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SSの置き場&番外編
転生王女の新婚旅行3
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リード伯爵家の晩餐会は豪華なものだった。
食事は港に面しているため、魚介類が多かった。スペイン料理のパエリアみたいな魚介とご飯の炊いたものや、マリネなどはセシリアも馴染みのあるティールザードのものだったが、オリエント国の料理長が作る東洋料理というものがセシリアの興味を引いた。
オリエントの料理は野菜と魚介を炒めたものや蒸したものが多かったが、調味料に醤油が使われていたり、ちょっとピリッとする豆板醤みたいな唐辛子が入っていたり、ナツメグやクミンのようなヨーロッパ風の大陸にはないエキゾチックな味付けだった。
「まあ、とても美味しい!こんな味食べたことありませんわ!」
「これは私の郷里では定番のお料理ですのよ?」
リード伯爵夫人がにっこりと笑っていう。
本当のことをいうと多分これと似たようなものを前世で食べていた気がするけれど、ぼんやりとしてはっきりとわからない。とりあえずセシリアとしては食べたことはない味だった。
「まあ、オリエント国ですね?」
「ええ。私、あちらの第3王女だったのですけれど、うちの国と貿易をするためによく来ていらした旦那様に見初められて、お嫁に来たんですのよ?」
ティールザードでは貴族人口が少ないためあまり政略結婚という観念はない。上級貴族は皆王家の血筋だし、そもそも争う理由もない。伯爵家も自らの領地経営に忙しくしているため、結婚相手は商売相手の国のそれなりの家の出身の子女が多い。オリエント国はティールザードとの貿易を拡大したいと思っていたため、タイミングよく、リード伯爵の申し入れを受け入れたのだった。鎖国状態がほとんどのオリエント国は多くの外国と付き合うことはせず、狭く深くをモットーに限られた国とだけ付き合ってきたから、国際結婚も貴族の間では珍しかったのだが。
「そうなんですの。ロマンチックですわね?」
セシリアがいうと伯爵夫人が切り返した。
「そういうセシリア様こそ、どういう馴れ初めでエリアス様とお知り合いになったのですか?」
思いもよらなかった質問にセシリアは言葉を詰まらせた。まさか、ガートランドの騎士と姫の駆け落ちなどという本音のロマンスを語るわけにもいかない。
セシリアの身分は異国の男爵令嬢としてのみ伝えられているから、皆、興味心身だ。
「私が、騎士として異国で、修行をしていた時にセシリアに出会って、恋に落ちたので、ティールランドに攫ってきたのですよ」
「まあ!そうでしたのね!」
「ここからすごく遠い小国で、出会いましたの」
エリアスもセシリアも大事なこところは濁しているが、嘘はついていない。
「僕は、恋なんかしない!騎士として剣の道を突き進むと言ってたのにねえ。あんなに女嫌いだったのに」
トールがニヤニヤして言葉を挟む。
「まあ、エリアスは女性がお嫌いでしたの?」
「こいつはこの顔でしょう?それに王子様だったから、ティールザード中の女の子に狙われてたよね?」
「まあ!」
「女なんて、うるさくて、面倒なものだとしか思ってませんでしたね。私の心を動かしたのはセシリア、あなたのみです」
セシリアは伯爵夫妻とその息子の前で告白まがいのことをいわれて顔を真っ赤にさせたので、扇子でその顔を隠した。
「まあ、やはり恋愛結婚はいいですわね、あなた」
「うむ」
リード伯爵夫妻が微笑み合う。
「政略結婚が多い他国では一度も心を交わすことなく、子供だけを作って、貴族の義務を果たす夫婦も多いですものねえ」
「そうなんですか?」
セシリアが興味津々心で尋ねる。
「ええ。ティールザードのような国は特殊なのですわ。他国は貴族もたくさんいるので、派閥争いなどもありますし、国際間の政策のために婚姻が結ばれることがよくありますもの。うちの祖国のように鎖国状態なら関係はありませんが」
「うむ。そうだな。仲良く暮らしていくための努力はするだろうが」
「あら、あなた、無理矢理に嫁がされた場合などは難しいわ。殿方は愛していない相手でもそれなりに子作りの務めは果たせますが、女の身にとっては辛いことよ?」
