竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

文字の大きさ
上 下
132 / 233
開拓編

翡翠竜の加入

しおりを挟む
人狼族達を仲間に迎えた後もうひと眠りしたヴァイオレットは夜遅くに目を覚ました
見張りを務めている者達以外はもう寝てしまっているようで辺りは静まり返っている
魔力はまだ全回復していないようだが日中十分に睡眠をとったことで体の怠さは大分取れてきていた
少しでも早く体の調子を取り戻そうとヴァイオレットは少し外を歩いてくることにした
傍らで気持ちよさそうに寝ているルージュを起こさないよう立ち上がり出入口付近にいる仲間に声をかける


『見張りお疲れ様、ちょっと外に出てくるね』
『これはヴァイオレット様、護衛、つけますか』
『護衛なんていいよ。ほんとにその辺歩いてすぐ帰ってくるから大丈夫』
『分かりました。お気をつけて』


そんな手厚い待遇をされるようになるなんて随分と偉い身分に昇格したものだ
二フリートを倒したことでよりそれが顕著に表れている気がする。あまり畏まられるのは好きじゃないんだが……
村を出て少し行ったところでヴァイオレットは体を動かした後、地べたに寝転び星を眺めた


『ここから見る星ってこんなに綺麗だったんだなぁ』


この森に飛ばされてからというもの色々なことがあってゆっくり星を眺める暇なんてなかったが、空一面に広がる星は疲れた体と心を癒してくれると同時に森の中で見る星の景色は幼い頃を思い出させ懐かしい気持ちにさせてくれた


『お父さん達はどうしてるかなぁ……会いに行きたいけどここの人達も放っておけないし』


今すぐは難しいがいつか会いに行ってこれまで起こったことを聞いて欲しい
話を聞いたイグニス達がどんな反応をするだろうと想像しながら星を眺めていると、上空で何かが飛んでいるのを発見した
そのシルエットは紛れもなく竜、竜は徐々にこちらへ向かって降りてくる。それを見てヴァイオレットはその竜がイグニスであると勝手に思い込み思わず叫んでしまった


『お父さん!?』
『なんだ?我はお主のお父さんではない』


ヴァイオレットの前に現れたのはイグニスではなく昨日壮絶な戦いを繰り広げた相手二フリートだった
少し考えれば分かることだったが淡い期待を抱いてしまった。ヴァイオレットは望んでいた相手ではなかったことで不貞腐れた態度で二フリートに接する


 『どうしたのこんなところで。あっ、まさかまだ私達の事狙ってるの?悪いけど今は戦える状態じゃないから相手してあげられないよ』
『そうでは無い、我は約束を果たしにきたのだ。戦う前に我が言ったことを覚えているか』


戦う前……そういえば何か言っていたような気がする


『あぁ、もしかして私に負けたら忠誠を~とかってやつ?別にそんなのしなくていいよ。他の種族を虐めたりしなければこの森で生活しててもいいし好きにしなよ』
『そういうわけにはいかん。一度口にしたことを覆すなど誇り高き竜族として許されんのだ』


ただでさえ疲れが残っているというのに仲間になるならないの押し問答をする余裕なんてない
どうせ食い下がられるのだからこういうのはさっさと認めてしまうに限る


『まぁ二フリートみたいな強い竜が仲間になってくれるなら歓迎するよ。でもその前に!人狼族の人達にちゃんと酷いことしたことを謝るんだよ。私の仲間になるなら他の人達と喧嘩しちゃダメなんだからね』
『むぅ……気は進まないが仕方があるまい』


こうして人狼族に続き翡翠竜二フリートを仲間に加えたヴァイオレット
この時点でヴァイオレットは森林地帯で一番の戦力を有している存在となった



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界で幸せに

木の葉
ファンタジー
新たな生を受けたキャロルはマッド、リオと共に異性界で幸せを掴む物語。 多くの人達に支えられながら成長していきやがては国の中心人物として皆を幸せにしていきます。

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

処理中です...