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「普通に線香花火やるだけじゃつまんないから、負けた奴は罰ゲームありで」

星渚さんの言う罰ゲームって鬼畜そう。

「こういうのはどう?負けた奴は勝者の言うことを1つ何でも聞く」

「負けらんねえ!」

「星渚さんが勝者になったらどうしよう」

何を言ってくるか予想がつかない。敗者、つまり線香花火の火の玉が1番早く落ちてしまった人には絶対なりたくない。

「皆1本ずつ持って、はい」

「ありがとう」

藍が配ってくれた線香花火に火をつけ、静かに勝負スタート。

「ちなみにー、不正した奴は即敗者確定だからね」

「人にわざとぶつかったり笑わせて花火を揺らしちゃダメだぞ皐月」

「藍、何でピンポイントで俺に言う」

「皐月がやる可能性が高いからな」

今のところ誰も火の玉は落下していない。私も手元に細心の注意を払い確実に火の玉を大きくしていく。

「星渚、私の大きくない?」

「ほんとだ。でも大きいと落ちやすいから気をつけて」

星渚さんと菜流は会話しながら和やかに線香花火を楽しんでいる。

一応勝敗を決めるゲームだってことお忘れでしょうか。私と菜流、碧音君の線香花火がパチパチし出した。

ジリジリジリ、小さな燃える音が聞こえる。そろそろ落ちちゃうかも、と様子を窺っていたら。

「っあ!!くっそー」

「はい皐月の負け残念でしたぁ」

「まじかよ!俺が?この俺が?」

「負けはさ、つ、き」

星渚さんが容赦なく皐月に敗北を告げた。

「皐月動くな花火が揺れる」

皐月の隣で線香花火をやっている碧音君が、サッと距離をとる。

「俺はものっすごくお前が次に負ければいいと思う」

「残念、勝者は俺。皐月に命令するのも俺」

「皆何が何でも生き残れ。碧音を勝者にするな」

碧音君、本当に勝者になったら命令出来る相手が皐月だしどんな無茶なことでも言いそう。

線香花火って本来風流に愛でるものなんだけどね。

「星渚、私と星渚の線香花火合わせてみようよ」

「いいね。2つ合わせた方がもっと綺麗になるし」

2人はうんうんと頷いてピト、火の玉をくっつけたのだ。

「試合放棄した!!穏やかに試合投げ出しやがったよ。ねえやりたいって言い出したのは星渚さんですよ」

「何で碧音が勝つ確率高くすんだそこの2人は!」

「そんなことより菜流と楽しむことが重要だから」

ブラコンとシスコンをなめちゃいけない、胸に刻み込む。

残るは私と碧音君、藍。私達の線香花火は順調に燃えて綺麗なまま。3人共落ちないで燃え尽きるパターンじゃないかな。

ジーッと自分の線香花火を見つめる、と。

「あちゃー、負けました」

「変態アウト!」

最後の最後でポトリ、火の玉が地面に落ちてしまった。悔しい。

「決勝は藍と碧音君だね。頑張れ!」

さあ、どっちだ。固唾を飲んで見守る。

火の玉を落とさないように体勢を保ったままだと腕がプルプルして疲れてしまうけど、2人は全然動かない。

飛び散る火花の勢いが収まってきているということは、終わりが近い。引き分けか……。

「……!」

「あっ、碧音君の落ちた」

「うおっしゃあ碧音負けたぜ!」

「勝ったのは俺か」

後少しというところで碧音君の火の玉が落下、よって勝者は藍。

それをひたすら喜んでる皐月の鳩尾に、碧音君の拳が1発ヒット。

皐月の体がくの字に曲がる。

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