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第四章 ヒーラー 模索篇 《第一部》
第54話「遠い日の記憶、再会」
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「――お前は誰だ。アスフィでは無いだろう」
俺はいきなりエルザに問い詰められていた。
しかもトイレ中に……。
***
戦神アレスとの激しい戦いを終えた俺達は休息の為、アイリスのホームへと向かった。
その道中、エルザが耳打ちで、『後で二人だけで話がある』と言ってきた。
それがトイレ中だったのだ。
「誰ってなにがだ? てかドア閉めてくれないか」
「ああ、すまない」
「…………いやなぜ一緒に入ってくる。出ろよ」
「話があるのだ。二人っきりでな。早速だが――」
にしても何故にトイレ?
「――お前は誰だ。アスフィでは無いだろう」
「……」
(やっぱりエルザは気づくか……俺じゃない事に)
「俺はアスフィだ。過去の――」
「……ん? なんだ? どうした?」
(また盟約か……)
「……いや、少し頭痛がしたんだ。とにかく俺はアスフィだ」
「そうか。だが早く返してやれ。私からは以上だ」
「…………ああ……お前は変わらないな、エルザ」
「……お前なんぞ知らん」
俺は体を奪われたままだった。俺じゃない『何者か』に。
(おい、早く返しやがれ)
「まぁ待て、今日中に返すさ。やりたいことがある……」
(やりたいこと? なんだよそれ)
傍から見ればトイレで一人喋る頭の痛いやつだ。
だが、実際は違う……。
俺たちはアイリスのホームで休んでいる。どうやら皆疲れているようだ。エルザはそんな中筋トレをしていた。
アイリスは呑気に茶を飲んで、水の糸であやとりをしている。
ルクスは椅子に座り本を読んでいた
そして俺じゃない『何者か』がルクスにいう。
「なぁ、ルクス。デートしようぜ」
「…………え?」
俺じゃない『何者か』はルクスをデートに誘った。
エルザは疲れているのに筋トレに夢中で聞いていない。
アイリスはあやとりに夢中だった。
……
…………
………………
ということで俺とルクスは『デート』をすることになった。
(俺じゃないけどな……)
「……アスフィ」
「なんだ?」
「なぜ私をデートに誘ったのでしょうか」
「……お前とデートをしたかったから、それだけだ」
「…………そう、ですか」
(お前ルクスとデートなんて一体何がしたいんだ……)
俺とルクスはアクセサリーショップに来ていた。
(これもアイリスが再現した店か……上手く出来てるな)
白い建造物。看板にはアクセサリーショップと書いてある。
「何か欲しいものはあるか?」
「アスフィが選んだものなら何でも欲しいですよ?」
(こいつらマジでデートしてるじゃねぇか……)
店には色んなアクセサリー類が売っていた。
ダイヤやルビー、サファイアなどの宝石類や、髪飾り等も並べられていた。
そんな中『俺じゃない者』は――
「これ下さい」
「毎度ありがとうございます」
(選ぶの早いな……こいつ)
『俺じゃない者』が選んだのは、
白の涙のような形をしたブローチだった。
「ルクスにはこれが似合うと思う。ルクスの綺麗な白い髪には、同じ白がよく似合う」
「え? あ、ありがとうございます……なんだか今日のアスフィはアスフィじゃないみたいですね……」
ルクスはありがとうございますと、早速ブローチをローブに付けた。
「いかがでしょうか」
「ああ、よく似合っている」
「にしても何故ブローチなのでしょうか? ……い、いえ! 別に嫌とかじゃないですからね!?」
「……妹が、身に着けていたものによく似ていたから?」
「え? アスフィ、妹が居たんですか? 初耳ですね」
(え、俺って妹居るの? 父さんの隠し子か? って居ねぇよ! ……居ねぇよな?)
