転生王女は隣国の冷酷皇太子から逃れて美形騎士と結ばれたい!

Erie

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新しい朝

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 深淵の森の魔術師がいっていた「特殊な状況」がこういうことだなんて思ってなかった。

 だけど、ハインリッヒの甘い責めを受けたおかげで、私の体は元に戻った。

 それがわかったのは、あの夜から2日間あまり経った頃だった。

「セシリア、いい加減に目を覚ませ」

「…ん…っ…」

 朝の柔らかい光を受けながら、ハインリッヒの口づけで、深い眠りから覚める。

 いつも朝になる前にベッドからいなくなるハインリッヒは私の隣にいて、彼に抱きしめられている。

「ハインリッヒ様?」

「このままお前と楽しんでもいいが、いい加減何か口にしないと体が持たないぞ」

 ハインリッヒは男色に興味がない。なのにこんな下心いっぱいの触り方をするなんて、

 と思いながら、何も纏っていない自分の体をみると、見慣れた柔らかな胸が視界に飛び込んでくる。

「えっ?私…」

「月光花が効いたみたいだな。あの夜、お前が気を失ってから、ずっと、その姿のままだ」

 身体中をペタペタ触って確かめてみる。

 やっぱり、夢じゃない。

「私、元に戻ったのですね」

「ああ。これで、楽しみが2倍になるな」

 紫の瞳に獰猛な光が宿る。

「あのっ、私、体を清めてきます」

 別室で、体に冷たい布を当てて、汗を拭う。ハインリッヒの体液は全然残ってはいない。

 恥ずかしいけれど、彼が魔法で清めてくれたのだろう。

 元の体に戻ったんだわ。

 その瞬間、エリアスの優しい微笑みが脳裏に浮かぶ。

 これでやっとエリアスのお嫁さんになれる。

 ハインリッヒの甘美な誘惑の鎖に繋がれて、このまま生活していくことはしたくなかった。
 
 快楽にのまれて全てを忘れてしまう、触れられただけではしたなく熱を帯びる体。

 エリアスではなく、愛していない男にそういう風に反応してしまう自身を恐れていた。

 体だけでなく、心も必要だわ。

 セシリアが全身全霊で求める相手はハインリッヒではなく、エリアスだ。

 昼も女の体に戻ってしまったからには、夜だけセシリアを求めに来るということは

 なくなるだろう。今以上に激しくなることはわかりきっていた。

 体に与えられる快楽の奴隷になってしまう前に、ここを離れなければ、取り返しがつかなくなってしまう。

 いくら、快楽の声をあげても、セシリアの心はエリアスにあった。

 それにもしこのままここにいたら乙女ゲームの「婚姻による死」のバッドエンドになっちゃうじゃない。

 薄れていく前世の記憶の中で唯一残っているのがハインリッヒによって殺される死の恐怖であった。

 セシリア様、あなたは私が守ります。

 ハインリッヒとは異なる優しい色合いの菫色の瞳が浮かんだ。
 
 幼い頃からセシリアの側にいて、彼女を励まし、守り続けてくれた黒髪の騎士。私の初恋の君。

 エリアス、あなたに会いたい。

 あなたは現在どこにいるの?
 
 早く私を迎えに来て。

 有能な騎士がセシリアを探しているだろうということは確かだった。

 彼に私の居場所を知らせることができれば、ここから抜け出せるだろう。

 私は、自分の体を清めながら、その方法を考え始めた。
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