Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
36 / 97
第三章 《第一部》ヒーラー 愛の逃避行篇

第34話「駆け落ち?」

しおりを挟む
俺とルクスはミスタリス王国を出ることに決めた。

ミスタリス王国には随分と長い間いた……半年は居たと思う。それもエルザの案内の元、レイラと一緒に来ることになったのだ。そのレイラを置いて俺は今、ミスタリス王国を出る。

理由はレイラが今お怒りだから……俺のせいなんだけど。
今レイラと顔を合わす訳には行かない。そう思った俺とルクスはしばらくの間ミスタリス王国を二人で出ることになったという訳だ。

「これからどうしようかルクス」

「……そうですね……ミスタリスから近い街となると……」

俺がこの後、どうすればいいか聞くとルクスは顎に手をやり考え出した。俺はいつも人任せだな……。
ミスタリス王国に向かうとなった時も、レイラが知っていたからだ。そんなことを考えているとルクスが口を開いた。

「ここからなら獣人達の国、『フォレスティア』が一番近いですね」

「獣人達の国?」

「はい、獣人達が住処としている国です。もちろんその国王も獣人です」

へぇそんな国が近くにあったのか。
おれは何も知らずに育ってきたんだな。
俺はあの村を出たことがない……知るはずもないのだ。

「ならそこに行こう。ついでにそこの獣人達に母さんの『呪い』を解呪出来る者についてなにか知らないか聞いてみたいんだ」

「……分かりました。歩けば一ヶ月もかからないでしょう」

「なるほど……え?一ヶ月もかかるの?」

「はい、それがどうかしましたか?」

と綺麗な白髪を揺らし不思議そうに首を傾げるルクス。

「一ヶ月って結構長いな」

「……あれ?そうでしたか。すみません、一人での旅が長かったもので」

ルクスは旅のプロだ。旅初心者の俺からすると、一ヶ月というのはすごく長く感じるが、ルクスからすればそれは当てはまらない。それもそうだ。何年も旅をしていたのだから。

「でもここから近いのがそのフォレなんとかなんだろ?ならそこにいこう」

「『フォレスティア』です。ではその前に、何か食べましょう」

「そうだな……」

俺たちはなにか食べる物を探すことにした。
夜の冒険を最後に共にしたのはレイラだった。
そんな長い間一緒にいたレイラと少し離れることになる。
だが、帰ってくる。今は少し冷却期間が必要だろう。
全部俺が悪いんだけど……。

「……詳しいんだなルクス」

「まぁ長いですから」

ルクスは目に見えたものを確かめる事無く、どんどん集めていく。それはキノコ、木の実、よく分からない野草。
それらをせっせと集めていた。恐らく確かめなくても見れば、食べられるか食べられないかの判断が着くのだろう。頼もしいパートナーだ。俺とレイラはその辺のキノコを生で食べて腹を壊したもんだ……。

「……浮かない顔をしていますね」

集めた食べ物を両手に抱え、俺を気にしてくれるルクス。

「……まぁな。俺が悪いとは言えレイラを置いてきたからさ」

「大丈夫です。もう会えない訳では無いんですから。少ししたら戻りましょう」

「……ああそうだな。ありがとうルクス。お前がいるとなんだか安心する……頼もしいよ」

「いえいえ、これでもお姉さんですから」

本当に頼もしい。流石は大人の女性だ。
身長が俺と変わらないからと、俺はルクスを子供扱いしていたのかもしれない。俺と同じ子供なんだと。
だが年齢もそうだが経験値が違う。旅のプロだ。
今回はその経験値に頼らせてもらうとしよう。


「――うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ虫ぃぃぃぃぃ」

手に持っていた食料にどうやら虫がいたみたいだ。
ルクスは驚いて持っていた食べ物をすべて地面に落とし俺に抱きついてきた。

「…………虫……?」

「うん!僕虫はダメなんだよ!!」

『素』に戻ってるし、さっきまでのお姉さんぶりはどうしたんだ……おれの気持ち返せよ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!腕に付いてる!取ってアスフィ!」

「……はい」

俺はルクスの腕に付いていた毛虫のような虫をポイッと捨てた。

「ありがとう助かったよ…………あっコホンッ。ありがとうございました。助かりました」

「……もう無理だって」

なんなんだコイツは……。

***

腹を満たした俺たちは焚き火の炎に照らされていた。

「いやぁ、火があるっていいなぁ。生でキノコを食べずに済むし」

「生で?それって美味しいんですか?」

そんな訳あるか。クソまずいわ!
もう二度と口にしたくない……今思い出しただけでも吐ける自信があるね。

「美味しくない」

「でしょうね……」

そう苦笑いするルクス。
俺とレイラが取ったキノコはほぼ全てが毒キノコだった。それは明らか目に見えていたが、当時は俺の『ヒール』があるから大丈夫と生で食べたのだ。
そんな事があったのも今にして思えば懐かしい。
だから今、火の有難みを感じている。

