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魔法学校編
入学試験開始
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気絶している泥棒を衛兵に突き出し奪われた鞄は無事酒飲み男の元へ
男は中身を確認すると安堵した表情を浮かべた
『あぁよかった、中の書類の方も全部無事なようだ。というより見つけたら魔通話盤で報告しろって言っただろ。何かあったらどうするつもりだったんだ』
『ごめんね、使おうとしたんだけどなんか魔力込めたら壊れちゃったの』
『おまっ……!どんな魔力の込め方したらこんな事になるんだよ!高価だから大切に扱えって言っただろ!』
『ご、ごめんなさい……』
『はぁ……まぁいいや、お前さんのお陰でとりあえず首が飛ぶことにはならなそうだしな』
魔通話盤を壊したことについては鞄を取り返したことで不問となりこれにて一件落着
だがそこで自身の問題はまだ解決していなかったことを思い出しヴァイオレットは憂鬱な気持ちに戻る
その様子に気づいた男が問いかけてきた
『なんだ何か悩み事か?鞄を取り返すのを手伝ってもらったし話位なら聞いてやるぞ』
『うん、実はね……』
ヴァイオレットは男にこの王都に来た目的と入学試験の手続きが締め切ってしまっていたことを明かした
『へぇ、魔法学校の入学試験を受けに王都へ来たはいいけどもう締め切っていて試験が受けられずこれからどうしようか悩んでいると』
『そうなの、これからどうしよう……』
『お前さん運がいいな。その問題、俺ならなんとかしてやれるぜ』
『へっ?どういうこと?』
『実は俺はこう見えてグレディス魔法学校で教師をやっていてな。この中に入っている書類ってのは入学試験の申し込み書だったんだ。そして都合良くここに一枚だけ白紙の申し込み書がある。俺の言いたい事が分かるな?』
『ううん、全然分からない』
『つまりだな、お前も入学試験を受けられるってことだよ』
『本当!?あっ、でもそれっていけないことじゃないの?おじさんの首飛んじゃわない?』
『なぁに一枚くらいコッソリ忍び込ませてもバレやしないさ。さぁどうする?』
ついさっきまでどうしようもない思っていたヴァイオレットにとってこれは願ってもいない申し出
勿論首を縦に振った
『あくまで試験を受けられるようにするだけだからな。試験は自分の力でどうにかするんだぞ』
『うん!ありがとうおじさん!あっ、おじさんじゃなくて先生になるのか』
『お前さんが受かったらだけどな』
それからヴァイオレットは書き方を教えてもらいながら申し込み書の記入欄を埋めていった
『ん?お前さんここ、出身地の森ってなんだ?出鱈目を書いてるわけじゃないよな?』
『出身地って育った場所のことでしょ?名前が分からないから森って書いたの』
『一体どんなとこで育ってきたんだ……あと名前だがヴァイオレットとしか書いてないが姓はないのか?』
『姓……そういえばお父さんがそんなこと言ってたな。普段名前だけで呼ばれてたからすっかり忘れてた。なんだったかなぁ……思い出した!カラミティア。ヴァイオレット・カラミティアっと』
『カラミティって随分と物騒だな。まぁいい、これで申し込みは完了だ。試験は一週間後、それまでしっかり準備しておけよ』
『ありがとうね先生!』
紆余曲折はあったものの、どうにか魔法学校の入学試験を受けられることになったヴァイオレットはその後男と別れ宿を確保
それから必死に受験勉強に励む……かと思いきや、試験までの期間を使ってヴァイオレットは王都での食べ歩きを満喫した
『んー♪どれもこれも美味しすぎるよー♪王都最高!』
試験を受けられることで完全に安心しきっていたヴァイオレットの頭の中に男の言葉など片隅にも残っていなかった
そうこうしている間に一週間はあっという間に過ぎ試験当日、ヴァイオレットは試験会場へとやって来た
『ヴァイオレット・カラミティアです』
『ヴァイオレットさん……はい、確認出来ました。ではこちらのバッジを胸の辺りに付けておいて下さい』
受付で番号が振られているバッジをつけ中へと進む
最初は実技試験、その後休憩を挟んでからの筆記試験という手順になっている
初っ端からヴァイオレットにとってこの試験の合否が決まる大一番だ
実技試験が行われる会場に行くと、そこにはヴァイオレットと同年代位の受験者が大勢集まっていた
『わぁ……これ全員受験者なんだ。おじいさんが言った通り本当に千人位いそう。頑張らないと!ふんっ!ふんっ!』
この中から選ばれるのは僅か数十人、その中に選ばれるよう気合を入れる為に頬を叩く
その音が会場中に響き渡り視線が集まるが、ヴァイオレットはそれに気づくことはなかった
会場に受験者が全員集まるとヴァイオレット達の前に一人の男が説明を始めた
『これよりグレディス魔法学校の入学試験を始める。まず魔力量の測定からだ。この魔水晶は魔力を込めるとその者の魔力量を色で表す仕組みになっている。赤なら基準を満たしたとして通過、青なら魔力量の基準を満たしていないとみなし不合格とする』
イグニスから魔力量についてはお墨付きをもらっているので心配ないとは思うが、人間との交流が極端に少ないヴァイオレットは周りがどの程度の魔力量を持ち合わせているか知らないので一抹の不安があった
