お狐様が一目惚れした贄(夫)

愛原有子

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第六話,式神の正体

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 式神召喚を成功させた由貴は喜んでさっそく美しい鳥を氷織に見せようと思いました。

「俺のところに来てくれてありがとう,さっそくあって欲しい人がいるんだけど,いいだろうか?」

美しい鳥はそう聞かれると,由貴を引き止めこう言いました。

「お待ちください,我が主人」

由貴が急ぎそうになる足を止めて言いました。

「ごめん,まだ正式に決まってないとか?」

美しい鳥は首を横に振ると言いました。

「それは…半分アタリで半分ハズレです。」

由貴が首を傾げると美しい鳥は続けました。

「私をどなたかにお見せするのはよろしいですが,式神として認められるかはまた別なのです。」

由貴はその言葉にこう返しました。

「せっかく召喚したのに召喚した本人が操れるわけじゃないの?」

美しい鳥は一瞬目を閉じるて考え事をすると,再び目を開けこう言いました。

「はい。さっき申しましたよね?『式神候補』だと…
召喚した式神を扱えるようになるためには,指揮官に主人が私に相応しいかどうかを見極めることが出来たなら,正式に認められるのです。」

その言葉を聞くと由貴は気難しい顔をして俯いてしまいました。

そんな顔を見た美しい鳥はフッと微笑むと言いました。

「もっとも私は貴方様以外,仕える気はありませんので,ご心配なさらないでください」

「ありがとう…しかしそう言われると余計プレッシャーをかけられた気がするよ…」

美しい鳥はニコニコしながら言いたいことを言い終わると,由貴に尋ねました。

「そのことは後々考えましょう?それよりも貴方様は私をどなたかにお見せしたいのでは?」

由貴はハッとした表情で言いました。

「あっ!そうだったね。どうなるかわからないけど,式神候補としてついてきてくれるか?」

美しい鳥はニコニコしながらうなづきました。

「もちろんでございます。」

美しい鳥の許可をもらえた由貴は一言付け足しました。

「ありがとう…そういえば,君はなんと呼べばいいかな?まだ名前を聞いてなかった」

美しい鳥は少し笑って答えました。

「我が主人よ。私は式神ですので,決まった名はございません…
もしつけてくださるのなら,召喚を認められた後…つけてくださいませ」

「わかった…」

話が終わると,ようやく氷織の元に連れて行きました。

「氷織!俺!召喚成功したよ!」

「えっ!」

氷織は由貴が短時間で召喚できたことに驚いた顔をしました。

(他の式神召喚した神々は約2ヶ月かかったのに比べ,由貴は約1週間という速さで召喚に成功しました。)

それと同時に氷織は由貴の後ろにいた美しい鳥を見て言いました。

「ゆ…由貴…本当にその鳳凰が…そなたの召喚した式神か?」

びっくりしている氷織に由貴は頭にハテナを浮かべて言いました。

「ん?そうだよ。あれ?なんかすごいびっくりしてるけど,どうしたの?」

氷織はびっくりした表情をしながら続けました。

「す…すごいですね。由貴…
その鳳凰はもしかすると『あの伝説の…』」

「伝説?」

氷織は深く息を吸うと,伝説について語り始めました。

 昔…この国では氷の鳳凰と呼ばれた成獣がいた。

この鳳凰は元々式神として大切に扱われていたが,力が強すぎて神をも超えることから『神に最も近い成獣』と言われて,人間達にお祀りされるようになった。

しかし,強すぎる力を持つ不老不死の鳳凰だからこそ,神々はその力を求めて式神に留めようと,何人もの神々が召喚を試し,鳳凰を我が者にしようと挑んだ。

だが,鳳凰は首を振らず,召喚した者に協力しようとしなかった。

いつしか,鳳凰は召喚されても出てこなくなってしまった。

頑なに主人を決めない鳳凰にある召喚を遂げた神がこう尋ねた。

「お主は,式神ではなく神そのものとしていたいのか?」

その答えに鳳凰は首を横に振った。

氷織が伝説のあらすじを話していると,

鳳凰が静かに言いました。

「確かに…私はその『伝説の鳳凰』です。」

氷織と由貴は同時に振り向くと,氷織が優しい口調でこう質問しました。

「では聞くが,お主はどうして今になって現れたのじゃ?
そして,どうして頑なに主人を決めなかったのじゃ?」

鳳凰は少し目を閉じて考え事をし,目を開けるとこう言いました。

「それは…ずっと待っていたのです…
私が望んでいた主人を…求めていたお方を…」

氷織は鳳凰のその言葉に由貴を見つめて言いました。

「それが…この者ということなのか?」

鳳凰は小さくうなづきました.

氷織はそんな鳳凰の様子を見て,由貴の方を見ると言いました.

「由貴よ。そなたは思った通り…とんでもないお方じゃ。妾の目に狂いはなかったの…」

由貴は慌てて言いました。

「待って待って,いい雰囲気で悪いんだけど,まだどうなるか決まってないからプレッシャーが上がったんだけど~」

鳳凰はわざとらしくボディータッチすると言いました。

「我が主人よ。そう固くならないでください。私は信じていますから」

「そうじゃぞ?由貴,
鳳凰がこう言ってるのだから,自信を持つのじゃ。」

「だから…それがプレッシャーになるの~」

 こうして,由貴は自分の召喚した式神の正体が『伝説の鳳凰』と知って驚きつつ,良好な関係を気付き,式神獲得に一歩前進するのでした。

       続く

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