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セシリアを探して
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私、一人で探してみても、その捜査網はたかが知れている。特に何のてががりもない場合は。
ルーレシアの皇太子も「セシリア探し」をしていることだろう。ルーレシアの皇太子は「影」と呼ばれる彼のみに仕える諜報機関がある。それは12名で構成されており、暗殺能力にも優れている集団だという。本人が見つかれば、皇太子自ら彼女を連れ戻しに行くだろう。12名のうちの1つ影はエリアスと同じく深淵の森に来ていた。向こうはエリアスに気がついていなかったようだが、エリアスは「影」の存在を職務柄知っていたのだ。なので、深淵の森の魔術師の家に長居することもなく姿を消した。ベッキーの話によると、来月宰相でなく、皇太子自ら、チリアに行くことに急遽決まったらしい。あそこは商人の町で武力や戦争にしか興味のない男には無縁の町なのにわざわざ公務に自ら出向くことに疑問を持った。
セシリア様はチリアにいらっしゃるのだろうか?でも何故?ガートランドとチリアはほどんど国交がなかった。
ルーレシアの皇太子がそうするということは「チリアにいる可能性が高い」ということだ。他にも影を送っているのせよ、チリアに出向くということが、引っかかった。
エリアスは、ハインリッヒよりも早くセシリアを見つけるためにその情報を掴むと、早速チリアに向けて馬を飛ばすことにした。
ここからなら、馬を飛ばせば数日で着く。ハインリッヒが来るまでにセシリア様を見つけて安全なところにお連れしなければ。
◇ ◇ ◇
セシリアが我が母上の塔から姿を消した後、あることに気がついた。魔力の残り香があったのだ。誰にも破ることができず、抜け出せないように作られている塔から彼女を連れ出すことは「普通の人間」には不可能なことだ。ならば、連れ出した者は「人間2人を転移できる程の高い魔力を持つ者」ということになる。ガートランドの王宮にはヘルガという魔女がいるが、姫をつれだせる程の魔力を持っていない。姫の護衛に騎士がいたようだが、魔法に秀でているとは聞いてはいない。この大陸中を探しても数えるほどしかそれほど高い魔力を宿した魔術師はいないのだ。それ程高位の魔術師は3人。そのうちの1人はルーレシアの王宮にいる。そしてもう1人は最近他界した。
「ならば、深淵の森の魔術師、か」
ハインリッヒは自分の「影」を大陸中に送ってセシリアを探したが、11の国にはいなかった。ガートランドに帰る筈もないので、あと残りは6つの国になる。6つの影を念のために送ったが、最も能力が高く、高い魔力のある影を深淵の森に送った。しばらくして塔に残されていた魔力の残り香と深淵の森の魔術師の家から漏れる魔力が同じという報告があった。家には結界が貼られており、近づくことはできない。影は家を観察していたが、そこに人の気配がないことに気づき、深淵の森の魔術師がチリアにいるということをアインツ公国の薬屋から聞き出した。チリアの商人に雇われて、しばらくそちらに滞在するので、余分にポーションを売りにきたのだという。セシリアの探査がされていない国はチリアを含めて6国。5つの影を残りの国に送り、6つの影をチリアに送ることにしたハインリッヒは
魔術師が若い娘を連れてチリアに滞在している情報を掴んだ。
「やはり、な」
影の情報からその娘は若いという以外はセシリアに似ていないということだったが、セシリアを攫ったのはこの男で間違いなかった。
私ならどんな魔導を使おうとセシリアかどうかわかる。
自らチリアに向かうことが「その娘がセシリアだと確かめる一番の方法」だと確信したので、宰相が公務で向かう筈だったチリアの貿易の交渉を自らすることにして、急遽チリア行きを決めたのだった。
すぐにでも向かいたかったが、あくまで秘密裡に行動してセシリアを取り戻さないとならないのだ。表向きの理由は「公務」ということにしたほうがいい。ルーレシアからチリアまでは10日の旅になる。2週間後に予定されている公務のスケジュールをこなす為に、ルーレシアで片付けておかなければならない案件を恐ろしいスピードで片付け始めたのだった。
「セシリア、お前は私のものだ。誰にも渡さない」
あの女は私の妃になるはずだった女。あれはその命が尽きるまで私の物だ。私から決して逃れられないように躾始めた愛玩奴隷だ。他の男が手に触れることは許さない。
