転生王女は隣国の冷酷皇太子から逃れて美形騎士と結ばれたい!

Erie

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転生王女の結婚式1

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ガートランドの国王夫妻と楽しい家族の団欒を過ごして、もう少し寝たいと思っていたのに、侍女のエミリアに朝早く起こされた。

「セシリア様!おはようございます」

「んっ…おはよう」

夜着のまま、食事がセットされたテーブルの前に腰掛ける。

「式の準備がありますので、その前に朝食をお食べください」

いつもならダイニングに行くのだが、着替えている時間がないらしい。

焼きたてのパンと、フルーツと野菜といったヘルシーな献立だ。

「ドレスのサイズが変わるといけませんので、これだけになります。すみません、セシリア様」

「えっ、いいのよ?お腹が苦しい状態で結婚式なんてしたら倒れてしまうわ」

セシリアはパンを1つとサラダを1口、2口食べた後、フルーツを食しただけで、食事を終えた。

「ガートランドの国王夫妻はすでに出られました」

「まあ!もう?」

「ええ。こちらでのお支度はそんなに時間のかかるご衣装では後妻ませんでしたから。あまり豪華な格好で目立つのは得策ではありませんから、こちらで適当な服装を選ばせていただきました」

「そうなの。ありがとう」

「まずは、ご入浴をさせていただきます」

セシリアの食事が終わるとすぐにエミリアの他に4人の侍女たちが入ってきた。そして、公爵家の大浴室に案内された。寝室についている浴室しか使ったことにないセシリアは、大浴室があることを知らなかったが、数代前に公爵が異国に旅して際にお風呂好きになり作らせたそうだ。


ガートランドの王家のものよりも小規模だが、それでも大人が5人は入れる広さの大理石の浴室で、浴室の周りには洗い場があり、同じ大理石で横たわれるベンチみたいなものがあった。

髪と体を入念に洗われて、それから大理石のベンチに横たわらされて、香油を塗り込まれる。マッサージも兼ねて、たっぷり1時間入浴をした後、結婚式用の新しい白いコルセットとドロワーズを手早くセシリアの体に付けていく。

「やっぱり、朝食は軽めでよかったわね」

コルセットで、閉められた腰は一層細く、セシリアの普通程度の胸もさらに豊かなシルエットになる。

「ええ。これでも緩めに締めましたから、卒倒することはないと思います」

「ありがとう、エミリア」

アンダードレスを履いて、ウエディングドレスを身につけたセシリアは妖精姫のようだ。

侍女たちは鏡に映るセシリアの姿を見て、満足そうに微笑みを浮かべた。

「セシリア様、お綺麗ですよ」

「ええ。とても、美しい」

「旦那様が卒倒するぐらいの出来ですわ」

まだ、ヘアと化粧をしていない状態でここまで綺麗なのだから、仕上げた後は神々しいまでの美しさになることだろう。

ブーケとペアの白バラを髪に飾るために編み込んでいく。

そして、化粧はセシリアの美しさと純粋さを際立たせるためにナチュラルに仕上げることになった。

白い肌はさらに白く、薔薇色の頬を際立たせるように。桜色の唇は色合いと光沢をのせる。

日頃、主人のおしゃれのお手伝いをすることに飢えていた侍女たちは腕の見せ所だとセシリアを完璧な美少女に仕立て上げた。

「これでどうでしょうか?」

鏡の前にセシリアは今までのセシリア史上1番の美しさを放っていた。

「まあ、すごいわ」

「ご満足でしょうか?」

「完璧よ。ありがとう」

セシリアの言葉に気を良くした侍女たちは仕上げのアクセサリーと手袋とベールを運んできた。

「エリアス様の瞳の色の首飾りとイヤリングでございます」

「まあ、本当にそっくりだわ!」

薄いラベンダーの宝石がキラキラと輝いている。

ティールザードの慣習では花嫁は花婿の色を身につけるのだ。

紫の宝石の首飾りとイヤリングをつけ、手袋を付けて、そして、ベールが運ばれてきた。ベールはそんなに長いものではないが、やはり、ベールを持つ人が必要になる為、一番最後に付けられた。公爵家は元王族だが、王族ではない為ティアラはつけることはできない。なので、花かんむりの上からつけられることになる。顔を隠すベールを上げれば花かんむりが見えて、その後ろからベールが垂れ下がるように仕上げられた。

「さあ、できました。ティールザード寺院までまいりましょう」

馬車はすでに用意されており、エミリアと共に乗り込んで寺院を目指した。






























































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