竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

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魔法学校編

入寮

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無事グレディス魔法学校への入学が決まるとヴァイオレットは今まで利用していた宿に別れを告げた
グレディス魔法学校には寮があり、そこで他の生徒と共同生活を送る決まりになっている為そこへと引越しする事に
二人で一部屋となるのでヴァイオレットには友達を作る絶好の機会でもある


『えーっと私の部屋はっと……あったここだ。もう先に来てるかなぁ』


自分と同室になるのはどんな人物かとドキドキしながら扉を開ける
だが部屋には人影どころか荷物も置かれておらず、ルームメイトはまだ来ていないようだった


『私の方が先だったかぁ。そうだ!来る前にを準備しておこう!』


そう言うとヴァイオレットは荷物を漁り始め、袋の中から肉を取り出していった
同室になった人に振舞おうと思い王都を観光していた際に気に入った肉料理を持ってきていた
これで親睦を深めようという腹積もりだ
テーブルに肉を並べていき着々と準備を進めていく
すると暫くして廊下の方からこちらに近づいてくる足音が聞こえてくる
きっとルームメイトだろうと思ったヴァイオレットは大急ぎで準備を終わらせる
扉が開かれると魔法を使って盛大にルームメイトを出迎えた


『初めましてー!私ヴァイオレット!これからよろしくね!いえーい!』
『……どうも』


盛り上がるヴァイオレットに対して素っ気ない挨拶だけ返して部屋の中に入ってくる女性
その者の頭には耳、腰の辺りからは尻尾が生えていた
ヴァイオレットのルームメイトになったのは実技試験の時に見かけたあの獣人の子だった


『あっ!あなたこの前の獣人の子!』
『……なに?私あなたと面識はないはずだけど』
『あぁごめんね、この前の実技試験の時にあなたが戦ってるところを見てたの。私獣人の子を見るの初めてだったから気になってたんだー』
『あぁそう』


それだけ言うと獣人の女性は持ってきた荷物を取り出しクローゼットへと入れ始めた
お喋りをしたいヴァイオレットに対しルームメイトはあまり口数が多くない
だがそれでもめげずに話を振り続けた


『そうそう!私お肉持ってきたんだー。たくさんあるから一緒に食べよ』
『結構よ、私荷物を出し終えたら行くところがあるから』
『そうなんだ、どこに行くの?』
『別に。私の勝手でしょ』


獣人は作業を終えるとヴァイオレットには行き先を伝えずに部屋を出ていった
なので特に予定もなかったヴァイオレットもそれについて行ってみることにした


『ねぇねぇあなたのお名前はなんて言うの?』
『あなたに教える必要ある?というかなんでついてくるの』
『だって今日はお引越しだけだから暇なんだもーん。ねぇそれより名前教えて?ねぇねぇねぇねぇ~』
『しつこ……ミーシャよ。ミーシャ・オルネシア』
『ミーシャちゃん!可愛い名前だね!』
『馴れ馴れしい子……』


ミーシャはついてくるヴァイオレットを無視して廊下を進んでいく
やって来たのは生徒が自由に使うことができるという訓練施設
室内には幾重にも張り巡らされた結界が展開されており、いくら暴れても問題ないようになっている
どうやらここでミーシャは自主練を行うようだ


『寮に来たばっかりなのにもう体動かすの?今日位ゆっくりしようよ』
『なら部屋に戻って寝てればいいでしょ。私は私のやりたいようにやるだけよ』
『ん~、まぁ私も最近体が鈍ってたし少しは動かさないとか。じゃあせっかくだから手合わせでもする?』
『なんですって?』
『一人で体を動かしてるだけよりはいいと思うんだけど』


ヴァイオレットの申し出にミーシャは考える
目の前の明らかにのほほんとした女と手合わせしたところで大した訓練になるとは思わないが、確かに相手がいる方が経験を積むことができる


『分かったわ、でも使い物にならないと思ったらすぐやめるから』
『いいよー、今は私達以外に誰もいないし早速始めよっか』


ミーシャはそう言いながら準備運動を済ませるとおもむろに上着を脱ぎ始めた
獣人は五感が鋭く自身に降りかかる危険を肌で察知することができるらしい
なので戦闘時には感覚を鋭くさせる為に露出が多い恰好で戦うのが基本なんだとか


『さぁどこからでもかかってきなさい』
『よーしじゃあいくよー』


どうせ取るに足らない雑魚
それがミーシャが初めてヴァイオレットを見た時の評価だったが、ヴァイオレットが構えに入った瞬間身の毛もよだつような感覚に襲われた
殺される。命の危険を瞬時に察知したミーシャは咄嗟に後ろに飛び退く
しかし相手はまだ開始位置からは一歩も動いていなかった
ついさっきまでは全くそんな気配は欠片も感じなかったのに構えに入った途端雰囲気がガラッと変わった
目の前にいる雑魚だと思っていた相手にミーシャの警戒レベルが一気に最大まで跳ね上がる


『あなた……一体何者?』
『え?さっき自己紹介したよね?ヴァイオレットだよ』
『そういうことじゃないわよ。あなたどんな生活を送っていたらそんな殺気を垂れ流せるようになるの?私の国でもそれ程までの殺気を放てる者はいなかったわ』
『別に私そんな殺気なんて垂れ流してるつもりないよ?』
『つまり無自覚であんなデタラメな殺気を撒き散らしてたってこと……?ねぇあなた……』
『あはは~それでさ~』


ミーシャがヴァイオレットに話しかけようとしたところで他の生徒が施設の利用にやって来てしまった
手合わせを続行しようにもあれだけの殺気を放つ者が相手ではミーシャも本気を出さざるを得ない
他の生徒を気にしながらそれは流石に難しいので手合わせは中断することにした


『手合わせはやめにするわ。あなた相手だと周りを巻き込むことになりそうだし』
『えー、まだ始まってもなかったのにー』
『その代わりこの施設にあるものを使って勝負よ。三本勝負で勝った方がなんでも言う事聞くってのはどう?』
『いいねそれ!面白そう!』


油断ならない相手だが勝負に勝ってなんとしてでも話を聞きだす
ミーシャは自分の得意な種目を選びヴァイオレットに勝負を挑んだ

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