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チェシャーフィールドの休日
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チェシャーフィールドに来て3ヶ月。
セシリアのヒーリングは当初の予想より順調に進み、エリアスの訓練も佳境に入っていた。
「もうレムリアにもすっかり慣れましたね」
「ええ」
新鮮なフルーツがふんだんに使われている朝食を取りながら、ほとんど完治に向かっているセシリアに向かって、
エリアスは微笑んだ。
「エリアスは?お稽古の調子はどう?」
「このままいけばあと、1ヶ月ほどでマスターできそうです」
エリアスがしている修行は普通の者なら倒れるぐらいキツイもので精神力がないと無理だ。
「まあ、そんなに進んでいるの?」
「ええ。セシリア様の治療も進んでいることですし、私もさらに頑張ることにしました」
「まあ!でも大丈夫なの?」
「ええ。師匠にも筋がいいといわれてますし、別の魔法使いになるためにしているわけじゃありませんから、防御の魔法さえ会得できればいいだけですしね」
エリアスはそうやって微笑むが愛しい姫を守るために寝る間も惜しんで修行をしていた。
「そうなの?」
「アシュタル様のお話では来月にはもう良くなりそうなのでしょう?」
「ええ」
「だから私もそれまでに技を習得して、早く母国に帰れるようにしますから。1日も早くあなたを私の花嫁にしたいのです。セシリア様」
「ありがとう。エリアス」
チェシャーフィールドに着いてから、キスとハグ以外のことは全くしていない。治療に専念してください、とエリアスは繰り返す。
愛する人との甘い時間ならいいと思うのに。
ご飯と食べる時や眠る時は一緒にいてくれるが、基本的には別行動だ。セシリアはヒーリングに励み、エリアスは光の防御の魔法を学んで1日が過ぎていく。
ここにいる目的はそうなのだから、確かにいいのだけれど…。
エリアスとデートさえしていないとセシリアは最近少し落ち込んでいた。
「あのね、エリアス。私のお願いを聞いて欲しいの」
「何でしょうか?」
「久しぶりにデート、して欲しいの」
セシリアの言葉にエリアスは破顔する。
「デート、ですか?」
「ええ。エリアスともっと一緒にいたいの」
ウジウジと悩むのは性に合わないセシリアは望んでいることを愛する男に伝えた。
「わかりました。明後日の週末は姫もヒーリングがないでしょう?その日に出かけましょう」
◇ ◇ ◇
エリアスがセシリアを連れて来たデートスポットは恋人たちの湖と呼ばれるレティシア湖だった。
「まあ、綺麗!」
澄み渡る湖面には白鳥がいる。豊かな緑の森の中にある湖はレムリアの人気デートスポットだ。
地元の住民や師匠のシリウスに聞いてここを選んだのだ。
訪れた恋人たちには愛の女神レティシアから祝福があり、永遠の愛が約束されるという。
「気に入りましたか?」
「ええ!とっても!」
宿の食事処にピクニック用の食事も用意してもらって、湖畔でおしゃべりをしながら、ワインと美味しい食事に舌鼓を打った。
「エリアス、太陽の下でのご飯はどうしてこんなに美味しいのかしら?」
「どうしてでしょうねえ?あなたとこんな風にのんびりとした時間を過ごすのは本当に久しぶりですね」
エリアスはセシリアにフルーツやサラダ、それに小さく切り分けられたサンドイッチなどを渡しながら、キラキラ瞳を輝かせて声を弾ませる美しい姫を見つめた。
「エリアス?」
「時々、あなたとこうしているのは夢でないかと思う時があります」
「えっ?」
「ずっと、ずっと恋い焦がれてきたあなたが私の腕の中にいるなんて、夢のようです」
「まあ、エリアス」
フルーツを口に入れていたセシリアはその言葉に涙ぐみそうになった。
「私も、いっしょにいられて嬉しいわ。今も夢みたい」
ガートランドの城にいたときよりもずっと粗末な服を着て、質素な食事をしているが、セシリアは幸せだった。
「1日も早く、私の祖国で結婚式をあげましょう」
