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十九話 「揉め事」
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クウが物を吸収することで魔法を使えるという確証を得た後、アッシュはクウに協力してもらって色々と試してみた
クウ自身もかなり乗り気な様子で付き合ってくれた
流石に毒草等危害がありそうな物はリスクが大きすぎるので試すことはしなかったが、その甲斐あって一週間程で新たに二つの能力を得ることに成功した
今日はその能力の実践をしにやって来ている
『クウ!パラライズ!』
一つ目はパラライズという複数の相手を一時的に麻痺させ動きを封じる魔法
雷属性の派生魔法でこの魔法を使えばこちらの有利な状況で戦闘を進められる
毒草以外でとにかく薬草やらキノコを食べていたらたまたま得ることができた
『次は硬質化!』
硬質化、自身の体を岩のように硬くする新たな土魔法
防御に使えてゴブリン程度ならビクともしない
ダメージが通りやすいスライムのクウには相性がいいだろう
これは近くの山で受けた採掘依頼で少し分けてもらった鉱石をいくつか取り込んだ事で習得することができた
この二つが新たに覚えたクウの魔法、魔物相手に試すのは今回初めてだったがどれもちゃんと通用することが分かった
『お疲れ様クウ、いい動きだったよ』
自分でも強くなった事が実感しているのだろう、クウは嬉しそうに飛び跳ねていた
使える魔法の数に上限があるのか分からないが今のところそのような気配は感じられない
『クウだけじゃなく僕ももっと頑張らないと』
これからクウはもっともっと強くなるだろう
けどそれに胡座をかいていたらいつまで経っても自分自身が強くなれない
アッシュはこれまで以上に鍛錬に励むことを決めた
『でもそろそろ次の階層に進んでも問題ないかな。この階層で苦戦するような相手はもういなさそうだし』
今なら三階層でも十分通用するだろう
その件は帰ってから考えることにし、今日は頑張ってくれたクウの為にご馳走を用意してあげることにした
ご馳走と分かるとクウは分かりやすく大喜びしていた
ダンジョンから戻ってきていつもの様に魔石の換金へと向かう
するとその途中、大通りから外れた脇道の方から言い争うような声が聞こえてきた
ここからでは微かにしか聞こえず定かではない
だがその声に聞き覚えがあるような気がしたアッシュは気になって脇道へと入っていく
曲がり角まで来たところで気づかれないようそっと覗いてみるとそこには見慣れた姿があった
『やっぱりアレッサさんの声だったか。何か揉めてるのかな?』
周りには数人の男性、身なりからして同じ冒険者だ
今しがた来たアッシュにはどういう経緯でこういう状況に至ったのかサッパリ分からないが、少なくともアレッサが困っていることは明白
アッシュはお節介と思いつつも助けに入ることにした
『アレッサさん、どうかしましたか?』
『あ、アッシュさん・・・!』
見知った人物が現れた事で強張っていたアレッサの顔が少し安堵の表情へと変わった
アレッサは男達の包囲から抜けるとアッシュの背後に回る
突然の部外者の介入によって露骨に機嫌を損ねている男達はアッシュを睨んできた
『なんだお前、関係ねぇ奴は引っ込んでろ』
『すみませんがこの方とは知り合いなので。困っていて見過ごすことはできません』
威圧してくる男に対しアッシュは毅然な態度で対応した
男達の顔を一人一人見ているとある男だけ見覚えがあった。一番後ろにいた男は以前アッシュが換金していた時に新人の受付にイチャモンをつけていたあの男だ
周りの男達よりも装備が充実しているところを見るとこのパーティのリーダーで間違いないだろう
あの時組合長に臆して逃げていったというのに全く懲りていないようだ
『おいおい、女の前だからって粋がるなよ。痛い目に遭いてぇの・・・か!』
一人が前に出てきてアッシュに向けて拳を振り下ろしてくる
だがそんな大振りでは躱してくれと言っているようなもの
アッシュは男の拳を悠々と躱し続ける。それに苛立ち男が懐に忍ばせていた刃物を向けてきた
『クソが!ちょこまかと逃げやがって!』
『おいバカッ!町の中でそれはやべぇだろ!やりすぎだ!』
町で刃物なんて振り回したら警備隊だけでなく組合も黙ってはいない
冒険者は魔物を倒す為の武器等の所持が許可されているが、それ故に町中で許可なく使用した場合一般人より重い罰が課せられることになっている
頭に血が上ってそれすらも忘れてしまっているのか、男は仲間の制止を聞かずに向かってくる
そこへ今まで背後で様子を窺っていたクウが前に出てきて、迫ってくる男に対して硬質化を使い体当たり攻撃を仕掛けた
『はぅあ・・・!』
『うわっ・・・』
腹部の辺りに当たると思われたクウの体当たりは男が向かってきたことで若干ポイントがズレて見事股間に命中してしまった
それを見ていた男達は思わず自分の股間を押さえた
『い、今のうちに行きましょうアレッサさん!』
『は、はい!』
