上 下
2 / 8

前編

しおりを挟む
「危ない!」

ひそかな想い人を庇って,俺,天正 光流(てんしょう みつる)はトラックにはねられた…

ガッシャーン!

あ~次はマシな人生を送りたいな~

と…思っていたら…

「おい!お前!起きろ!」

ん…人の…声?

「おい!いつまで寝ている?起きろ!」

バシッ!

「…⁉︎」

頭がぼやけている俺は声の男にムチで叩かれ,目を覚ました。

(どこだ…⁉︎ここ…)

気がつくと目の前には獣の顔をした男,俺自身は白く薄い衣装を着ていて,手首をロープで縛られていた。

「やっと目が覚めたか…手間をかけさせやがって…」

そういうと,獣の男は腕を結んでいるロープを乱暴に引っ張り,立たせようとしてきました。

「待って!いやだ…痛い!」

驚いて抵抗していると,もう一人の獣の男が近づいてきて,ロープを持つ男に言いました。

「おい,お前!その者は奴隷と言っても,魔王ミケル様に捧げる供物だ。丁重に扱え!」

「はっ!」

魔王ミケル…?奴隷…?供物…?ということは…俺は…異世界転生したらしいけど…奴隷ってことは…

ロクな人生じゃなさそうだな…しかも供物って…それってただの奴隷というより,さらに悲劇的な生贄の立場じゃないか…

は~今度はマシな人生って願っていたのに…生贄だなんて…ただのモブじゃないか…どうせなら…さっき話していた…魔王とやらを倒す勇者とかに転生したかった…

自分の立場に絶望した俺だったが,びっくりするほど冷静になり,いうことを聞くだけの抜け殻のようにジッとして,献上されるのを待った。

覚悟を決めた日から献上される日まで,絶望しすぎて,何日過ぎたかわからない…

言葉数が少なすぎて,面倒を見る見張り番が君悪がるレベルだったらしい。

そんな話をしていると,俺の最後の時が近づいたようだ…

城の中に入り案内人に連れてかれ,魔王と対面する対面の間に案内され,硬い石の床に座らされる。

ずっと下を向いていると,魔王から声がかかった。

「表を上げよ。」

俺はその声を聞いて驚いた。

魔王の声は俺のよく知っている声…いいや…忘れられない声…

驚きつつゆっくりと顔を上げるとそこには…

ガッシャーン!

「そっ…そなた…その顔…」

魔王の顔を見ると,なんと魔王は俺が一方的に思いを募らせていた…菊川 湊人(きくかわ みなと)くんにそっくり!

というか…間違いなく本人だと…俺は認識している。

髪型は銀髪のロン毛で緑の瞳になり,頭にツノが生えているが,忘れられなかった顔を俺は見間違うはずがない。

本人も驚いているので,俺のことを覚えてくれているのかな?

それにしても…菊川くんがここにいるってことは…彼も多分…

(あぁ…恩返しした…つもりだったんだけどな…)

あれは忘れもしない2年前…

階段を踏み外した俺は…下から登ってきていた…菊川くんに助けられた…

5月の木漏れ日の中の彼はキラキラと輝いていて,それだけで好きになってしまった。

以来,見かけるとずっと目で追ってしまっていた…

だけど…ずっと片想いのままで,助けてくれた恩返しする機会がなく…

やっと恩返しできたと思ったら,二人とも異世界に飛ばされて,こうして巡り合うことができた…

ついつい嬉しくなった俺は目を輝かせて,こう思った。

(あぁ…最初は自分の立場に絶望していたけれど,想い人に捧げられるのなら本望だ…)

っと一人考え事をしていると,さっきの案内人の人が口を開いた。

「ミケル様。どうされましたか?もしや…気に入られませんでしたか?」

そっそんな~💦

その言葉に一人ショックを受けていると,

魔王が口を開きました。

「いいや,そうではない。むしろ…」

魔王は椅子から立ち上がると,俺の前までくると,俺と目線を合わせて顎クイしました。

「…⁉︎///」

俺が驚いていると,魔王は微笑んで静かにこう言いました。

「フッこの者を気に入った。私の近くに置こう」

そういうと魔王は俺をヒョイっと肩に担ぎました。

(えぇ~~⁉︎)

魔王の言葉に家臣たちは慌てて言いました。

「ミケル様!その者は元から奴隷だった身,そのような者をそばに置くとは…」

すると,魔王は振り向いて冷たい口調で言いました。

「私の言葉に逆らうのか?」

「ヒィ…そっそのようなことは…」

家臣たちは怖がり後づさりしました。

魔王は続けて家臣たちに向かって言いました。

「うーむ,しかし…其方達が言っていることは半分あっているぞ。」

家臣達が首を傾げていると…魔王は不気味な笑顔を向けて言いました。

「『違う意味』での…奴隷だ」

えっ…『違う意味』での?

