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第8話 魅力ってなんだろ?

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「…………遅いな」

俺はパーティーメンバーになれそうな人を探してくると言って転送の間を出ていったコロネを待っていた。

ただ転送の間に着いてからもう2時間は経過している。
戦時中であるから短期間で強くならなければならない状況でこの体たらくはどうなのだろうか。

勇者になってからというもの、ユウリと出会ったこと以外良いことがない。
まぁ、ユウリっていう女神様と出会えたことが俺にとってかなり大きいんだけど。

そんなことを思いながら、俺はアリスと交信することをずっと試みていた。
アリス、アリスと心の中で何度叫んだことか。
しかし旅行に行っているであろうアリスは出る気配がない。

「あいつ、俺がくたばっても問題ないんかな?。監視するのにブサイクは嫌だからって魅力上げてスルーするって………てあれ?。そういや魅力って何だ?」

俺はアリスに愚痴をこぼしているとふと気づいたことがある。

魅力って何だろう?
いや、言葉の意味はわかっているのだ。
でもブサイクが嫌と言ってステータスポイントを魅力に振ったというのはどういうことだろう?

ブサイクが嫌なら顔のパーツをいじるとかできなかったのだろうか?
キャラメイクで他ステータスを無視してまで魅力に全振りするのは魅力値によってカッコ良さが決まるってことなのか?

「え?……今の俺って……もしかしてカッコいいの?」

そういえばまだ顔は見たことないけど、シエロって魅力に特化したキャラだった。
カッコいい顔をしてるんだろか?
それともLv上がれば上がるほどカッコ良くなって行ったりするのかなー!
えっ、俺モテモテになる可能性大?

「どうなさいましたかな?ニヤニヤしておられて?」

魅力について考えていたところにコロネが帰ってくる。
コロネは銀の甲冑を纏う歴戦の猛者のような顔立ちの兵士たちをぞろぞろと連れてきてくれた。

「そんなニヤニヤしてましたか?」

「はい。それはもう嬉しそうに」

やばい、顔に出てたか。
でも丁度いいや聞いてみよ。

「……ねぇコロネさん」

「はい」

「俺の顔ってカッコいいかな?」

「……はい?」

コロネは俺の質問に、急にどうした?と言いたげな顔で少し後退りして行く。

完全に聞く相手を間違えた。
この質問はお爺ではなく女の人にするべきだった。

私にそっちの気は無いと言いたげなコロネだが、一息入れ、スラ高原への出発を提案してくる。
俺もコロネの意見には大賛成。
なんなら待たせすぎだと怒ってやりたいぐらいだった。
でもそうだな。急いで修行しないと。
俺が強くなって戻ってくるまでアスティーナが無事であることを祈っている。

「よし!出発だ!!」

俺は転送装置である大きな門に向かい、門の中で青白く渦巻く光に向かって足を進める。

スタスタスタスタスタスタスタスタスタ
……?
スタスタスタ……スタスタ
………ん?
スタスタ……スタ………………
……………………え?

歩いて門に向かっていたが、聞こえる足音が自分のものしかないことに気づく。

俺は振り返ると歩いた距離分離れた位置にコロネは立ったまま。
そしてコロネの後ろで手を振る兵士たちを目にした。
立ち止まった俺を見て兵士たちは

「どうかしたかシエロー?」
「強くなって帰ってこいよー」
「時間あんまないぞー。行け行けー」
「頑張れよーー!」

と遠くから大声でエールを送ってくる。

どういうことだ?
なんで誰もついてこない?

俺が状況を理解してないのに気づき、コロネも思い出したという顔をして近づいてくる。

「申し訳ありません、シエロ様。彼らはシエロ様を見送りに来ただけで一緒に行く訳ではないのです」

コロネは伝え忘れていた、申し訳ないと俺に言ってくる。

「は?」

上の者には敬語と教えられた日本男児の俺だったが、今回ばかりはそんなことどうでも良くなっていた。

「えっと……2時間近くも俺を放置何して何してんの?」

俺は怒りを抑えることなくコロネにぶつける。

コロネ曰く、一緒に行くパーティーを探していたが、戦時中で皆暇でないため、誰も連れて来れなかったのだと言う。
でも誰もいなかったですじゃ勇者に対して失礼と思い、夜戦に向けて待機中のたまたま起きていた兵士を連れて来て、見送りだけさせようと思ったのだとか。

「……せめて女の子連れて来てよ」

コロネの気遣いは俺の斜め上を行っていた。
なんでおじさんに手を振られて喜んで行くと思ってんだ?
ユウリに見送り頼めよ!そしたら俺喜んで修行に行くからな!!
それが無理でもせめて城内のメイドのおねーさんたち呼べよ!!!

15歳のシエロ君には男の熱い応援より、女の子の甘い声援の方が良かったのだった。

悲しいが1人で行くしかない。
そう思う俺だったが、1人だけパーティーに入れてもいいんじゃないかと思える人物に心当たりがあった。

「そうだ!コロネさん!」

「!?。はい、急になんでしょうか?」

そうだよ、コロネ。
執事とはいえLvは25。
Lv1の俺を助けるのには十分な戦力じゃないか!

「俺に戦いの基礎を教えてくれないか?。コロネさんもLv上げるために戦ったりしてたんだよな?頼む俺についてきてくれないか?」

2時間近く待たされたことには腹が立っていたがそんことも言っていられない。
1秒でも早くLv上げするならこの人しかいない。

コロネに対して深々と頭を下げてお願いするシエロ。
それに対してコロネは

「いえ、男の人とパーティーを組むというのはちょっと」

またも想像の斜め上の事を言い出した。

「……俺だって女がいいよ」

俺はなんで60歳近いお爺にフられてるんだと思いながら、コロネに聞こえない音量でぼやく。

放置するアリス、雑魚だと卑下するリュード、まともだと思っていたのに全然使えないコロネ。
シエロは涙がこぼれそうになる目を手で抑えながら、青白い渦に1人入って行くくのだった。

心の中でユウリに謝りながら。



「ごめん、ユウリ。俺……この世界嫌いかもしれん!!!」






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