精神世界の衰退

精神世界の衰退

現代社会の物質的充足が進展していくたびに私たちの精神世界は衰退していく。
その事実というものは実感がしずらいだろう。
しかし、今の私たちと昔に生きていた先人の生活をくらべると私たちの精神世界の衰退がありありとわかるであろう。
精神世界の衰退は私たちの自我の崩壊を生む。
その事実というものは、だれもが否定できない現実であろう。精神世界の衰退は私たちの自我を引き裂いて
バラバラにし、そして再びその存在というものが回復できなくなってしまう。
物質世界の充足が進展することは、もちろんよいことだが、それは私たちの日々の生活の余白をつぶすこと
になってしまっている。
例えば、東京から大阪まで、昔は数日もかかっていたものが今では、ほんの数時間でつかせることが
出来てしまう。
その事実こそが余白の消滅なのである。
余白の消滅が私たちからものにふける時間を奪うことは明らかである。
余白の消滅こそが私たちから、健全な精神状態を奪ってしまう。
例えば、馬が休息もろくに取らずに走りつづけたら、いつか倒れてしまうことは明白であるし、
挙句の果てには、再起不能なダメージを受けてしまうことだってあるであろう。
私たちにとっては、休息とは、余白を得ることによってはじめて享受できるものであり、
余白を得ずに、走りつづけることがあれば、それこそ精神世界の崩壊を生む。
私たちにとって、余白とは、大概の場合意識的に行われるのではなく、無意識的に行われる。
つまり、私たちが意識せずとも余白を得ることを生活の中に取り入れる必要があるということだ。
現代の私たちにとって休息を得るということは簡単なことではない。
むしろ、余白を得るということは、物質世界の充足に伴って、困難になっていることである。
なので、私たちにとって、重要なのは、物質世界と精神世界を分離することであろう。
物質世界の真理は往々にして、精神世界の真理になりえず、　またその逆もしかりなのだ。
例えば、アインシュタインの特殊相対性理論では、運動している物質は、時間の流れが送れることに
なるが、私たちが、その事実を直観的に感じたことはないし、その事実を直観的に受け入れるということも
困難であろう。
それはどうしてかというと、アインシュタインの特殊相対性理論で、遅れる時間はほんのわずかで、
私たちが、その時間の差を、目などの感覚器官では観測できないからであろう。
話が少しそれたが、感覚と事実。
それらは、大概の場合は一致するが、発展した内容の理論や、マクロではなく、ミクロの世界の理論であれば
あるほど、事実は感覚に相容れなくなる。
つまり、私たちがよい精神状態を気づくには、事実は事実、感覚は感覚とわりきってどちらも尊重すること。
それが、物質世界の充足が進んだ現代の私たちにとって、よい余白を得るための唯一の方法である。