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第六章 ヒ̶ー̶ラ̶ー̶ 絶望篇《第一部》
第80話「《ターニングポイント》」
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暫く俺とマキナの旅の思い出を見せられた。なんてことも無い、ただダラダラと旅をしているそんな記憶だ。
そしてついにやってきた。俺とマキナのターニングポイントが。
それは些細なことだった。俺とマキナは喧嘩をした。
マキナに、出会った日がいつか覚えているか? と聞かれた俺が、覚えてないと答えた。それだけだ。
そんなことで俺とマキナは別々で旅をすることになった。当然今まで二人で旅をしていたとはいえ、ほとんど戦闘をしていたのはマキナだ。
俺は道中かなり苦戦した。なんせ攻撃魔法なんて使えないのだから。
そうして俺はしばらくの間、一人で旅をする。
新しい仲間を見つけては、別れ。またある時は冒険者仲間に罠に嵌められたこともあった。
そんなある時だ。その日は突然やってきた。
『神』と名乗る者が俺の前に現れたのだ。
『やぁ、そこの君、今一人かい?』
「なんだお前は。俺にピエロの友達なんて居ないぞ」
俺の前にやってきたのは、青と赤がやけに目立つピエロの格好をした者だった。
『……君、この世界の者じゃないネェ』
「………どうしてそう思う」
『私には分かる。なんせ神だから』
「へぇ~この世界にも神って居たのか。知らなかったぜ」
ピエロは笑い、俺に近付いてくる。
『マキナは今何をしているんだい?』
「なぜ今マキナの話が出てくる……今は喧嘩中だ」
俺は口が軽すぎたのかもしれない。
こんな見るからに怪しい道化に答えてしまったのだ。まず、何故マキナの名前を知っているのかと聞くべきだったのに。 ……。
『そうかい……うん、答えてくれてありがとう』
「……あ? てかお前誰だよ名を名乗れ。俺はフィーだ。さぁお前も名乗れ神さんよ」
『……私はエーシル。この世界の統治者だよ』
道化はそう答えた。ニヤリと笑いながら。
「統治者? なるほど? だから神ってか?」
『この世界には私以外にも神は居る。ただ、この世界を管理しているのは私だ』
「……へぇ~そうかい。じゃあよ、俺に攻撃魔法を使えるようにしてくれよ。神なんだろ?」
俺はこの時の軽率な発言をすごく後悔している。俺だけならまだ良かった。俺のこの発言一つで色んな人を巻き込んでしまった。
あんな結末になるなら回復魔法で満足しておくべきだった。
今更後悔してももう遅いが。
『……いいでしょう。あなたの願い叶えましょう。ただし、私のやり方でネェ』
ピエロは俺に向かって『盟約を』と手を伸ばし言ってきた。
それに対し俺は『誓う』。そうすれば攻撃魔法が使える。
ニヤケヅラの道化はそう言ってきた。俺は半信半疑だった。
俺は答える……。
『盟約を――』
「――誓う」
その瞬間俺の体が光り出し、辺りが、世界が眩い光に包まれ、気付けば俺は真っ白な空間に居た。
「……なんだ? あのピエロ野郎何しやがった!」
『ようこそフィー私の世界へ』
「おいピエロ野郎! 俺に何をした! 早くここから出しやがれ!」
『あなたは盟約に誓いました。あなたは攻撃魔法が欲しいと唱えた。私はあなたの願いを叶えますよ。……では私の願いも聞いてくれなければ困りますネェ』
真っ白な空間に俺とエーシル二人だけ。
俺はエーシルの願いを聞く前に盟約に誓ってしまった。
契約書をよく見ずサインする大人のように。そのおかげで詐欺にあった……そんな気分だ。
「……お前は何を願う」
『私はネェ……自分だけの世界が欲しいんです。今のこの世界は実質的にゼウスが支配しているようなもの。……しかし、それは仕方の無いことなのです。彼女は強い。私や他の神でさえ歯が立たない……………………違う……違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違ーーーーうっ! そうじゃない! そうじゃないだろぉぉぉぉぉぉ』
エーシルは怒りの感情を露にした。
『私が統治者だ! 私が管理者だ! ゼウス、お前じゃない!! …………それを覆すにはあなたが必要なのです』
