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第四章 ヒーラー 模索篇 《第一部》
第57話「その名は果実の魔物」
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俺は目を覚ますと、隣で小さな女の子が寝ているのを見つけた。
「…………ん……」
あ、起きた。
俺はその小さな女の子に話しかけて見ることにした。
「なぁ、おい起きろ」
「……ん~なんだ? ……我は腹が減ったぞ」
「それは俺も同じだ」
「………お、おお~! また会ったな! 『神の子』よ!」
目を覚ましたと思ったら、今度は『神の子』?
誰だよそれ。てか、お前に会うのなんて初めてだよ……。
「ん? お前もしかして我の事を忘れておるのか?」
「俺はこんな小さな女の子知らない」
「う~ん……」
白髪の小さな女の子は考え出した。
そして、そうだ! と手を叩いて――
「思い出したっ! あの時、我フード被っておったわ」
「フード?」
「ほれ、これでどうだ。これで我を思い出しただろう」
「……!?」
こいつ、アイリスとの戦いに割り込んできたゼウスじゃないかっ!!
「おいっ!! お前ゼウスかっ!」
俺はその女の子の肩を強く握りしめ、
フラフラと揺らす。
「わあわあわあ、揺らすなぁ~~~」
「あ……わ、悪い」
求めていた神が急に現れたもんだから、つい興奮してしまった。
「……そうだ、あの時助けたのは我だ感謝しろ」
「いや、確かにあの時は助かったから感謝はしてるが……お前に聞きたいことがある」
「それは今じゃないとダメか? 皆寝ているが」
「………なら場所を移そう」
俺とゼウスは皆を起こさないようにと、場所を移すことにした。
……皆からだいぶ離れただろう。
「ここなら大丈夫だろう」
「……話せ」
「我に何が聞きたい」
「俺は何者で、お前は何者だ」
「……お前は『神の子』で我は『神の者』」
「俺が神の子……?」
ゼウスはその小さな細腕で腕を組み、そうだと言う。
「俺はシーネット家で生まれた人間だ」
「そう思い込んでいるだけだ」
「違うっ!!! 俺は冒険者ガーフィ・シーネットとその妻アリア・シーネットの息子だ!!」
「……頑固なやつだ。おかしいと思わなかったのか?」
ゼウスは俺に続けた。
「お前は自分が他の者と違う点をいくつも感じたはずだ。その力はなんだ。その姿は? その思想は?」
「…………なに?」
「お前は『この世界の人間』じゃない。しかしこれより詳しい内容は盟約により言えない。これはお前が神とかわした盟約」
「……俺はそんな盟約かわした覚えは無い」
「白々しい」
こいつは何が言いたいんだ。
俺をイラつかせたいだけなのか?
「まあいい我は――」
ズドンッ
「……うるさいハエだ」
ゼウスは動作なしで周辺にいたゴブリンに雷撃を落とした。
「……我はお前に忠告しに来た……」
「忠告?」
「我の片割れに注意しろ」
片割れ……? なんだよそれ。
「それだけだ」
「そうか……結局お前も何も言ってくれないんだな。神は皆そうなのか」
「ポセイドンのやつは何も言ってくれなかったのか」
「ああそうだよ」
「……ま、そうだろうな。アイツは神の中でも変神だ。それ故にお前に同情したのだろう……」
アイリスが同情? ただの生意気なガキだろ。
「それよりも我は腹が減った。何かくれ」
話は終わりってことか……。
やっぱり自分で探すしかないってことか。
「神に頼るのではなく、自分で模索しろ」
---
「おい! どこに行っていたのだアスフィ……ん?」
「アスフィ! 心配しましたよ……って誰ですかその子」
「………ゼウス……あなたも来たのですか」
皆起きていたのか。それよりも……
あらあら皆さん、この子が気になる様子ですわね。
仕方ない、紹介してやりましょうかね。
「我の名前はゼーウスだ。よろしく頼む」
「ゼーウスか……うむ、よろしく頼む!」
「ゼーウスですか……よろしくお願いします」
「…………そう来ましたか……フフッ……お願いしますね?」
なんで皆、簡単に受け入れてんだよ。
てかゼーウスって誰だよ。そのまんまじゃねぇか。