後ろから抱きしめて囁くエリアスに頬を染めながら、セシリアは頷いた。
セシリアのヒーリングは当初の予想より順調に進み、エリアスの訓練も佳境に入っていた。
「もうレムリアにもすっかり慣れましたね」
「ええ」
新鮮なフルーツがふんだんに使われている朝食を取りながら、ほとんど完治に向かっているセシリアに向かって、
エリアスは微笑んだ。
「エリアスは?お稽古の調子はどう?」
「このままいけばあと、1ヶ月ほどでマスターできそうです」
エリアスがしている修行は普通の者なら倒れるぐらいキツイもので精神力がないと無理だ。
「まあ、そんなに進んでいるの?」
「ええ。セシリア様の治療も進んでいることですし、私もさらに頑張ることにしました」
「まあ!でも大丈夫なの?」
「ええ。師匠にも筋がいいといわれてますし、別の魔法使いになるためにしているわけじゃありませんから、防御の魔法さえ会得できればいいだけですしね」
エリアスはそうやって微笑むが愛しい姫を守るために寝る間も惜しんで修行をしていた。
「そうなの?」
「アシュタル様のお話では来月にはもう良くなりそうなのでしょう?」
「ええ」
「だから私もそれまでに技を習得して、早く母国に帰れるようにしますから。1日も早くあなたを私の花嫁にしたいのです。セシリア様」
「ありがとう。エリアス」
チェシャーフィールドに着いてから、キスとハグ以外のことは全くしていない。治療に専念してください、とエリアスは繰り返す。
愛する人との甘い時間ならいいと思うのに。
ご飯と食べる時や眠る時は一緒にいてくれるが、基本的には別行動だ。セシリアはヒーリングに励み、エリアスは光の防御の魔法を学んで1日が過ぎていく。
ここにいる目的はそうなのだから、確かにいいのだけれど…。
エリアスとデートさえしていないとセシリアは最近少し落ち込んでいた。
「あのね、エリアス。私のお願いを聞いて欲しいの」
「何でしょうか?」
「久しぶりにデート、して欲しいの」
セシリアの言葉にエリアスは破顔する。
「デート、ですか?」
「ええ。エリアスともっと一緒にいたいの」
ウジウジと悩むのは性に合わないセシリアは望んでいることを愛する男に伝えた。
「わかりました。明後日の週末は姫もヒーリングがないでしょう?その日に出かけましょう」
◇ ◇ ◇
エリアスがセシリアを連れて来たデートスポットは恋人たちの湖と呼ばれるレティシア湖だった。
「まあ、綺麗!」
澄み渡る湖面には白鳥がいる。豊かな緑の森の中にある湖はレムリアの人気デートスポットだ。
地元の住民や師匠のシリウスに聞いてここを選んだのだ。
訪れた恋人たちには愛の女神レティシアから祝福があり、永遠の愛が約束されるという。
「気に入りましたか?」
「ええ!とっても!」
宿の食事処にピクニック用の食事も用意してもらって、湖畔でおしゃべりをしながら、ワインと美味しい食事に舌鼓を打った。
「エリアス、太陽の下でのご飯はどうしてこんなに美味しいのかしら?」
「どうしてでしょうねえ?あなたとこんな風にのんびりとした時間を過ごすのは本当に久しぶりですね」
エリアスはセシリアにフルーツやサラダ、それに小さく切り分けられたサンドイッチなどを渡しながら、キラキラ瞳を輝かせて声を弾ませる美しい姫を見つめた。
「エリアス?」
「時々、あなたとこうしているのは夢でないかと思う時があります」
「えっ?」
「ずっと、ずっと恋い焦がれてきたあなたが私の腕の中にいるなんて、夢のようです」
「まあ、エリアス」
フルーツを口に入れていたセシリアはその言葉に涙ぐみそうになった。
「私も、いっしょにいられて嬉しいわ。今も夢みたい」
ガートランドの城にいたときよりもずっと粗末な服を着て、質素な食事をしているが、セシリアは幸せだった。
「1日も早く、私の祖国で結婚式をあげましょう」
後ろから抱きしめて囁くエリアスに頬を染めながら、セシリアは頷いた。
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