「なぜ俺なんだ。俺じゃなくても良かっただろ」
『理由は三つありますネェ』
とエーシルは指を三本立て答える。
・『この世界の者じゃない』こと。
・何かが欲しいという強い願望があること。
・まだ誰とも盟約を交わしていないこと。
俺はこれら三つの条件を満たしていたらしい。
「俺が……」
『しかし願いは平等でなければならない。私が……世界が欲しいと願うならば、あなたもそれ相応のものが与えられなければ平等では無い。そうでしょう?』
エーシルはニヤリと笑う。
「……俺に何をする気だ」
『あなたに魔法を授けます。圧倒的な闇の力を。神をも殺すことが出来る圧倒的な闇の力を。これは私が授けるというよりも……この世界が盟約に従い与えるのですがネェ。……その代わりに――』
エーシルはそう答えた。
『私にこの世界を下さい』
「……嫌だと言ったら?」
『もう既に盟約は始まっている。一方的な盟約はリスクを背負います。しかしあなたは誓うと確かに言いました。もう無駄ですネェ』
俺はこの時、自分の軽率な行動を酷く後悔した。今まで神なんて信じてはいなかった。だからだろうか。俺はこんな見るからに怪しい神の発言に従ってしまった。
「フィーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
マキナの声がした。真っ白な空間には俺とエーシル。そんな中、愛しい彼女の声が聞こえてきた。
『ちっ……ゼウス……こんなところまで……しかしもう遅いっ! 盟約は既に交わされたっ!!』
「……マキナ」
今まで俺とエーシル二人だけだった空間にマキナがやってきた。
彼女は神々しい力を魅せる。
『エーシル……お前、フィーになにをした』
マキナは激昂していた。いまだかつて俺にも見せたことがない怒りの表情だ。綺麗な白髪が神々しく輝いている。
『……私は何もしていないですよ。これから始まるのです。新たな時代が……私の時代がネェ!!』
『……なに?』
『ゼウス……あなたには感謝しています。この方が居なければ私の願いは叶わなかった………また、あなたが一緒に居れば必ず私の邪魔をしていたことでしょう。あなた方が別々で行動していたのは、まさに運命っ!! ……私はずっと機を伺っていたのです』
盟約は絶対だ。交わされた盟約はもう戻せない。
真っ白だった空間にヒビが入り始めた。
『さぁ……再構築が始まります。私の世界が……そうそう言い忘れていました。ゼウス・マキナ……お前は私の世界に必要ありません。お前は連れていきませんよ? ではサヨウナラ』
エーシルは高笑いをしながら姿を消した。
「…………マキナすまん」
『フィーが謝ることじゃない。我のせいだ。今まで黙っていた。悪い。我は神……ゼウス・マキナだ。ずっと隠していた。フィーに嫌われる気がしたから』
こいつはバカだ。俺がそんなことで嫌いになるわけが無いだろう。喧嘩をしたあの日、俺はすぐに後悔した。マキナは悪くない。次会った時必ず謝ろうと。謝る為にマキナの家に向かった事もあった……でもマキナは居なかった。
………俺はずっとマキナを探して旅をしていたのだ。
そしてまた、マキナも俺を探していた。
二人は些細な喧嘩ですれ違い、取り返しのつかないことをしてしまった。
『我はずっと謝りたかった……フィー……ごめんなさい』
マキナは涙を流しながら俺に謝ってきた。
「……俺の方こそごめんな」
俺たちはお互いに強く抱き締め、口付けを交わした。
この真っ白だった空間もそろそろ終わる。
ヒビは段々と増す一方だ。俺達は時期終わるこの世界で、二人の愛を確かめあった。
『…………フィー』
「……なんだ?」
『我は次の世界に行けない。エーシルがそれを許さない』
「…………俺は絶対にお前を離さない。次の世界とやらがあっても俺は必ずお前を見つけ出す。そしてまたお前を愛す」
俺とマキナは再度口付けを交わす。
今度は忘れられない程濃厚なものを。
***
《……どうだ? 思い出したか? 》
(………………………………ああ)
《どんな気分だ》
(最悪な気分だ)
《だろうな……俺も同じだ。二回も見ることになるとはな》
盟約は絶対。また平等なものじゃなければいけない。
これはゼウスが一方的に見せた記憶。それ相応のものが彼女に……。