『俺じゃない者』はルクスの頭を撫でた。
「ア、アスフィ!? 今日はやけに積極的ですね!!?」
「ん……? そうか?」
(こいつ……さりげなく大人アピールか? 確かに俺じゃやらないけど……)
俺がやるのはせいぜい胸を揉むくらいか。
それも今じゃあんまりその気になれないが……。
その後、俺達は色んな店を回ったようだ。
洋服屋なんかにも寄ったみたいだが、結局『俺じゃない者』はルクスには今の黒のローブがよく似合うといい、買うことは無かった。
そして俺達は辺りが暗くなった所で、アイリスのホームへと帰る事になった。
「……今日はありがとうございました、アスフィ。楽しかったです」
「気にするな、俺がしたかっただけだからな」
「…………なんだか懐かしい感じがします。なぜでしょうか」
「……………………覚えているのか?」
「何のことでしょう?」
「…………そうか。いや、何でもない」
(こいつ……ルクスに一度会ったことあるのか? )
俺がそんなことを考えていると、『俺じゃない者』は心の中にまで話しかけてきた。
(よぉ、待たせたな。体、返してやる)
(やっと返す気になったか……)
(まぁな……もう満足した)
(お前、ルクスにあったことがあるのか)
(それは言えない、盟約だ)
なんだよこいつ……盟約ばかりでなんにも教えてくれねぇ。そんなに盟約が大事なのか?
すると並行して歩いていたルクスが俺の前に立った。
「……体、返して上げてくださいね。また会いましょう」
「…………ああ、必ず」
(ルクスのやつもしかして最初から気づいていたのか……? )
ルクスはそう言って『俺じゃない者』に笑いかけた。
(満足か? お前)
(ああ…………満足だ。約束通り、体は返すよ。サンキュな)
「…………今日は連れ回して悪かったなルクス」
「いえ、なんだか新鮮で楽しかったです。まるでお兄ちゃんが出来たみたいで」
「それなら良かった」
お兄ちゃんとか呼ばれてるぞお前。
それから何者かの声は聞こえなくなった。
結局あいつは何だったんだ……。俺の中にずっと居たってことなのか……?
俺たちはアイリスのホームへと帰った。
「あら、おかえりなさいませ。わたくし何か食べたいので、ルクスさん何かお料理を作ってくれませんか?」
アイリスは椅子に座りテーブルに肘をついて言う。
「分かりました、少し待っててください」
「アイリス、お前神ならちょっとは遠慮したらどうだ? ルクスは疲れてんだぞ」
「神だって食を楽しみたいものです……あらルクスさん可愛いブローチですね」
こいつ話を逸らしやがった。
「……アスフィさん、私はあなたに興味が湧いてきました。今回の件で更に、です」
今回の件というと、戦神アレスとのことだろうか。
「俺なんて何も無いぞ、興味を持つのはやめとけ。時間の無駄だ」
「いえいえ、ご謙遜なさらず。あなたが『この世界の者ではない』ことが分かりましたので。それに神であるわたくしには時間などあって無いようなものです」
『この世界の者ではない』……? 俺は生まれも育ちもこっちだぞ。何言ってんだアイリスは……。
「いえ、今のあなたに言っても仕方ありませんね。気にしないで下さい」
「そうかよ……」
俺達の会話をエルザは筋トレに夢中で聞いていない。
……いや、これは聞いているな。アイツが俺とアイリスの会話を聞き逃すわけが無い。にしてもこいつ、俺とルクスが外に出てる間ずっと筋トレしてたのか。
「では、ルクスさんがお料理を作っている間、ゲームでもしましょう」
「なに!? ゲームだと!?」
さっきまで筋トレをしていたエルザが食いついてきた。
このお嬢様ゲームが大好きなんだよなぁ。ミスタリスにいた頃、よくレイラと三人でゲームをしたものだ。
そして決まって言うのが――
「私は王様ゲームがやりたいぞ!」
やっぱりな。だと思ったよ。
「王様ゲーム? なんですかそれは」
レイラと三人でやった時は、いつもレイラが王だった。
命令はエルザに、腕立て千回しなさい。とかだった。無茶だと思われる命令だが当然、エルザは平気でやり遂げた……。
「…………はぁ……もう王はお前でいいよ」
「なに!? 本当かアスフィ!? では私が王だ! 言うことを聞け愚民ども!」
「お前、仮にも本物の王なんだから少しは言葉を選べよ……」
エルザお嬢様は一体何をご所望なのか。俺は呆れてエルザを王に指名した。
「あら、王様ゲームとは王の命令を聞かなければいけないのですね」
アイリスはなんだか楽しそうだ。
そしてエルザが命令を下す――
「アイリス!」
「はい、なんでしょう?」
対象はアイリスのようだ。一体なにを命令されるのだろうか。
どうせくだらない事だろう。そう思っていた。
「――『ゼウスを信仰する者』について教えろ」
……え? なんだ? 『ゼウスを信仰する者』……? なんか思っていた命令と違うぞ??
