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第二十一話 お膳立て 後編
しおりを挟む朝起きると、すっかり熱はなくなり、体が軽い。
相当量の汗をかいていたのか、寝間着は湿っていた。貼りつく感触が少し不快だ。
「その様子だと回復したのかしら? おはよう、ユウ。今日は学校行けそう?」
「大丈夫だと思う。それよりサクヤは大丈夫なのか?」
当然のように部屋にいたサクヤに返答する。
サクヤの活動時間の長さには驚きを隠せない。いつ寝ているのか、時々わからなくなる。
勉強机に向かい、何か勉強でもしていた様子だった。
「ええ。咳の一つすらないわ。昨日はユウに元気の素をいっぱいもらったから、それもあるかもしれないわね」
サクヤは下腹部をすりすりと愛おしそうに撫でて言う。
「それは関係ないんじゃないか。いや、絶対関係ない!」
「ないとは言い切れないわ。実際えっちした後ってちょっと体調が良かったりするの。精神的なものだとは思うけれど。ちなみに、精液を飲ませた貰った後は、ちょっと胃の調子が悪くなるの。多分胃の粘膜に影響するんでしょうね。もしかすると胃から子宮にたどり着こうとしているのかも」
「じゃあ飲まない方がいいんじゃ……?」
「それは嫌。胃の痛みは薬なんかでカバーできても、衝動は解決しないと治らないもの。私にもよくわからないのだけれど、無性に飲みたくなるのよ。高まるというか、体が欲しているというか。あの味が単純に好きなのかもしれないけれど。いえ、好きね。大好き」
「そういうのを聞くと飲ませるのもあれだな……」
「ユウ。今の話を聞いて、ちょっとムラムラしてたりしないかしら? 何かむずむずしているように見えるのだけれど」
朝立ちだったのだが、自然なそれとは違う硬さになりつつあった。
「朝からそういう話するからさ……」
「まだ、時間あるわよ? それに今はもう誰もいない時間だし、一回くらいなら大丈夫だと思うわ」
父はすでに仕事に出ている。母はまだ帰ってきていない。帰りは夕方のはずだ。
学校にも余裕で間に合う時間である。
「朝からユウとえっちできるなんて。今日は運のいい日ね。早起きは三文の得と言うけれど、早起きは三回お得かもしれないわ」
「三回もできないだろ! 時間的に! そしてそういうことわざみたいなので遊ぶな!」
「確かにそうね。こんなくだらないことを言っている前に早くしてもらわなきゃいけないもの。ユウの気が変わらないうちに」
「うーん、ごめん、多分変わらないと思う。正直もう限界というか、したい」
「元気いっぱいね。今日も学校休んじゃう? 風邪で二日くらい休むなんて、普通だと思うんだけれど」
「俺はサクヤほど勉強サボれないからな……」
「別にいいじゃない。勉強よりえっちのほうが楽しいもの。そっちの勉強をしましょう? まだしたことないこともたくさんあるし、したいこともいっぱいあるわ」
「いやいや、将来も考えないとさ。いつまでも一緒にいたいから、そのためには勉強も必要だよ。一番簡単に金を稼げる方法なんだからさ」
「むー。もう少し刹那的に生きてもいいんじゃない? ユウは意外と現実的よね。いつ死ぬのかもわからないんだから、後悔したくないわ。少なくとも、私はユウとえっちしたくて生きてるの。好きな人とくっついて、いちゃいちゃしてるのが好きなの。死ぬときも、ユウとくっついていたい」
「それは俺だってそうだよ。顔を見ながら死にたい。そしてサクヤは意外と向こう見ずだよな」
「決めたことに一直線なのよ。寄り道は好きじゃないの。ユウは、もし私が先に死んだらどうする?」
「ちゃんと後を追って死ぬよ。寂しくて生きてられないと思うし」
想像すらしたくない。この状況から一人になったとして、何に縋って生きていけばいいのか。
「私もそうする。申し訳ないけれど、生きて新しい幸せを探してとは言わない。私と一緒に死んでほしい。あの世で待つなんて、私には耐えられないもの。それに、私以外と仲良くしているユウを見たら、呪い殺しちゃうかもしれないし」
少しだけ笑みを浮かべるが、表情は真面目な時のそれに近かった。
サクヤなら本当に呪い殺しそうだと思う。
「呪いって────俺たち二人とも重いな。俺はそっちの方がいいけど。サクヤだけでいいんだ。ずっと、一生」
「私だってそうよ。ずっと、ユウのことだけ考えてきたんだから。自慰だって、ずっとユウにしてもらう想像でしてたのよ。匂いとか、手の形とか。優しくもらえた日なんて、一晩中びしゃびしゃだったのよ。ずっとユウのおちんちん欲しくて、小学生の時からずっと、ずっと」
「ごめん、小学生の時はまだそういうのはなかったと思う、俺は」
「ユウは中学に入る前あたりだったものね、性の目覚め」
「うーん、なんで知られてるのかは聞かないでおこう」