こうしてしばらくゼウス、
もといゼーウスと行動を共にすることになった……。
「我は腹が減ったぞ、なにか食べるものを所望する」
「俺達も探してるんだよ……黙っててくれ、余計腹が減る……」
しかしここら一帯はなにもない。ゴブリン意外は何も。
最悪エルザの言う通り、緑の化け物をたべることになりそうだな。……やっぱりそれだけは嫌だなぁ。
「お前達はどこへ向かっている?」
「『アスガルド帝国』だ」
「うむ、資金を調達しにな!」
「私たちはお金がありませんからクエストを受ける必要がありますので」
「何故だ?」
「生きるため、ですよ? ゼウ……ゼーウスさん?」
「……そうかそれなら仕方ない。早く我に何か食べさせろ」
俺達も腹減って死にそうなんだよ……。
しばらく歩いた。
それでも『アスガルド帝国』まであと3日か……。
これは本格的に何か食べるものを探さないと死ぬな。
ほんとにゴブリンを食べるなんてことになるかもしれない。
そのゴブリン達はと言うと、歩いている間次々と現れる。
流石のエルザも疲れてきたようだ。
「私はもうダメだ。腹が減って力が出ない……誰か変わってくれ」
ついにあのエルザが弱音を吐いた。
これは重症だな……。
仕方ないゴブリンを食べ――
「見てください……! 果実の魔物です!」
ルクスが急にテンションを上げ指を指す。
果実の魔物と呼ばれる魔物が俺たちの前に現れた。
本体は大きな花だ。
その本体からうねうねと動く蔓が生え、
その蔓には小さな果実が沢山実っていた。
「キモ……」
「何を言っているんですか! レア魔物ですよ!!」
「うむ! これは美味そうだ……じゅるり」
「我が仕留めよう」
「やめておきなさいゼーウスさん、あなたがやれば跡形もなく消え去ります。……エルザさん、お願いします」
「ああ! 任された!!」
エルザは果実の魔物とやらに、
大きくジャンプし切りかかった。
果実の魔物は赤い果汁を吹き出し倒れた。
「なぁこれほんとに血じゃないよな……」
「当たり前です。美味しいですよ?」
先陣を切ったエルザは、既に果汁の飛沫を浴びていた。
「ハッハッハ! 美味い! 美味いぞー!!!!!」
その絵面は血しぶきを浴びている悪の騎士その者だった……。
「アスフィもどうだ!?」
「俺はその実っている果実だけでいい……」
「わたくしは両方遠慮しておきます」
「我は頂こう」
「私ももちろん頂きます。滅多に見られないので……あとお腹が空いて選り好みしている場合ではないので」
そんな血のようなもの飲めるか。
ということで俺は果実だけを口にした……美味い……なんだこれ。
口いっぱいに広がる香り高いフレーバー。
噛めば噛むほど甘い果汁が溢れだしてくる。
甘すぎてヨダレが止まらない……………
「あれ……?」
ヨダレが止まらない。
おかしい。ヨダレが止まらない……!!!
「おい! お前ら食べるのちょっと待て! …………遅かったか」
「ん……なんだ~? じゅる」
「なんですかアスフィ~じゅる」
「うま……うま……美味い……じゅる」
口にしていないアイリス以外全員ヨダレが大量に溢れだし地面に垂れ流し状態だ。これは絵面的にヤバい。
可愛い女の子達がヨダレを垂れ流して満面の笑みである。
好きな者は好きそうだなぁ。
俺はまぁ嫌いじゃないけど……だが俺もその一人だ。
それどころじゃない。
「おい……じゅる……これどうしたら止まるんだ」
「フフッ、1時間近くは止まりませんよ? 果実の魔物の果汁はその神をも虜にする甘さと引き換えに、ヨダレが止まらなくなるという………いわば毒です」
「毒かよ! ……じゅる」
俺たちは暫く言われた通り、1時間程ヨダレを垂れ流した状態で歩くことにした……。
空腹問題は何とかなったが、俺はもう二度と食べないと誓った。
『アスガルド帝国』到着まであと2日。
「…………ん……」
あ、起きた。
俺はその小さな女の子に話しかけて見ることにした。
「なぁ、おい起きろ」
「……ん~なんだ? ……我は腹が減ったぞ」
「それは俺も同じだ」
「………お、おお~! また会ったな! 『神の子』よ!」
目を覚ましたと思ったら、今度は『神の子』?