アイリスは知らないと言っていた筈だ。エルザは何を言っているんだ?
「……知りません」
「王の命令は絶対だ、アイリス」
エルザはアイリスに真剣な眼差しで言う。その目はいつもの勘がイイ時のそれだ。
「…………それは盟約とどちらが重要でしょうか」
「こっちだ」
「……そうですか……良いでしょう」
なに……? アイリス、まさか知っているのか……?
『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』について、以前は知らないと言っていたのに、なぜ今になって言おうと思ったんだこの神は。
それにエルザもなぜアイリスが知っていると分かったんだ?
だが、俺の疑問はエルザによってすぐに解消された――
「なに、簡単な話だ。アイリスは『水の都フィルマリア』を創り上げた。私達もその出来上がる過程をその目で見たはずだ」
確か戦神アレスとの一戦が終わった後の話か。
「その時ふと思ったのだ。この街を、住民を、全てを管理している神であるアイリスが、どうして賊の侵入に気付かない? ……気付かないはずが無いのだ」
言われてみれば確かにそうだ。この街は言わば、全てがアイリスの目だ。住民を通して賊を見ることだって可能なはずだ。
それなのに、『ゼウスを信仰する者』の存在に気付かない訳が無い……。
「アイリス、君は何を隠している?」
『……フフフッ、やはりエルザさんはカンが鋭いですね……』
アイリスという神は不気味に笑った。
俺はいきなりエルザに問い詰められていた。
しかもトイレ中に……。
***
戦神アレスとの激しい戦いを終えた俺達は休息の為、アイリスのホームへと向かった。
その道中、エルザが耳打ちで、『後で二人だけで話がある』と言ってきた。
それがトイレ中だったのだ。
「誰ってなにがだ? てかドア閉めてくれないか」
「ああ、すまない」
「…………いやなぜ一緒に入ってくる。出ろよ」
「話があるのだ。二人っきりでな。早速だが――」
にしても何故にトイレ?
「――お前は誰だ。アスフィでは無いだろう」
「……」
(やっぱりエルザは気づくか……俺じゃない事に)
「俺はアスフィだ。過去の――」
「……ん? なんだ? どうした?」
(また盟約か……)
「……いや、少し頭痛がしたんだ。とにかく俺はアスフィだ」
「そうか。だが早く返してやれ。私からは以上だ」
「…………ああ……お前は変わらないな、エルザ」
「……お前なんぞ知らん」
俺は体を奪われたままだった。俺じゃない『何者か』に。
(おい、早く返しやがれ)
「まぁ待て、今日中に返すさ。やりたいことがある……」
(やりたいこと? なんだよそれ)
傍から見ればトイレで一人喋る頭の痛いやつだ。
だが、実際は違う……。
俺たちはアイリスのホームで休んでいる。どうやら皆疲れているようだ。エルザはそんな中筋トレをしていた。
アイリスは呑気に茶を飲んで、水の糸であやとりをしている。
ルクスは椅子に座り本を読んでいた
そして俺じゃない『何者か』がルクスにいう。
「なぁ、ルクス。デートしようぜ」
「…………え?」
俺じゃない『何者か』はルクスをデートに誘った。
エルザは疲れているのに筋トレに夢中で聞いていない。
アイリスはあやとりに夢中だった。
……
…………
………………
ということで俺とルクスは『デート』をすることになった。
(俺じゃないけどな……)
「……アスフィ」
「なんだ?」
「なぜ私をデートに誘ったのでしょうか」
「……お前とデートをしたかったから、それだけだ」
