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六十九話 「番」

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転移盤ワープボードを使って地上へと戻ってくるとアッシュ達はその足で組合所へダンジョンの攻略を報告
前に来ていた冒険者達は一ヶ月半程度でダンジョン攻略を果たしたそんなアッシュ達を見て驚いていた

換金に関してはドロップアイテムは出なかったが魔石だけでも結構な額になり、これまで稼いだ分と合わせるとここで使った分のお金はしっかりと取り戻すことができた
そしてそのお金を使って夜は祝宴を開いた


『それじゃあ・・・二つ目のダンジョン攻略お疲れ様!』

『お疲れ様!』


パーティルームを借りテーブルにこれでもかという程料理を並べ皆で大いに盛り上がった
美味しそうに食べるクウを見てアッシュは声をかける


『どうクウ?美味しい?』

『うん、美味しいよ主』


元から愛嬌のあったクウだが、言葉を交わせるようになったことで一層愛おしさを感じるようになった
そこへ肉を咥えたベルもやってくる


『約束通りいい肉も買ってくれたみたいだな主』

『ベルには助けてもらったからね。それなんか百グラムで銀貨五枚もするんだから』

『あっ!今そこの肉食ったな!それはオイラの肉だぞ!』

『早い者勝ちだベル様!この世は弱肉強食だ!うみゃーい!』


ベルとイズナで肉の取り合いが始まってしまったのでアッシュはソファに座り一息つく
その隣にアレッサが座ってきた


『アッシュ君、何か考え事?』

『うん、ちょっとね』


今回ダンジョンボスを無事倒すことができたが、それは前衛で戦い続けてくれたイズナの功績が大きい
イズナがエルダートレントの気を引いてくれたお陰でこちらが気兼ねなく攻撃することができたし、最後のあの光線もイズナが防いでくれていなかったら状況は変わっていたかもしれない
そのイズナは首輪が外れたら里に帰ってしまうだろう
次のダンジョンがどんなものなのか知らないアッシュは既に不安が募っており、それをアレッサに吐き出した


『先の事を考えるのも大事だけど今はこの時間を楽しも?考えてても仕方ないしその時になったら一緒に悩めばいいよ』

『うん……それもそうだね。ありがとう』


アレッサの言葉に気持ちが少し楽になったアッシュはその日皆と楽しく飲み明かした
それから数日、アッシュ達は暫く休暇を取ってから次のダンジョンへと向かうことに
その間にベルがイズナの首輪の解析を進めどうにかこの町に滞在している間に解析を終わらせることができた


『主、首輪の解析が終わったぞ』

『じゃあもう外すことができるんだね。早速お願い』

『よし、じゃあいくぜ。解呪ディスペル


ベルが首輪に解呪の魔法をかけるとイズナがつけていた首輪に刻まれた呪法が消えていき、首輪は跡形もなく消滅した
解析に時間はかかったが外れる時は案外あっけなく外るんだなとアッシュが見ていると、イズナは自分の首元に手を当てて首輪が外れたことを確認していた


『本当に外れている・・・ありがとうベル様!』

『いいってことよ』


これでイズナを縛るものは無くなった
使ったお金も戻ってきたしこれでお晴れて自由の身となったわけだ


『イズナはこれから里に帰るんだよね。道中気をつけてね』

『またいつか会いましょうね』


奴隷でなくなったイズナはもうここにいる意味はなく、里に帰るのだろうと思っていたアッシュ達はイズナに別れの言葉をかける
するとイズナは少し気恥ずかしそうにしながら口を開いた


『その事なんだがな、色々考えた結果私もアッシュ達の仲間に加わろう思うんだ』

『え?』

『短い間だったがお前達との冒険は楽しかった。里にいた時には得られなかった高揚感・・・それでもっと外の世界を見たくなったんだ。だから私を仲間に入れてくないか?』


イズナの方からまさかパーティに入りたいと言ってくると思っていなかった
だがイズナが仲間になってくれるのならこれ以上嬉しいことはない
断る理由などどこにもなかった


『イズナがパーティに入ってくれるなら大歓迎だよ』

『これからよろしくねイズナちゃん』

『あぁ!・・・あっ、でも里の皆に一度無事だということを報告したいんだ。それが済んでからでもいいか?』


里の人達も心配しているだろうしその件は勿論了承した
一緒について行こうかともしたが次のダンジョンがある場所とは正反対の場所にある上、子供が攫われて以降より警戒が強まりいくらイズナが心を許していても危険があるとのことで同行はいらないと言われてしまった


『でも一人で大丈夫?こっちに合流するのも大変なんじゃ・・・』

『安心しろ、離れるといってもせいぜい一月位だしな。場所だけ分かればあとはなんとかなる』

『そう?無理はしないでね?』

『アッシュは心配性だな、もっと堂々とした方がいいぞ。なんせお前は私のつがいになるんだからな』

『そうだね・・・ん?番ってなに?』

『決まってるだろ、夫婦ってことだ』


イズナの言葉にアッシュの頭の中は疑問符で満たされた
自分とイズナが夫婦?何をどうしたらそんな話になっているのか皆目見当もつかなかった


『なんで・・・というかいつの間にそんな話になったの?僕達そんな関係じゃなかったよね?』

『忘れたとは言わせないぞ。あの時私の尻尾を握っただろ』

『あの時?尻尾?』


イズナにそう言われアッシュ記憶を遡っていく
その中で思い当たる節があったのは穴から落ちた時にイズナの何かを触ってしまった場面
あれは尻尾だったのかと気づき慌てて弁明をする


『いやあれは不可抗力で事故みたいなものだから・・・ノーカウントで』

『虎狼族は伴侶と決めた者にしか尻尾は触らせない掟があるんだ。私の尻尾を触ったからには覚悟を決めてもらうぞ』

『イズナちゃんとけけけ結婚!?どういうこと!?』


イズナのパーティ加入と同時にとんでもない爆弾を投下されたアッシュは獲物を見るような目を向けてくるイズナと突然のことでパニックになってるアレッサに挟まれ散々な目に遭った


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