攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
220 / 282
最終章 マキナ 世界構築 篇 《第三部》

第176話「名も無き者、襲来」

しおりを挟む
 立ち尽くしたままのエルブレイドを覗き込むエーシル。

「――ハッ!?」
「うぉ!? ビックリした!」
「……ん? アスフィか。……いや、違う」
「……鋭いですねぇ」
「しかし、混じっている。同化には至っておらんようじゃな」

 ちっ。するどいじいさんですねぇ。

(エーシル、『アンノーン』を倒すには彼の協力が必要不可欠です)

 私一人でも十分です。

(他はそうかもしれない。でも、君が恨んでいる男は別です。あの男だけは君だけでは勝てない・・・・・・・・・

 ……本当にそうお思いですか?

(ええ)

 …………はぁ。分かりました、えぇ分かりましたとも。

「エルブレイド、僕と――」
「ワシと――」
「「え?」」

 同時だった。

「なんだアスフィいってみろ」
「いえ、エルブレイドからどうぞ」
「……ではワシから。……『アンノーン』を討ちたい。協力してくれ」

 これはこれはまさか向こうからお誘いがあるとは、ねぇ?

(……彼にも何か事情が変わったのでしょう。向こうから申し出があるとは思いませんでした。勿論――)

「お断りです」

(何故ですエーシル!)

「うむ……そうか」
「……協力はしませんが、力は貸しましょう。個人的に譲って頂きたい獲物が居ます。それされ残して頂ければ」
「構わん。して、誰のことじゃ?」
「江四留です」
「なんじゃと! 江四留じゃと!?」
「知っているのですか?」
「いや……まぁ少しな」

 ……この言い方、恐らくかなり存じているようですねぇ。

(ここは深堀りせずにいきましょう)

 何故です? 吐かせるべきです。

(そんな時間はありません。今はそれよりもオーディン、彼女達を止めないと)

 ……どう言いますか? 僕はアスフィだよ~って行きますか~?

(彼女達には既に僕らの事はバレています。君のことも)

 ま、でしょうねぇ。ではどうもエーシルです、といって行きますか~?

(……それもそうですね。ここは正直に行きましょう)

 ……一応冗談だったのですが。

(もうバレているのに隠す必要はありません)

 そうですか。

「エルブレイド、まずは先にオーディン達を止めましょう」
「オーディン……うっ」
「大丈夫ですか?」

 エルブレイドが頭を抑え、しゃがみ込んだ。

「……うむ、心配ない。行こう」

 ***

 一方神々は未だ激しい戦いを繰り広げていた。戦況はオーディンが優勢である。

「アリア、君はそもそも戦いに向いていない。私に勝てる訳無いよ。それにマキナ、記憶であるゼウスを失った君もそうだよ?」
「……その中に僕が居ないのはわざとですか?」
「あ、いたんだキャルロット。ゴメンね! 存在感薄くて忘れていたよ」
「生き返ってから皆、僕の扱いが酷くないかい? ……って聞いてないし」

 キャルロットの言葉は残念ながらオーディンには届かなかった。オーディンは今、マキナとアリアを相手にしているからだ。

「――そこまでです! 皆さん」

 少年の声を聞き、この場にいる全員の動きが止まった。
 視線は皆、少年に釘付けである。

「……ついに覚醒したんだね。しかも、良い兆候で」
「アスフィちゃんは大丈夫なの?」
「我のフィーを返せ」
「おいアスフィくん! 何故来たんだ! ここは危険だ! 下がっていたまえ!」

 うるさいですねぇ。

(……殺してはいけない)

 はいはい、分かっていますよ。

「皆さん! どうか落ち着いて! 事情はこの後時間があれば話します! ですから争わないで下さい!」
「…………アスフィよ、来たぞ」
「思っていたより早いですねぇ」

(ふぅ、さて狩りの時間です)

「言われなくとも」

 宮殿の中に白いモヤが漂い始めた。

「おいおい何だこりゃ!?」
「落ち着けガーフィ。レイラちゃんこっちへ! さぁ! 早くパパの元へ!」
「お前はその子の事しか頭にねぇのか」
「当たり前だ! 自分の子を心配しねぇ親がどこにいるってんだ!」
「……そのおたくの娘さんにお前の声届いてないみたいだぞ。嫌われすぎだろうよ」

 その後も何度もレイモンドはレイラに呼びかけた。しかし――

「……おかしい。こんなに呼んでも来ないなんて」
「それ程、嫌われているってことだろ」
「いや、仮にそうでも無視するような子じゃねぇ。振り向く素振りすらない」
「……確かに、聞こえてないようだな。このモヤのせいか?」

 ガーフィは剣を抜こうとするが、

「しまった。猫のあんちゃんに貸したままだった」
「おいおい、なにしてんだよアスフィの父ちゃんよ」
「るせぇ! ……待て、なにか聞こえる……足音だ。誰かこっちに来るぞ! 警戒しろ!」
「け、警戒つったってよ! 俺は魔法使いだぜ? 前衛はあんたら剣士の仕事だろ!?」
「だからその剣が今ねぇんだって!」

 段々足音が近づいてくる。だが、姿が一切見えない。

「――無駄ですよ、お父さん方」

 どこからか若い男の声が聞こえてきた。

「どこだ!? 姿を現しやがれ!」
「駄目です。僕は戦闘は得意じゃないので」
「なら何しに来た! 敵か? それとも味方か?」

 レイモンドは姿の見えない男に問う。

「僕の役割は皆さんを分断し、少しでも戦力を削ぐことなので」
「……おいアスフィのパパさんよ。どうするよ。敵の目的も姿も見えやしね……おい! 聞いてんのか!? ……ちっ、クソ!」

 ガーフィは考えていた。この場を打開する方法を。



 
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

処理中です...