「…………そう、ですか」
(お前ルクスとデートなんて一体何がしたいんだ……)
俺とルクスはアクセサリーショップに来ていた。
(これもアイリスが再現した店か……上手く出来てるな)
白い建造物。看板にはアクセサリーショップと書いてある。
「何か欲しいものはあるか?」
「アスフィが選んだものなら何でも欲しいですよ?」
(こいつらマジでデートしてるじゃねぇか……)
店には色んなアクセサリー類が売っていた。
ダイヤやルビー、サファイアなどの宝石類や、髪飾り等も並べられていた。
そんな中『俺じゃない者』は――
「これ下さい」
「毎度ありがとうございます」
(選ぶの早いな……こいつ)
『俺じゃない者』が選んだのは、
白の涙のような形をしたブローチだった。
「ルクスにはこれが似合うと思う。ルクスの綺麗な白い髪には、同じ白がよく似合う」
「え? あ、ありがとうございます……なんだか今日のアスフィはアスフィじゃないみたいですね……」
ルクスはありがとうございますと、早速ブローチをローブに付けた。
「いかがでしょうか」
「ああ、よく似合っている」
「にしても何故ブローチなのでしょうか? ……い、いえ! 別に嫌とかじゃないですからね!?」
「……妹が、身に着けていたものによく似ていたから?」
「え? アスフィ、妹が居たんですか? 初耳ですね」
(え、俺って妹居るの? 父さんの隠し子か? って居ねぇよ! ……居ねぇよな?)
『俺じゃない者』はルクスの頭を撫でた。
「ア、アスフィ!? 今日はやけに積極的ですね!!?」
「ん……? そうか?」
(こいつ……さりげなく大人アピールか? 確かに俺じゃやらないけど……)
俺がやるのはせいぜい胸を揉むくらいか。
それも今じゃあんまりその気になれないが……。
その後、俺達は色んな店を回ったようだ。
洋服屋なんかにも寄ったみたいだが、結局『俺じゃない者』はルクスには今の黒のローブがよく似合うといい、買うことは無かった。
そして俺達は辺りが暗くなった所で、アイリスのホームへと帰る事になった。
「……今日はありがとうございました、アスフィ。楽しかったです」
「気にするな、俺がしたかっただけだからな」
「…………なんだか懐かしい感じがします。なぜでしょうか」
「……………………覚えているのか?」
「何のことでしょう?」
「…………そうか。いや、何でもない」
(こいつ……ルクスに一度会ったことあるのか? )
俺がそんなことを考えていると、『俺じゃない者』は心の中にまで話しかけてきた。
(よぉ、待たせたな。体、返してやる)
(やっと返す気になったか……)
(まぁな……もう満足した)
(お前、ルクスにあったことがあるのか)
(それは言えない、盟約だ)
なんだよこいつ……盟約ばかりでなんにも教えてくれねぇ。そんなに盟約が大事なのか?
すると並行して歩いていたルクスが俺の前に立った。
「……体、返して上げてくださいね。また会いましょう」
「…………ああ、必ず」
(ルクスのやつもしかして最初から気づいていたのか……? )
ルクスはそう言って『俺じゃない者』に笑いかけた。
(満足か? お前)
(ああ…………満足だ。約束通り、体は返すよ。サンキュな)
「…………今日は連れ回して悪かったなルクス」
「いえ、なんだか新鮮で楽しかったです。まるでお兄ちゃんが出来たみたいで」
「それなら良かった」
お兄ちゃんとか呼ばれてるぞお前。
それから何者かの声は聞こえなくなった。
結局あいつは何だったんだ……。俺の中にずっと居たってことなのか……?