《……ここまで見せたんだ。アイツもタダじゃ済まないだろうな》
(……やっぱりか)
《俺のせいだ》
(ああ、俺のせいだ)
《(俺のせいだ)》
そしてついにやってきた。俺とマキナのターニングポイントが。
それは些細なことだった。俺とマキナは喧嘩をした。
マキナに、出会った日がいつか覚えているか? と聞かれた俺が、覚えてないと答えた。それだけだ。
そんなことで俺とマキナは別々で旅をすることになった。当然今まで二人で旅をしていたとはいえ、ほとんど戦闘をしていたのはマキナだ。
俺は道中かなり苦戦した。なんせ攻撃魔法なんて使えないのだから。
そうして俺はしばらくの間、一人で旅をする。
新しい仲間を見つけては、別れ。またある時は冒険者仲間に罠に嵌められたこともあった。
そんなある時だ。その日は突然やってきた。
『神』と名乗る者が俺の前に現れたのだ。
『やぁ、そこの君、今一人かい?』
「なんだお前は。俺にピエロの友達なんて居ないぞ」
俺の前にやってきたのは、青と赤がやけに目立つピエロの格好をした者だった。
『……君、この世界の者じゃないネェ』
「………どうしてそう思う」
『私には分かる。なんせ神だから』
「へぇ~この世界にも神って居たのか。知らなかったぜ」
ピエロは笑い、俺に近付いてくる。
『マキナは今何をしているんだい?』
「なぜ今マキナの話が出てくる……今は喧嘩中だ」
俺は口が軽すぎたのかもしれない。
こんな見るからに怪しい道化に答えてしまったのだ。まず、何故マキナの名前を知っているのかと聞くべきだったのに。 ……。
『そうかい……うん、答えてくれてありがとう』
「……あ? てかお前誰だよ名を名乗れ。俺はフィーだ。さぁお前も名乗れ神さんよ」
『……私はエーシル。この世界の統治者だよ』
道化はそう答えた。ニヤリと笑いながら。
「統治者? なるほど? だから神ってか?」
『この世界には私以外にも神は居る。ただ、この世界を管理しているのは私だ』
「……へぇ~そうかい。じゃあよ、俺に攻撃魔法を使えるようにしてくれよ。神なんだろ?」
俺はこの時の軽率な発言をすごく後悔している。俺だけならまだ良かった。俺のこの発言一つで色んな人を巻き込んでしまった。
あんな結末になるなら回復魔法で満足しておくべきだった。
今更後悔してももう遅いが。
『……いいでしょう。あなたの願い叶えましょう。ただし、私のやり方でネェ』
ピエロは俺に向かって『盟約を』と手を伸ばし言ってきた。
それに対し俺は『誓う』。そうすれば攻撃魔法が使える。
ニヤケヅラの道化はそう言ってきた。俺は半信半疑だった。
俺は答える……。
『盟約を――』
「――誓う」
その瞬間俺の体が光り出し、辺りが、世界が眩い光に包まれ、気付けば俺は真っ白な空間に居た。
「……なんだ? あのピエロ野郎何しやがった!」
『ようこそフィー私の世界へ』
「おいピエロ野郎! 俺に何をした! 早くここから出しやがれ!」
『あなたは盟約に誓いました。あなたは攻撃魔法が欲しいと唱えた。私はあなたの願いを叶えますよ。……では私の願いも聞いてくれなければ困りますネェ』
真っ白な空間に俺とエーシル二人だけ。
俺はエーシルの願いを聞く前に盟約に誓ってしまった。
契約書をよく見ずサインする大人のように。そのおかげで詐欺にあった……そんな気分だ。
「……お前は何を願う」
『私はネェ……自分だけの世界が欲しいんです。今のこの世界は実質的にゼウスが支配しているようなもの。……しかし、それは仕方の無いことなのです。彼女は強い。私や他の神でさえ歯が立たない……………………違う……違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違ーーーーうっ! そうじゃない! そうじゃないだろぉぉぉぉぉぉ』
エーシルは怒りの感情を露にした。
『私が統治者だ! 私が管理者だ! ゼウス、お前じゃない!! …………それを覆すにはあなたが必要なのです』
「なぜ俺なんだ。俺じゃなくても良かっただろ」
『理由は三つありますネェ』
とエーシルは指を三本立て答える。
・『この世界の者じゃない』こと。
・何かが欲しいという強い願望があること。
・まだ誰とも盟約を交わしていないこと。