どうせ、母のせいだろう。
「ユウが精通した時の精液が飲めなかったのは一生の不覚だったかもしれないわね」
「俺すらよく覚えてないんだけど……」
本当は覚えている。ただ恥ずかしいのである。
「小学六年生の冬、一月の中頃のはずよ。パンツにべっとりついてたって聞いたわ」
「……いつ頃聞いた? それ」
「そうね、去年だったかしら。悔しくて枕もおまんこもびちゃびちゃだったのを覚えているわ。ユウの精液マニアとしては不覚にもほどがあるもの」
後半は聞き流すことにする。狂気すら感じるほどの執着だった。
「やっぱり母さんが言ったのか?」
「勿論。ユウの様子がおかしかったから見てみたら見つけたそうよ。夢精だったみたいね。私でしてくれたなら嬉しいけれど」
「……サクヤとキスした夢だった」
俺は観念して話し始める。
恥ずかしいことだけど、実はよく覚えている。
布団の中でサクヤとキスをした夢だった。当時から眼鏡をかけていたサクヤと、唇だけを合わせたキス。
目が覚めたときに衝撃だった。自分が射精する日が来るとは思っていなかったから。
知らない快感で目を覚まして、下腹部に不快な冷たい感触を覚えた。
そこにはべっとりと白い液体が張り付いており、自分が射精したのだと気づいたのだった。
「あら、本当に? だとしたらとても嬉しいわね。キスで射精っていうのも初心な感じがして可愛いわ」
「……当時は想像力がなくてね。一番エロイことがキスだったんだよ」
これも本当のことだった。中学一年生くらいまで、俺には性知識がほとんどなかった。
だが、精通してからというもの、サクヤのどんどん大きく膨らんでいく胸やお尻に目を奪われ始めたのだった。
初めてのオナニーもサクヤをネタにしたものだったのを覚えている。サクヤのことを思い出すと勃起が収まらなくなり、思わず触ってみると快感が走り、続けていると射精してしまったのだ。だけどこれは言わない。
「ふふふっ、可愛い。私は小学校の高学年の頃からえっちすることばかり考えていたわ。初潮が来て、赤ちゃんを産めると思ってからずっと。ユウの赤ちゃんが欲しかったの」
「女子ってそんなに早いのか。学校の性教育までセックスすらよくわかってなかったよ俺は」
「男子だって、周りでは結構いたと思うわ。ユウは遅い方だと思う。こんなに可愛い幼馴染がずっと隣にいたのに」
「…………」
否定はできない。興味はあっても、体が追い付くまでに結構時間がかかったのだろう。
実際、小学生の中盤頃から精通していた男は多かった。
そういう連中の話題についていけなかったのは事実だ。
「初めての射精が私なら、最後の射精も私にしてね。ユウがおじいちゃんになって、もうできなくなっても、ずっと私を抱き続けて。私もそうするから」
「うん。約束する。実際、サクヤ以外では最近反応しなくなってるんだ。病気かも」
単純に、毎日サクヤに絞られているというのもあるだろう。
サクヤの目論見は成功していると言える。
そもそも俺は浮気性ではないのだと思う。現状に満足できているのだ。恐らくは生まれたときから好きだったのであろう人物が、不慣れながらも毎日気持ちよくしようと頑張ってくれている。
精神的にも満たされている現状に、何の不満もない。それどころか幸せ過ぎて死ぬのではないかと心配になるほどだ。ちなみに、エロ本の類はすべて捨てた。サクヤがあまりいい顔をしなかったというのもあるし、もう必要ないと思ったからだ。
今の俺は、トラックに轢かれて、ピンボールのように吹き飛ばされ続けても仕方ないと思うほど、幸せだ。他の女などは必要ないのだ。
「いいえ、愛よ」
嬉しそうに、少し顔を赤くして言う。
「本当なら色々な所で種をまきたいと思うのが本能だというのに、私一人にだけ向けられているなんて。生物的には間違いなのかもしれないけれど、人間としては最高よ。理性的で、自制の利く素晴らしい男ね。流石は私の選んだ男、私の目に狂いはなかったわ!」
「なんか恥ずかしいな……しかも自制が聞いてるかは微妙な気もするし」
サクヤ相手とは言え、毎日欲望をぶつけているのだ。自制が聞いているかは怪しい。発情期の動物でさえもう少し節度があるのではないかと思う。
「いいじゃない。私はユウが好き。ユウも私が好き。恥ずかしいことも、難しいことも何もないの。だから……えっちしましょう? おっきいおちんちんで、くちゅくちゅってかき回して?」
唐突に、とろんとした目を向け、サクヤは制服を脱ぎ捨てながらこちらにやってくる。
勉強机のほうから、サクヤの脱ぎ散らした制服で道ができていた。
あっという間にパンツと紺色のハイソックスだけになり、ベッドの上まで這い寄ってくる。
パンツは水色だったものの、股間部分は薄黒く変色していた。
触らなくても、ぬるぬるしていることは簡単に想像がつく。
布団の下の自分のチンポも完全な臨戦態勢に入っていた。もう朝立ち状態ではなく、精を吐き出すための勃起だ。
赤い顔でこちらを見ながら、ベッドの横で立ったままサクヤは待っていた。
はぁはぁと、理性を奪うような甘い息を吐いて。
もうこらえきれないのか、パンツから染み出した愛液が時折床に落ちていく。
AVなどの知識しかないものの、サクヤほど濡れやすい人を見たことがない。そして、サクヤほど性欲の強い人も。相手が自分で心からよかったと思う。
もしほかの男相手にこんな状態を見せていたらと思うと死にたくなる。
「サクヤ、来て」
そんな気持ちを込めて、サクヤを呼ぶ。
寝そべっている俺にのしかかるように、サクヤは倒れこんでくる。
重いとは思わない。それどころか心地いいくらいだ。
自分を信用してか、一切の力を込めず体を預けてくれる。
長い髪が顔にかかり、甘い匂いが漂う。脳みその中がぼんやりとしてくる香りと温度。
「うん……♡ えっち、えっちして……♡ せっくす好き……♡ おまんこきもちよくして……♡ 奥までくちゅくちゅして、いっぱいぴゅっぴゅして……?♡」
甘えたような、高くか細い声。
こういう関係になるまで一度も聞いたことがなかった声。
真面目で、おとなしくて、性的なことに興味なんてなさそうに見えた、そんな幼馴染。
頭がよくて、理知的で。もっとも、その頭の良さは性的な方面にも流用されていたようだ。
どこかで聞いたことがあった。頭のいい人はエロいのだと。知的好奇心が強いことが原因らしい。サクヤを見ていると納得できる。
サクヤの頭の良さは全国レベルだ。つまり、全国レベルの性欲ということなのかもしれない。
右手で抱きしめながら、左手でパンツを下ろしていく。
水気で張り付いていて少々脱がしにくい。
太ももの辺りまで下げたところで、サクヤは自分で下ろし始める。
俺の手はそんなに長いわけではないため、せいぜいそのあたりまでしか届かないのだ。
「あっ、あんっ、やぁ……♡」
白くて丸いお尻を揉みしだいた後、上にのったサクヤのオマンコを、指でもてあそぶ。
とろとろの液体で覆われていて、触れるたび嬌声を上げる。
自分の体の上で、びくびくと体を震わせていた。
信じられないほど柔らかく張りのある肉。全身が柔らかいサクヤの肉の中でも、一番柔らかいと思う。
ぷりぷりと指をはじく肉をいじり、流れ出る液体を指に絡めていく。
目の前のサクヤの顔は完全に発情しきっていて、指以外のものを欲しがっているのだということはすぐにわかる。
「指、指じゃなくて、あ、あっ♡ はぁっ、そこ、そこだめ、きもちぃっ♡」
肩にしがみ付くサクヤは、案の定懇願してくる。
指で色々触れていても、膣口は周り以外触れていない。パクパクしているのがわかっていても、焦らしたくなる。
昨日のサクヤの乱れっぷりを見て、少しだけSっ気が出てきたのだった。
「指じゃなくて何か欲しいものがあるの?」
自分ももう入れたくてたまらないが、それでも焦らす。自分に対しても焦らしてしまっていることに気づく。
「い、いじわるっ!♡ おちんちんっ、おちんぽっ、ユウの硬いおちんちんっ!♡ おまんこに入れて欲しいのっ!♡ 欲しい、一つになりたいの……♡」
思ったよりも余裕のなさそうな顔をして、声を震わせて言う。
サクヤは自身をドMといっていたが、その割には存外こらえ性がないのだった。
ただ、我慢させると相当態度が変わる。そのため続行することに決めた。
「ふうん。入れて、どうすればいいんだ? 俺にはよくわからないな」
「ん、ふぅ、はぁ、はぁっ♡ ユウの、ユウの好きに突いてほしいの、ずんずんって、おちんちんでおまんこごしごしして♡ もう我慢できないの、体がうずうずして、入れてもらわないと頭おかしくなっちゃいそう♡」
「お願い……おちんちん入れて……♡ おまんこも準備できてるから、きもちぃから♡ 奥にびゅーって、濃い精子出して♡ 何回も種付けして、赤ちゃん作ろ?♡ かわいい赤ちゃん何人でも産むから♡ 今日も学校行くのやめて、一日中えっちしましょ?♡ 動物みたいに避妊なんかしないで、何回も種付け交尾して♡ おまんこヒリヒリしてもやめないで♡」
懇願するサクヤの顔を引き寄せ、少々強引にキスをする。
「ん、んっ、くちゅ♡ ……♡ ──♡ ん、んんっ♡」
鼻息だけで感情がわかりそうなほど、荒く、温かい息が顔にかかる。
自分も心の芯から興奮し始めていたのがわかった。理性だとか、そんな感覚が頭から離れていく。頭が何も思考していない。きっとサクヤもこんな気持ちなのだろうと思う。
チンポがはち切れそうなほど膨らみ、少し上にあるピンク色の気持ちいい穴に入ろうと、もがき、びくつきながら上を向いていた。だがパンツの中にある以上、その願いはかなわない。
我慢が限界に達し、キスをしたままサクヤを強く抱きしめ、なるべく体重をかけないよう一回転する。
サクヤを組み敷いたような形になった。
上から見たサクヤの表情は、これから起きることに対しての期待を全く隠そうとしていなかった。
顔を真っ赤に染めて、キスのせいで汚れてしまった口元を隠そうともせず、こちらに期待の視線を向ける。
ぼんやりと開いていた口は形を変え、声を発し始めた。
「来て……♡ もう我慢できないの、限界なの♡ いっぱいしましょ? 二人で一緒に、何回もびくびく♡って気持ちよくなりましょう?♡」
サクヤは寝間着越しに俺のチンポを手でさすり始める。ようやっと来た刺激に、チンポはびくんっと反応してしまう。
「あっ♡ ユウのおちんちんもびくびくしてる♡ おちんちんはおまんこ入りたいよーって言ってるみたいよ♡ おまんこも、おちんちんいなくて寂しいよって、とろとろの涙流してるの♡ お願い、お願い、えっちしてぇ♡」
俺の寝間着を脱がそうとサクヤが手をかけたので、自分から脱ぐ。チンポは想像通りの状態だった。
M字開脚のように足を開き、サクヤはこちらに手を伸ばす。俺を受け入れてくれる準備ができてしまっている。
ごくりと生唾を飲み、秘所にチンポをあてがう。何度してもこの瞬間は緊張するのだった。
ヌルっとした感触と、期待からなのか熱い温度。これからやってくる刺激に果たして耐えられるのか、自信はなかった。
腰を前進させると、にゅるにゅると飲み込まれていく。
絡みついてくる肉の感触に思わず声が出てしまった。
細かなヒダが射精を促すかのようにまとわりつき、複雑な動きでしごき上げてくる。
オマンコの中は最初の頃よりも気持ちよくなってきているように思う。俺のサイズや形を記憶しているかのごとく絡みつき、どこに擦り付けても射精してしまいそうになる。だから結果として、何回してもまだ慣れていないのだ。
これはサクヤの意志なのか、それともサクヤの体が無意識にしていることなのか、その答えはわからない。多分、サクヤに聞いてもわからないのではないかと思う。そんな状況じゃないからだ。
「ああっ♡ おっきいっ♡ おちんちん硬い、あっつい♡ はぁっ、はぁんっ!♡ きもちぃ、きもちぃっ!♡ ぎゅーってして、ちゅーしてっ!♡ おちんぽ、おちんぽいいっ♡」
「やっぱりゴムなしえっちきもちぃっ!♡ ユウのおちんちんと生ですりすりするのきもちぃよぉっ!♡ 孕みたくなる、妊娠したい♡ 好き、好きっ♡ 愛してる、大好き♡ 精液、精子欲しい、奥に、子宮にぴゅっぴゅして♡ 孕ませて、ユウの赤ちゃん産ませて♡」
サクヤの上にのしかかり、抱きしめながら腰を振る。
ぱちゅぱちゅと、肉がぶつかる音と水音が混じったような音が部屋に響く。
聞こえる音はそんな音と、二人の荒い息とサクヤの喘ぎだけだった。
朝っぱらから二人で発情し、後先を考えず行為にふけってしまう。
性欲の対象と、それを解消できる存在がいるとここまでなってしまうのかと思うほど俺たちは毎日肉欲をぶつけ合っていた。
サクヤ本人がしているように、オマンコも俺を執拗に締め付けてくる。強烈な刺激の中の出し入れで、息が漏れてしまう。
「あっ、ユウ、上手っ♡ きもちぃとこばっかりっ♡ おまんこの弱いところバレてるのっ?♡ イク、もうイッちゃう♡ ごめんなさい、いつも先にっ!♡ でもきもちぃの、きもちぃっ!♡ 好き、好きっ!♡」
背中にしがみ付いて、爪を立てる。寝間着を着ていなければ背中に食い込んでしまうであろう程の力だった。サクヤはイク寸前になると何かにしがみ付いてしまう癖がある。そしてその多くは俺の背中なのだ。
足は俺の腰部分にまかれており、俺が離れることを許しはしない。その体勢のまま、サクヤは小さくうめき声のようなものを上げ、痙攣を始めた。
「あっ、はぁ、はぁっ!♡ イ、イック……!♡ は、あぁぁぁっ!♡」
膣の中の一瞬のゆるみでサクヤが絶頂したことがわかる。だがその後に急激にしまりが強くなる。
「ユウ、ユウ!♡ きもちぃ?♡ ユウは私のおまんこで気持ちよくなれてる?♡ 私は、私はまたイキそう!♡ おちんぽきもちぃの、ごりごりって、きもちぃとこいじめられてる♡」
「う、うん、締め過ぎ……これじゃ────」
射精感がこみ上げ、思わず腰の動きが早くなる。もはや自分でも制御できなかった。
「あ、は、激しい、嬉しい♡ 出して、奥にいっぱい!♡ 精液びゅーって、孕ませて♡ 安全日だけど頑張って孕むからぁ♡ おちんぽ、おちんぽきもちぃよ、私もイキそう!♡ おまんこを、ユウの精子、精子で孕ませて!♡ 一緒に、一緒にイキたい♡」
「だ、だから締め過ぎ、あ、で、出る……」
まだ入れ始めてから三分ほどしか経っていない。普段ならもう少し持つのに、今日は早い。
朝一の刺激としては強すぎるからかもしれない。
「イク、イクイクっ!♡ はぁっ、ああっ!♡ イク、ユウのおちんぽと一緒にっ!♡ あああっ!♡」
