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第3話 アスティーナ城到着

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真っ暗な闇の中をどんどん下に下にと落ちて行く。
意識も朦朧として少し気分も悪い。
転生というのはすんなりいかないのだと、当たり前だが初の体験をする。

いつまで落ち続けるのか。
どれぐらいの時間を経過したかわからない。
意識が切れかかるその時、俺は微かな光を目にした。

複数の人が囲む紫色の淡い光の中に俺は飛び込んで行った。





「石……床………人?」

俺は朦朧とした中で状況を確認する。
アスティーナ城に着いたのだろう。
石で敷き詰められた床を触り、紫色に淡く輝く魔法陣を目にする。
そして周りで大騒ぎしてる声が聞こえてくる。
たぶん俺を召喚した人たちなのだろう。

「はな…しかけ……あれ?」

俺は周りの人と話さなくてはと思い口を開くが、思ったように声が出ない。

「勇者が倒れたぞ!急いで救護班を呼べ!」

周りの声は聞こえる。
勇者が倒れた?
あぁ……多分俺のことか。
たしかに立つ気力もないな。
床が冷たくて気持ちい……

俺は意識が途切れ、まぶたをゆっくりと閉じた………





「………ん、んんん。……ここは?」

「お目覚めになられましたかな」

俺は目を開けると知らない部屋のベッドの中で知らないおじさんに話しかけられる。

「えっと、あなたは?」

「私は王の側近を務めております。コロネと申します。あなた様に何かあってはいけないということで看病させていただきました」

「看病?」

そういえば魔法陣のようなところに着いてからの記憶がない。
たぶん意識を失ってしまったのだろう。
ここは……

「異世界ですか!ここ?俺異世界来ちゃいましたかー?」

「え、ええ。ここはウレールにあるアスティーナ王国でございます。勇者様からすれば異世界となりますかな」

俺の発言に驚きはしてたが、コロネは俺を勇者と認知しているようだ。
身分も分からない俺を勇者って言うのは事情を知ってると思い、俺はコロネに現状を聞くことにした。



「……つまり魔族と戦争をしてる最中と?」

「はい。今アスティーナ王国の西、バルチアナ平原にて魔族とアスティーナ兵が戦っている最中です」

「んんん……今やってるのか」

とりあえず状況を整理しよう。
今現在ウレール全土では魔族と人間の間で戦争をしている最中。
俺が今いるアスティーナ王国も魔族戦っているという。
現状魔族軍が少しだけ優勢。
何としても防がなければいけないという状況下に置かれたアスティーナ軍は禁忌とされていた勇者召喚を行ったと。

ふむふむ………え?もう始まってるの?

「なのでシエロ様のお力を借りたいと思い召喚したのです。いきなり召喚されて思うところはあると思いますが、どうか、どうかお力をかしていただけませんか?」

コロネは頭を深々と下げ、勇者として戦いに参加して欲しいと言う。
戦闘が行われていると聞いた時点でこうなることは予想していた。だが俺は言いたい。

断る!!!

って大きい声で言いたい。
だって俺まだ戦ったこともないのに戦場行くってどうなの?
Lv1ですよ?スキルもわかんないんですよ?
死んじゃいますよ、勇者でも。

「とりあえず上の人と話がしたいかな。コロネさん、悪いけど案内してくれないかな」

俺はそんな弱気発言を恥ずかしくて言い出せず、コロネに上と話をすることを提案する。

するとコロネはわかったと言い、アスティーナ国王との会談の場を設けると部屋を出ていった。

「……え?。俺……大丈夫?」

コロネが完全に出ていくのを確認して、俺は1人思いの内を漏らす。

Lv1勇者シエロ・ギュンター。
スキルはよくわからない。
世界への大侵攻をしてる魔王軍の前に立たされる可能性大。

あれ?……これ詰みじゃない?

ゲームが好きなやつなら大体わかる、レベル足りないのにボス行っちゃったをリアルで体験しそうなシエロくんである。





俺のいる部屋に帰ってきたコロネは王への謁見ができるようになったと言い、俺を王の間へと連れて行くのであった。

赤い絨毯の敷かれた長い廊下。
廊下の先には俺の2、3倍はあるだろう大きな扉。

「コロネさん、ちょっといいですかね?」

俺とコロネは扉の前に着く。
王様と会う前にコロネに言っておきたい事があったのだ。

「何でしょう、シエロ様?」

「今から王様と会うんですよね?」

「はい、そうですが…何かありましたか?」

「うん。俺のいた世界には王様なんていなかったからどう話していいか分からなくて。礼儀作法とか何か必要なのかな?」

俺は少し緊張していた。
国の王様に会うのはロールプレイングゲームの定番ではあるが、勇者とは言え元は高校生。
礼儀やら敬語やら、ちゃんとできるのか心配になっていた。

それに対してコロネは

「心配されなくて大丈夫です。あなたはウレールを救って下さる勇者様なのです。それに王はなかなかフランクな方ですのでちょっとやそっとのことじゃ怒るような方ではありませんよ」

と俺に言ってくれる。

それなら安心……いや、気を抜くのは早いか。
俺は今から王様とこれからについて話すのだろう。

俺は言う。言ってやる。
いや言わないといけない。
絶対言おう。戦えませんって。


心の中で弱腰であることをどうオブラートに包んで話せばいいかを模索しながら、俺は大きな扉の奥にある王の間に赴くのであった。
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