そして、自分の女を奪った魔術師にどのような制裁を加えようかと考えながら、久々に晴れやかな気分でお茶をしたのだった。
ルーレシアの皇太子も「セシリア探し」をしていることだろう。ルーレシアの皇太子は「影」と呼ばれる彼のみに仕える諜報機関がある。それは12名で構成されており、暗殺能力にも優れている集団だという。本人が見つかれば、皇太子自ら彼女を連れ戻しに行くだろう。12名のうちの1つ影はエリアスと同じく深淵の森に来ていた。向こうはエリアスに気がついていなかったようだが、エリアスは「影」の存在を職務柄知っていたのだ。なので、深淵の森の魔術師の家に長居することもなく姿を消した。ベッキーの話によると、来月宰相でなく、皇太子自ら、チリアに行くことに急遽決まったらしい。あそこは商人の町で武力や戦争にしか興味のない男には無縁の町なのにわざわざ公務に自ら出向くことに疑問を持った。
セシリア様はチリアにいらっしゃるのだろうか?でも何故?ガートランドとチリアはほどんど国交がなかった。
ルーレシアの皇太子がそうするということは「チリアにいる可能性が高い」ということだ。他にも影を送っているのせよ、チリアに出向くということが、引っかかった。
エリアスは、ハインリッヒよりも早くセシリアを見つけるためにその情報を掴むと、早速チリアに向けて馬を飛ばすことにした。
ここからなら、馬を飛ばせば数日で着く。ハインリッヒが来るまでにセシリア様を見つけて安全なところにお連れしなければ。
◇ ◇ ◇
セシリアが我が母上の塔から姿を消した後、あることに気がついた。魔力の残り香があったのだ。誰にも破ることができず、抜け出せないように作られている塔から彼女を連れ出すことは「普通の人間」には不可能なことだ。ならば、連れ出した者は「人間2人を転移できる程の高い魔力を持つ者」ということになる。ガートランドの王宮にはヘルガという魔女がいるが、姫をつれだせる程の魔力を持っていない。姫の護衛に騎士がいたようだが、魔法に秀でているとは聞いてはいない。この大陸中を探しても数えるほどしかそれほど高い魔力を宿した魔術師はいないのだ。それ程高位の魔術師は3人。そのうちの1人はルーレシアの王宮にいる。そしてもう1人は最近他界した。
「ならば、深淵の森の魔術師、か」
ハインリッヒは自分の「影」を大陸中に送ってセシリアを探したが、11の国にはいなかった。ガートランドに帰る筈もないので、あと残りは6つの国になる。6つの影を念のために送ったが、最も能力が高く、高い魔力のある影を深淵の森に送った。しばらくして塔に残されていた魔力の残り香と深淵の森の魔術師の家から漏れる魔力が同じという報告があった。家には結界が貼られており、近づくことはできない。影は家を観察していたが、そこに人の気配がないことに気づき、深淵の森の魔術師がチリアにいるということをアインツ公国の薬屋から聞き出した。チリアの商人に雇われて、しばらくそちらに滞在するので、余分にポーションを売りにきたのだという。セシリアの探査がされていない国はチリアを含めて6国。5つの影を残りの国に送り、6つの影をチリアに送ることにしたハインリッヒは
魔術師が若い娘を連れてチリアに滞在している情報を掴んだ。
「やはり、な」
影の情報からその娘は若いという以外はセシリアに似ていないということだったが、セシリアを攫ったのはこの男で間違いなかった。
私ならどんな魔導を使おうとセシリアかどうかわかる。
自らチリアに向かうことが「その娘がセシリアだと確かめる一番の方法」だと確信したので、宰相が公務で向かう筈だったチリアの貿易の交渉を自らすることにして、急遽チリア行きを決めたのだった。
すぐにでも向かいたかったが、あくまで秘密裡に行動してセシリアを取り戻さないとならないのだ。表向きの理由は「公務」ということにしたほうがいい。ルーレシアからチリアまでは10日の旅になる。2週間後に予定されている公務のスケジュールをこなす為に、ルーレシアで片付けておかなければならない案件を恐ろしいスピードで片付け始めたのだった。
「セシリア、お前は私のものだ。誰にも渡さない」
あの女は私の妃になるはずだった女。あれはその命が尽きるまで私の物だ。私から決して逃れられないように躾始めた愛玩奴隷だ。他の男が手に触れることは許さない。
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