情けないことに、そのまま我慢できず射精してしまう。
びゅるびゅると、言われるがまま奥に放出する。サクヤの足が絡みついているせいで、奥以外の選択肢はなかった。
強い締まりの中、尿道に残っているものも含め、すべてを出し切るまでサクヤにしがみ付いていた。
「おまんこきもちぃ、イッちゃった……♡ あっ、おちんちんすごいどくどくしてる……♡ 精液あったかい……♡ ユウ、可愛い……♡ 必死にしがみ付いて射精してくれて、嬉しい……♡ 気持ちいい?♡ 私は最高に幸せな気分よ♡ 好きな人とくっついて、えっちまでできて、中にいっぱい射精してもらえて、これ以上に幸せなことって、きっとない♡ あっ、またイキそう♡ 幸せ過ぎてイキそう♡」
「お、俺も……う、まだ出る……」
「全部出して……♡ もっと一緒に気持ちよくなりましょう……?♡ 私が孕むまで、孕んでも何回もぴゅっぴゅして欲しい……♡」
残っているものを出し終えるまで、サクヤは俺の背中をさすっていた。
妙に安心感が与えられ、幸せのまま射精を終えた。
結局、一回で済むことはなく、サクヤが最初に言った通り、しっかり三回してしまった。
学校の時間が近づき、風呂に入ったりの準備があったためやめたが、途中何回もサクヤの誘惑に負けそうになってしまった。休んでもいいかと何度も考えたものの、時折冷静になって考えると俺はそんなにサボれないということに気づく。
♦ ♦ ♦
「もっとしたかったのに……」
サクヤは不満そうに頬を膨らませてユウにそう告げた。
二人は登校途中だった。
結局ユウは理性を取り戻すことができたのである。
「いや、でもなぁ……」
ユウはどうしたものかと考えていた。普段こそそんな様子は見せないものの、サクヤは強情でわがままなところもあるからである。
ただ、ユウ本人は気づいていないことだが、サクヤがそんな状態になるのはユウにだけであった。元々親に対してもそこまでわがままを言ったり、甘えたりをしないのだ。
本来誰かに甘えたり頼ったりしないのが、四条サクヤという人物なのだった。ユウはそういう高潔な人柄に小さな頃からあこがれていたのである。しっかりとしたプライドを持ち、他者に染まらない。かっこいいとさえ思っていた。そんなサクヤが完全に心を許しているのがユウだけなのである。昔からそうなのだが、ユウは気づいていなかった。
市場ユウという人物は基本的に鈍感だ。だからこそ、サクヤは言葉にして猛烈アピールを繰り返している。言わないと気づいてもらえないということがわかっているから。
ユウは基本的な人格としては落ち着いていて、年を考えるならば大人な考え方をしている。鈍感であることを除けば悪い人間ではないのだった。
「学校と私、どっちが大切なの」
サクヤは答えを知っている。現段階において、それが優劣をつけられるものではないと。
それでもこの質問をしたのは、純粋にユウの答えが楽しみだったのと、こういう面倒なことを言ってみたかっただけだった。
だから適当にはぐらかすような回答がされてもなんとも思いはしない。自分だと言ってくれれば嬉しいな、程度だった。
「そりゃサクヤだよ」
ユウは即答する。それは気取った言い方でも表情でもなく、さも当然のように言ってのけた。
「え、────っ!」
サクヤは顔面を真っ赤にし、目を丸くしてユウを見る。
望んでいた回答ではあったが、想定していた回答ではなかったからだ。
「サクヤ熱でもある? 顔真っ赤だぞ」
心配した様子で顔を近づける。
「ち、ちがっ! いきなりそんなことを言うから!」
両手をぶんぶんと左右に揺らし、顔を隠す。顔は火が出そうなほど真っ赤で、サクヤにとっては普段見せている痴態よりも恥ずかしかった。
「いきなりって────サクヤが聞いたんだろ?」
ユウはと言えば何を恥ずかしがっているのかと呆れていた。
彼からすれば聞かれたことに答えただけで、それほど深い意図があったわけではない。
「でもっ、そんなこと言われるなんて……普通どっちか決められないとか、そういうのを言われると思うじゃない」
「学校も大事だけどさ、でもどっちがって言われたらそりゃサクヤだろ。迷うことじゃない」
「……ありがとう。でも不意打ちよ。私そういうのに弱いんだから。予告して欲しいわ。危うく心臓が止まるかと思ったじゃない。普段はそうでもないのに、たまにドキッとすることを言うんだから」
眼鏡を上げながら、正面に向き直って照れ隠しのような動作をする。
頬には赤みを残して、口元はほんのりと上がっていた。
サクヤの内心は喜びにあふれていて、一周回って泣きそうなほどだった。
ユウは釈然としない気持ちだったが、サクヤの表情は確かに喜びのそれだったので気にしないことにしたのだった。
市場ユウは天然なのだ。時折こういうことをしでかすせいで、小さな頃からサクヤは気が気じゃないことも多かったのである。