受験番号順に測定が行われていき通過する者、その場で帰るよう言い渡される者が次々と現れる中いよいよヴァイオレットの番がやってきた
男は中身を確認すると安堵した表情を浮かべた
『あぁよかった、中の書類の方も全部無事なようだ。というより見つけたら魔通話盤で報告しろって言っただろ。何かあったらどうするつもりだったんだ』
『ごめんね、使おうとしたんだけどなんか魔力込めたら壊れちゃったの』
『おまっ……!どんな魔力の込め方したらこんな事になるんだよ!高価だから大切に扱えって言っただろ!』
『ご、ごめんなさい……』
『はぁ……まぁいいや、お前さんのお陰でとりあえず首が飛ぶことにはならなそうだしな』
魔通話盤を壊したことについては鞄を取り返したことで不問となりこれにて一件落着
だがそこで自身の問題はまだ解決していなかったことを思い出しヴァイオレットは憂鬱な気持ちに戻る
その様子に気づいた男が問いかけてきた
『なんだ何か悩み事か?鞄を取り返すのを手伝ってもらったし話位なら聞いてやるぞ』
『うん、実はね……』
ヴァイオレットは男にこの王都に来た目的と入学試験の手続きが締め切ってしまっていたことを明かした
『へぇ、魔法学校の入学試験を受けに王都へ来たはいいけどもう締め切っていて試験が受けられずこれからどうしようか悩んでいると』
『そうなの、これからどうしよう……』
『お前さん運がいいな。その問題、俺ならなんとかしてやれるぜ』
『へっ?どういうこと?』
『実は俺はこう見えてグレディス魔法学校で教師をやっていてな。この中に入っている書類ってのは入学試験の申し込み書だったんだ。そして都合良くここに一枚だけ白紙の申し込み書がある。俺の言いたい事が分かるな?』
『ううん、全然分からない』
『つまりだな、お前も入学試験を受けられるってことだよ』
『本当!?あっ、でもそれっていけないことじゃないの?おじさんの首飛んじゃわない?』
『なぁに一枚くらいコッソリ忍び込ませてもバレやしないさ。さぁどうする?』
ついさっきまでどうしようもない思っていたヴァイオレットにとってこれは願ってもいない申し出
勿論首を縦に振った
『あくまで試験を受けられるようにするだけだからな。試験は自分の力でどうにかするんだぞ』
『うん!ありがとうおじさん!あっ、おじさんじゃなくて先生になるのか』
『お前さんが受かったらだけどな』
それからヴァイオレットは書き方を教えてもらいながら申し込み書の記入欄を埋めていった
『ん?お前さんここ、出身地の森ってなんだ?出鱈目を書いてるわけじゃないよな?』
『出身地って育った場所のことでしょ?名前が分からないから森って書いたの』
『一体どんなとこで育ってきたんだ……あと名前だがヴァイオレットとしか書いてないが姓はないのか?』
『姓……そういえばお父さんがそんなこと言ってたな。普段名前だけで呼ばれてたからすっかり忘れてた。なんだったかなぁ……思い出した!カラミティア。ヴァイオレット・カラミティアっと』
『カラミティって随分と物騒だな。まぁいい、これで申し込みは完了だ。試験は一週間後、それまでしっかり準備しておけよ』
『ありがとうね先生!』
紆余曲折はあったものの、どうにか魔法学校の入学試験を受けられることになったヴァイオレットはその後男と別れ宿を確保
それから必死に受験勉強に励む……かと思いきや、試験までの期間を使ってヴァイオレットは王都での食べ歩きを満喫した
『んー♪どれもこれも美味しすぎるよー♪王都最高!』
試験を受けられることで完全に安心しきっていたヴァイオレットの頭の中に男の言葉など片隅にも残っていなかった
そうこうしている間に一週間はあっという間に過ぎ試験当日、ヴァイオレットは試験会場へとやって来た
『ヴァイオレット・カラミティアです』
『ヴァイオレットさん……はい、確認出来ました。ではこちらのバッジを胸の辺りに付けておいて下さい』
受付で番号が振られているバッジをつけ中へと進む
最初は実技試験、その後休憩を挟んでからの筆記試験という手順になっている
初っ端からヴァイオレットにとってこの試験の合否が決まる大一番だ
実技試験が行われる会場に行くと、そこにはヴァイオレットと同年代位の受験者が大勢集まっていた
『わぁ……これ全員受験者なんだ。おじいさんが言った通り本当に千人位いそう。頑張らないと!ふんっ!ふんっ!』
この中から選ばれるのは僅か数十人、その中に選ばれるよう気合を入れる為に頬を叩く
その音が会場中に響き渡り視線が集まるが、ヴァイオレットはそれに気づくことはなかった
会場に受験者が全員集まるとヴァイオレット達の前に一人の男が説明を始めた
『これよりグレディス魔法学校の入学試験を始める。まず魔力量の測定からだ。この魔水晶は魔力を込めるとその者の魔力量を色で表す仕組みになっている。赤なら基準を満たしたとして通過、青なら魔力量の基準を満たしていないとみなし不合格とする』
イグニスから魔力量についてはお墨付きをもらっているので心配ないとは思うが、人間との交流が極端に少ないヴァイオレットは周りがどの程度の魔力量を持ち合わせているか知らないので一抹の不安があった
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