7 / 233
魔法学校編
初めての街
しおりを挟む
イグニス達の元を旅立ったヴァイオレットはまず一番近い街であるオストンにやってきた
人の街に足を踏み入れるのはこれが生まれて初めてのこと
街に入る前に一度深呼吸をしておいた
『スー……ハー……。よし、お母さんと会話の練習はしたし大丈夫大丈夫』
バシリッサとの特訓の日々を思い出しヴァイオレットはいざ街の中へ
街の中を歩いていると行き交う人々の声とお客を呼び込もうとする活気ある声が飛んでくる
森の中でずっと暮らしていたヴァイオレットにとっては体験したことのない空間だった
『人の街って毎日こんな賑やかなのかなぁ。ん?スンスン……はぁ~なんだかいい匂いがする』
どこからともなく漂ってくる香ばしい匂いにヴァイオレットはまんまと釣られる
匂いのする方に向かって歩いていくと、そこでは大好物である肉が焼かれていた
普段自分で肉を焼いていた時とは全く違う香り、ヴァイオレットは気づいたらその匂いの虜になってしまっていた
するとそのお店の店員がヴァイオレットに話しかけてきた
『良かったら味見していくかい?端の肉だけど美味しいよ』
『あっ、え、えと……オネガイシマス』
初めての会話にカタコトになりながらも女性から皿に一切れの肉を貰いそれを口の中に運ぶ
口に入れた瞬間、ヴァイオレットはそのあまりの美味しさに衝撃を受けた
『何これ!?甘さとしょっぱさがいい感じに合わさってて凄く美味しい!』
『そ、そうかい?普通の味付けだと思うんだけどね。そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいね』
『すみませんこの串焼きを二十本下さい!』
『に、二十?そんなに食べられるかい?』
『大丈夫です!こう見えて大食いですので!』
『ふふふっ、面白いお嬢ちゃんだね。じゃあ串焼き二十本で銀貨五枚だよ』
初めて食べる味に感動したヴァイオレットは串焼きを大量に購入
練習した通りお金もしっかりと渡してから店をあとにした
『人の街にはこんな美味しい物が売ってるんだなぁ♪お話もお買い物もちゃんと出来たし順調順調!とりあえず食べながら部屋を借りれる宿っていう場所でも探そうっと』
せっかく初めて来た人の街、ただ目的地を目指すだけではつまらないのでヴァイオレットはぶらぶらと街を見て回り、その道中で見つけた宿を利用した
部屋は簡素で至って普通だったがヴァイオレットにとってはどれも新鮮であった
特にベッド。今までは枯草を積みその上で眠っていたので初めて見るふかふかのベッドを暫く堪能した
『ふぅー、最初はちょっと不安だったけど思ったよりなんとかなりそう』
好調な出だしに満足しているとお腹が空腹を訴えてくる
先程買った串焼きだけではヴァイオレットのお腹は満たせていなかった
この宿の一階では食事も提供しているようだったので、そこで食事を摂りながら今後の予定を練ることにした
街を散策している時に本屋で見つけ購入したこの国の地図を広げる
詳細な地理は国が管理しているらしくこれは簡易版とのことだが、大まかな場所が分かれば十分である
『えっと今いるオストンがここで私が入ろうとしている学校はこの王都シャンデラっていう場所にあるんだよね。学校の名前は……あれ、お母さんから聞いたんだけどなんだったか忘れちゃったな。なんだっけ?んー……』
『グレディス魔法学校』
『あっ!そうだ思い出したグレディス魔法学校!……って誰?』
ヴァイオレットの横から学校の名を告げてきたのは見知らぬ老人だった
『ほっほ、すまんのお嬢さん。後ろで唸っているのが聞こえてきたからつい口を出してしまった』
『あっ、うるさかったよね。ごめんねおじいさん』
『いいんじゃよ。しかしグレディス魔法学校を受けるか……あそこに入るのは中々大変じゃぞー』
『えっそうなの?』
『毎年千人以上の受験者が集まるが合格者は大体一クラス分で数十人程度だとか』
『そうなんだ、私そんな事全然知らなくて……大丈夫かなぁ』
『おっとすまんかったの、今から受けようとするお嬢さんにする話ではなかったな。お詫びと言ってはなんだが受験内容を教えよう』
『本当!』
老人は若かりし頃一度グレディス魔法学校を受験した経験があるらしい
結果は散々なものだったようだが、受験内容は今でも変わっていないらしく覚えているのだとか
グレディス魔法学校の入学試験は筆記と実技に分かれており、その合計点で合否が決まる
体を動かすのは得意だが如何せん頭を使うのが苦手なヴァイオレットは碌に勉強もしていないし入学は絶望的かと落ち込んだが、老人の話には続きがあった
『これはあくまで噂なんじゃが、筆記がダメでも実技で挽回できる方法があるんじゃとか。グレディス魔法学校は実技の方に重きを置いているようじゃからな』
『えっと、つまり実技だけでもなんとかなる……ってこと?』
『噂じゃがな、ちなみにその方法なんじゃがの。ゴニョゴニョ……』
『ふむふむ……なるほど。それならどうにかなるかも。ありがとうおじいさん!』
『何度も言うが噂じゃからあまりアテにせんでくれな。お嬢さんが魔法学校に合格する事を祈っておるよ』
一時は魔法学校の入学を諦めるしかないかと思ったが、老人から聞いた方法に一縷の望みをかけてヴァイオレットは王都シャンデラへと向かった
人の街に足を踏み入れるのはこれが生まれて初めてのこと
街に入る前に一度深呼吸をしておいた
『スー……ハー……。よし、お母さんと会話の練習はしたし大丈夫大丈夫』
バシリッサとの特訓の日々を思い出しヴァイオレットはいざ街の中へ
街の中を歩いていると行き交う人々の声とお客を呼び込もうとする活気ある声が飛んでくる
森の中でずっと暮らしていたヴァイオレットにとっては体験したことのない空間だった