「ルクスは『僕』なんだな」

「…………ええ、まぁ。あなたと逆ですね」

「……それは大人のせいか?」

「………そうですね、大人に生意気な口をきいた哀れな子供の末路ですよ」

大人に生意気な口をきいたルクスは殴られた。
そして大人の喋り方を真似し、今はそれが体に根ずいていると。そんな話だったか。
そんな事で殴る大人が居るのも許せないが、その町の過酷さは俺には分からない。

「大変だな」

「もう気にしていませんよ。それに今はこっちの喋り方に慣れています」

俺はそれ以上何も言わなかった。
そして、俺たちは眠る事にした。ルクスが見張っていてくれるそうだ。俺は構わないと言ったが、子供は寝てくださいとのことだ。こういう時だけ子供扱いしてくるんだよなルクス。
俺はもうすぐ十三になるのに……。
俺はレイラと一緒に寝たあの野営した日を思い出した。
そしてルクスにもそれを提案してみる。

「ルクスも俺と抱き合って寝るか?」

「……本気ですか?」

「マジだけど」

「………やめておきます。レイラに怒られそうなので」

と苦笑いで返してくるルクス。
だが、嫌とは言わなかったルクスの言葉に俺は気づかなかった。

***

朝になった。ルクスは寝ていた。
どうやら俺が寝たのを確認したあと、寝たんだろう。
木にもたれ掛かり、寝息を立てよく寝ている
俺はそんなルクスを起こさず、少し離れることにした。
食糧集めだ。昨日の夜はルクスに任せっぱなしだったからな。朝食くらいは俺が集めるとしよう。

と、ここで気づいた。
おれはある大事なモノを手に持っていないことに。

「……あ、母さんの杖部屋に置いたままだ……」

やってしまった……。
杖は俺とレイラの部屋に置いたままだ。
取りに帰りたいが、それも出来ない。

「………はぁ、仕方ないか」

仕方ないので俺は諦める。
あんなに大事にしていたのに。せっかく直したのに。
こんな形で置いてきてしまうなんて……。
そういえば、ルクスも杖を持っていないな。
杖を持たない魔法使いは多いものなのか?
杖は威力を上げるものだとレイラに聞いたが……。

そんなことを考えていると早速お出ました。
黒の犬型魔獣。頭には青白く光る角が生えている。
こいつはレイラと旅をしていた時によく遭遇した個体だ。
あの時はレイラが短剣で切り伏せていた。
だが今はレイラがいない。なら俺が倒すしかないか……

「『死を呼ぶ回復魔法(デスヒール)』」

そう唱えた直後、犬型の魔獣はその場に倒れる。
まるで眠ったかのように死んだ。

その後も犬型の魔獣に遭遇した。
だが、俺はこいつは食べる気にならないと、その後しばらく食糧となる獣を探した。そして見つけた、野生の熊だ。

「熊肉……か。ま、悪くないか」

「『死を呼ぶ回復魔法(デスヒール)』」

こうして俺は熊をルクスが寝ている場所へと……運べなかった。背負おうとしたが俺の子供の力ではビクともしない。
俺はルクスを起こし、ここに連れてくることにした。

……
…………
………………

「……この熊、アスフィがやったのですか?」

「ああ、運べなくてな。ここで調理して食べよう」

ルクスは驚いた後、早速調理の準備に入る。
手持ちのナイフで上手く捌いていた。流石は旅のプロだ。
俺はその間、やることが無いので少し横になる。
ここは旅のプロに任せよう……俺が料理すると不味くなりそうだし。


「出来ました」

「おお!美味そうだ!!」

熊肉の串焼きに、熊肉の炒め物など、熊肉のフルコースだ。

「……うん、美味い!いや~まさか外でこんな美味いのが食えるとは思わなかった」

「ありがとうございます……確かに美味しいですね」

こうして俺たちは熊肉を余すことなく頂いた。
ルクスが居れば、食糧さえ調達できれば食べ物には困らなそうだな。

そしてそんな日々が一週間続いた。
当時は美味いと思っていた熊肉だが、流石に飽きた……。
ここずっと熊肉だ。なんとか工夫を凝らしてくれるルクスだが、レパートリーも尽きたようで、何日かは同じ料理だった。
しかし、俺たちがいる場所は、熊しかいない。するとルクスが指を差し言う。

「あの森を抜ければフォレスティアです」

「でけぇ……」

森というには大きすぎるそれは、大きな木々で出来た城のようだった。
ちゃんも入口のようなモノまであり、道まである。

「ここを抜けるのか……」

「はい、危険なので注意してください。私も初めてここに足を踏み入れた時は攻撃されましたので」

「……え、なにかいるのか?」

「エルフです。ここは通称『エルフの森』。エルフ達が住処にしている森です。ここを抜けなければフォレスティアには行くことができません」

「……まじか」

どうやらルクス曰く、フォレスティアという獣人の国の王はエルフと仲が良いらしい。よってエルフがフォレスティアに入る者の番人のような役割を担っているとか。エルフに認められた者しか、フォレスティアに足を踏み入れる事が出来ないとか。

「では、行きましょうか」

「ああ、……ちょっと怖いなぁ」

こうしてビビりながらもフォレスティアを目指し、
エルフの森に足を踏み入れる俺とルクスだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...