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満月の夜の再会
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フィニアンに「チリアの丘」で待つ。
という伝言をもらって、約束の場所に行ってみると、フィニアンはいなかった。満月の夜のチリアの丘は爽やかな風が吹いて、気持ちいい。
私は、草の上に座ってフィニアンを待つことにした。
「だーれだ?」
後ろからいきなり目隠しをされた。
私にとって懐かしい愛しい人の声が耳元で響く。
フィニアン、じゃない。
「…‥」
「あれだけ一緒にいたのに私の声をお忘れになりましたか?セシリア様?」
懐かしさに涙が溢れてきて、振り向くことができない。
「相変わらず私の姫君は泣き虫ですねえ」
いつのまにか目隠しは取り外されて、しなやかな指な指が私の涙を拭う。
「エリアス……」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を見せたくない。
耳元で、甘く心地よい声が響く。
「やっと、見つけました。あれからずっとあなたを探していました。無事でよかった」
「ずっと、怖かった。でもエリアスが来てくれると思って、頑張ったの」
「ええ。わかっています」
「エリアス……ごめんなさい。私のこと嫌いにならないで…」
「私はどんなセシリア様でも愛していますよ。辛かったでしょう?」
エリアスの言葉に今まで溜めていたものが一気に溢れ出す。
ひととおり泣いた私を優しい腕が包み込む。
「あなたが見たい」
「やだ、私、今可愛くないもの」
髪にキスの雨が降り注ぐ。
「セシリア様はどんな時でもお可愛らしくて、ここも、ここも、全て可愛らしい」
エリアスにキスされると、自分の体の全てが綺麗なものに思えてくる。
愛しい人の香りが鼻腔を刺激して、気持ちがだいぶ落ち着いてくる。
エリアスは春の香りがする。
「さあ、顔をあげて?あなたの顔が見たいのです」
「駄目!私、セシリアの顔してないもの!」
「たとえ姿形が変わっていても、あなたはいつだって私の大切なセシリア様です。さあ、あなたの綺麗な瞳を見せてください」
私はその言葉に負けてエリアスを見つめてから彼の胸の中に顔を埋めた。
「セシリア様、お会いしたかった」
「エリアス、会えなくて寂しかったわ」
懐かしい腕の中で、愛しい人に力一杯抱きしめられながら、やっとこの場所に戻ってきたことを実感した。
◇ ◇ ◇
「セシリア様、あなたを愛しています」
セシリアはエリアスの腕の中、チリアの外れの宿にいた。窓からは満月の月明かりが注いでいる。
「エリアス、私もあなたが好き…」
愛しい人はセシリアの肌を優しく抱き、体中に愛のこもった口づけを落としていく。
「ああん」
セシリアは幸せと喜びの中で涙を流しながら、美しい騎士の愛の表現を受け止めていく。
「大丈夫。リラックスして…あなたの全てはとても美しい。私には尊い宝石のようです」
エリアスの腕の中で死んでいたセシリアの細胞が生き返るような気がして、セシリアは久しぶりに受ける愛撫に歓喜の声をあげた。
「エリアス…エリアス、会いたかった…」
「セシリア様、もう二度とあなたを離さない。明日の早朝にここを出て、早く西方に向かいましょう」
「んっ……」
エリアスが全身全霊を込めて彼の愛をセシリアの髪の先から細胞に至るまで刻み込んでいく。
「そして、二人で結婚式を挙げましょう」
「エリアス…っ…ん」
デリケートな陶器を扱うように優しく抱きながら、愛の言葉を繰りしていく。
その言葉を聞く度にセシリアの中の痛みや苦しみが包み込まれて解放されていような気がして、セシリアは彼女の騎士を体中で受け止める。
「エリアス、私、1つわかったことが…あるの、愛する行為は…愛する気持ちが…溢れ出て……んっこっ言葉で表しきれなくて……するものなのね…」
「ええ。そうですよ。これから一生かけてどれほど私があなたを愛しているのか表現させていただきますね」
「エリアス……だいすき…んはあんっ…!」
エリアスの目の前で愛しい青い瞳の少女が息を乱れさせながら彼を見つめて瞳をうるわせている。
深淵の森の魔術師の術は既に解けていた。
黒髪の少女はエリアスが昔から知っている金の髪、サファイア瞳の姫君に戻っている。
「セシリア、あなたを愛しています」
エリアスは今まで失った時間を取り戻すように愛しい姫に己を刻み込んだ。
という伝言をもらって、約束の場所に行ってみると、フィニアンはいなかった。満月の夜のチリアの丘は爽やかな風が吹いて、気持ちいい。
私は、草の上に座ってフィニアンを待つことにした。
「だーれだ?」
後ろからいきなり目隠しをされた。
私にとって懐かしい愛しい人の声が耳元で響く。
フィニアン、じゃない。
「…‥」
「あれだけ一緒にいたのに私の声をお忘れになりましたか?セシリア様?」
懐かしさに涙が溢れてきて、振り向くことができない。
「相変わらず私の姫君は泣き虫ですねえ」
いつのまにか目隠しは取り外されて、しなやかな指な指が私の涙を拭う。
「エリアス……」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を見せたくない。
耳元で、甘く心地よい声が響く。
「やっと、見つけました。あれからずっとあなたを探していました。無事でよかった」
「ずっと、怖かった。でもエリアスが来てくれると思って、頑張ったの」
「ええ。わかっています」
「エリアス……ごめんなさい。私のこと嫌いにならないで…」
「私はどんなセシリア様でも愛していますよ。辛かったでしょう?」
エリアスの言葉に今まで溜めていたものが一気に溢れ出す。
ひととおり泣いた私を優しい腕が包み込む。
「あなたが見たい」
「やだ、私、今可愛くないもの」
髪にキスの雨が降り注ぐ。
「セシリア様はどんな時でもお可愛らしくて、ここも、ここも、全て可愛らしい」
エリアスにキスされると、自分の体の全てが綺麗なものに思えてくる。
愛しい人の香りが鼻腔を刺激して、気持ちがだいぶ落ち着いてくる。
エリアスは春の香りがする。
「さあ、顔をあげて?あなたの顔が見たいのです」
「駄目!私、セシリアの顔してないもの!」
「たとえ姿形が変わっていても、あなたはいつだって私の大切なセシリア様です。さあ、あなたの綺麗な瞳を見せてください」
私はその言葉に負けてエリアスを見つめてから彼の胸の中に顔を埋めた。
「セシリア様、お会いしたかった」
「エリアス、会えなくて寂しかったわ」
懐かしい腕の中で、愛しい人に力一杯抱きしめられながら、やっとこの場所に戻ってきたことを実感した。
◇ ◇ ◇
「セシリア様、あなたを愛しています」
セシリアはエリアスの腕の中、チリアの外れの宿にいた。窓からは満月の月明かりが注いでいる。
「エリアス、私もあなたが好き…」
愛しい人はセシリアの肌を優しく抱き、体中に愛のこもった口づけを落としていく。
「ああん」
セシリアは幸せと喜びの中で涙を流しながら、美しい騎士の愛の表現を受け止めていく。
「大丈夫。リラックスして…あなたの全てはとても美しい。私には尊い宝石のようです」
エリアスの腕の中で死んでいたセシリアの細胞が生き返るような気がして、セシリアは久しぶりに受ける愛撫に歓喜の声をあげた。
「エリアス…エリアス、会いたかった…」
「セシリア様、もう二度とあなたを離さない。明日の早朝にここを出て、早く西方に向かいましょう」
「んっ……」
エリアスが全身全霊を込めて彼の愛をセシリアの髪の先から細胞に至るまで刻み込んでいく。
「そして、二人で結婚式を挙げましょう」
「エリアス…っ…ん」
デリケートな陶器を扱うように優しく抱きながら、愛の言葉を繰りしていく。
その言葉を聞く度にセシリアの中の痛みや苦しみが包み込まれて解放されていような気がして、セシリアは彼女の騎士を体中で受け止める。
「エリアス、私、1つわかったことが…あるの、愛する行為は…愛する気持ちが…溢れ出て……んっこっ言葉で表しきれなくて……するものなのね…」
「ええ。そうですよ。これから一生かけてどれほど私があなたを愛しているのか表現させていただきますね」
「エリアス……だいすき…んはあんっ…!」
エリアスの目の前で愛しい青い瞳の少女が息を乱れさせながら彼を見つめて瞳をうるわせている。
深淵の森の魔術師の術は既に解けていた。
黒髪の少女はエリアスが昔から知っている金の髪、サファイア瞳の姫君に戻っている。
「セシリア、あなたを愛しています」
エリアスは今まで失った時間を取り戻すように愛しい姫に己を刻み込んだ。
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