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魔法学校編
飛行
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『えーまずは新入生諸君入学おめでとう。俺はこのクラスを担任する事になったケーニッヒだ。よろしく』
ケーニッヒは生徒全員がいることを確認すると説明を始めた
この魔法学校は共通科目の他に自分の進路によって受ける科目が変わってくる仕組みになっており、毎回全員で授業を受けるというわけではないらしい
配られた紙に希望する科目を記入していく。選択科目は三つ選ばないといけないようだ
他の生徒達はこの学校に来た目的がしっかりとしているようで入学初日にも関わらずスラスラと書いていっていたが、友達を作るのが目的だったヴァイオレットは将来のことなんて微塵も考えていなかった
とはいえ何も書かずに提出するわけにもいかなかったので、隣にいるミーシャがどんな科目を選択しているのか聞いてみた
『ねぇねぇミーシャちゃんは何を選んだの?』
『私はこれよ』
『魔法戦闘術、魔法生物学、魔法文学……じゃあ私もそれにしようっと』
『待ちなさい、そんな適当に選ぶんじゃないわよ。ちゃんとよく考えて選択しなさい』
『えー……』
ミーシャにそう言われたヴァイオレットは渋々諦めてできるだけ座学がなさそうな魔法戦闘術、剣術、魔法生物学を選択した
『結局殆ど私と一緒じゃない。というか剣術ってヴァイオレットは剣も扱えるの?』
『いや全然?生まれてから握ったことすらありません』
『さっき私が言ったこと全然分かってないし……まぁあなたがそれでいいならいいけど』
『いいか、お前達は今日からこのグレディス魔法学校の生徒だ。その自覚を持って礼節ある行動をするように。さっきみたいなのがまた起こそうものなら遠慮なく処分させてもらうからそこんところしっかり肝に銘じておけよ』
ケーニッヒがそう告げた後ヴァイオレットと先程の男子生徒にチラッと視線を送ってきた
こちらは一方的に絡まれた側なのにと反論したい気持ちもあったが、あのまま止められなかったら手は出ていただろうから何も言い返さなかった
『それじゃあ早速授業……と言いたいところだが初日からずっと話を聞いてるだけっていうのもつまらないだろ。全員校庭に出るんだ』
『え、外ですか?』
『今日は軽いレクリエーションをする』
ケーニッヒの指示に従い全員校庭へと出る
学校から支給された運動着にわざわざ着替えるあたり、体を動かすことをするつもりのようだ
『先生、校庭に出て何をするんですか?』
『今からお前達には空を飛んでもらおうと思う』
『え!空飛べるの!?』
『あぁ、空を飛ぶ為にはこれを使用する』
そう言うとケーニッヒは生徒一人一人に腕輪を配り始めた
腕輪に魔力が備わっている石が埋め込まれているところから察するにきっとこれは魔道具だ
『これは飛行腕輪という魔道具で魔力を込めることで空を飛ぶことができるんだ。 昔は箒なんかを使って飛んでいたらしいがそれを小型化させたものになっている』
『こんなので本当に飛べるのか……?』
『説明するより実際に見せてみた方が早いか。こんな風に飛ぶんだ』
疑念を抱く生徒にケーニッヒが先にお手本を見せた
魔力が腕輪に注がれていくとそれに魔石が反応し、魔石に魔法陣のようなものが現れた
するとケーニッヒの体が徐々に浮いていき、やがて地上を離れて空中を自由に飛び回りだした
『うおー!すげー!本当に空を飛んでる!』
『俺達も早くやってみようぜ!』
ケーニッヒの飛んでいる姿を見て他の生徒達がこぞって腕輪に魔力を込め始めた
しかしケーニッヒのように上手く飛べる者はすぐ現れなかった
『うわっ!』
『魔力を込めすぎると急上昇するから気をつけろよ。魔力を常に一定に込めてそれを上手い具合にコントロールしないと飛行状態は維持出来ないからまずは数秒浮くところから始めてそこから徐々に時間を伸ばしていくといい』
『言ってることは分かるけど実際にやるとなると難しいな……あんな風に飛び回れるなんてやっぱ先生は違うな』
『おー!本当に飛んでるー!』
周りが苦戦している中、ヴァイオレットはあっという間にケーニッヒと同様空中を自由に移動できるようになった
幼い頃から毎日かかさず魔力をコントロールする特訓をしてきたヴァイオレットにとってこの程度のことは造作もない
イグニスやバシリッサの背中に乗って空を飛んだことはあるが、自分の力で飛ぶのはそれとは違った気持ちよさがあった
『これが空を飛ぶっていう感覚かぁ……お父さん達も初めて空を飛んだ時はこんな気持ちだったのかなぁ』
『クソッ、あいつが出来てるのに俺が出来ないはずがない!』
最下位であるはずのヴァイオレットに先越されたこと、優雅に飛んでいる姿を見たことで他の者達にも火がつき皆必死になって空を飛ぼうとした
最早レクリエーションなどではなく誰がどこまで飛べるかを争う競技に変わってしまった
そんな中輪に入らず一人木陰で魔法書を読み漁っている生徒がいた
そこにケーニッヒが寄ってくる
『参加しなくてよろしいんですか?』
『くだらないですね。こんなお遊びに付き合っていられません』
『たまには息抜きも必要ですよ王女様』