『あっ!コラ!待ちやがれ!』
相手が倒れている男に意識がいっている間にアッシュはアレッサの手を引き、町の大通りへと走っていった
クウ自身もかなり乗り気な様子で付き合ってくれた
流石に毒草等危害がありそうな物はリスクが大きすぎるので試すことはしなかったが、その甲斐あって一週間程で新たに二つの能力を得ることに成功した
今日はその能力の実践をしにやって来ている
『クウ!パラライズ!』
一つ目はパラライズという複数の相手を一時的に麻痺させ動きを封じる魔法
雷属性の派生魔法でこの魔法を使えばこちらの有利な状況で戦闘を進められる
毒草以外でとにかく薬草やらキノコを食べていたらたまたま得ることができた
『次は硬質化!』
硬質化、自身の体を岩のように硬くする新たな土魔法
防御に使えてゴブリン程度ならビクともしない
ダメージが通りやすいスライムのクウには相性がいいだろう
これは近くの山で受けた採掘依頼で少し分けてもらった鉱石をいくつか取り込んだ事で習得することができた
この二つが新たに覚えたクウの魔法、魔物相手に試すのは今回初めてだったがどれもちゃんと通用することが分かった
『お疲れ様クウ、いい動きだったよ』
自分でも強くなった事が実感しているのだろう、クウは嬉しそうに飛び跳ねていた
使える魔法の数に上限があるのか分からないが今のところそのような気配は感じられない
『クウだけじゃなく僕ももっと頑張らないと』
これからクウはもっともっと強くなるだろう
けどそれに胡座をかいていたらいつまで経っても自分自身が強くなれない
アッシュはこれまで以上に鍛錬に励むことを決めた
『でもそろそろ次の階層に進んでも問題ないかな。この階層で苦戦するような相手はもういなさそうだし』
今なら三階層でも十分通用するだろう
その件は帰ってから考えることにし、今日は頑張ってくれたクウの為にご馳走を用意してあげることにした
ご馳走と分かるとクウは分かりやすく大喜びしていた
ダンジョンから戻ってきていつもの様に魔石の換金へと向かう
するとその途中、大通りから外れた脇道の方から言い争うような声が聞こえてきた
ここからでは微かにしか聞こえず定かではない
だがその声に聞き覚えがあるような気がしたアッシュは気になって脇道へと入っていく
曲がり角まで来たところで気づかれないようそっと覗いてみるとそこには見慣れた姿があった
『やっぱりアレッサさんの声だったか。何か揉めてるのかな?』
周りには数人の男性、身なりからして同じ冒険者だ
今しがた来たアッシュにはどういう経緯でこういう状況に至ったのかサッパリ分からないが、少なくともアレッサが困っていることは明白
アッシュはお節介と思いつつも助けに入ることにした
『アレッサさん、どうかしましたか?』
『あ、アッシュさん・・・!』
見知った人物が現れた事で強張っていたアレッサの顔が少し安堵の表情へと変わった
アレッサは男達の包囲から抜けるとアッシュの背後に回る
突然の部外者の介入によって露骨に機嫌を損ねている男達はアッシュを睨んできた
『なんだお前、関係ねぇ奴は引っ込んでろ』
『すみませんがこの方とは知り合いなので。困っていて見過ごすことはできません』
威圧してくる男に対しアッシュは毅然な態度で対応した
男達の顔を一人一人見ているとある男だけ見覚えがあった。一番後ろにいた男は以前アッシュが換金していた時に新人の受付にイチャモンをつけていたあの男だ
周りの男達よりも装備が充実しているところを見るとこのパーティのリーダーで間違いないだろう
あの時組合長に臆して逃げていったというのに全く懲りていないようだ
『おいおい、女の前だからって粋がるなよ。痛い目に遭いてぇの・・・か!』
一人が前に出てきてアッシュに向けて拳を振り下ろしてくる
だがそんな大振りでは躱してくれと言っているようなもの
アッシュは男の拳を悠々と躱し続ける。それに苛立ち男が懐に忍ばせていた刃物を向けてきた
『クソが!ちょこまかと逃げやがって!』
『おいバカッ!町の中でそれはやべぇだろ!やりすぎだ!』
町で刃物なんて振り回したら警備隊だけでなく組合も黙ってはいない
冒険者は魔物を倒す為の武器等の所持が許可されているが、それ故に町中で許可なく使用した場合一般人より重い罰が課せられることになっている
頭に血が上ってそれすらも忘れてしまっているのか、男は仲間の制止を聞かずに向かってくる
そこへ今まで背後で様子を窺っていたクウが前に出てきて、迫ってくる男に対して硬質化を使い体当たり攻撃を仕掛けた
『はぅあ・・・!』
『うわっ・・・』
腹部の辺りに当たると思われたクウの体当たりは男が向かってきたことで若干ポイントがズレて見事股間に命中してしまった
それを見ていた男達は思わず自分の股間を押さえた
『い、今のうちに行きましょうアレッサさん!』
『は、はい!』
『あっ!コラ!待ちやがれ!』
相手が倒れている男に意識がいっている間にアッシュはアレッサの手を引き、町の大通りへと走っていった
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