「昨日はごめんな、遠藤。全然気づかなかった」
ユウは学校に着くなり、遠藤の机まで行って謝る。
サクヤとの行為に夢中になっていたときに遠藤からメッセージが送信されていたのを気づいていなかったのである。内容は風邪を心配するようなものであった。
そして、その文面を確認したのはつい先ほどのことである。
「あ、ああ、いいんだよ。それより体調は大丈夫なの?」
「ああ、全然平気。途中は死ぬかと思ったけどな。39.2℃だぜ、熱」
「え、ホントに大丈夫なの? 結構本当に死にそうな数字だよね? それと、四条さんも休んでたけど、二人とも風邪?」
「え、ああ、まぁ、そうだな。サクヤも風邪ひいてたみたいだ」
勿論、嘘だ。だが本当のことを言うことはしない。
ユウの態度に、遠藤はまさかという疑問をもったが、あえてそれは聞かなかった。
「それよりっ! 土曜日忘れんなよ。せっかくサクヤに頼んだんだからな」
ユウはごまかすように話題を変える。だがそのことを思い出した遠藤は満面の笑みで応えるのだった。
「も、勿論だよ! ほんと、市場に頼んでよかった!」
「今度学食でも奢れよ。サクヤの分もな。というか俺はあんまり活躍してないんだけど」
「い、いや、市場がいなかったらこんなにうまくいかないよ!」
「どうだかな。サクヤに頼んでも同じだぜ、多分。むしろお前でうまくいかないならほとんどの人は現実に絶望しかないと思うけどな。大抵の人は遠藤の誘いは断らないと思うぞ」
遠藤は少し悩んだ顔をして、思いついたように言う。
「い、いや、俺は誰でもってわけじゃなくて、市場と四条さんみたいなのが理想っていうか」
「俺たちはちょっと特殊だと思うから参考にはならないと思うぞ。遠藤って別に幼馴染とかいるわけじゃないんだろ?」
「うーん、そういうのじゃなくて、お互いしか見えてないっていうか、そういうのがいいんだ。多分、市場はほかの子を好きになったことないだろ?」
「ないな。全く」
断言。ユウは本心からその発言をした。実際、小さな頃からサクヤ以外を見ていなかったからだ。少々ゆがんだ価値観ではあったものの、それだけ四条サクヤという人物が魅力的だったのだ。
「そう、そういうのだよ。なんか愛し合ってるって感じで憧れる。俺もそういうのをしてみたいんだよ」
「……他人に言われると恥ずかしいな。でもまぁ小さい頃から一緒だからな。これからも一緒にいたいと思ってるよ。両親たちもそう思ってるみたいだし」
「いいなぁー! あんな可愛い幼馴染がいて! 俺にも欲しかったなぁ! しかも家族公認って、何それ、神は死んだのか!?」
机に突っ伏し、本当に落胆したかのように振る舞う。だが、現実に遠藤明彦は絶望していた。
彼は容姿にうぬぼれているタイプではなく、非常に純朴な青年だった。というよりも、自分の容姿をあまり好きにはなれていないのだった。彼のこれまでの人生で、容姿で得たメリットは少なく、どちらかというと精神に悪影響を与えられた経験のほうが多いからであった。
「ちょ、声が大きいって!」
「いいんだよ! 今更二人の事邪魔するような奴なんていないんだから! 誰がどう見たってお似合いだよ!」
遠藤は本心から言っていた。二人は気づいていないものの、最近の二人の雰囲気は完全に付き合っているそれであった。幼馴染であることを知らない人間であってもわかるくらいには幸せに見えている。普段クールな印象で知られるサクヤが笑顔を浮かべることが多くなっていたのだ。
「そんな風に見えるのか……?」
「噂になってるよ! ついに四条さんが落ちたって!」
ユウは畑山を思い出す。なにせ、付き合っていることを知っているのは遠藤、畑山、そして黒田サユリだけだったからだ。
「見えるよ、見えるさ、羨ましい、俺も誰かに愛されてみたい!」
感情が高ぶり、遠藤はどもりが消え始めていた。
「……まぁ、土曜日頑張ろうぜ。一応俺たちもいるけど、なるべく二人になれるようにするからさ」
「ほんと、ほんとお願い。欲しかったら俺の処女もあげるからさ……」
顔を上げ、ユウのほうを見つめる。その様子を見て、ユウは熱があったとき以上の寒気を感じるのであった。
半泣きのような、そんな表情で顔を赤くしてユウを見つめていた。サクヤが一瞬かぶってしまい、ユウは得体のしれない罪悪感を覚えてしまう。
自分よりも長身のイケメンがそんな顔を向けたのだ。女子なら喜ぶかもしれないがユウにとっては単に恐怖だった。
「いらんわ! マジでそっちの気があるんじゃないだろうな!?」
「な、ないけど市場が欲しいならあげてもいいくらい感謝してるよ……!」
「でもわからんからな? うまくいくかどうかは保証できないぞ? あとは遠藤の頑張り次第だ」
「まぁ、それはそうなんだよね……上手く喋れるかな……」
「────頑張れ。俺にはそれしか言えない」
コミュ障である遠藤が上手く話せるとは思えない。ユウはそんなことを考えてしまうが、当日はできる限りのことをしてやろうと思いなおした。二人が上手くいけばサクヤに対する黒田サユリの興味も失せるかもしれないからだ。
ふと、ユウはサクヤのほうを見る。
全く持っていつも通り、さっきまで情事にふけっていた人間とは思えないほど凛とした姿。背筋を伸ばし、優雅な所作で授業道具の準備をしていた。
多分、さっき中に出したものが残っているだろうな、とユウは思い出す。風呂場で流せばよかったものの、サクヤはそれを拒否したのであった。
「だって、せっかく出してもらったのにもったいないじゃない。今流れちゃうのは仕方がないけれど、奥のは無理に掻き出したくないわ。それに学校にいるのにユウの精液が入っているなんて、すごく幸せじゃない?」
嬉しそうにそう言うサクヤを見て、ユウは何も言えなかったのである。
サクヤの前の席は黒田サユリ。彼女は横向きに座り、サクヤに何か話しかけていた。その様子を見ていると、ユウとサユリは目が合う。だが、彼女は何とも言えない苦い顔をして目をそらしてしまうのだった。
(全然諦めてないな……なんとかして遠藤とくっついてくれたら助かるけど……)
向けられた敵意のようなものに対し、ユウは頭を悩ませる。
どうしたらいいものか。自分の彼女に性的な好意を向けている女子。どのように対応すればいいのか、結局考えても答えは出ないのだった。
そして、土曜日。
遠藤明彦にとっては決戦の日。ユウとサクヤにとっては日常の延長線。黒田サユリにとっては複雑な気持ちの一日が始まる。
「ユウ、服買いに行くんでしょ? あんたお金は?」
学校がないためいつもよりも遅い時間に起きたユウは、下に降りるなり母に言われる。
前日が金曜日の夜だったこともあって、深夜三時までサクヤと激しく行為に励んだ。もはや両親は何も言わない。声さえ抑えていれば特に注意もなかったのだ。そして力尽き、精魂尽き果てて寝落ちしたのだった。気づけばサクヤは家に帰っており、おそらくは今日の準備のための帰還であることは想像がついた。
親の目というものも一応あったため、コンドームはしっかり着用する。サクヤは不満げではあったものの、仕方ないことも理解しているので大きく文句は言わない。部屋のごみ箱の中身には大量のコンドームが入ったビニール袋が入っている。すべて伸び切り、中に入っているべき白濁は存在しない。例に漏れず、サクヤが行為中飲んでいたからだった。恍惚の表情と、その淫靡な行動にユウの性欲はますます駆り立てられ、結果として夕食から深夜までずっと、サクヤの中で精を放ち続けていた。
何度もしたせいか、ユウは腰に少々痛みを覚えていた。ユウは痛む腰をさすりながら母に答える。
「この前貰ったお金残ってるからそれで買おうと思ってるよ」
ユウがサクヤと付き合い始めてから、定期的に母と父からの支援があった。
どうやらそれは二人の為に貯めていた両家の貯金らしく、サクヤの両親からも遠慮せずに使えと言われていた。少し複雑な気持ちだったものの、本人たちが嬉しそうに渡してくるものだからとりあえずは受け取っていた。二人の小遣いも兼ねたものだったため、それ以来小遣い日という制度は廃止されたのだった。二人での共同管理であり、それはまるで新婚生活にも近い空気だった。
ユウとサクヤは、おそらくこれは将来のチュートリアルだということを理解しており、それが両家の狙いだということもなんとなくわかっていた。金銭の管理や使い方の勉強ということである。だが、二人ともお金にそれほど興味がなく、使う内容としては日々のコンドーム代や、二人でどこかに行った時の費用くらいだった。
「ユウ、今日はこれで男を見せてきなさい。何かプレゼントを買うのよ」
そう言って、母は自分の財布から二万円を取り出し、ユウに突きだす。
「え、大丈夫だって、母さんこそ服とか買えばいいじゃん!」
二人の管理している全財産は54230円。服を買うには十分すぎるほどだった。
各一万円ずつを隔週で支給されている。そのほとんどに手を付けていないため、現状ではたまる一方だった。
「いいのよ。これは私のへそくりだけど、お父さんのお小遣いを減らせばいいから」
ユウの母は不敵な笑みを浮かべ、父のほうを見る。
「お、俺のをかぁ!?」
リビングのソファでぼーっとテレビを見ていた父は急ぎで振り返り、焦った様子で声を上げる。
「ほら、父さんも驚いてるし!」
「いい? 高校生の思い出は高校生でしか作れないのよ。それがどんなものであれ、一生に一度きりなんだから。お金を気にするのはもう少ししてからにしなさい。大人になれば嫌でも考えなきゃいけなくなるんだから。それに友達も一緒なんでしょ? いいじゃない。ちゃんと青春してきなさいよ。部屋にこもっていちゃいちゃしてるのも楽しいんでしょうけど、たまには外で普通に遊んできなさい」