『ここでは私もただの一生徒に過ぎません。他の生徒と同じ態度で接して下さい』
『分かり……分かったよエリザ』
ケーニッヒは生徒全員がいることを確認すると説明を始めた
この魔法学校は共通科目の他に自分の進路によって受ける科目が変わってくる仕組みになっており、毎回全員で授業を受けるというわけではないらしい
配られた紙に希望する科目を記入していく。選択科目は三つ選ばないといけないようだ
他の生徒達はこの学校に来た目的がしっかりとしているようで入学初日にも関わらずスラスラと書いていっていたが、友達を作るのが目的だったヴァイオレットは将来のことなんて微塵も考えていなかった
とはいえ何も書かずに提出するわけにもいかなかったので、隣にいるミーシャがどんな科目を選択しているのか聞いてみた
『ねぇねぇミーシャちゃんは何を選んだの?』
『私はこれよ』
『魔法戦闘術、魔法生物学、魔法文学……じゃあ私もそれにしようっと』
『待ちなさい、そんな適当に選ぶんじゃないわよ。ちゃんとよく考えて選択しなさい』
『えー……』
ミーシャにそう言われたヴァイオレットは渋々諦めてできるだけ座学がなさそうな魔法戦闘術、剣術、魔法生物学を選択した
『結局殆ど私と一緒じゃない。というか剣術ってヴァイオレットは剣も扱えるの?』
『いや全然?生まれてから握ったことすらありません』
『さっき私が言ったこと全然分かってないし……まぁあなたがそれでいいならいいけど』
『いいか、お前達は今日からこのグレディス魔法学校の生徒だ。その自覚を持って礼節ある行動をするように。さっきみたいなのがまた起こそうものなら遠慮なく処分させてもらうからそこんところしっかり肝に銘じておけよ』
ケーニッヒがそう告げた後ヴァイオレットと先程の男子生徒にチラッと視線を送ってきた
こちらは一方的に絡まれた側なのにと反論したい気持ちもあったが、あのまま止められなかったら手は出ていただろうから何も言い返さなかった
『それじゃあ早速授業……と言いたいところだが初日からずっと話を聞いてるだけっていうのもつまらないだろ。全員校庭に出るんだ』
『え、外ですか?』
『今日は軽いレクリエーションをする』
ケーニッヒの指示に従い全員校庭へと出る
学校から支給された運動着にわざわざ着替えるあたり、体を動かすことをするつもりのようだ
『先生、校庭に出て何をするんですか?』
『今からお前達には空を飛んでもらおうと思う』
『え!空飛べるの!?』
『あぁ、空を飛ぶ為にはこれを使用する』
そう言うとケーニッヒは生徒一人一人に腕輪を配り始めた
腕輪に魔力が備わっている石が埋め込まれているところから察するにきっとこれは魔道具だ
『これは飛行腕輪という魔道具で魔力を込めることで空を飛ぶことができるんだ。 昔は箒なんかを使って飛んでいたらしいがそれを小型化させたものになっている』
『こんなので本当に飛べるのか……?』
『説明するより実際に見せてみた方が早いか。こんな風に飛ぶんだ』
疑念を抱く生徒にケーニッヒが先にお手本を見せた
魔力が腕輪に注がれていくとそれに魔石が反応し、魔石に魔法陣のようなものが現れた
するとケーニッヒの体が徐々に浮いていき、やがて地上を離れて空中を自由に飛び回りだした
『うおー!すげー!本当に空を飛んでる!』
『俺達も早くやってみようぜ!』
ケーニッヒの飛んでいる姿を見て他の生徒達がこぞって腕輪に魔力を込め始めた
しかしケーニッヒのように上手く飛べる者はすぐ現れなかった
『うわっ!』
『魔力を込めすぎると急上昇するから気をつけろよ。魔力を常に一定に込めてそれを上手い具合にコントロールしないと飛行状態は維持出来ないからまずは数秒浮くところから始めてそこから徐々に時間を伸ばしていくといい』
『言ってることは分かるけど実際にやるとなると難しいな……あんな風に飛び回れるなんてやっぱ先生は違うな』
『おー!本当に飛んでるー!』
周りが苦戦している中、ヴァイオレットはあっという間にケーニッヒと同様空中を自由に移動できるようになった
幼い頃から毎日かかさず魔力をコントロールする特訓をしてきたヴァイオレットにとってこの程度のことは造作もない
イグニスやバシリッサの背中に乗って空を飛んだことはあるが、自分の力で飛ぶのはそれとは違った気持ちよさがあった
『これが空を飛ぶっていう感覚かぁ……お父さん達も初めて空を飛んだ時はこんな気持ちだったのかなぁ』
『クソッ、あいつが出来てるのに俺が出来ないはずがない!』
最下位であるはずのヴァイオレットに先越されたこと、優雅に飛んでいる姿を見たことで他の者達にも火がつき皆必死になって空を飛ぼうとした
最早レクリエーションなどではなく誰がどこまで飛べるかを争う競技に変わってしまった
そんな中輪に入らず一人木陰で魔法書を読み漁っている生徒がいた
そこにケーニッヒが寄ってくる
『参加しなくてよろしいんですか?』
『くだらないですね。こんなお遊びに付き合っていられません』
『たまには息抜きも必要ですよ王女様』
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『分かり……分かったよエリザ』
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