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十六話 「魔導士の苦悩」
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突然倒れてしまったアレッサを担ぎ、急いで一階層の安全区域まで戻ってきた
意識がないだけで他に外傷などは見つからなかったのでとりあえずアレッサが目を覚ますまで待つことにした
昨日と似たような展開にアッシュは原因を考えていた
共通するのは倒れる前に魔法を使用していた事
以前は空腹で倒れたのかと思っていたが今回の事を考えるとどうもそれだけではないようが気がしていた
自分の体力回復も図りつつ待っていると、暫くしてアレッサが目を覚ます
アレッサはアッシュを見ると開口一番に謝ってきた
『アッシュさん、すみません』
『僕は大丈夫ですよ。アレッサさんの方こそ大丈夫ですか?これお水です』
『ありがとうございます・・・』
水を受け取るとゆっくりと飲み始め、呼吸を整えていると少し落ち着いたように見えたので先程疑問に思っていた事尋ねてみた
『あの、アレッサさんが魔法を使う度に顔色が悪くなっていったように見えたんですが今回のと何か関係しているんでしょうか?』
『実はアッシュさんに言っていなかったんですが・・・私魔力の操作がまだ上手く出来ないんです』
『魔力の制御ですか?』
アッシュの目から見たらアレッサの魔法は特に問題ないように思えた
寧ろ初級の魔法とはいえあれだけの威力がある魔法を扱えていたので魔力の操作と言われてもいまいちピンとこなかった
アレッサの例えでは何度も使っていたファイア・ボール、あれを発動するのに必要な魔力消費量が1だとする
魔力操作が出来ている者であればその消費量で済むが、魔力操作が不完全な者が発動させようとする場合必要な魔力が倍近くになってしまうんだそう
体内に秘められている魔力を一点に込めて放つ、これが魔法発動の基本動作
魔法を使う際にはいかに魔力を込める効率がいいかが重要で、体内にある魔力を上手く扱うことができないと先程のアレッサのようにすぐ疲れが出てくるらしい
最短距離でゴールに行けば疲れずに済むのにわざわざ遠回りしているせいで余計な体力を使っているという感覚に近いのだろうか
そして魔力量の限界が近づいてくると視界がボヤけ始め、魔力が完全に尽きると気を失う
この状態を魔力枯渇というそうだ
さっきのアレッサはその魔力枯渇の一歩手前
どれ位消費しているかなどは感覚で分かるみたいだが初のダンジョンといことで少し舞い上がり管理を誤ってしまったみたいだ
『黙っていて本当にすみませでした。アッシュさんを危険に晒してしまうかもしれないのに』
『まぁ大した実害はなかったので僕は気にしていないですが、急に倒れたから心配しちゃいましたよ』
『うっ、すみません・・・』
とはいえアッシュも異変に気づきながらも止めることはしなかったのだから反省しなくてはいけない
アレッサが言っていたように状態確認等はしっかりしておかないと他のパーティメンバーの命を危険に晒す事になるかもしれないのだから
魔導士の魔力が尽きかけた際に回復の補助をしてくるのアイテムがある
それはマナポーションというアイテムで飲むことで消費した魔力を回復、自然回復を待たずに魔法を使うことができる
だがこのマナポーションがまた値が張るアイテムで、アッシュが常用しているポーションの五倍程の価格だ
希少な薬草の使用やマナポーションを作れる者の少なさから高価なアイテムとされているらしい
駆け出し冒険者がそんなアイテムを常に持ち歩くのは厳しく、魔力操作がまだ完璧でなく消費が激しいアレッサが使っても焼け石に水状態になってしまうんだとか
あと単純に死ぬほどまずいらしい
効果特化で作られている為味の方が壊滅的なんだそうだ
そこでアッシュはある物を渡した
『あの、良かったら食べて下さい』
『これは何ですか?』
『マナベリーという実です。食べれば少しですが魔力を回復できるらしいですよ。マナポーション程の効果は期待できませんので気休め程度かもしれませんが』
本来マナポーションの材料の一部として使われる素材
ヒール草同様効果は落ちるがそのままでも使用することができる
朝待ち合わせ場所に向かっている際にたまたま見かけたので買っておいてが正解だったようだ
アッシュからマナベリーを受け取るとアレッサは一つ取って口に入れた
『どうですか?』
『甘酸っぱくて美味しいです。それに少しだけ楽になった気がします』
マナベリーを全て食べ終える頃にはアレッサの顔色が戻ってきていたので確かな効果あったみたいだ
とはいえ全快には程遠い状態なので流石にこれ以上はダンジョンにはいられない
魔物がいないところを選んで極力戦闘を回避し、アレッサのペースに合わせて出口の方へと歩いていった
『ダンジョンを出たら組合所に行って魔石の換金をしましょう』
『はい』
一波乱はあったものの大事にならずに済んだ
アレッサとは一時的にパーティを組んだ関係、換金を済ませたらこの関係も終わりだ
