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第十二話 氷の女王

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 サクヤは深刻な顔で俺に言った。

「ユウ、ごめんなさい。生理が来てしまったわ」

「大丈夫なのか? 女の人のそれは苦しいんだろ?」

「それは大丈夫なのだけれど……慣れているから。でもあんなにしてもらったのに妊娠できていないなんて、私の子宮は不甲斐ないわ」

「いや、今に関してはそれでよかったんじゃないか? 正直内心安心したよ」

「むー。ユウは孕ませたくないということね。私はこんなにも孕みたいのに」

 頬を膨らませて不機嫌そうにする。

「そもそもまだ高校生だし、俺が子供相手に嫉妬してるところなんて、サクヤも見たくないだろ?」

「それはそれで見たいというか、そんな気持ちよ。それに子供には申し訳ないけれど、きっとユウのほうが大事。勿論、子供にも愛を注ぎ込むことは間違いないだろうけれど」

「んー、そういう意味では俺は多分まだ覚悟ができてないんだろうな……」

「それそのものは当たり前のことだと思うわ。私たちはまだ高校生なのだから、子供のことを考える以前に、悲しいほどに子供なのだから」

 サクヤは神妙な、それでいて少し寂し気に言う。

「まぁ、な。その辺はおいおい考えよう」

「一応ピルという薬もあるのだけれど、ある程度副作用もあるのよ」

 ピル。経口避妊薬。
 飲むだけで妊娠をある程度防げる、まるで魔法のような薬。
 だが当然のように副作用がある。

「あー、知ってる。だけどそういうのはやめてほしいかな。我慢すればいいことなんだし、取り返しのつかないことになってほしくない」

 もし何かあれば。そんなこと、考えたくはない。
 すべてがうまくいくような薬など、きっとない。

「我慢、我慢ね。ユウはできても、私が自信ないの」

 本当に、サクヤは変態なのかもしれない。
 でも、薬は少し怖い。

「それでね、ユウ。生理の間はセックスできないわ。正確に言うとできるのだけれど、はっきりいって血みどろよ。ユウが気絶してしまうかもしれないくらいは」

「あー。確かにそれは無理かも。それにサクヤだって痛いんじゃないのか?」

「したことがないからわからないけれど、多分多少は」

「……なら絶対我慢するよ」

「それでなのだけれど。一応一週間くらいはやめておいた方がいいと思うの。私は一般的でいうところの重い方で、もしかすると血を見るかもしれないわ」

 一週間、サクヤとするようになってから最長の我慢期間である。
 といっても一日すら我慢できたことはない。

「その間、射精しちゃだめよ。どうしてもしたくなったら私に言って。口とか手でするから。絶対にオナニーはしないで。それは浮気としてカウントするわ。夢精だけは仕方ないけれど」

 まだしていないというのに、サクヤは少し怒り気味だった。
 つまり間違えてバレてしまえば大変なことになるということだ。
 喧嘩はしたくない。それにこれから何度だって起きる問題なのだ。
 つまり俺にできることは────

「頑張るか……」


 それから三日後の朝。

「ユウ、あんた苦しそうね」

 母はにやにやとした顔でいう。
 ここ数日一人で夜を過ごしているからだった。

 サクヤのいないベッドはとても寂しかった。
 少し前までそれが当たり前だったというのに。
 寝るときも、朝起きるときもサクヤが隣にいない。
 それには性欲以上の寂しさがあった。
 夜、家に帰ってしまうとき、何度も引き留めようとしてしまう。
 サクヤも少し寂しそうな顔をしていたが、ベッドが血みどろになるわ、と帰ってしまう。
 それがどうしようもなく、寂しかった。

 サクヤの今使っている枕の匂いで悶々とした毎日を送っている。
 最近は朝起こしに来ることもない。会ってしまうとしたくなるから、だと言う。

「仕方ないだろ。サクヤ生理なんだから」

「まだ孕ませていないみたいで安心したわ。さすがに高校生のうちはね。卒業したら好きにしてもいいけど。私たちの孫だし、金銭的にもバックアップするからね。そのための貯蓄もあるから、どっちにも」

