攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
208 / 282
第十一章 ケンイチ 神々篇 《第三部》

第167話「『何度でも救う』」

しおりを挟む
 これは君が偶然の末、始まった物語だ。

(俺の……?)

 そう、君が全ての元凶であり、諸悪の根源なのさ。

(俺が諸悪の根源だって? んなまさか――)

 そうなるだろうね。でも本当のことさ。私はその事実を今から君に話す。だから覚悟して聞くんだね。

(……さっき龍の背にのって覚悟したばっかなんだが)

 あははは! 言っとくけど……そんなのとは比べ物にならないよ、君がしたことは。
 でも、私は君だけを攻めるつもりはない。だって君自身も被害者なのだから。

(分かった、教えてくれ)

 ---

 ……始まりはある隕石から始まった。その隕石は不思議な力を持っていた。

(隕石?)

 そう、隕石。別に不思議じゃない。隕石が落ちるくらいどこにでもある。みんな知らないだけでね……でも、その隕石は不思議な力を持っていた。

(不思議な……力)

 触れたものに未来、過去を見せる力さ。

(……へー)

 あははは! あまりピンと来てないようだね。無理もないか。ここだけ聞いたら不思議な力を持ったただの石ころだ。
 ……でも、知識ある者が手を加えると話は変わってくる。ほら、料理とおなじさ! 素材のままでも食べられるけど、調理したほうが美味しい、でしょ?

(なんかその例え最近聞いたような気がする)

 多分サリナが見せた記憶だね。私もこの例え方は結構お気に入りなのさ!

(いいから続けてくれ)

 ……そうだったね。時間も限られてるからね。その不思議な力を持った隕石に、ある研究者が目をつけた。
 その者の名は、”日名川ひなかわ じん”、今のエルブレイドにあたる人物だね。

(……さっきのじいさんのことか)

 そう、彼。ここではエルブレイドでは無く、”ジン”と呼ばせてもらうよ。
 ジンはこの隕石を使い、ある望遠鏡のようなものを作った。

(望遠鏡……? なんで望遠鏡なんだよ)

 その隕石の力を使用するには、直接触れる必要があった。

(過去とか未来が見れるってやつか)

 うん、段々理解してきたようだね。その望遠鏡にジンは『イリアススコープ』と命名した。

(イリアス……)

 聞き馴染みがあるよね。そう、イリアスとは私のことだ。

(そのスコープを作ってジンとかいう男は何がしたかったんだ?)

 世界平和。

(何だそれ)

 ほんと笑っちゃうよね。……でもね、彼にはそうしなければいけない目的があった。
 隕石に触れた日、彼は未来の日本を見た。

(お前が見せたのか)

 まぁそうともいうのかな。でも、その頃の私はまだ人格を持ってないからね。ま、それは後はまたいずれね。

(何を見たんだ?)

 地球の滅亡。

(は?)

 別に起きないとは限らない。ただ確率が低いだけでね。
 ほら、よく君たち人間の間で「明日地球が終わるとしたら最後に何を食べるのか」って話あるでしょ?

(ほんと例えんの好きな、お前)

 分かりやすく説明してあげているんだよ! でね、彼は……ジンはそんな事態を防ぐべく研究していたってわけさ。

(なるほどな)

 ほんとに分かってるの~?

(ああ、分かってる分かってる)

 ならいいけどね。ジンには守る者が居た。家庭があったのさ。妻の”エルザ ヒナカワ”と、娘の”エルシア ヒナカワ”。
 ジンにとって世界を守るなんてことは二の次だった。家庭を守る、それが彼の初めの目的だった。だって地球が終わったら元も子もないからね。

(でもこの話をするってことは、失敗したんだろ?)

 ……そう。失敗……いや、モノ自体は成功した。ただ悪用されたんだ。

(悪用? 誰がなんの為にだよ)

 名は江四留えしる。ジンと同じく研究者をしていた男だ。彼はあらゆる手を使い、娘のエルシアと『イリアススコープ』を手に入れた。

(なんで娘も……?)

 エシルの計画の為さ。ただ、エシルにとってエルシアはただの偶然の実験体に過ぎない。それも失敗作・・・だった。

(最悪なやつだなそいつ)

 ああ、最悪だね。もうちょー最悪。

(お、おう。なんかやけに感情籠もってるな……)

 そりゃ籠もるさ。だって私が傑作・・だからね。

(……それじゃお前も実験の被害者――)

 そ! そりゃ感情も籠もるよね。あははは!