「…………」
ユウにとって母の言葉は少し意外だった。
今でさえ十分すぎるほどの援助を受けているのに、さらに。そしてそれを遠慮することを許さない。普通の家庭であれば逆なのに。
「仕方ない。確かに母さんの言う通りかもしれんな。減額を受け入れようじゃないか。どのみち減っても増えても使うところも少ないからな。昼は母さんが弁当作ってくれてるし」
父は諦めたのか、妙に物分かりがよかったように、ユウには見えた。
実の所、父は少しだけ羨ましく思っていた。ユウの母、父の妻が交際を始めてくれたのは大学に入ってからのことで、高校生の頃にユウたちのような付き合いがあったわけではない。
だからこそ、息子には自分でできなかったことをしてもらいたいという気持ちがあるのだった。
「じゃあありがたく貰うよ。父さんごめん……」
「いいさ。その代わり楽しんで来いよ。そして楽しませて来い」
父はニカっとした顔で笑う。
ユウは少し感慨深い気持ちになっていた。自分が恵まれているのだと、心から思ったのだ。
八時三十分頃、サクヤがユウの家のドアを開ける。
リビングに向かい、ユウの両親に挨拶をした後にユウの部屋へ向かう。
サクヤはユウとの行為を直接見られてしまってからというもの、顔を合わせるたび少し恥ずかしい気持ちになっていた。それでも関係があること自体は知られていたため、かろうじて同じ態度を保てていた。
考えてみればユウのほうが恥ずかしいかも、というのも理由であった。
「おはよう、ユウ。昨日も最高だったわね。腰が抜けて歩くのが大変だったわ」
部屋に入るなり、着替え中だったユウに向け言い放つ。
ドアの縁の部分に手をかけ、軽くポーズをとったような立ち方だった。
デニムのパンツスタイルで、できる女と言った風貌である。スタイルがよくないと似合わないであろう服装。だがそれを完璧に着こなすサクヤは全体が細く、足が長い。制服だとそれほど目立たないが、私服の状態だとそのスタイルの良さが浮き彫りになるのだ。体のラインが出て、これまたやはり制服では目立たない胸のサイズも明らかになる。
サクヤは露出を好まない。ほとんどが肌の出る面積が少ない恰好だった。
ひらひらした格好が苦手ということもあるのだが、ユウ以外の男が向ける視線が嫌いなのが最大の理由だった。ほとんどの男が顔を見た後に胸に視線を移し、下卑た笑みを浮かべる。それに対し嫌悪していたのだ。
サクヤにとって、ユウ以外の関心に興味はなく、その他は有象無象の害虫のようなものでしかないのである。
「おはよう。朝から元気だな。その元気を少し分けて欲しいくらいだ」
ユウはサクヤの服装を見てもそれほどの反応はしない。彼からすれば見慣れたものだからだ。
幼少期からサクヤを基準にしてしまっていたため、他の女に反応できなくなっていてもある意味当たり前だった。言うなれば贅沢病である。
サクヤはユウの着替えをじっと見る。元々バスケ部だったことも影響してか、ユウは人前で着替えることにそれほど抵抗がないタイプだった。
サクヤと付き合うようになってから体が引き締まり、全体的に脂肪が落ちているように見えた。
声には出さないものの、改めてみるユウは男らしく成長していた。
「……あんまり見るなよ。ちょっと恥ずかしいだろ」
「いえ、かっこよくなってきたなぁ、って思ったのよ。たくましくなってきたわ」
「……それはどうも」
ちらっとサクヤの胸に視線がいく。ユウは黙っていたが、最近サクヤの胸が大きくなってきているような気がしていたのだ。
自分がもみ過ぎたせいだろうか、そんなことを思っていた。
それを見抜いていたのか、サクヤは言う。
「今日は下着も買いたいの。ユウも気づいていると思うけれど、最近少し胸が大きくなってきているのよ。生理前に張るときよりも窮屈になってきたのよ。好きな人に揉まれると大きくなるって言うけれど、本当なのかもしれないわね」
そんなことを話しているうちに、ユウの着替えが終わる。
持ち物の確認を済ませ、目的地に二人で向かう。
今回は現地集合で、待ち合わせはこの前二人で行った映画館のあるショッピングモールだった。
近場なのでそれほど早く出る必要はないのだが、十分は早く到着するように家を出る。
二人は本来遅刻などはしないタイプなのである。
「じゃあ、行くか」
「そうね。今日は私たちは黒子に徹しましょう。ちょっと心配だけれど」
「それは俺も。遠藤話せるのか」
「話題を振ってれば大丈夫じゃないかしら。彼、話し始めたら意外と話せるじゃない」
好きな女の前で同じことができるのか。ユウは少しの心配を持ちながら、手を繋いで歩き始めたのだった。
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