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――――――


――……

「今日は最後だしなぁ」

携帯で夕飯のメニューを検索中。

最終日だから冷蔵庫にあるもので豪華な料理を作りたい。今日は藍さんも食べてくって言ってくれたしね。

サイトをじっくり読んでいき、メニューを目で追う。

トマトの冷製パスタにロールキャベツに……うーん、迷う。

碧音君には何としてでも、苦手な野菜を食べてもらわなきゃ。

星渚さんは洋食が好きで、藍さんは和食、皐月は美味しければどんな料理だっていいらしい。

「臨時家政婦も大変だ」

これも違うあれも違う、とサイトを読み漁る。そうだ、冷蔵庫の中身を確認しないと。

むくり、上半身を起き上がらせた、ら。

「ぎゃぁー!あお、変態!」

「は?」

バッ、直ぐに顔を両手で覆う。上半身裸の碧音君がいたからだ。

指の隙間からチラッと覗いてしまうのは仕方ない。

「碧音君いつからいたの?気づかなかったんだけど」

「俺だって床に寝転がってるお前に気づけるわけないだろ」

確かに碧音君の位置からじゃ、ソファが邪魔になって私は見えなかったかも。冷たいフローリングの床が気持ちよくて、ごろごろしてたのだ。

「ていうか、上脱いで……っは!まさか」

「今すぐ下らない妄想止めろ」

「じゃあ何で脱いでるの!」

一応私だって乙女だから堂々と直視出来ないよ。もう一度言う、乙女だ。

「汗かいて気持ち悪かったから。ここに替えのTシャツ置きっぱなしだったし」

そう言って、ソファに置いてあったTシャツに腕を通した時。

「……?」

そっと顔を覆っていた手を退かす。碧音君の背中に、大きいものから小さいものまで傷痕や痣が所々あるのだ。

大分時間が経った古傷のようだけれど。

「見んな変態」

「ごめん、つい」

「ついって何だよ」

碧音君が新しいTシャツに着替え終わったため、傷も全てすっぽり隠れてしまった。

碧音君の上半身と生着替えが見れたという嬉しさより、今は傷の方が気になる。碧音君のことだ、聞いてもはぐらかすに決まっている。

「碧音君、夕飯は豪華にするから待っててね」

「野菜少なめで」

「たっぷり夏野菜使う予定だから」

「うわ。止めろ」

「あははっ、健康のためだよ」

当たり障りのない話しか出来ない。ただ学校で怪我したとかの理由なら問題ない。

でももし違ったら碧音君を困らせるから。今はこれでいいと思う。

「ロールキャベツはいかが?」

「肉オンリー」

「肉団子になっちゃうじゃん。キャベツぐるぐる巻きにしておくね」

碧音君は口パクで『意地悪』と言ってリビングを出ていった。たまに子供っぽくなるよね。

「よし!」

準備しますかね。検索したメニューをぱっと覚えて、冷蔵庫から食材を取り出した。

―――テキパキと準備を進めて、食材を美味しいメニューに変身させていく。完成したところで皆を呼んだ。

「今日はいつになく豪華じゃねえか」

「合宿最終日なので」

「これを1人で作っちゃうんだからさすがー」

「明日歌ちゃん、これは?」

ほくほく白い湯気の立つスープを指差す藍さん。

「それは和風トマトスープです」

「珍しいね?俺、そういうの食べたことないかも」

藍さん、大丈夫です。意外といけるんだこれが。

「トマトの味はそこまで濃くないから安心してね碧音君!」

テーブルに並んだ料理を見て、野菜の多さに僅かに顔を引き吊らせていた碧音君。

「明日歌ちゃんの料理はどれも美味いからねぇ」

「星渚さんってば、褒めても何も出ませんよ?」

「さあ食べようか」

無視された。ちょっと冗談でぶりっ子しただけなのに、星渚さんが清々しい程スルーした。

藍さんもいてさすがに皆がテーブルだと狭いから、ソファの近くにあるローテーブルに私と藍さん、ダイニングテーブルに他の3人が座ることに。


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