竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

文字の大きさ
上 下
10 / 233
魔法学校編

入学試験開始

しおりを挟む
気絶している泥棒を衛兵に突き出し奪われた鞄は無事酒飲み男の元へ
男は中身を確認すると安堵した表情を浮かべた


『あぁよかった、中の書類の方も全部無事なようだ。というより見つけたら魔通話盤マジック・フォンで報告しろって言っただろ。何かあったらどうするつもりだったんだ』
『ごめんね、使おうとしたんだけどなんか魔力込めたら壊れちゃったの』
『おまっ……!どんな魔力の込め方したらこんな事になるんだよ!高価だから大切に扱えって言っただろ!』
『ご、ごめんなさい……』
『はぁ……まぁいいや、お前さんのお陰でとりあえず首が飛ぶことにはならなそうだしな』


魔通話盤を壊したことについては鞄を取り返したことで不問となりこれにて一件落着
だがそこで自身の問題はまだ解決していなかったことを思い出しヴァイオレットは憂鬱な気持ちに戻る
その様子に気づいた男が問いかけてきた


『なんだ何か悩み事か?鞄を取り返すのを手伝ってもらったし話位なら聞いてやるぞ』
『うん、実はね……』


ヴァイオレットは男にこの王都に来た目的と入学試験の手続きが締め切ってしまっていたことを明かした


『へぇ、魔法学校の入学試験を受けに王都へ来たはいいけどもう締め切っていて試験が受けられずこれからどうしようか悩んでいると』
『そうなの、これからどうしよう……』
『お前さん運がいいな。その問題、俺ならなんとかしてやれるぜ』
『へっ?どういうこと?』
『実は俺はこう見えてグレディス魔法学校で教師をやっていてな。この中に入っている書類ってのは入学試験の申し込み書だったんだ。そして都合良くここに一枚だけ白紙の申し込み書がある。俺の言いたい事が分かるな?』
『ううん、全然分からない』
『つまりだな、お前も入学試験を受けられるってことだよ』
『本当!?あっ、でもそれっていけないことじゃないの?おじさんの首飛んじゃわない?』
『なぁに一枚くらいコッソリ忍び込ませてもバレやしないさ。さぁどうする?』


ついさっきまでどうしようもない思っていたヴァイオレットにとってこれは願ってもいない申し出
勿論首を縦に振った


『あくまで試験を受けられるようにするだけだからな。試験は自分の力でどうにかするんだぞ』
『うん!ありがとうおじさん!あっ、おじさんじゃなくて先生になるのか』
『お前さんが受かったらだけどな』


それからヴァイオレットは書き方を教えてもらいながら申し込み書の記入欄を埋めていった


『ん?お前さんここ、出身地の森ってなんだ?出鱈目を書いてるわけじゃないよな?』
『出身地って育った場所のことでしょ?名前が分からないから森って書いたの』
『一体どんなとこで育ってきたんだ……あと名前だがヴァイオレットとしか書いてないが姓はないのか?』
『姓……そういえばお父さんがそんなこと言ってたな。普段名前だけで呼ばれてたからすっかり忘れてた。なんだったかなぁ……思い出した!カラミティア。ヴァイオレット・カラミティアっと』
『カラミティって随分と物騒だな。まぁいい、これで申し込みは完了だ。試験は一週間後、それまでしっかり準備しておけよ』
『ありがとうね先生!』


紆余曲折はあったものの、どうにか魔法学校の入学試験を受けられることになったヴァイオレットはその後男と別れ宿を確保
それから必死に受験勉強に励む……かと思いきや、試験までの期間を使ってヴァイオレットは王都での食べ歩きを満喫した


『んー♪どれもこれも美味しすぎるよー♪王都最高!』


試験を受けられることで完全に安心しきっていたヴァイオレットの頭の中に男の言葉など片隅にも残っていなかった
そうこうしている間に一週間はあっという間に過ぎ試験当日、ヴァイオレットは試験会場へとやって来た


『ヴァイオレット・カラミティアです』
『ヴァイオレットさん……はい、確認出来ました。ではこちらのバッジを胸の辺りに付けておいて下さい』


受付で番号が振られているバッジをつけ中へと進む
最初は実技試験、その後休憩を挟んでからの筆記試験という手順になっている
初っ端からヴァイオレットにとってこの試験の合否が決まる大一番だ
実技試験が行われる会場に行くと、そこにはヴァイオレットと同年代位の受験者が大勢集まっていた


『わぁ……これ全員受験者なんだ。おじいさんが言った通り本当に千人位いそう。頑張らないと!ふんっ!ふんっ!』


この中から選ばれるのは僅か数十人、その中に選ばれるよう気合を入れる為に頬を叩く
その音が会場中に響き渡り視線が集まるが、ヴァイオレットはそれに気づくことはなかった
会場に受験者が全員集まるとヴァイオレット達の前に一人の男が説明を始めた


『これよりグレディス魔法学校の入学試験を始める。まず魔力量の測定からだ。この魔水晶は魔力を込めるとその者の魔力量を色で表す仕組みになっている。赤なら基準を満たしたとして通過、青なら魔力量の基準を満たしていないとみなし不合格とする』


イグニスから魔力量についてはお墨付きをもらっているので心配ないとは思うが、人間との交流が極端に少ないヴァイオレットは周りがどの程度の魔力量を持ち合わせているか知らないので一抹の不安があった
受験番号順に測定が行われていき通過する者、その場で帰るよう言い渡される者が次々と現れる中いよいよヴァイオレットの番がやってきた

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...