竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

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開拓編

長就任

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子供達に連れられやって来たのは他の家より一際大きくした建物
ここは皆で集まって話し合いをする時用の為に作ったものでガリア達がよく何かを話しているのを見かけたことがある
中に入るとそこにはガリア、アレス、ディアナの各族長が集まっておりヴァイオレットが入ってくると三名の視線が集中した


『どうしたの?皆集まって私を呼ぶなんて珍しいね。何かあったの?』
『突然呼び出して申し訳ございません。本日来てもらったのにはお願いがあってのことです』
『お願い?』


今のセリフを喋ったのはあのガリア
ヴァイオレットが来るまでは部族間で使われていた言語を利用していた為使う機会がなく片言だったのが、周りに教え始めるようになってから初めて会った頃よりも大分饒舌に話すようになっていた
一体どんな要望なのかと続きを待っていると、代表してガリアがその続きを明かした


『あなた様にこの村の長をお任せしたいのです』
『私が皆の長?なんで?村の長なら三人の中から決めればいいでしょ』
『一番強い者が長を務めるのは当然のこと』
『我々の長、ヴァイオレット様の他、考えられない』


ガリアの言葉に呼応し長の就任を推してくるアレスとディアナ
突然の事過ぎてヴァイオレットは言葉に詰まる


『で、でもここだけで決めるのは良くないんじゃないかな。他の人達にも意見を聞いてみないと』
『これは村の者達の総意です。どうかお願いできないでしょうか』


そう言ってガリアが頭を下げると他の二人も一緒に頭を下げた
困り果てたヴァイオレットがどうするべきかと頭を悩ませていると、ふと外の方に視線を向ける
そこに先程の子供達の他に多くの村の者達が集まってこちらの様子を窺っていた


『ねぇルージュはどう思う?』
『僕はヴァイオレットが好きなようすればいいと思うよ』
『ん~……長とか言われても私何すればいいか分かんないよ?』
『その点はご心配なく。我等がこれまで通り各部族をまとめる役を担います。ヴァイオレット様はこれまでと変わらずお好きなようにしてもらって構いません』


最早断るような言い訳も思いつかず退路は絶たれた
まだ知り合ってそこまでの日数は経っていないものの、期待の眼差しを向けてくる彼らを蔑ろにすることはヴァイオレットにはできなかった


『はぁ……分かったよ。そこまで言われたらやるしかないね。でも本当何にもできないから期待しないでね』
『ありがとうございます。ヴァイオレット様がいて下さるだけで十分で御座います』


斯くして一時的に村に滞在するつもりだったはずのヴァイオレットは、周囲からの強い要望により村の長を務めることとなった

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