94 / 155
94.
しおりを挟む「普通に線香花火やるだけじゃつまんないから、負けた奴は罰ゲームありで」
星渚さんの言う罰ゲームって鬼畜そう。
「こういうのはどう?負けた奴は勝者の言うことを1つ何でも聞く」
「負けらんねえ!」
「星渚さんが勝者になったらどうしよう」
何を言ってくるか予想がつかない。敗者、つまり線香花火の火の玉が1番早く落ちてしまった人には絶対なりたくない。
「皆1本ずつ持って、はい」
「ありがとう」
藍が配ってくれた線香花火に火をつけ、静かに勝負スタート。
「ちなみにー、不正した奴は即敗者確定だからね」
「人にわざとぶつかったり笑わせて花火を揺らしちゃダメだぞ皐月」
「藍、何でピンポイントで俺に言う」
「皐月がやる可能性が高いからな」
今のところ誰も火の玉は落下していない。私も手元に細心の注意を払い確実に火の玉を大きくしていく。
「星渚、私の大きくない?」
「ほんとだ。でも大きいと落ちやすいから気をつけて」
星渚さんと菜流は会話しながら和やかに線香花火を楽しんでいる。
一応勝敗を決めるゲームだってことお忘れでしょうか。私と菜流、碧音君の線香花火がパチパチし出した。
ジリジリジリ、小さな燃える音が聞こえる。そろそろ落ちちゃうかも、と様子を窺っていたら。
「っあ!!くっそー」
「はい皐月の負け残念でしたぁ」
「まじかよ!俺が?この俺が?」
「負けはさ、つ、き」
星渚さんが容赦なく皐月に敗北を告げた。
「皐月動くな花火が揺れる」
皐月の隣で線香花火をやっている碧音君が、サッと距離をとる。
「俺はものっすごくお前が次に負ければいいと思う」
「残念、勝者は俺。皐月に命令するのも俺」
「皆何が何でも生き残れ。碧音を勝者にするな」
碧音君、本当に勝者になったら命令出来る相手が皐月だしどんな無茶なことでも言いそう。
線香花火って本来風流に愛でるものなんだけどね。
「星渚、私と星渚の線香花火合わせてみようよ」
「いいね。2つ合わせた方がもっと綺麗になるし」
2人はうんうんと頷いてピト、火の玉をくっつけたのだ。
「試合放棄した!!穏やかに試合投げ出しやがったよ。ねえやりたいって言い出したのは星渚さんですよ」
「何で碧音が勝つ確率高くすんだそこの2人は!」
「そんなことより菜流と楽しむことが重要だから」
ブラコンとシスコンをなめちゃいけない、胸に刻み込む。
残るは私と碧音君、藍。私達の線香花火は順調に燃えて綺麗なまま。3人共落ちないで燃え尽きるパターンじゃないかな。
ジーッと自分の線香花火を見つめる、と。
「あちゃー、負けました」
「変態アウト!」
最後の最後でポトリ、火の玉が地面に落ちてしまった。悔しい。
「決勝は藍と碧音君だね。頑張れ!」
さあ、どっちだ。固唾を飲んで見守る。
火の玉を落とさないように体勢を保ったままだと腕がプルプルして疲れてしまうけど、2人は全然動かない。
飛び散る火花の勢いが収まってきているということは、終わりが近い。引き分けか……。
「……!」
「あっ、碧音君の落ちた」
「うおっしゃあ碧音負けたぜ!」
「勝ったのは俺か」
後少しというところで碧音君の火の玉が落下、よって勝者は藍。
それをひたすら喜んでる皐月の鳩尾に、碧音君の拳が1発ヒット。
皐月の体がくの字に曲がる。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
愛を知ってしまった君は
梅雨の人
恋愛
愛妻家で有名な夫ノアが、夫婦の寝室で妻の親友カミラと交わっているのを目の当たりにした妻ルビー。
実家に戻ったルビーはノアに離縁を迫る。
離縁をどうにか回避したいノアは、ある誓約書にサインすることに。
妻を誰よりも愛している夫ノアと愛を教えてほしいという妻ルビー。
二人の行きつく先はーーーー。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる