じなの?」
とわたくしとアリステア様のことを聞いてこられましたので、
「あいかわらずでございます。この間婚約パーティーをしましたので、式までの準備をするだけですわ」
「そーなんだ。。いーなー。楽で」
わたくしはどういうリアクションをしていいのかわからなかったので、曖昧に笑ってショコラのケーキを口に入れましたわ。
こうして波乱のお茶会の幕が開きましたの。
「レティシア様、この度はお茶会に来てくださってありがとうございます」
お茶会の主催は王妃様ということになっている筈なのですけれど、セッティングされたテーブルは一席のみ。
「こちらこそお招きありがとうございます」
「もうすぐマリアンヌ様がいらっしゃいますので」
わたくしは執事長の方が示された席に着くことにして、マリアンヌ様の登場を待つことにしましたわ。
しばらくして、マリアンヌ様がいらっしゃいました。
男爵令嬢の時よりもずっと豪華な装いで、わたくしの知らないご令嬢を2人引き連れて。
「レティシア様、ご機嫌よう」
フィリップ様と婚約したとはいえ、王太子妃になるまではわたくしの方が立場が上なのにご挨拶をされました。
「マリアンヌ様、この度はお招きありがとうございます」
「もうすぐ、あなたとも親戚になるのだから、ゆっくり話をしたいと思ってお義母様にお願いしてお席を設けていただいたの。レティシア様もいろいろお忙しいでしょうから、こういう機会でもないとね」
「まあ、そうでしたの。わたくしはてっきり王妃様もいらっしゃると思っていたのですけれど」
「今日は主にあなたと私だけよ。この2人は隣国のご令嬢の方達だけど、あまり言葉が得意ではないから、気にしなくていいわ」
隣国のご令嬢たちは、マリアンヌ様の会話の合間を縫って、
「フローレンス公国公爵令嬢のリーナ・フローレンスです。お久しぶりですわね、レティシア様」
「初めまして、レティシア様、フローレンス様の従姉妹のニコレッタ・フローレンス、公国の第三王女ですわ」
とフローレンス語でご挨拶なさいました。
わたくしの記憶が確かならば、リーナ様は王弟のカルロス様に昨年嫁がれた侯爵令嬢で、第三王女のニコレッタ様も、わたくしの国の言葉を流暢に話せる筈ですのに。
「お会いしたのは昨年の結婚でしたわね。リーナ様。ニコレッタ様も大きくなられて、本当にお久しぶりです」
「この度は王妃様主催の晩餐会に招かれてこちらに参ったのですけれど、まさか男爵令嬢の王太子妃教育の練習素材にされるとは思ってもおりませんでしたわ。フローレンス語と習っておられるみたいだけれど、外国語より先に学ぶことがあるのではとわたくしは思うんですけれど」
「言葉がわからないふりをするのはまあ、苦痛ではないけれど、この方、言葉が話せない相手だとすごく変化のある方だと思いましたわ」
お二人ともマリアンヌ様のフローレンス語の上達のために話し相手として晩餐会まで母国語で話しかけるように王妃様に頼まれたそうですけれど、会話は簡単なものしかできないのだとか。
かなり辛辣なことをいわれているのにマリアンヌ様はさっぱり理解していないみたいで、
「とりあえず、お茶にしましょう!」
と主席に座られましたわ。わたくしたちはびっくりしたんですけれど、まあ、ここで説明するのはわたくしたちの役目ではない為、空いている席に座りましたわ。
わたくしたちがお席に着くと、タイミングを計ったかのように色々なお菓子が運び込まれてきました。
「まあ、ルクレツィアのお菓子はやっぱり種類が豊富ね!」
まだ13歳のニコレッタ様が子供らしい微笑みを浮かべておっしゃられて、香り豊かな紅茶が注がれると、お茶会が
開始されましたの。
「2人にことは気にしないで、いろいろ話しましょう!このところフローレンス語三昧で辟易してたの!」
マリアンヌ様のお相手から解放されたお二人のご令嬢方は母国語で楽しそうに会話しながらケーキを摘まれているのだけれど、
「王太子妃教育大変そうですのね」
とわたくしが相槌を打ったのを皮切りに、どれだけ大変なのかトーク&自慢が始まってしまいましたわ。
「フィリップ様と婚約してから、レティシア様が婚約に乗り気でない理由がわかった気がしたわ」
わたくしはあくまでお役目を果たすだけで、乗り気とか乗り気でないとかそういうレベルの問題ではなかったのですけれど、マリアンヌ様はお妃教育が大変だからやりたくなかったのよねーという線でお話を進めていかれるので、わたくし、少し頭が痛くなりましたわ。
「でも、フィリップ様はよくしてくださいますでしょう?」
わたくしの言葉にマリアンヌ様の瞳が曇りましたの。
「この結婚に皇太后様が反対だったらしくて、納得させるために業績を上げるんだといって執務に励みすぎてあまり一緒にいる時間がないの。お部屋も離れているから、偶然にお会いすることもないしね」
「そうなんですの。大変ですわね」
「ええ。フィリップ様は大好きだけれど、アリステア様あたりにしとけば楽だったかなって思っちゃうわ」
とわたくしに対してすごく失礼な言葉を吐かれましたわ。
リーナ様とニコレッタ様のフォークが一瞬止まりましたので、お二人ともびっくりなさってたと思います。勿論王女と王弟の妻ですのでそんな動揺は見せずににこやかに会話を続けておられましたけれど。
公爵家も男爵令嬢のマリアンヌ様からすればそのまま何も教育をされることなく結婚するなんてないのだけれど、わたくしの場合同じ位のお家だから、学ぶことはあまりないのですけれどね。公爵令嬢としての淑女教育は済ませておりますし。
「で、レティシア様はどんな感じなの?」
とわたくしとアリステア様のことを聞いてこられましたので、
「あいかわらずでございます。この間婚約パーティーをしましたので、式までの準備をするだけですわ」
「そーなんだ。。いーなー。楽で」
わたくしはどういうリアクションをしていいのかわからなかったので、曖昧に笑ってショコラのケーキを口に入れましたわ。
こうして波乱のお茶会の幕が開きましたの。
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