「嬉しいけど……まだそこまで考えられないよ」

 少なくとも反対されていない、それは救いだろう。
 まさか子供の子供のことまで考えているとまでは思っていなかったけど。

「この前のはすごかったからね。サクヤちゃんがあんなになるなんて、あんたもやるじゃない」

「!? 見てたのか!?」

「一応様子見に行ったらすごいんだもの、さすがに邪魔しようとは思わなかったわ」

「息子の息子にあんな才能があるなんて、誇らしいような、悲しいような」

 この前というのはきっとサクヤが『孕ませて』と何度も求めていたときだろう。それが生理前最後だからだ。

「ちょっと、ホント、サクヤには言わないでよ、それ。というか見るなよ!」

「下まで聞こえてたから、さすがに心配になったのよ」

「……聞こえるの?」

「うん。盛り上がってくると結構響くのよ、ここ。私たちも苦労してるのよ。ユウにばれないように」

「親の性事情は知りたくないぞ!」

「私たちだって現役よ。案外先に弟か妹ができるかも」

 耳をふさぎ、家を出る。
 学校に行くために、サクヤを迎えに行くのだ。
 これ以上聞いてしまえば、親を見る目が変わってしまう。

「おはよう、ユウ。しっかり継続中のようね」

「勿論だ。そういえばボイスレコーダー、まだおいてるだろ」

 監視を兼ねて、なのかと思っていた。

「ええ、私たちの愛の記録よ」

 だがどうやら違うらしい。

「……まぁいいけどさ。どっちかって言うとサクヤのほうが恥ずかしいだろうし」

「聞き直すと顔が真っ赤になるわ。私、あんなになってるのね」

 思い出したのか、本当に顔が赤い。

「それでユウ。我慢できそうなの?」

「正直、そろそろ限界」

 最近の性欲の強さは異常だった。
 思い出すだけで勃起が収まらなくなる。毎日消費していたものがどんどんたまっているのがわかった。

「私もすごくむらむらするの。毎日できないだけでこんなにつらいとは思わなかったわ」

「やめよう。この話を続けたら余計に我慢できなくなりそうだ」

「ねぇ。今日泊まりに行ってもいい? えっちはできないけれど、一緒にいたいの」

「うん。俺も……ちょっと寂しい」

「今まではずっと一人だったのにね。触れ合ってしまうと離れられないなんて」

「サクヤ……好きだ。大好きだ。もういない生活には耐えられないのがよくわかった。俺がちゃんと養えるようになったら結婚してくれるか?」

 思わず。普段なら言えないだろうことを口走る。
 高まった性欲のせいで素直になっているのかもしれない。

「当たり前じゃない。私の小さな頃からの、唯一と言ってもいい夢なのよ」

「嬉しいことを言ってくれるな。ああ、だめだ。我慢できなくなる」

「夜を楽しみにしていて。今の私にできる中で一番気持ちよくさせてあげるから」

「今すぐ日が落ちないかと思っちゃうな」

 だが残念ながらまだ朝早く、学校に行く途中だった。


「なぁ、市場」

 クラスメイト、そして友達である畑山が話しかけてくる。
 俺の後ろの席だ。見た目はそれなりに気にしているようで、オタクではあるものの、あまりそうは見えない。
 そんな畑山がひそひそと話しかけてきた。
 教室の雑踏の中、俺たちの声は聞こえないだろう。

「あのさぁ……最近四条さん、エロくない? いや、元々エロイんだけど」

「なっ! お前そんな風に見るなよ!」

「んー? 幼馴染なだけなんじゃないのか? 別にいいだろ?」

「……今は付き合ってるんだよ」

「────嘘だろ? あの『氷の女王』を討ち取ったってことか?」

 畑山の表情はまさに絶句、といったものだった。
 目を見開き、口を半開きでこちらを見据える。

「……サクヤってそんな呼ばれ方してんの?」

 氷の女王。
 サクヤにはあまり似合わないと思うのだが、フラれた人間からするとそう思えるのかもしれない。なにせ畑山もフラれているのだから。
 無謀なことしやがって、と憤慨したものである。

