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しおりを挟むポーカーフェイスは崩さないけど碧音君も相当悔しかったんだね。
「線香花火大会の勝者は藍でした~。皐月に何命令する?」
「そうだな。……全員にジュース奢る、とか?」
何でも命令出来るんだから自分の欲しいものとかを言えばいいのに、負けた私達にまで気を遣ってくれる藍。
優しさに涙が出そう。
「藍、それじゃ甘いって。もっと言いなよ」
「星渚、余計なことを……!」
「なら、焚き火の後始末も含め片付け全部やってくれる?」
「地味に嫌なやつじゃねえか」
でも勝者の命令は絶対なのだ。皐月も渋々片付けを開始。
その間、ざまあみろと悪どい顔で碧音君が皐月をからかっていた。
皐月が自分が負けたことを喜ぶから、ムカついたからかも。
片づけも終わり、約束通り帰り道皐月にジュースを奢ってもらう。
「藍、ありがとう!私もおごってもらっちゃって」
「いいよ」
「明日歌、お礼言うならおごった俺にだろ?」
「勝ってくれた藍に言うでしょ」
「明日歌ちゃんナイス。感謝するなら優しい命令した藍に、だよねえ」
ケラケラ笑って皐月をいたぶる渚さん。Sだ。
「プチ花火大会、楽しかった!また皆でやろうよ」
「うん、やりたい」
菜流に同意する。良い思い出になった。キラキラして、鮮やかな。涼しい夜風が、秋の訪れを感じさせる。
ライブに菜流と行って星渚さん碧音君、藍や皐月と出会ってから1つの季節が過ぎようとしている。
思い返せば色々なことがあった。
皆の合宿に参加させてもらって新たな一面を知ったり、碧音君が軽音とステージに立ったり。
最近は藍がmidnightを辞めそうになったけど解決したし。
皆の素顔を垣間見る瞬間も増えてきて。
ライブで見られる格好良くて素敵な姿も好きだけど、普段過ごす中で見せてくれる表情も好きだから。
こうして一緒にいられることが、本当に嬉しくて堪らない。
これからも出来るなら皆の傍にいたいな。
1人のファンとして、仲間として。
――――そしてついに、夏が終わりを告げようとしていた。
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