『人の街って毎日こんな賑やかなのかなぁ。ん?スンスン……はぁ~なんだかいい匂いがする』
どこからともなく漂ってくる香ばしい匂いにヴァイオレットはまんまと釣られる
匂いのする方に向かって歩いていくと、そこでは大好物である肉が焼かれていた
普段自分で肉を焼いていた時とは全く違う香り、ヴァイオレットは気づいたらその匂いの虜になってしまっていた
するとそのお店の店員がヴァイオレットに話しかけてきた
『良かったら味見していくかい?端の肉だけど美味しいよ』
『あっ、え、えと……オネガイシマス』
初めての会話にカタコトになりながらも女性から皿に一切れの肉を貰いそれを口の中に運ぶ
口に入れた瞬間、ヴァイオレットはそのあまりの美味しさに衝撃を受けた
『何これ!?甘さとしょっぱさがいい感じに合わさってて凄く美味しい!』
『そ、そうかい?普通の味付けだと思うんだけどね。そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいね』
『すみませんこの串焼きを二十本下さい!』
『に、二十?そんなに食べられるかい?』
『大丈夫です!こう見えて大食いですので!』
『ふふふっ、面白いお嬢ちゃんだね。じゃあ串焼き二十本で銀貨五枚だよ』
初めて食べる味に感動したヴァイオレットは串焼きを大量に購入
練習した通りお金もしっかりと渡してから店をあとにした
『人の街にはこんな美味しい物が売ってるんだなぁ♪お話もお買い物もちゃんと出来たし順調順調!とりあえず食べながら部屋を借りれる宿っていう場所でも探そうっと』
せっかく初めて来た人の街、ただ目的地を目指すだけではつまらないのでヴァイオレットはぶらぶらと街を見て回り、その道中で見つけた宿を利用した
部屋は簡素で至って普通だったがヴァイオレットにとってはどれも新鮮であった
特にベッド。今までは枯草を積みその上で眠っていたので初めて見るふかふかのベッドを暫く堪能した
『ふぅー、最初はちょっと不安だったけど思ったよりなんとかなりそう』
好調な出だしに満足しているとお腹が空腹を訴えてくる
先程買った串焼きだけではヴァイオレットのお腹は満たせていなかった
この宿の一階では食事も提供しているようだったので、そこで食事を摂りながら今後の予定を練ることにした
街を散策している時に本屋で見つけ購入したこの国の地図を広げる
詳細な地理は国が管理しているらしくこれは簡易版とのことだが、大まかな場所が分かれば十分である
『えっと今いるオストンがここで私が入ろうとしている学校はこの王都シャンデラっていう場所にあるんだよね。学校の名前は……あれ、お母さんから聞いたんだけどなんだったか忘れちゃったな。なんだっけ?んー……』
『グレディス魔法学校』
『あっ!そうだ思い出したグレディス魔法学校!……って誰?』
ヴァイオレットの横から学校の名を告げてきたのは見知らぬ老人だった
『ほっほ、すまんのお嬢さん。後ろで唸っているのが聞こえてきたからつい口を出してしまった』
『あっ、うるさかったよね。ごめんねおじいさん』
『いいんじゃよ。しかしグレディス魔法学校を受けるか……あそこに入るのは中々大変じゃぞー』
『えっそうなの?』
『毎年千人以上の受験者が集まるが合格者は大体一クラス分で数十人程度だとか』
『そうなんだ、私そんな事全然知らなくて……大丈夫かなぁ』
『おっとすまんかったの、今から受けようとするお嬢さんにする話ではなかったな。お詫びと言ってはなんだが受験内容を教えよう』
『本当!』
老人は若かりし頃一度グレディス魔法学校を受験した経験があるらしい
結果は散々なものだったようだが、受験内容は今でも変わっていないらしく覚えているのだとか
グレディス魔法学校の入学試験は筆記と実技に分かれており、その合計点で合否が決まる
体を動かすのは得意だが如何せん頭を使うのが苦手なヴァイオレットは碌に勉強もしていないし入学は絶望的かと落ち込んだが、老人の話には続きがあった
『これはあくまで噂なんじゃが、筆記がダメでも実技で挽回できる方法があるんじゃとか。グレディス魔法学校は実技の方に重きを置いているようじゃからな』
『えっと、つまり実技だけでもなんとかなる……ってこと?』
『噂じゃがな、ちなみにその方法なんじゃがの。ゴニョゴニョ……』
『ふむふむ……なるほど。それならどうにかなるかも。ありがとうおじいさん!』
『何度も言うが噂じゃからあまりアテにせんでくれな。お嬢さんが魔法学校に合格する事を祈っておるよ』
一時は魔法学校の入学を諦めるしかないかと思ったが、老人から聞いた方法に一縷の望みをかけてヴァイオレットは王都シャンデラへと向かった
23
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説


半神の守護者
ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。
超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。
〜概要〜
臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。
実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。
そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。
■注記
本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。
他サイトにも投稿中

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる