45 / 78
ティールザードの戦い
しおりを挟む
エリアスはリーラの矢を残りの影たちに放つ。それは見事に命中して、ハインリッヒの影を一掃した。
「待てといった私の声が聞こえなかったのか?」
振り返ると、ルーレシアの皇太子、ハインリッヒがエリアスを憎々しげに見つめている。
「私は愛しい人以外の誰の指図も受けません」
「セシリアを返してもらおう。あれは私のものだ」
「ガートランドとルーレシアの婚姻は結ばれず、正式に破棄されたことはあなたもご存知でしょう?」
「セシリアは生きている。そして、あれが生きている以上私のものになる。一介の騎士が王族に楯突こうなんて死罪に値する。私の影たちを消した罪も重い。私の手で直接お前を葬ってやろう」
ハインリッヒはそういって剣を抜いた。
「あの方を傷つけた罪、償っていただきます」
エリアスも剣を抜いて、構えた。
ルーレシアの皇太子は大陸でも大変戦いのスキルが高く「紫の死神」という通り名が付く程、たくさんの命を血祭りに上げてきた剣の名手だ。
やはり噂通りだ。一瞬の隙もない。
エリアスと自分と同じ瞳の死神を向かい合う。
両者一歩も動かない。
剣を構えながら、詠唱を唱えていく。
「リーラの矢、シルフィールドの刃、集い、交じりて、剣に宿れ」
エリアスの言葉で彼の剣は光を纏う。
エリアスの剣から光が放たれ、ハインリッヒを撃ち抜いた。
だが、それは致命傷にはならず、皇太子の体を包む闇に飲まれていく。
「なっ…馬鹿な!」
「愚かなのはお前の方だ。今度は私がお返しをする番だ」
その言葉と共にハインリッヒが切り込んできた。
キーン、キーン、と剣を打ち合う音が響く。
ハインリッヒの腕は噂通り、かなりのもので隙が無いのと、すごい速さで剣で切り込んでくる為、ルーレシアで1、2を争う騎士といわれているエリアスさえ自衛するのに手一杯だ。
「ガートランドの騎士も大したことはないな」
「姫様の祖国を貶す言葉は許しません」
「これからはあの女の国はルーレシアになる」
「あの方は私の愛しい方です。あなたには指一本触れさせません!」
剣を交わしては、離れるといった動作が繰り返された。
「私に命令するでない」
「そのセリフあなたにそっくりお返しします」
「シルフィールドの刃よ、我の声を聞け、闇を切り裂け!」
エリアスの詠唱で出させた風の刃はハインリッヒの肩と髪を切り裂いたが、
闇に飲み込まれて効力を失っていく。
「無駄だ、といった筈だ」
ハインリッヒが振るった剣から闇の刃がエリアスに向かって放たれた。
それは光の防御魔法によって弾かれたが、このまま戦いが続けばどこまで持ちこたえられるかわからない。
「もう、遊びは終わりだ」
ハインリッヒは力任せに剣を振るうのではなく、的確に弱点を突いてくる。そしてそれはエリアスの右肩を貫いた。
「うっ!」
負けるわけにはいかない。エリアスが死ねば馬車の周りの光の壁も消える。
「エリアス!エリアス!」
エリアスの声を聞いて馬車の中にいるセシリアの悲鳴が響く。
「姫、私は、大丈夫です。絶対にここに来てはなりませんよ!」
利き手の肩を突かれて、互角だった剣の威力が半減している。
「やはり、お前がセシリアを守護していたのだな」
「あの方は私の光。私の命に代えてもお守りします」
「ふっ、面白い。ここでお前が死ねば、大人しくルーレシアに戻ることだろう」
「そうはさせない」
2本の剣が重なり合い、ハインリッヒの剣はエリアスの剣を押し返し、エリアスの体を切り裂こうとした時、エリアスの体から光が放たれた。
それは幾千もの矢になりハインリッヒを貫く。
「そんな馬鹿な…」
森が光に包まれた瞬間、ハインリッヒの体が地面に倒れ込んだ。
エリアスは最後の力を振り絞ると剣を突き立てた。
それと同時に馬車を覆っていた光が消える。
馬車からセシリアが出て来た時、
ルーレシアの皇太子とエリアス両名が地面に倒れていた。
両者は地面を染め上げる血で赤く染まっている。
「きゃあああああああ!エリアス!エリアス!」
セシリアは目の前に広がる光景を見て、気を失った。
「待てといった私の声が聞こえなかったのか?」
振り返ると、ルーレシアの皇太子、ハインリッヒがエリアスを憎々しげに見つめている。
「私は愛しい人以外の誰の指図も受けません」
「セシリアを返してもらおう。あれは私のものだ」