「いや、俺が言ってるだけだ。思わず言ってしまった」

「今後はやめろよ……」

「……それで、ヤッたのか?」

 自分に可能性があるとは思っていなかったんだろう。今の表情は完全に好奇のそれだ。

「ノーコメント」

「くそっ! ほとんど肯定したようなもんじゃねぇか! そうか、だからか、だから四条さんがあんなにエロくなったのか!」

「いや、ホント、無理なのはわかるけど、サクヤをそんな目で見ないでくれ、頼むから」

「ふーん、お前冷めたやつだと思ってたけど、結構独占欲強いのな。というか四条さんのことだけ熱いって感じか? 意外だな」

 畑山は一転真顔でそう言った。
 冷めてる。そんな風に見えていることを、俺は知らなかった。

「あーあ。わが校の誇る美少女がまた一人、堕ちてしまったのか」

 下を向いて、がっかりしたような様子だった。

「また?」

 俺の言葉に顔を上げる。

「ああ、黒田だよ、黒田サユリ。どうにも恋をしているような、そんな素振りがあるんだ」

 人差し指を立て、ドヤ顔で言う。明るい奴である。
 前向きというのはこういうやつのことを言うのだろうと思う。

「お前、モテないくせによく見てるよな」

「それは余計だろ。一足先にこの地獄を抜けたからってな。たまたま幼馴染って蜘蛛の糸が垂れてただけだろ?」

「否定はしないけどな。実際幼馴染じゃなかったら無理だっただろうし」

 サクヤが幼馴染じゃなかったら。
 好きになってくれるところなど、あったのだろうか。いや、きっとない。

「それで黒田なんだが、もしかしたらお前が好きなのかもしれないぞ。時々お前のほう見てるんだよ。なんというか、切なげというか、そんな感じで」

 黒田サユリ。サクヤと仲がいいことは知っているが、それだけだ。
 俺個人としてはあまり接触がない。確か、バドミントンで全国に行ったとかなんとか。
 つまり好かれる要因は特にない。
 俺は部活にも入っていないし、入っていたとするならそれはバスケ部である。
 強いて言うなら、サクヤそのものが接点というくらいだ。

「それはないだろ。俺何回かしか話したことないし」

「いやー、恋というのは唐突なものですよ」

 大げさな身振り手振りで悟ったように言う。

「キャラが不安定だぞ、畑山」

「まぁそういうことでさ。何急にモテてんの? あ、なんか腹立ってきたぞ!」

「別にモテたいわけじゃないんだけどな……」

「その余裕が腹立つ。お前は今友人を失いかけているぞ」

「────」



 学校が終わり、サクヤと帰路につく。
 畑山の言葉が少し引っかかっていた。

「なぁ、サクヤ。畑山が言ってたんだけどさ」

「畑山君? 一体何を言っていたの?」

「ああ、多分勘違いだと思うんだけど、黒田が俺を見てるらしいんだ」

 好かれているといわれたことは言わない。
 きっとサクヤは聞きたくないだろうから。

「サユリが? 確かにそんなときもあるけれど、あれはユウじゃなくて外でも見ているんだと思ってたわ」

「だよなぁ……」

「それにあれはどちらかと言うと……」

 サクヤは複雑な表情をする。少なくともいいように見られていないのではと思う。

「まぁ別にいいんだ。ちょっと気になっただけだから」

「もし好かれていても、絶対にダメよ。私を殺人犯にしないでほしいわ」

「……殺すのか?」

 サクヤは冷たい目でこちらを見る。

「ええ」

 短い返答。そのせいで余計に真実味がある。
 意志の強いサクヤのことだ。やりかねない。

「サユリがユウを好きになる分は仕方ないとは思うけれど、というより無理もないけれど、ユウからは絶対にダメだからね」

「どっちもないだろうな……それよりサクヤ。家に着いたらその、してもらえるか?」

 面と向かって言うのはいつまでたっても恥ずかしい。
 サクヤはそれを聞き微笑む。誘われているような、蠱惑的な表情だった。

「たっぷりしてあげる。全部出させてあげるから、遠慮しないで?」


「サクヤごめん、まだ家に着いたばかりなのに」

 部屋に戻り、制服を脱ぐ。
 そしてあっという間にパンツ一枚になる。
 サクヤも上半身だけ裸になる。下を脱がないのは俺を気遣ってくれているんだろう。

 思わずおっぱいに手が行く。
 ふにっとした柔らかい感触、指が沈んで飲み込まれるような感覚。
 口がぽっかり空いてしまっているのがわかる。
 パンツはすっかり持ち上がり、中でチンポがパツパツになってしまっている。

