上 下
4 / 16

第四話,由貴の決断

しおりを挟む
 会議から3日目のこと,

由貴宛てに雨月様から,勝負を受けるむねを報告するための手紙が届きました。

雨月様からの手紙には

『拝啓

 人間の若君よ,

 あなたとの勝負お受けしようと思い,文を送りました。

追伸

 この文は私からの挑戦状として,お受け取り願いたい。

あなたからのお返事をお待ちしています。

            雨神の雨月』

文を見た由貴は少し焦った表情を見せました。

(どうしよう,神様と戦うなんて俺には…)

由貴は勝負をリタイアするのを考えていましたが,ふと頭の中で部屋をさる時の氷織の顔を思い出しました。

「氷織…俺のために…よし!決めたぞ!」

由貴の決意が決まったタイミングで香達が由貴の部屋に飛び込んできました。

「由貴様!氷織様のために勝負をお受けください!」

由貴は微笑んで,香達の頭を撫でました。

「心配ないよ。俺もそのつもりだからリタイアなんて考えてないよ。俺の居場所はここだから!」

「由貴様~よかったです~。由貴様の勝利を願っております。」

由貴が雨月様との勝負を受ける知らせは瞬く間に広がり,他の神々にも伝わることになり,たくさんのどよめきが神界を包みました。

 神界ではいろんな噂が広まっていました。

「人間の若君が雨月様と勝負されるそうじゃ。」

「人間が!そんな罰当たりな~どうしてそのようなことに…」

「氷織様が一目惚れなさって連れてきたそうじゃ。」

「ほぅ~,身分違いの恋に燃えておられるのか~青春じゃな~」

「なにをゆうておる,噂によれば,人間の若君は元生贄としてここに来られたと聞くぞ。そんな身分の方が神に嫁いで良いものか…」

「それは…どうなることやら…」

などなど,由貴には息の詰まる日々が続きました。

 他の神々以外に雨月様本人も由貴の決断に驚いていました。

「あの人間め,この私に勝つというのか,堂々と私の申し出を受けよって,向こうがその気ならこちらも本気を見せねばならないな。ハハハ」

その頃の由貴は…

「ハックション!」ブルブル

「由貴?どうしたのじゃ?やはり人間にはここは寒いか?」

「大丈夫だよ。ちょっと背筋がゾッとしただけ…」

(これは…雨月様が視線を送っているのかもなー。俺の感がそう言っている…)

 花婿修行の対決が二週間後っと決まったある日のこと,氷織が由貴専用の教育係をつけようと提案しました。

「よって,由貴の教育係についてもらうものを探しているのじゃが,候補はおらぬか?」

部屋はシーンと静まり返り,誰も手を上げようとしません。

「よかろう。誰も出ぬなら,この私が教育しようとではないか!皆が受け入れぬ由貴がどこまで成長するか,思い知らせてくれる!」

氷織が直々に教育するという発言に家臣たちはどよめきました。

「時に勝負させるのであれば,雨月の教育係も必要じゃ,雨月の教育係を担うもの手をあげよ!」

あたりがシーンと静まり返りました。

ここで手を上げると氷織と勝負するも同じなので,みんな手を上げるのを戸惑います。

 そんな中,錦が手を上げました。

「雨月様の教育,私が受けましょう。」

あたりがざわつきます。

「ほぅ,私との勝負,其方が引き受けるか。」

「この勝負を進めたのは,私です。なので,作った本人がこのことを引き受けるのが,得策だと考えました。」

氷織は錦の言葉を受け入れました。

「うむ,よかろう。正々堂々勝負しようぞ。」

「はっ!」

お互いの花婿修行の教育係が決まり,勝負は次の十五夜と決まりました。

さて,勝負の行方は…

       続き
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

処理中です...