俺は魔王の言っていることを察するとさらに顔をアタフタさせました。

「そんな…ミケル様…」

家臣の何人かもその意味を察したのか,唖然となり中には気絶するものもいました。

そんな家臣達を無視して,魔王は俺を担いだまま部屋を出て行きました。

       続く


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブだけど貴重なオメガなので一軍アルファ達にレイプされました。

天災
BL
 オメガが減少した世界で、僕はクラスの一軍アルファに襲われることになる。

潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話

あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは マフィアのボスの愛人まで潜入していた。 だがある日、それがボスにバレて、 執着監禁されちゃって、 幸せになっちゃう話 少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に メロメロに溺愛されちゃう。 そんなハッピー寄りなティーストです! ▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、 雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです! _____ ▶︎タイトルそのうち変えます 2022/05/16変更! 拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話 ▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です 2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。   ▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎ _____

『僕は肉便器です』

眠りん
BL
「僕は肉便器です。どうぞ僕を使って精液や聖水をおかけください」その言葉で肉便器へと変貌する青年、河中悠璃。  彼は週に一度の乱交パーティーを楽しんでいた。  そんな時、肉便器となる悦びを悠璃に与えた原因の男が現れて肉便器をやめるよう脅してきた。 便器でなければ射精が出来ない身体となってしまっている悠璃は、彼の要求を拒むが……。 ※小スカあり 2020.5.26 表紙イラストを描いていただきました。 イラスト:右京 梓様

僕に優しくしてくれたアルファ先輩は、僕を孕ますのが目的でした

天災
BL
 僕に優しくしてくれたアルファ先輩の本当の顔。

異世界で性奴隷として生きてイクことになりました♂

あさきりゆうた
BL
【あらすじ】 ●第一章  性奴隷を軸とした異世界ファンタジーが開幕した! 世界は性奴隷の不遇な扱いを当たり前とするものだった。  ある時、現世の不運な死により転生した少年は助けた戦士の性奴隷となってしまった!? ●第二章  性奴隷を扱う施設、「性奴隷の家」内で、脱退の意思を示した男が監禁されることになった。その友人に課せられた命令は愛と狂気の入り交じった性的な拷問であった! ●第三章  義賊とよばれる盗賊は性奴隷の家から一人の性奴隷候補の子を誘拐した。その子はダークエルフの男の子だった。その子のあまりにも生意気な態度に、盗賊はハードプレイでお仕置きをすることにした。 ※変態度の非常に高い作品となっております   【近況報告】 20.02.21 なんか待たせてしまってすいませんでした(土下座!) 第三章は本編を絡めながら、ショタのダークエルフに変態的なプレイをする作者の欲望を表現するだけのおはなしです。 20.02.22 「大人しくしていれば可愛いな」を投稿します。一応シリアスめな展開になります。 20.02.23 「助けた礼は体で支払ってもらうぞ」を投稿します。引き続きシリアスな展開。そしてR18を書きたい。 20.02.24 試しに出版申請しました。まあ昔やって書籍化せんかったから期待はしていませんが……。 「欲望に任せたら子作りしてしまった」を投稿します。つい鬼畜にR18を書いてしまった。 あと、各章に名称つけました。 ついでに第一章の没シナリオを7話分のボリュームでのっけました。このシナリオ大不評でした(汗) ディープ層向けな内容です。 20.02.25 「束の間の握手だ」を投稿します。本編が進みます。 20.02.26 「妊夫さんですがHしたくなっちゃいました」を投稿します。 久々に第一章のお話書きました。そして妊婦さんならぬ妊夫さんとのHな話が書きたかったです。 20.02.27 「世話の焼けるガキだ」を投稿します。 話書いたのわしですが、酷い設定持たせてすまんなエルトくん。 20.02.28 「死んだなこりゃあ」を投稿します。展開上、まだR18を書けないですが、書きてえ。やらしいことを! 20.02.29 「性欲のまま暴れて犯るか」を投稿します。R18回です。この二人はどうも男よりの性格しているのでラブシーンの表現苦戦しますね・・・。 20.03.01 「お前と一緒に歩む」を投稿しました。第三章、良い最終回だった…としたいところですが、もっとR18なお話を書く予定です。 後、第四章あたりで物語を終結させようかと考えています。 20.03.05 職場がキツくて鬱になりました。しばらくは執筆できないかもしれないです。またいつか再開できたらなと思っています。

優等生の弟に引きこもりのダメ兄の俺が毎日レイプされている

匿名希望ショタ
BL
優等生の弟に引きこもりのダメ兄が毎日レイプされる。 いじめで引きこもりになってしまった兄は義父の海外出張により弟とマンションで二人暮しを始めることになる。中学1年生から3年外に触れてなかった兄は外の変化に驚きつつも弟との二人暮しが平和に進んでいく...はずだった。

勇者よ、わしの尻より魔王を倒せ………「魔王なんかより陛下の尻だ!」

ミクリ21
BL
変態勇者に陛下は困ります。

童話パロディ集ー童話の中でもめちゃくちゃにされるって本当ですか?ー

山田ハメ太郎
BL
童話パロディのBLです。 一話完結型。 基本的にあほえろなので気軽な気持ちでどうぞ。

処理中です...