俺たちはアイリスのホームへと帰った。
「あら、おかえりなさいませ。わたくし何か食べたいので、ルクスさん何かお料理を作ってくれませんか?」
アイリスは椅子に座りテーブルに肘をついて言う。
「分かりました、少し待っててください」
「アイリス、お前神ならちょっとは遠慮したらどうだ? ルクスは疲れてんだぞ」
「神だって食を楽しみたいものです……あらルクスさん可愛いブローチですね」
こいつ話を逸らしやがった。
「……アスフィさん、私はあなたに興味が湧いてきました。今回の件で更に、です」
今回の件というと、戦神アレスとのことだろうか。
「俺なんて何も無いぞ、興味を持つのはやめとけ。時間の無駄だ」
「いえいえ、ご謙遜なさらず。あなたが『この世界の者ではない』ことが分かりましたので。それに神であるわたくしには時間などあって無いようなものです」
『この世界の者ではない』……? 俺は生まれも育ちもこっちだぞ。何言ってんだアイリスは……。
「いえ、今のあなたに言っても仕方ありませんね。気にしないで下さい」
「そうかよ……」
俺達の会話をエルザは筋トレに夢中で聞いていない。
……いや、これは聞いているな。アイツが俺とアイリスの会話を聞き逃すわけが無い。にしてもこいつ、俺とルクスが外に出てる間ずっと筋トレしてたのか。
「では、ルクスさんがお料理を作っている間、ゲームでもしましょう」
「なに!? ゲームだと!?」
さっきまで筋トレをしていたエルザが食いついてきた。
このお嬢様ゲームが大好きなんだよなぁ。ミスタリスにいた頃、よくレイラと三人でゲームをしたものだ。
そして決まって言うのが――
「私は王様ゲームがやりたいぞ!」
やっぱりな。だと思ったよ。
「王様ゲーム? なんですかそれは」
レイラと三人でやった時は、いつもレイラが王だった。
命令はエルザに、腕立て千回しなさい。とかだった。無茶だと思われる命令だが当然、エルザは平気でやり遂げた……。
「…………はぁ……もう王はお前でいいよ」
「なに!? 本当かアスフィ!? では私が王だ! 言うことを聞け愚民ども!」
「お前、仮にも本物の王なんだから少しは言葉を選べよ……」
エルザお嬢様は一体何をご所望なのか。俺は呆れてエルザを王に指名した。
「あら、王様ゲームとは王の命令を聞かなければいけないのですね」
アイリスはなんだか楽しそうだ。
そしてエルザが命令を下す――
「アイリス!」
「はい、なんでしょう?」
対象はアイリスのようだ。一体なにを命令されるのだろうか。
どうせくだらない事だろう。そう思っていた。
「――『ゼウスを信仰する者』について教えろ」
……え? なんだ? 『ゼウスを信仰する者』……? なんか思っていた命令と違うぞ??
アイリスは知らないと言っていた筈だ。エルザは何を言っているんだ?
「……知りません」
「王の命令は絶対だ、アイリス」
エルザはアイリスに真剣な眼差しで言う。その目はいつもの勘がイイ時のそれだ。
「…………それは盟約とどちらが重要でしょうか」
「こっちだ」
「……そうですか……良いでしょう」
なに……? アイリス、まさか知っているのか……?
『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』について、以前は知らないと言っていたのに、なぜ今になって言おうと思ったんだこの神は。
それにエルザもなぜアイリスが知っていると分かったんだ?
だが、俺の疑問はエルザによってすぐに解消された――
「なに、簡単な話だ。アイリスは『水の都フィルマリア』を創り上げた。私達もその出来上がる過程をその目で見たはずだ」
確か戦神アレスとの一戦が終わった後の話か。
「その時ふと思ったのだ。この街を、住民を、全てを管理している神であるアイリスが、どうして賊の侵入に気付かない? ……気付かないはずが無いのだ」
言われてみれば確かにそうだ。この街は言わば、全てがアイリスの目だ。住民を通して賊を見ることだって可能なはずだ。
それなのに、『ゼウスを信仰する者』の存在に気付かない訳が無い……。
「アイリス、君は何を隠している?」
『……フフフッ、やはりエルザさんはカンが鋭いですね……』
アイリスという神は不気味に笑った。
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