俺はこれら三つの条件を満たしていたらしい。
「俺が……」
『しかし願いは平等でなければならない。私が……世界が欲しいと願うならば、あなたもそれ相応のものが与えられなければ平等では無い。そうでしょう?』
エーシルはニヤリと笑う。
「……俺に何をする気だ」
『あなたに魔法を授けます。圧倒的な闇の力を。神をも殺すことが出来る圧倒的な闇の力を。これは私が授けるというよりも……この世界が盟約に従い与えるのですがネェ。……その代わりに――』
エーシルはそう答えた。
『私にこの世界を下さい』
「……嫌だと言ったら?」
『もう既に盟約は始まっている。一方的な盟約はリスクを背負います。しかしあなたは誓うと確かに言いました。もう無駄ですネェ』
俺はこの時、自分の軽率な行動を酷く後悔した。今まで神なんて信じてはいなかった。だからだろうか。俺はこんな見るからに怪しい神の発言に従ってしまった。
「フィーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
マキナの声がした。真っ白な空間には俺とエーシル。そんな中、愛しい彼女の声が聞こえてきた。
『ちっ……ゼウス……こんなところまで……しかしもう遅いっ! 盟約は既に交わされたっ!!』
「……マキナ」
今まで俺とエーシル二人だけだった空間にマキナがやってきた。
彼女は神々しい力を魅せる。
『エーシル……お前、フィーになにをした』
マキナは激昂していた。いまだかつて俺にも見せたことがない怒りの表情だ。綺麗な白髪が神々しく輝いている。
『……私は何もしていないですよ。これから始まるのです。新たな時代が……私の時代がネェ!!』
『……なに?』
『ゼウス……あなたには感謝しています。この方が居なければ私の願いは叶わなかった………また、あなたが一緒に居れば必ず私の邪魔をしていたことでしょう。あなた方が別々で行動していたのは、まさに運命っ!! ……私はずっと機を伺っていたのです』
盟約は絶対だ。交わされた盟約はもう戻せない。
真っ白だった空間にヒビが入り始めた。
『さぁ……再構築が始まります。私の世界が……そうそう言い忘れていました。ゼウス・マキナ……お前は私の世界に必要ありません。お前は連れていきませんよ? ではサヨウナラ』
エーシルは高笑いをしながら姿を消した。
「…………マキナすまん」
『フィーが謝ることじゃない。我のせいだ。今まで黙っていた。悪い。我は神……ゼウス・マキナだ。ずっと隠していた。フィーに嫌われる気がしたから』
こいつはバカだ。俺がそんなことで嫌いになるわけが無いだろう。喧嘩をしたあの日、俺はすぐに後悔した。マキナは悪くない。次会った時必ず謝ろうと。謝る為にマキナの家に向かった事もあった……でもマキナは居なかった。
………俺はずっとマキナを探して旅をしていたのだ。
そしてまた、マキナも俺を探していた。
二人は些細な喧嘩ですれ違い、取り返しのつかないことをしてしまった。
『我はずっと謝りたかった……フィー……ごめんなさい』
マキナは涙を流しながら俺に謝ってきた。
「……俺の方こそごめんな」
俺たちはお互いに強く抱き締め、口付けを交わした。
この真っ白だった空間もそろそろ終わる。
ヒビは段々と増す一方だ。俺達は時期終わるこの世界で、二人の愛を確かめあった。
『…………フィー』
「……なんだ?」
『我は次の世界に行けない。エーシルがそれを許さない』
「…………俺は絶対にお前を離さない。次の世界とやらがあっても俺は必ずお前を見つけ出す。そしてまたお前を愛す」
俺とマキナは再度口付けを交わす。
今度は忘れられない程濃厚なものを。
***
《……どうだ? 思い出したか? 》
(………………………………ああ)
《どんな気分だ》
(最悪な気分だ)
《だろうな……俺も同じだ。二回も見ることになるとはな》
盟約は絶対。また平等なものじゃなければいけない。
これはゼウスが一方的に見せた記憶。それ相応のものが彼女に……。
《……ここまで見せたんだ。アイツもタダじゃ済まないだろうな》
(……やっぱりか)
《俺のせいだ》
(ああ、俺のせいだ)
《(俺のせいだ)》
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