(笑えねぇよ……)

 ……せめて笑って欲しいものだね。そしてエシルは、長い年月と実験の被害者たる子ども達のお陰でついに完成させた。
『イリアスのコア』を。

(イリアスのコア……)

 エシルの目的は守るジンとは違い、奪う事を目的としていた。それは、全てだ。

(全て……)

 何もかも自分の思い通りになる世界、そんな世界を作ろうとしていた。

(でもよ、地球が滅亡するんならそんな事したって意味ないだろ)

 その通り。だからエシルは地球を救った・・・・・・

(……は? すまん、言ってる意味が分からん)

 救ったんだよ、文字通りね。エシルは自分の目的の障害となるものは全て排除した。その中にたまたま、地球を救う必要があっただけ。

(そんな簡単に地球救ってんじゃねーよ……)

 簡単なものか。彼は地球を救うために何万回と世界をやり直した。『イリアスのコア』を使ってね。
 エシルの凄いところはその執念深ささ。自分の目的の為なら、何が何でもやり遂げる。俺は何度でも救う・・・・・・・・と、そう決めてね。

(その能力、別の方向に使えばよかったのにな)

 ……ほんとそうだね。でも、彼も人間だ。何万回も世界をやり直して正気で居られる訳が無い。
 エシルは狂った。狂気に落ちたのさ。

(まぁそうなるだろうな。何万回って、一体何年生きてんだよって話だし……)

 そうしてエシルは何度も世界を改変した。そして、その過程である世界に辿り着いた。

(ある世界?)

 うん。魔法なんかが飛び交う世界さ。まさにファンタジー! ってね。
 君たちにとっては魔法は当たり前だろうけど、それはこの世界だからさ。地球には魔法に近しいものは存在しても、死んだ人間を生き返らせるなんて真似は出来ない。他にもある。これはあくまで一例だけどね。

(魔法……魔法か…………)

 エシルはね、狂気に落ちてしまったけど、そのファンタジーの世界に魅入られたんだよ。
 魔法で何でも出来る、これぞまさにエシルの求めていた世界。……そのはずだった。

(そのはずだった……?)

 彼も人間だ。人を愛する事だってある。狂気に落ちた彼は人を愛した。その子のお陰でエシルは狂気から何とか離れることが出来た。……しかし、魔法でやりたい放題やっていたエシルを恨む者が出てきた。

(まぁそうなるよな)

 けど、誰もエシルに叶わなかった。創造者である彼に敵なんて居ない。皆返り討ちさ。
 そこでエシルに叶わないと考えた者達は、ある方法を思いつく。

(……なんだ?)

 エシルを殺せないのなら、ヤツの大事なモノを奪えば良い、とね。
 今まで奪う側だった彼には当然の報いだね。

(エシルは何を奪われた?)

 妻、だよ。言ったろ? 愛する者が出来たと。彼女は人間だった。魔法も使えない人間。
 エシルは妻を奪われ再び狂気に落ちた。泣いて、叫んで……。
 でも、蘇生魔法なんてものはエシルには使えなかった。そうして愛する妻を失くしたエシルが取った行動は――

(再び世界の改変をする……)

 正解。どうして分かったの?

(……俺ならそうする……と思う。大事なモノを失くしても、手に入れる方法があるのなら、それがどれだけ確率が低かろうと試す……と思う)

 ……うん。……そう、君の言う通りエシルはまさにそれを実行した。
 再び世界を改変した。しかし、何度改変しようとその世界に辿り着けなかった。
 彼の肉体は変わらない。しかし、改変を始めた時点で既に老体だった。精神的にも疲弊し、もうコレが最後の改変になる、そう考えた。

(老体で何万回も……すげぇじいさんだな)

 そうだね。人間とは思えない精神力だね。
 ……エシルは、『イリアスのコア』の適正者となる者を探した。

(適正者?)

 エシルはもう自分の力では改変できなくなったんだよ。老体だからってのもあるけど、世界の改変には精神に負荷が掛かる。
 だから彼は適正者を探し、そのものに改変をさせる事にした。

 妻を失くした魔法の世界で、エシルは人探しの魔法を習得していた。……ちなみに私も使える。

(そ、そうか)

 そしてようやく適正者が見つかった。場所はとある学校。適正者は女子生徒だった。

(女子生徒、か)

 名を 白狐しろぎつね 瀬里奈せりな。今の君がよく知るサリナの姉だ。

(あの露出の激しい狐のお姉さんか)

 エシルは堂々と真っ昼間から校舎に侵入した。私は『観測者』。ここから世界が一変する。








 
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

処理中です...