「ガートランドとルーレシアの婚姻は結ばれず、正式に破棄されたことはあなたもご存知でしょう?」
「セシリアは生きている。そして、あれが生きている以上私のものになる。一介の騎士が王族に楯突こうなんて死罪に値する。私の影たちを消した罪も重い。私の手で直接お前を葬ってやろう」
ハインリッヒはそういって剣を抜いた。
「あの方を傷つけた罪、償っていただきます」
エリアスも剣を抜いて、構えた。
ルーレシアの皇太子は大陸でも大変戦いのスキルが高く「紫の死神」という通り名が付く程、たくさんの命を血祭りに上げてきた剣の名手だ。
やはり噂通りだ。一瞬の隙もない。
エリアスと自分と同じ瞳の死神を向かい合う。
両者一歩も動かない。
剣を構えながら、詠唱を唱えていく。
「リーラの矢、シルフィールドの刃、集い、交じりて、剣に宿れ」
エリアスの言葉で彼の剣は光を纏う。
エリアスの剣から光が放たれ、ハインリッヒを撃ち抜いた。
だが、それは致命傷にはならず、皇太子の体を包む闇に飲まれていく。
「なっ…馬鹿な!」
「愚かなのはお前の方だ。今度は私がお返しをする番だ」
その言葉と共にハインリッヒが切り込んできた。
キーン、キーン、と剣を打ち合う音が響く。
ハインリッヒの腕は噂通り、かなりのもので隙が無いのと、すごい速さで剣で切り込んでくる為、ルーレシアで1、2を争う騎士といわれているエリアスさえ自衛するのに手一杯だ。
「ガートランドの騎士も大したことはないな」
「姫様の祖国を貶す言葉は許しません」
「これからはあの女の国はルーレシアになる」
「あの方は私の愛しい方です。あなたには指一本触れさせません!」
剣を交わしては、離れるといった動作が繰り返された。
「私に命令するでない」
「そのセリフあなたにそっくりお返しします」
「シルフィールドの刃よ、我の声を聞け、闇を切り裂け!」
エリアスの詠唱で出させた風の刃はハインリッヒの肩と髪を切り裂いたが、
闇に飲み込まれて効力を失っていく。
「無駄だ、といった筈だ」
ハインリッヒが振るった剣から闇の刃がエリアスに向かって放たれた。
それは光の防御魔法によって弾かれたが、このまま戦いが続けばどこまで持ちこたえられるかわからない。
「もう、遊びは終わりだ」
ハインリッヒは力任せに剣を振るうのではなく、的確に弱点を突いてくる。そしてそれはエリアスの右肩を貫いた。
「うっ!」
負けるわけにはいかない。エリアスが死ねば馬車の周りの光の壁も消える。
「エリアス!エリアス!」
エリアスの声を聞いて馬車の中にいるセシリアの悲鳴が響く。
「姫、私は、大丈夫です。絶対にここに来てはなりませんよ!」
利き手の肩を突かれて、互角だった剣の威力が半減している。
「やはり、お前がセシリアを守護していたのだな」
「あの方は私の光。私の命に代えてもお守りします」
「ふっ、面白い。ここでお前が死ねば、大人しくルーレシアに戻ることだろう」
「そうはさせない」
2本の剣が重なり合い、ハインリッヒの剣はエリアスの剣を押し返し、エリアスの体を切り裂こうとした時、エリアスの体から光が放たれた。
それは幾千もの矢になりハインリッヒを貫く。
「そんな馬鹿な…」
森が光に包まれた瞬間、ハインリッヒの体が地面に倒れ込んだ。
エリアスは最後の力を振り絞ると剣を突き立てた。
それと同時に馬車を覆っていた光が消える。
馬車からセシリアが出て来た時、
ルーレシアの皇太子とエリアス両名が地面に倒れていた。
両者は地面を染め上げる血で赤く染まっている。
「きゃあああああああ!エリアス!エリアス!」
セシリアは目の前に広がる光景を見て、気を失った。
0
お気に入りに追加
915
あなたにおすすめの小説
異世界転移したら、推しのガチムチ騎士団長様の性癖が止まりません
冬見 六花
恋愛
旧題:ロングヘア=美人の世界にショートカットの私が転移したら推しのガチムチ騎士団長様の性癖が開花した件
異世界転移したアユミが行き着いた世界は、ロングヘアが美人とされている世界だった。
ショートカットのために醜女&珍獣扱いされたアユミを助けてくれたのはガチムチの騎士団長のウィルフレッド。
「…え、ちょっと待って。騎士団長めちゃくちゃドタイプなんですけど!」
でもこの世界ではとんでもないほどのブスの私を好きになってくれるわけない…。
それならイケメン騎士団長様の推し活に専念しますか!
