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三十話 「伏兵」

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遂に始まったダンジョンボス戦
迫り来るジャイアントオーガに対し三人は散開、まずはクウがオーガの顔にロックバレットを浴びせていく
オーガは手を顔の前にやってそれを防ぐ
ダメージを与える目的であればこの攻撃では難しいが、クウに頼んだのは相手の注意を引くこと
アッシュはオーガがクウの攻撃に気を取られている間に鞄から取り出していた球状のアイテムを足元目掛け投げつけた
アイテムが地面に当たると粘り気のある緑の液体のようなものが拡散し、オーガの足と地面を接着させた
それによってオーガの進行が止まる


『よしっ、動きを止められたぞ』


アッシュがオーガに投げたのは粘着草という名前の通り粘着力がある草で、ボールに入っていたのはそれをすり潰し粘着力を高めた物
オーガ相手ではそう長くは持たないだろうが、短時間でも動きを封じることが出来れば十分だ


『アレッサさん!お願いします!』

『はい!』


オーガの脚を止めるとアッシュの合図でアレッサが魔法で攻撃を仕掛ける


『ウォーターボール!』


アレッサの水魔法ウォーターボールがジャイアントオーガに直撃
しかし初級の水魔法程度ではオーガはビクともしない
だが本当の狙いはここからだ


『食らえ!』


アレッサの水魔法によりオーガの体はずぶ濡れの状態に
アッシュはそこへもう一つのアイテムを使用する
先程と似たボールに付いている導火線に火をつけ、タイミングを計ってそれをオーガに向けて投げ放った
ボールはオーガの体に命中
するとその直後にボールが破裂し、青い閃光が走り落雷の様な凄まじい音を轟かせた


『グガアアアアアア!!』


耳をつんざく轟音の後にオーガの叫び声が木霊する
オーガに投げたのは火薬と青雷せいらい石と言われているものを合わせたアイテム
アッシュはこのアイテムを爆雷玉と名付けた
青雷石は衝撃に反応して青い電気を発生させる特殊な鉱石で、強い衝撃を与えれば与える程その威力が増す
更に水魔法でオーガの体を満遍なく濡らすことで電気の通り道を作り、より確実にダメージを与えられるようにした
数が少ない為ぶっつけ本番での使用だったが、オーガの様子からして効果はあったようだ
流石に一発で倒せるだけのダメージはないが、この調子でいけばオーガに相当のダメージを与えてくれるはず
アッシュはそのまま続けて二発目の準備に入ろうとするが、それを阻止しようとオーガの石斧が襲ってくる


『うわっ!』


ダメージを食らった事で怒りを露わにしたオーガは拘束から抜け出し石斧を振り回してくる
アッシュはそれを躱しながら先程と同様粘着草の玉を使用しオーガの足止めを図った
そこへアレッサが水魔法の攻撃を浴びせ二発目の爆雷玉を食らわせる

その後三、四発目も爆雷玉をオーガに向かって投げ放つも三発目はアイテムが不発に終わり、四発目は相手がこちらの動きを理解してきたことで上手く躱され失敗に終わった


『これが最後の一発・・・くらえ!』

『グオオオオオオ!!!』


最後の爆雷玉は見事命中。クウがパラライズを使用したことにより一瞬だけオーガの動きが止まったことでダメージを与えることに成功した
オーガは呻き声を上げると一瞬体をよろめかせたが、それでも倒れるまでには至らなかった
やはり三発目と四発目を失敗してしまったことが痛かったか


『すみませんアレッサさん・・・』

『大丈夫です。あとは任せて下さい!』


そう言うとアレッサは以前保険として購入しておいたマナポーションを一気に飲み干し魔力を回復
ここからは普段の戦い方に変えアレッサの攻撃をメインに動いていく
アレッサの魔法発動のタイミングに合わせオーガへと向かっていこうとしたその時、突如オーガが雄叫びを上げた


『ガアアアアアアア!!!』

『な、なんだ!?』


上に向かっての咆哮。それは自分達に向けた威嚇の咆哮とは違うように思えた
アッシュのその予感は的中し、オーガの咆哮が止むと少ししてオーガが降ってきた場所からなんと新たに魔物が降ってきた
降ってきたのはホブゴブリン二体にゴブリンが三体、オーガの雄叫びはどうやら手下を呼ぶ為の行動だったらしい
ボス戦でジャイアントオーガ以外の魔物が現れるなんて情報はなかったはず
突然の登場にアッシュ達は対応することが出来ず、オーガとゴブリン達に挟まれる形となってしまった

強敵でないのが唯一の救いだがこの場面で対応しなくてはいけない相手が増えるのはかなりまずい
主戦力であるアレッサにはオーガの方に集中してもらいたいしクウもそのサポートに回ってもらいたい
となるとゴブリンとホブの相手は自然とアッシュ一人でどうにかするしかなくなる


『アレッサさんとクウはオーガの方に集中を!僕が取り巻きをどうにかします!』

『分かりました!気をつけて下さい!』


一体であれば負けることはないが五体ともなるとこの数を自分一人で捌き切れるかどうか・・・
そんな考えが頭を過った瞬間アッシュは自分の頬を思い切り叩く
ここまできたら出来るかどうかの話ではない。やらなくてはいけないのだ
背後でオーガと戦っている二人の為に何としてでも倒す
アッシュは自らを奮い立たせ魔物へと向かっていった


『いくぞ!』


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