誰だよそれ。てか、お前に会うのなんて初めてだよ……。
「ん? お前もしかして我の事を忘れておるのか?」
「俺はこんな小さな女の子知らない」
「う~ん……」
白髪の小さな女の子は考え出した。
そして、そうだ! と手を叩いて――
「思い出したっ! あの時、我フード被っておったわ」
「フード?」
「ほれ、これでどうだ。これで我を思い出しただろう」
「……!?」
こいつ、アイリスとの戦いに割り込んできたゼウスじゃないかっ!!
「おいっ!! お前ゼウスかっ!」
俺はその女の子の肩を強く握りしめ、
フラフラと揺らす。
「わあわあわあ、揺らすなぁ~~~」
「あ……わ、悪い」
求めていた神が急に現れたもんだから、つい興奮してしまった。
「……そうだ、あの時助けたのは我だ感謝しろ」
「いや、確かにあの時は助かったから感謝はしてるが……お前に聞きたいことがある」
「それは今じゃないとダメか? 皆寝ているが」
「………なら場所を移そう」
俺とゼウスは皆を起こさないようにと、場所を移すことにした。
……皆からだいぶ離れただろう。
「ここなら大丈夫だろう」
「……話せ」
「我に何が聞きたい」
「俺は何者で、お前は何者だ」
「……お前は『神の子』で我は『神の者』」
「俺が神の子……?」
ゼウスはその小さな細腕で腕を組み、そうだと言う。
「俺はシーネット家で生まれた人間だ」
「そう思い込んでいるだけだ」
「違うっ!!! 俺は冒険者ガーフィ・シーネットとその妻アリア・シーネットの息子だ!!」
「……頑固なやつだ。おかしいと思わなかったのか?」
ゼウスは俺に続けた。
「お前は自分が他の者と違う点をいくつも感じたはずだ。その力はなんだ。その姿は? その思想は?」
「…………なに?」
「お前は『この世界の人間』じゃない。しかしこれより詳しい内容は盟約により言えない。これはお前が神とかわした盟約」
「……俺はそんな盟約かわした覚えは無い」
「白々しい」
こいつは何が言いたいんだ。
俺をイラつかせたいだけなのか?
「まあいい我は――」
ズドンッ
「……うるさいハエだ」
ゼウスは動作なしで周辺にいたゴブリンに雷撃を落とした。
「……我はお前に忠告しに来た……」
「忠告?」
「我の片割れに注意しろ」
片割れ……? なんだよそれ。
「それだけだ」
「そうか……結局お前も何も言ってくれないんだな。神は皆そうなのか」
「ポセイドンのやつは何も言ってくれなかったのか」
「ああそうだよ」
「……ま、そうだろうな。アイツは神の中でも変神だ。それ故にお前に同情したのだろう……」
アイリスが同情? ただの生意気なガキだろ。
「それよりも我は腹が減った。何かくれ」
話は終わりってことか……。
やっぱり自分で探すしかないってことか。
「神に頼るのではなく、自分で模索しろ」
---
「おい! どこに行っていたのだアスフィ……ん?」
「アスフィ! 心配しましたよ……って誰ですかその子」
「………ゼウス……あなたも来たのですか」
皆起きていたのか。それよりも……
あらあら皆さん、この子が気になる様子ですわね。
仕方ない、紹介してやりましょうかね。
「我の名前はゼーウスだ。よろしく頼む」
「ゼーウスか……うむ、よろしく頼む!」
「ゼーウスですか……よろしくお願いします」
「…………そう来ましたか……フフッ……お願いしますね?」
なんで皆、簡単に受け入れてんだよ。
てかゼーウスって誰だよ。そのまんまじゃねぇか。
こうしてしばらくゼウス、
もといゼーウスと行動を共にすることになった……。
「我は腹が減ったぞ、なにか食べるものを所望する」
「俺達も探してるんだよ……黙っててくれ、余計腹が減る……」