―――――【筋肉フェチの推し活充女アユミ × アユミが現れて突如として自分の性癖が目覚めてしまったガチムチ騎士団長様】
そんな2人の山なし谷なしイチャイチャエッチラブコメ。
●ムーンライトノベルズで掲載していたものをより糖度高めに改稿してます。
●11/6本編完結しました。番外編はゆっくり投稿します。
●11/12番外編もすべて完結しました!
●ノーチェブックス様より書籍化します!
色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました
灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。
恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。
【R18】氷の悪女の契約結婚~愛さない宣言されましたが、すぐに出て行って差し上げますのでご安心下さい
吉川一巳
恋愛
老侯爵の愛人と噂され、『氷の悪女』と呼ばれるヒロインと結婚する羽目に陥ったヒーローが、「爵位と資産の為に結婚はするが、お前みたいな穢らわしい女に手は出さない。恋人がいて、その女を実質の妻として扱うからお前は出ていけ」と宣言して冷たくするが、色々あってヒロインの真実の姿に気付いてごめんなさいするお話。他のサイトにも投稿しております。R18描写ノーカット版です。
大嫌いなアイツが媚薬を盛られたらしいので、不本意ながらカラダを張って救けてあげます
スケキヨ
恋愛
媚薬を盛られたミアを救けてくれたのは学生時代からのライバルで公爵家の次男坊・リアムだった。ほっとしたのも束の間、なんと今度はリアムのほうが異国の王女に媚薬を盛られて絶体絶命!?
「弟を救けてやってくれないか?」――リアムの兄の策略で、発情したリアムと同じ部屋に閉じ込められてしまったミア。気が付くと、頬を上気させ目元を潤ませたリアムの顔がすぐそばにあって……!!
『媚薬を盛られた私をいろんな意味で救けてくれたのは、大嫌いなアイツでした』という作品の続編になります。前作は読んでいなくてもそんなに支障ありませんので、気楽にご覧ください。
・R18描写のある話には※を付けています。
・別サイトにも掲載しています。
【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」
「え、じゃあ結婚します!」
メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。
というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。
そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。
彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。
しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。
そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。
そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。
男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。
二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。
◆hotランキング 10位ありがとうございます……!
――
◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
かつて私を愛した夫はもういない 偽装結婚のお飾り妻なので溺愛からは逃げ出したい
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※また後日、後日談を掲載予定。
一代で財を築き上げた青年実業家の青年レオパルト。彼は社交性に富み、女性たちの憧れの的だった。
上流階級の出身であるダイアナは、かつて、そんな彼から情熱的に求められ、身分差を乗り越えて結婚することになった。
幸せになると信じたはずの結婚だったが、新婚数日で、レオパルトの不実が発覚する。
どうして良いのか分からなくなったダイアナは、レオパルトを避けるようになり、家庭内別居のような状態が数年続いていた。
夫から求められず、苦痛な毎日を過ごしていたダイアナ。宗教にすがりたくなった彼女は、ある時、神父を呼び寄せたのだが、それを勘違いしたレオパルトが激高する。辛くなったダイアナは家を出ることにして――。
明るく社交的な夫を持った、大人しい妻。
どうして彼は二年間、妻を求めなかったのか――?
勘違いですれ違っていた夫婦の誤解が解けて仲直りをした後、苦難を乗り越え、再度愛し合うようになるまでの物語。
※本編全23話の完結済の作品。アルファポリス様では、読みやすいように1話を3〜4分割にして投稿中。
※ムーンライト様にて、11/10~12/1に本編連載していた完結作品になります。現在、ムーンライト様では本編の雰囲気とは違い明るい後日談を投稿中です。
※R18に※。作者の他作品よりも本編はおとなしめ。
※ムーンライト33作品目にして、初めて、日間総合1位、週間総合1位をとることができた作品になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる