竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

文字の大きさ
上 下
50 / 233
魔法学校編

魔法の雨

しおりを挟む

(2章開幕です!短めですが……)


 隆人はティナの案内で長いこと過ごしてきた迷宮から遂に出ることに成功する。そしてその先に広がっていたのはまさに大都市といえるものであった。


「うわ、すごいなこれは……」
「どうですかリュート様、これが迷宮都市です」


 迷宮都市ディアラ、それはグランザム連合王国に位置する都市であり、その地下に広がる迷宮によって栄えている。 
 その迷宮ーー大迷宮ディアラはその世界でも最大規模の迷宮でありその底は見えず、一説には世界の果てに続いているのではないかとも言われる程の魔境である。


 その一方で今なお数多くの冒険者達にとっての憧れの場であり毎日多くの冒険者が迷宮にもぐる。
 そしてその冒険者を相手にする商店や宿ができ、それが村になりやがて街になった。


 現在その規模は王国の都市でも最大クラスにまでなっており、迷宮を中心とした半径2キロの円状の都市に数万人がひしめきあっている。


 ちなみに、世界には他にもいくつか迷宮都市があるが、その全てが元となった迷宮の名称をそのまま都市の名称としている。


「予想以上に大きいね、これは驚いたな」
「迷宮から見て北が貴族区、東が商業区、南側の一部が行政区で、南側の残りと西側が住居区になっているんですよ」


 この都市に始めてきた隆人に、ある意味先輩と言えるティナが迷宮都市の構造を教えてくれる。


 ちなみに、今更だがこの世界には貴族が存在する。この王国にいるのは官僚として政治的な立場を持つ法衣貴族と、自分達の領地を持ちそこを管理している領地貴族の二種類が存在する。と、この辺の話はおいおい出てくるとして、この迷宮都市も貴族の領地である。
 そしてこの規模の都市をまかされる程の貴族となると派閥を持っており、その派閥内の貴族達の別邸と呼べるものがあるのが、先の貴族区なのである。
 街の北側にあるが基本的に一般市民はほとんど近づかない場所でもある。


「先ずはギルド……冒険者ギルドに行きましょう!私の帰還報告とリュート様もこの都市に滞在するのであれば登録しておいた方がいいですし」
「そうだね、しばらくはここを拠点にするだろうし身分がないのは色々不便そうだ」
「冒険者ギルドはすぐそこにあります、場所としては商業区になりますね」


 一応冒険者ギルドは政府とは独立した組織であり、街の商業区に存在することが多い。


 迷宮の出口から商業区の方面に進むこと数分、隆人達は冒険者ギルドに着いた。周辺と比べて一際大きな建物で横には厩舎のようなものもある。
 ティナは慣れた足取りでギルドの中に入っていき、隆人もそれに着いていくようにギルドに入った。


「広いね、そして……うぅん……」
「どうしたのですか?リュート様」
「いや、テンプレだなって思ってね」
「てんぷれ?何のことでしょう?」
「……なんでもないよ」


 冒険者ギルドの中は一言で言えば「予想通り」であった。入って右側に受付のようなところが何列かあり、そこに何人かの冒険者が列を作っている。そして左側は酒場のようになっていた。アルコールが入った冒険者達が騒いでいる。
 まさにテンプレ、小説やゲームの中にある冒険者ギルドのイメージそのものだった。


「ではリュート様、受付の列に並びましょうか。冒険者登録は受付で申請すればできますよ」
「ありがとう、助かるよ。にしてもなんか騒がしくないか?」


 たしかに、ギルドの中の様子は忙しないといったものである。職員達もあたふたと動き回っているし、冒険者達も忙しそうに準備している。


「ねぇ君、何かあったのかい?」
「なんだお前知らないのか?下層にAランクの魔物が出たらしい!さっき下層探索中のパーティが一つ壊滅状況で帰ってきて、ギルドに着くなり大声で報告してきたんだよ。今緊急の討伐隊の招集やらなんやらでギルドは大騒ぎさ」


 隆人はその場にいた冒険者1人に話を聞く。それによると迷宮で問題が起き、ギルドはその対処に追われているということらしい。
 そして隆人達にとってこの話は聞き覚えなんてものではない。「下層」「Aランクの魔物」という単語で大体の予想がついた。


「ねぇ、そのAランクの魔物ってもしかしてサイクロプスじゃない?」
「なんだ知ってるじゃないか、そうだよ35階層にサイクロプスが出たんだ、DかCランクまでしかいないはずの下層でAランクなんて前代未聞の大事件だよ!」
「…………リュート様」
「うん、多分……ね」


 そこまで聞いて隆人達は納得した。ここで騒ぎになっているAランクの魔物は十中八九アイツサイクロプスだろう。


「これは、思った以上に大騒ぎになっちゃったんですね……。早く報告しないと手遅れになりそうです」
「俺の冒険者登録は後回しだね」


 早くサイクロプスの討伐報告をしないとと受付に並ぶーーわけもなく、緊急用にすぐ横に準備されている別受付の方に向かう。


「すいません!緊急の報告なんですけど!」
「……どうしました?」


 ティナの声にギルドの中から人が出てくる。ティナがサイクロプスの討伐についての報告をする。


「ーーというわけで、サイクロプスについては討伐完了しました」
「わかりました。一応確認は必要ですが警戒レベルは下げても良さそうですね」


 とりあえず一通りの説明を終え、ひと段落と思ったところで……


「ティナちゃん!無事だったんだね!」


 そんな声と共に男4人組のパーティが近づいてくる。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界で幸せに

木の葉
ファンタジー
新たな生を受けたキャロルはマッド、リオと共に異性界で幸せを掴む物語。 多くの人達に支えられながら成長していきやがては国の中心人物として皆を幸せにしていきます。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

処理中です...