転生王女は隣国の冷酷皇太子から逃れて美形騎士と結ばれたい！

転生王女の計画

　決意してからがさらに大変だった。エリアスは遠方の故郷である西の果て海の小国を目指して旅の準備で大忙しであった。その間、城を脱出するために欠かせないリーラの実を見つけたり、家族や友人と最後の時間を過ごす段取りをつけるのはセシリアの仕事であった。

「セシリア様、明後日までに、リーラの実を用意しないと、ここから一歩も出られませんよ」

　　自身を殺すという決意してからがさらに大変だった。エリアスは両国と国交のないエリアスの母方の故郷である西の果て独立国を目指して旅の準備で大忙しであった。旅の準備のほとんどは有能な騎士がすでに済ませていたが、城を脱出するために欠かせないリーラの実を見つけたり、家族や友人と最後の時間を過ごす段取りをつけるのはセシリアの仕事であった。

「セシリア様、明後日までに、リーラの実を用意しないと、ここから一歩も出られませんよ」

黒髪に深い紫の瞳を持つ美形で長身の騎士が心配そうにいう。

「ヘルガも見たことのないリーラの実を数日で見つけるなんて、無謀もいいところだわ」

　リーラの実は調合によって、仮死状態にすることができる魔法薬の一種で、満月の夜に姿を表し、光り輝く実として知られている。誠にレアで満月の夜以外には見えないので高額で取引されるが、めったに手に入らない。

「水晶玉でパパッとある場所がみつかればいいのに」

「今夜中に見つからなかったら、他の方法を考えないといけませんね」

「普通にお城を出ることは無理よね。お父様はともかく、宰相の目が光ってるもの」

「他の薬草で仮死状態にするには危険が伴うので、今夜見つかるといいですね」

「ええ」

　城には世界中から集められた様々な魔法植物の庭園がある。魔法で庭園は程よい大きさに縮小されているが、一旦中に入ると、とんでもない広さでヘルガがくれた不明の植物たちが茂っていたりする。魔法のランプがなければ、迷ってしまう。ここになければガートランド中を探してもないといっていいぐらい色々な植物が揃っている。

「満月の夜に乙女しか見つけられないなんて、変な実よね」

「だからこそ貴重なのですよ」

　夜中に森の中を彷徨ううら若き乙女などほとんどいない。ガートランドは比較的安全だが、護衛もつけることなく女が一人歩きをすれば、あっという間に攫われて売られてしまうから。平民はもちろん護衛をつけることのできる貴族の娘たちもリーラの実を探すことに興味を持たない。舞踏会や茶会などの社交に忙しいからだ。

「エリアス、あそこ！」

　森の深いところまで来た頃、月の光の下、オレンジ色の実が光っている。

　エリアスはセシリアが指差す先に真っ先に進むと、リーラの実を掴んだ。その瞬間、輝きは失われ地上に落ちる。

「やはり、乙女でないと手に入れられないようですね。姫様、失礼いたします」

　エリアスはセシリアをリーラの実に手が届くまでの高さに抱き上げる。彼女の白く細い手が実を包むと、一掃に輝きを増した。

「この実がどうしても必要なの。一つだけ頂戴ね」

　セシリアはリーラの木に話しかけて、実をゆっくりともぎ取ると庭園を後にした。