セシリアはその言葉聞いて、ハインリッヒとの政略結婚の道を選ばなくてよかったと心から思った。
食事は港に面しているため、魚介類が多かった。スペイン料理のパエリアみたいな魚介とご飯の炊いたものや、マリネなどはセシリアも馴染みのあるティールザードのものだったが、オリエント国の料理長が作る東洋料理というものがセシリアの興味を引いた。
オリエントの料理は野菜と魚介を炒めたものや蒸したものが多かったが、調味料に醤油が使われていたり、ちょっとピリッとする豆板醤みたいな唐辛子が入っていたり、ナツメグやクミンのようなヨーロッパ風の大陸にはないエキゾチックな味付けだった。
「まあ、とても美味しい!こんな味食べたことありませんわ!」
「これは私の郷里では定番のお料理ですのよ?」
リード伯爵夫人がにっこりと笑っていう。
本当のことをいうと多分これと似たようなものを前世で食べていた気がするけれど、ぼんやりとしてはっきりとわからない。とりあえずセシリアとしては食べたことはない味だった。
「まあ、オリエント国ですね?」
「ええ。私、あちらの第3王女だったのですけれど、うちの国と貿易をするためによく来ていらした旦那様に見初められて、お嫁に来たんですのよ?」
ティールザードでは貴族人口が少ないためあまり政略結婚という観念はない。上級貴族は皆王家の血筋だし、そもそも争う理由もない。伯爵家も自らの領地経営に忙しくしているため、結婚相手は商売相手の国のそれなりの家の出身の子女が多い。オリエント国はティールザードとの貿易を拡大したいと思っていたため、タイミングよく、リード伯爵の申し入れを受け入れたのだった。鎖国状態がほとんどのオリエント国は多くの外国と付き合うことはせず、狭く深くをモットーに限られた国とだけ付き合ってきたから、国際結婚も貴族の間では珍しかったのだが。
「そうなんですの。ロマンチックですわね?」
セシリアがいうと伯爵夫人が切り返した。
「そういうセシリア様こそ、どういう馴れ初めでエリアス様とお知り合いになったのですか?」
思いもよらなかった質問にセシリアは言葉を詰まらせた。まさか、ガートランドの騎士と姫の駆け落ちなどという本音のロマンスを語るわけにもいかない。
セシリアの身分は異国の男爵令嬢としてのみ伝えられているから、皆、興味心身だ。
「私が、騎士として異国で、修行をしていた時にセシリアに出会って、恋に落ちたので、ティールランドに攫ってきたのですよ」
「まあ!そうでしたのね!」
「ここからすごく遠い小国で、出会いましたの」
エリアスもセシリアも大事なこところは濁しているが、嘘はついていない。
「僕は、恋なんかしない!騎士として剣の道を突き進むと言ってたのにねえ。あんなに女嫌いだったのに」
トールがニヤニヤして言葉を挟む。
「まあ、エリアスは女性がお嫌いでしたの?」
「こいつはこの顔でしょう?それに王子様だったから、ティールザード中の女の子に狙われてたよね?」
「まあ!」
「女なんて、うるさくて、面倒なものだとしか思ってませんでしたね。私の心を動かしたのはセシリア、あなたのみです」
セシリアは伯爵夫妻とその息子の前で告白まがいのことをいわれて顔を真っ赤にさせたので、扇子でその顔を隠した。
「まあ、やはり恋愛結婚はいいですわね、あなた」
「うむ」
リード伯爵夫妻が微笑み合う。
「政略結婚が多い他国では一度も心を交わすことなく、子供だけを作って、貴族の義務を果たす夫婦も多いですものねえ」
「そうなんですか?」
セシリアが興味津々心で尋ねる。
「ええ。ティールザードのような国は特殊なのですわ。他国は貴族もたくさんいるので、派閥争いなどもありますし、国際間の政策のために婚姻が結ばれることがよくありますもの。うちの祖国のように鎖国状態なら関係はありませんが」
「うむ。そうだな。仲良く暮らしていくための努力はするだろうが」
「あら、あなた、無理矢理に嫁がされた場合などは難しいわ。殿方は愛していない相手でもそれなりに子作りの務めは果たせますが、女の身にとっては辛いことよ?」
セシリアはその言葉聞いて、ハインリッヒとの政略結婚の道を選ばなくてよかったと心から思った。
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