「ん、ユウ。そんな夢中になって。可愛い」

「可愛いって……あんまり嬉しくないな」

「今日はおっぱいでしてみようと思うの。パイズリというやつね。好きでしょう?」

「……大好きだ」

「じゃあユウ、ベッドに座って?」

 パンツ越しに、俺のチンポをさする。
 すでにがちがちになっているのが伝わってしまい、恥ずかしい。
 そして随分と敏感になっているのがわかる。少し触られただけで腰が浮きそうになる。

 パンツを脱がされ、サクヤの前にチンポが晒されてしまう。
 びくびくと脈打ち、先端からは我慢汁が垂れていた。

「改めて見てみると……おっきい。びくびくってしてる」

「あんまり見ないでくれると嬉しい。それと、多分俺のは普通だと思う」

「そんなことないわ。私の中にいつもみっちり入っているし、私の限界サイズだと思うわ」

「いつも気持ちよくしてくれてありがとう」

 サクヤはそう言って、亀頭にキスをした。
 チュッと音を立て、根元のほうを掴みながら。

「はうっ!」

 柔らかい唇から予想外の刺激を与えられ、変な声が出てしまう。

「気持ちいい? でもこれからよ」

「サクヤ、今日やばいかも、敏感すぎて」

「そうみたいね。すごく、可愛い顔してるわ」

 赤い眼鏡の下の目は細められ、口元は笑みを浮かべている。
 サクヤはそのまま自分の胸に俺のチンポを挟む。

「完全には挟めないわね……やっぱりおっきい」

「すご、やわらか……気持ちいい……」

「そう? だったらいいのだけれど」

 包まれる感覚、俺のチンポの形に合わせて変形する柔らかい肉。
 ずりずりと全体を擦られ、未知の刺激に口元が緩む。

「サ、サクヤごめん、もう出ちゃいそう」

「今日は顔にかけてほしいの。たっぷり、どろどろに」

 舌をベッ、とあごのほうまで伸ばす。
 真っ赤な長い舌の先端から唾液がポタっと流れる。
 サクヤはそのまま座り込み、顔の正面に俺のチンポがやってくる。
 おっぱいの感触は名残惜しいと思ったが、サクヤの舌先が裏筋をなぞり、それも消え去る。

「あ、出そう、出そう!」

 その言葉に反応して、サクヤは手でしごきながら、裏筋を舌でぞりぞりとする。

「ごめ、出る!」

 ビュっ、と一筋の精液がサクヤの顔を汚す。
 舌の上から前髪まで、真っ白な液体が飛んでいく。

「あったかい……ユウの精液の匂い、イッちゃう♡」

「う、う」

 そのあとも三日分をしっかりと放出するかのように、何度も脈動を繰り返し、顔の上に白い筋を作っていく。赤い眼鏡のフレームは白く染まり、俺の射精をじっと見ていたサクヤの目は、俺の精液で見えなくなってしまう。

 口を開けていたせいで、顔だけでなく、口の中までが俺の精液にまみれていた。
 綺麗な可愛い顔が汚れてしまった様子に、俺は興奮する。

「すごい、どろどろになっちゃった……♡」

 口の中のものを飲み込み、眼鏡をはずし、嬉しそうに言う。
 そして眼鏡についた精液をねっとりとした様子で舐めとる。

「ユウのだと思うと、すごくおいしい……♡」

 びくびくと全身を震わせ、顔についた精液を指で口に運んでいた。

 出したばかりだというのに、俺のチンポは次の射精を望んでしまっている。
 サクヤの淫靡な様子に我慢ができなかった。
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