しかしここら一帯はなにもない。ゴブリン意外は何も。
最悪エルザの言う通り、緑の化け物をたべることになりそうだな。……やっぱりそれだけは嫌だなぁ。
「お前達はどこへ向かっている?」
「『アスガルド帝国』だ」
「うむ、資金を調達しにな!」
「私たちはお金がありませんからクエストを受ける必要がありますので」
「何故だ?」
「生きるため、ですよ? ゼウ……ゼーウスさん?」
「……そうかそれなら仕方ない。早く我に何か食べさせろ」
俺達も腹減って死にそうなんだよ……。
しばらく歩いた。
それでも『アスガルド帝国』まであと3日か……。
これは本格的に何か食べるものを探さないと死ぬな。
ほんとにゴブリンを食べるなんてことになるかもしれない。
そのゴブリン達はと言うと、歩いている間次々と現れる。
流石のエルザも疲れてきたようだ。
「私はもうダメだ。腹が減って力が出ない……誰か変わってくれ」
ついにあのエルザが弱音を吐いた。
これは重症だな……。
仕方ないゴブリンを食べ――
「見てください……! 果実の魔物です!」
ルクスが急にテンションを上げ指を指す。
果実の魔物と呼ばれる魔物が俺たちの前に現れた。
本体は大きな花だ。
その本体からうねうねと動く蔓が生え、
その蔓には小さな果実が沢山実っていた。
「キモ……」
「何を言っているんですか! レア魔物ですよ!!」
「うむ! これは美味そうだ……じゅるり」
「我が仕留めよう」
「やめておきなさいゼーウスさん、あなたがやれば跡形もなく消え去ります。……エルザさん、お願いします」
「ああ! 任された!!」
エルザは果実の魔物とやらに、
大きくジャンプし切りかかった。
果実の魔物は赤い果汁を吹き出し倒れた。
「なぁこれほんとに血じゃないよな……」
「当たり前です。美味しいですよ?」
先陣を切ったエルザは、既に果汁の飛沫を浴びていた。
「ハッハッハ! 美味い! 美味いぞー!!!!!」
その絵面は血しぶきを浴びている悪の騎士その者だった……。
「アスフィもどうだ!?」
「俺はその実っている果実だけでいい……」
「わたくしは両方遠慮しておきます」
「我は頂こう」
「私ももちろん頂きます。滅多に見られないので……あとお腹が空いて選り好みしている場合ではないので」
そんな血のようなもの飲めるか。
ということで俺は果実だけを口にした……美味い……なんだこれ。
口いっぱいに広がる香り高いフレーバー。
噛めば噛むほど甘い果汁が溢れだしてくる。
甘すぎてヨダレが止まらない……………
「あれ……?」
ヨダレが止まらない。
おかしい。ヨダレが止まらない……!!!
「おい! お前ら食べるのちょっと待て! …………遅かったか」
「ん……なんだ~? じゅる」
「なんですかアスフィ~じゅる」
「うま……うま……美味い……じゅる」
口にしていないアイリス以外全員ヨダレが大量に溢れだし地面に垂れ流し状態だ。これは絵面的にヤバい。
可愛い女の子達がヨダレを垂れ流して満面の笑みである。
好きな者は好きそうだなぁ。
俺はまぁ嫌いじゃないけど……だが俺もその一人だ。
それどころじゃない。
「おい……じゅる……これどうしたら止まるんだ」
「フフッ、1時間近くは止まりませんよ? 果実の魔物の果汁はその神をも虜にする甘さと引き換えに、ヨダレが止まらなくなるという………いわば毒です」
「毒かよ! ……じゅる」
俺たちは暫く言われた通り、1時間程ヨダレを垂れ流した状態で歩くことにした……。
空腹問題は何とかなったが、俺はもう二度と食べないと誓った。
『アスガルド帝国』到着まであと2日。
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