今までパーティを組んでいい思い出なんか一つもなかったが、アレッサとのパーティはなんだか楽しかった
アッシュは少し名残惜しさを感じながらもダンジョンをあとにした
意識がないだけで他に外傷などは見つからなかったのでとりあえずアレッサが目を覚ますまで待つことにした
昨日と似たような展開にアッシュは原因を考えていた
共通するのは倒れる前に魔法を使用していた事
以前は空腹で倒れたのかと思っていたが今回の事を考えるとどうもそれだけではないようが気がしていた
自分の体力回復も図りつつ待っていると、暫くしてアレッサが目を覚ます
アレッサはアッシュを見ると開口一番に謝ってきた
『アッシュさん、すみません』
『僕は大丈夫ですよ。アレッサさんの方こそ大丈夫ですか?これお水です』
『ありがとうございます・・・』
水を受け取るとゆっくりと飲み始め、呼吸を整えていると少し落ち着いたように見えたので先程疑問に思っていた事尋ねてみた
『あの、アレッサさんが魔法を使う度に顔色が悪くなっていったように見えたんですが今回のと何か関係しているんでしょうか?』
『実はアッシュさんに言っていなかったんですが・・・私魔力の操作がまだ上手く出来ないんです』
『魔力の制御ですか?』
アッシュの目から見たらアレッサの魔法は特に問題ないように思えた
寧ろ初級の魔法とはいえあれだけの威力がある魔法を扱えていたので魔力の操作と言われてもいまいちピンとこなかった
アレッサの例えでは何度も使っていたファイア・ボール、あれを発動するのに必要な魔力消費量が1だとする
魔力操作が出来ている者であればその消費量で済むが、魔力操作が不完全な者が発動させようとする場合必要な魔力が倍近くになってしまうんだそう
体内に秘められている魔力を一点に込めて放つ、これが魔法発動の基本動作
魔法を使う際にはいかに魔力を込める効率がいいかが重要で、体内にある魔力を上手く扱うことができないと先程のアレッサのようにすぐ疲れが出てくるらしい
最短距離でゴールに行けば疲れずに済むのにわざわざ遠回りしているせいで余計な体力を使っているという感覚に近いのだろうか
そして魔力量の限界が近づいてくると視界がボヤけ始め、魔力が完全に尽きると気を失う
この状態を魔力枯渇というそうだ
さっきのアレッサはその魔力枯渇の一歩手前
どれ位消費しているかなどは感覚で分かるみたいだが初のダンジョンといことで少し舞い上がり管理を誤ってしまったみたいだ
『黙っていて本当にすみませでした。アッシュさんを危険に晒してしまうかもしれないのに』
『まぁ大した実害はなかったので僕は気にしていないですが、急に倒れたから心配しちゃいましたよ』
『うっ、すみません・・・』
とはいえアッシュも異変に気づきながらも止めることはしなかったのだから反省しなくてはいけない
アレッサが言っていたように状態確認等はしっかりしておかないと他のパーティメンバーの命を危険に晒す事になるかもしれないのだから
魔導士の魔力が尽きかけた際に回復の補助をしてくるのアイテムがある
それはマナポーションというアイテムで飲むことで消費した魔力を回復、自然回復を待たずに魔法を使うことができる
だがこのマナポーションがまた値が張るアイテムで、アッシュが常用しているポーションの五倍程の価格だ
希少な薬草の使用やマナポーションを作れる者の少なさから高価なアイテムとされているらしい
駆け出し冒険者がそんなアイテムを常に持ち歩くのは厳しく、魔力操作がまだ完璧でなく消費が激しいアレッサが使っても焼け石に水状態になってしまうんだとか
あと単純に死ぬほどまずいらしい
効果特化で作られている為味の方が壊滅的なんだそうだ
そこでアッシュはある物を渡した
『あの、良かったら食べて下さい』
『これは何ですか?』
『マナベリーという実です。食べれば少しですが魔力を回復できるらしいですよ。マナポーション程の効果は期待できませんので気休め程度かもしれませんが』
本来マナポーションの材料の一部として使われる素材
ヒール草同様効果は落ちるがそのままでも使用することができる
朝待ち合わせ場所に向かっている際にたまたま見かけたので買っておいてが正解だったようだ
アッシュからマナベリーを受け取るとアレッサは一つ取って口に入れた
『どうですか?』
『甘酸っぱくて美味しいです。それに少しだけ楽になった気がします』
マナベリーを全て食べ終える頃にはアレッサの顔色が戻ってきていたので確かな効果あったみたいだ
とはいえ全快には程遠い状態なので流石にこれ以上はダンジョンにはいられない
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『はい』
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アッシュは少し名残惜しさを感じながらもダンジョンをあとにした
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